仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

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第168話 吾輩はニャンフルエンザである

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 「ヘッブシッ!」

 我輩の体毛も漸く生えそろった。
 着ぐるみこそ着せなくなったものの、それでも病院の大奥様は服を着せたがる。
 おかげで今はピンクのちゃんちゃんこ着用がデフォルトなのだ。

 ところが!
 これまで一皮余分に羽織っていた我輩。
 思うに抵抗力が弱くなっていたのだろう。
 速攻体調不良に。

 着ぐるみを手放して一日も経たないうちに鼻が崩壊!
 少しだけだが、喉の辺りで痛みが8ビートを刻む!

 これが噂の風邪では?
 人間どもを恐怖に突き落とす伝染病では?

 だからと言って我輩が仕事を休むと多くの者たちに迷惑が!
 そんな訳で、だるい体に鞭打ちながら先ずは公園の食堂へ。

 
 やはり日雇い労働者たちが集まっておるな。
 雇い主である我輩が無断欠席をしようものならコイツ等も路頭に迷ってしまう。

 ここで倒れる訳にはいかぬ!
 頑張らねば!

 猫リーダーたちに一匹一匹鼻先三寸で丁寧な仕事説明。
 バカばかりで納得させるのには毎回苦労させられるな。

 「ヘッブニャンッ!」

 理解した者から各自持ち場へチームを引き連れて散開。
 こうして全ての班へ指示を伝え終えると、時刻は既に正午前。
 
 この頃には我輩の関節と言う名の関節が悲鳴を上げ始め、もうヨレヨレ。
 だがまだ帰る訳にはいかぬ!
 午後からは商店街のルートセールスをしなければ!
 でなければ仕事師の名が廃るぞ!

 とりあえずゴミ屋敷へ休憩を兼ねてピットイン。
 ゴミ虫の嫁兼ボスから焼き魚を頂く。

 「ヘブシュッ!」

 今日は学校とやらが休みらしく、娘も一緒の昼食。
 我輩としては結構珍しい風景かも。
 なにせ居候先には雄親がいないのだから……

 
 さて、お腹も膨れた事だし、早速商店街へと営業に行くか。
 今日は丁寧に一軒一軒回るとしよう。
 頑張るぞ!


 この冬、未知のウイルスが商店街を襲った。
 研究者は、猫の症状が一番重いことから、これを猫インフルエンザと名付ける。
 様々な研究機関が必死でワクチン開発を試みるもエラーの連続。
 特に対抗策も見つからず、結論としてこれを神の創造物とした。

 非情に質の悪いこの菌は、特に頭の悪い者への感染率が高かったのだとか。
 その症状は、ノロやO157の強力版ともいえる。
 
 尚且つ症状の酷くでる猫たちは町中の至る場所で生死の境を彷徨っていた。
 ある者は口元でもんじゃ焼きを作製。
 またある者は尻辺りでホカホカの水っぽいパンプキンパイを。
 酷い者はその両方を体内調理すると言った最悪の症状が顔を出す!

 ところが!
 商店街のみならず、近隣の民家へも猛威を振るうが、ある日突然沈静化。
 後の統計で優秀な家を起点に伝染が止まったのだとか。
 その証拠に、三河家は弟子の垂香のみが発症、小張バイク店は全員入院へ!

 事態が収束した街では歓喜の声が上がる一方、研究者は懸念を露わに。
 なにせウイルスの何一つ解析できなかったのだから……

 巷では、とある一匹の猫がこの脅威をばら撒いたのではと噂された。
 もう一つ、ちゃんちゃんこを着た猫は宇宙人の擬態だとも……
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