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プロローグ
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ここは後の伝説に残る世界。
魔王と呼ばれる魔族代表と勇者と呼ばれた人類代表が互いの存続を賭けて戦っていた頃の話。
永きに渡る争いも、遂に終止符が打たれようとしていた。
数十年前、この国は暴君で名高い王が支配していた。
その嫡男である王子は争いを好まぬ優しい人。
なにもかも力でねじ伏せてきた王はそれが気に入らず、王子が成人の儀を迎えた後も一切の権限を与えずにいた。
そんな王子をダシに他国の姫を迎え入れ、同盟と言う名のもとに実効支配を企てる王。
姫の出身国はやがて王の思うがままに実権を握られてしまう。
これには流石に王も笑いが止まらず、初めて王子に利用価値を見出したと手を叩いて喜んだ。
やがて王子に子供が生まれた。
しかも二人も。
一人は正当な王家の血筋を継いだ姫との子。
そしてもう一人は、なんと姫の身の回りを世話する侍女との子であった。
これは経験の無い姫の願いもあり、性教育の一環として行った行為で出来てしまったのだ。
これを知った王は激怒!
すぐさま侍女とその子供の処刑を言い渡すも、事前に察した王子は自分の地位も何もかもかなぐり捨て、侍女との間にもうけた子のみを抱きかかえて城から脱出。
姫と侍女の願いもあり、数ある選択肢から逃亡を選んだのだ。
残された姫とその子へ、王子は最後にこう言い残したという。
「姫との子はこの国でなに不自由なく育てられるだろう。だが、君を裏切って生まれたこの子はそうではない。そして父親である僕はこの子を育てる義務がある。許してくれ」
ところが!
実はこれら全てが姫の策略で、正当な血筋を掲げてこの国を乗っ取る算段の序章でしかなかった。
事実を知らずに姫の手のひらで踊る王子。
結果的にその優しさが仇となる。
そして王子は優しいだけでなく、勇気も持ち合わせていた。
王である父に背けばその代償は自らの命。
しかし今それを差し出せば侍女と共に只の無駄死となってしまうのは明らか。
せめてこの子が世の中を一人で生きていけるぐらいの年齢までは責任を持とうと、その後行方を眩ませた。
まんまと出し抜かれた王。
この後執拗に王子を追跡するかと思いきや、意外や意外、怒りさえもそれほど長続きしなかったという。
なぜなら孫娘に勇者の才能を見出し、彼女の育成に夢中となったからだ。
姫の巧みな口車に乗せられ、持ちうる全てを孫娘へと注いだ王。
知識、技術、財、そして愛。
姫の手のひらで踊っていたのは王も同じであった。
これにより一刻の猶予を与えられる運びとなった王子は、その時間を一緒に連れ去った子へと注ぐことが出来た。
やがて月日も流れ、孫娘が一端となった頃、王は病に伏せることとなる。
思うがままに生きた王だったが、どうしても心残りがあった。
自分の顔に泥を塗った王子への制裁がまだ済んでいないと。
王は王子を捉える為の罠を仕掛ける。
侍女の命をエサに王子をおびき寄せようと街中へ噂を流したのだ。
彼女はまだ生きていると。
そう、侍女はまだ処刑されていなかった。
それどころか、王自身の名誉の為に生きながらえさせていたのだ。
王子に逃げられ、剰えその侍女を処刑したとなれば八つ当たりととられてもしかたがないと、恥の上塗りになってしまうと考えたのである。
殺してしまえばそこで終わりだが、生かしておけばいつかはその利用価値を見いだせられるだろうと。
その時が遂にやって来たのだ。
これまで一切の痕跡を残さずに行方知れずの王子だったが、侍女が生きていた喜びと、国を混乱させた自身の贖罪の意味を込め、王の前へその姿を現した。
暫くして王子と侍女は人知れずに処刑された。
心残りが無くなったのか、少し遅れて王も後を追うように息を引き取った。
そしてこの国に初めての女性の王が誕生した。
勇者を娘に持つ女王が。
―― 更に時は流れ……
「魔王よ覚悟!」
「それはこちらのセリフだぞ勇者よ」
古の丘で全軍正面衝突の末、壊滅状態となった互いの軍。
バランスの取れたパーティ率いる勇者一行とそれに拮抗する優れた数名の部下率いる魔王。
「勇者よ、お前は我等を倒したらどうするつもりなのだ? 人間の事だから、平和になった途端、自分達を上回る力は邪魔だと排除しようとするだろうに」
「その言葉、そっくりそちらへお返ししよう。ずる賢い魔族がこの世を支配するなんて考えられぬわ!」
「なぜ魔族がずる賢いと思うのだ? それこそが人間による洗脳の証ではないのか勇者よ?」
勇者は言葉に詰まってしまった。
「そもそも魔族は自分たちの領域からあまり出ようとはしなかったのだぞ? 人間こそが彼等の領域へと侵攻したのだ!」
「だ、だとしてもだ! お前たちは人間の命を奪い過ぎた!」
「それこそそっくりお返ししようではないか勇者よ。罪のない魔族がどれほどその命を奪われたのか……彼等だとて人間と同じように街を作り作物を育て、集団で生活していたのだぞ?」
ここで勇者の仲間が声を上げる。
「魔王の言葉に耳を傾けてはだめよ勇者! 言霊に囚われないで!」
「言霊か。私が言っているのは只の事実現実なのだがな。思い出してみろ勇者よ。私とお前は元々人の子としてこの世に生を受けたのだぞ? 同じ様に人族の教育を受けて、且つ人間に反旗を翻した私を見て何を思った?」
「……た、確かに魔王の言う通りかもしれん。あの頃の私は貴様のように人間を敵にするだなんて考えられなかったし、裏切るその勇気も無かった」
「勇者も分かっているのだろう? 本当の悪は誰なのか。いや、体制と言うべきか」
暫し考え込む勇者。
そして……
「もう考えるのはやめだ。お前と私がこの世から消し飛べば自ずと答えが出るだろう。後は残されたものが上手くやる」
「なっ! それでいいのか勇者よ!?」
「いいんだよ! 魔王覚悟っ!」
一筋の閃光と共に大地が叫ぶ!
勇者渾身の力を込めた一撃に全身全霊を注いだ魔王の一発が共鳴!
互いがこれぞトドメと言わんばかりに!
そして両軍跡形もなく消し飛んだ。
魔王と呼ばれる魔族代表と勇者と呼ばれた人類代表が互いの存続を賭けて戦っていた頃の話。
永きに渡る争いも、遂に終止符が打たれようとしていた。
数十年前、この国は暴君で名高い王が支配していた。
その嫡男である王子は争いを好まぬ優しい人。
なにもかも力でねじ伏せてきた王はそれが気に入らず、王子が成人の儀を迎えた後も一切の権限を与えずにいた。
そんな王子をダシに他国の姫を迎え入れ、同盟と言う名のもとに実効支配を企てる王。
姫の出身国はやがて王の思うがままに実権を握られてしまう。
これには流石に王も笑いが止まらず、初めて王子に利用価値を見出したと手を叩いて喜んだ。
やがて王子に子供が生まれた。
しかも二人も。
一人は正当な王家の血筋を継いだ姫との子。
そしてもう一人は、なんと姫の身の回りを世話する侍女との子であった。
これは経験の無い姫の願いもあり、性教育の一環として行った行為で出来てしまったのだ。
これを知った王は激怒!
すぐさま侍女とその子供の処刑を言い渡すも、事前に察した王子は自分の地位も何もかもかなぐり捨て、侍女との間にもうけた子のみを抱きかかえて城から脱出。
姫と侍女の願いもあり、数ある選択肢から逃亡を選んだのだ。
残された姫とその子へ、王子は最後にこう言い残したという。
「姫との子はこの国でなに不自由なく育てられるだろう。だが、君を裏切って生まれたこの子はそうではない。そして父親である僕はこの子を育てる義務がある。許してくれ」
ところが!
実はこれら全てが姫の策略で、正当な血筋を掲げてこの国を乗っ取る算段の序章でしかなかった。
事実を知らずに姫の手のひらで踊る王子。
結果的にその優しさが仇となる。
そして王子は優しいだけでなく、勇気も持ち合わせていた。
王である父に背けばその代償は自らの命。
しかし今それを差し出せば侍女と共に只の無駄死となってしまうのは明らか。
せめてこの子が世の中を一人で生きていけるぐらいの年齢までは責任を持とうと、その後行方を眩ませた。
まんまと出し抜かれた王。
この後執拗に王子を追跡するかと思いきや、意外や意外、怒りさえもそれほど長続きしなかったという。
なぜなら孫娘に勇者の才能を見出し、彼女の育成に夢中となったからだ。
姫の巧みな口車に乗せられ、持ちうる全てを孫娘へと注いだ王。
知識、技術、財、そして愛。
姫の手のひらで踊っていたのは王も同じであった。
これにより一刻の猶予を与えられる運びとなった王子は、その時間を一緒に連れ去った子へと注ぐことが出来た。
やがて月日も流れ、孫娘が一端となった頃、王は病に伏せることとなる。
思うがままに生きた王だったが、どうしても心残りがあった。
自分の顔に泥を塗った王子への制裁がまだ済んでいないと。
王は王子を捉える為の罠を仕掛ける。
侍女の命をエサに王子をおびき寄せようと街中へ噂を流したのだ。
彼女はまだ生きていると。
そう、侍女はまだ処刑されていなかった。
それどころか、王自身の名誉の為に生きながらえさせていたのだ。
王子に逃げられ、剰えその侍女を処刑したとなれば八つ当たりととられてもしかたがないと、恥の上塗りになってしまうと考えたのである。
殺してしまえばそこで終わりだが、生かしておけばいつかはその利用価値を見いだせられるだろうと。
その時が遂にやって来たのだ。
これまで一切の痕跡を残さずに行方知れずの王子だったが、侍女が生きていた喜びと、国を混乱させた自身の贖罪の意味を込め、王の前へその姿を現した。
暫くして王子と侍女は人知れずに処刑された。
心残りが無くなったのか、少し遅れて王も後を追うように息を引き取った。
そしてこの国に初めての女性の王が誕生した。
勇者を娘に持つ女王が。
―― 更に時は流れ……
「魔王よ覚悟!」
「それはこちらのセリフだぞ勇者よ」
古の丘で全軍正面衝突の末、壊滅状態となった互いの軍。
バランスの取れたパーティ率いる勇者一行とそれに拮抗する優れた数名の部下率いる魔王。
「勇者よ、お前は我等を倒したらどうするつもりなのだ? 人間の事だから、平和になった途端、自分達を上回る力は邪魔だと排除しようとするだろうに」
「その言葉、そっくりそちらへお返ししよう。ずる賢い魔族がこの世を支配するなんて考えられぬわ!」
「なぜ魔族がずる賢いと思うのだ? それこそが人間による洗脳の証ではないのか勇者よ?」
勇者は言葉に詰まってしまった。
「そもそも魔族は自分たちの領域からあまり出ようとはしなかったのだぞ? 人間こそが彼等の領域へと侵攻したのだ!」
「だ、だとしてもだ! お前たちは人間の命を奪い過ぎた!」
「それこそそっくりお返ししようではないか勇者よ。罪のない魔族がどれほどその命を奪われたのか……彼等だとて人間と同じように街を作り作物を育て、集団で生活していたのだぞ?」
ここで勇者の仲間が声を上げる。
「魔王の言葉に耳を傾けてはだめよ勇者! 言霊に囚われないで!」
「言霊か。私が言っているのは只の事実現実なのだがな。思い出してみろ勇者よ。私とお前は元々人の子としてこの世に生を受けたのだぞ? 同じ様に人族の教育を受けて、且つ人間に反旗を翻した私を見て何を思った?」
「……た、確かに魔王の言う通りかもしれん。あの頃の私は貴様のように人間を敵にするだなんて考えられなかったし、裏切るその勇気も無かった」
「勇者も分かっているのだろう? 本当の悪は誰なのか。いや、体制と言うべきか」
暫し考え込む勇者。
そして……
「もう考えるのはやめだ。お前と私がこの世から消し飛べば自ずと答えが出るだろう。後は残されたものが上手くやる」
「なっ! それでいいのか勇者よ!?」
「いいんだよ! 魔王覚悟っ!」
一筋の閃光と共に大地が叫ぶ!
勇者渾身の力を込めた一撃に全身全霊を注いだ魔王の一発が共鳴!
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