【完結】ひとつのアイスを二人でかじりながら、駅前を歩きたい

ノエル

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8 初詣でに行ったら面倒な奴らと遭遇した

「あけましておめでとう。お兄ちゃん、今年もよろしくね」

「おけましておめでとう。今年もよろしく」





正月2日。 妹のみおと、二人だけの正月だ。

今年はNYの飛行場が大雪で閉鎖されたため、両親が日本に帰って来られなかった。別段、顔が見たいわけでもないし、それはそれでいいんだが。問題は……。



「お節、全然減らないね」



そうだな。なんせ、6人分だからな。



事前に母親が注文していたお節料理6人分が、テーブルに鎮座している。「食べ盛りの子供が2人いるから多めにとったよ」とラインがきたが、まさかそれを2人で食べる羽目になろうとは。



「もう、お節に飽きちゃった。お兄ちゃん、今から初詣にいかない? お昼は外食にしようよお」

「お前、受験勉強はいいのか?」

「合格祈願だよーん」



澪は黒豆を箸でつまんで「甘さが足りない」と文句を言いだした。信じられないことに、冷蔵庫からメープルシロップを取ってきた。



え? 嘘だろ? と思いつつ見ていたら、上からかけて「んっ。これでよし」と頷いている。すごいな。健斗と気が合いそう。



「神頼みは大切だな。じゃあ、散歩がてら行くか」

「うん! 行こう」



家から歩いて行ける距離に、割と大きな八幡神社がある。澪と二人でぶらぶら歩いて行った。







「うわあ。すごい人出だね。お願い事できるまで時間がかかりそう」



澪の言う通り、賽銭箱の前にはすごい行列が出来ていた。少しづつ前に進んではいるが時間がかかりそうだ。



散々待った後、参拝を終えておみくじを引いていると、「エイ」という声が聞こえた。俺を呼んだという感じではなく、俺を見つけて、思わず口を突いた、という声だった。





振り向くと、中学の時、仲が良かった友人(元)たちが集まっている。奴ら4人は顔を見合わせて頷き合った。あっ、なんか嫌な予感。



「エイ、久しぶりだな」

「お前、高校でもボッチだってな」

「俺たちが遊んでやらなかったせい? それでボッチ癖がついたのか? ごめんなあ」

「あーあ、いくら人気モデルになっても、卒業までボッチ3年間は、きっついなあ」

「惨めだよなあ」



惨め、惨め、と口々に言いながら、元友人たちはニヤニヤ笑いを浮かべている。この中に、同じ高校の奴が1人いるから、あいつが情報源なんだろうな。モデルになるまでは、それなりに仲が良かったのに、こんな手の平返しをするなんて嫌な奴らだ。



どうしようか。 無視る? でも、それだと負け犬っぽいよね。言い返すのは多勢に無勢だし逆効果な気がする。めんどくさい。ほんと、めんどくさい。



迷っていたら、隣で澪が何か言おうと、鼻息が荒くなっているのに気が付いた。止めなければ。こいつは、気が強いから何を言い出すかわからない。下手をすると、手が出るかもしれない。正月からもめ事なんて、真っ平だ。



「嫉妬、ダッセー」



後ろから聞きなれた声がした。

振り向くと、健斗が、「エイー! 会いたかった! ラインもらって飛んできたぜ」と抱き着いてきた。



え? なにこれ。健斗って、困ったときに助けにきてくれる、スーパーマンなの? 

そういえば、スーパーマンの本名もケントだったぞ。だけど、俺は、ラインなど送っていない。



澪が隣で、「ほわあ。イケメーン。 イケメン×イケメンだー!」と叫んだのが聞こえた。



健斗は俺の肩に手を回したまま、俺の元友人たちに、



「エイが高校でボッチなのは、スクールカーストのトップだからだ。そこんとこ間違えるなよ。エイはお前たちが気安く話しかけていい存在ではない、去れ」



神社の出口に向けて、顎をくいっとさせた。こういう偉そうな態度、健斗はすごく様になる。

王者の風格が滲み出てて、誰も逆らえない雰囲気だ。こういうの、生まれながらのものなんだろうな。



後ろから同じクラスの奴らが駆け寄って来るのが見えた。



「ごめんな、立花。お前が彼女と初詣に来てるって、健斗にラインしたばかりにこうなった」

「鳥居のとこで見かけたんだよ。『おっ! 立花、初詣デートか? 』 って」

「こいつ、俺たちの誘いは断ったくせに、立花の名を出した途端、飛んで来やがった」

「おう、ちゃりで全速力よ」



気が付くと、元友人たちはいなくなっていた。



「初めまして、妹ちゃん。山下健斗です」

「あっ、ミオです。顔似てないのに、妹とよくわかりましたね」



え? 妹さん? と言う声がする。そうか、勘違いされたか。今度から、妹と外出は控えた方がいいな、これ。



「お兄さんが俺を裏切るわけがないからです」



うわー、健斗が変なことを言い出した。



「え? 裏切る?」

「ちょっと、待った! 澪もう帰るぞ。受験勉強しなきゃな?」

「え? お兄ちゃん、ランチは? 外食するって言ったじゃん」

「エイたち、ランチするの? 俺も一緒に行く!」



すかさず健斗が言って、俺の腕をとった。



「ミオー!」

「あっ! みんなー! おめでとうー!」



ぞろぞろ中学生女子がやってきた。かわいい子ばっかじゃんと、誰かが呟いた。確かに澪の友達は皆かわいい。


またややこしいことになってきた。もう、帰りたい。


「なに、このイケメンの集い!澪のお兄ちゃんの友達、イケメン揃いじゃーん!」

「美形は、友達も美形ってことでしょ。珍しいことじゃない」



1人クールな子がいるぞ。



「なに? 澪ちゃんの友達?」

「うん。仲良しのクラスメートだよ」

「初めまして、クラスメートでーす! 今日は澪ちゃんも誘ったけど、お兄ちゃんを一人にできないって、断られたの」



「お兄ちゃんのためなら、しょうがないよねー」「ねー」って、みんなで言い合っている。

俺は妹にまで迷惑をかけていたのか。情けない。



「じゃあ、これからみんなでランチに行くか? 立花、いいよな?」

「行く行く! 澪のお兄ちゃん、行こうよ」

「私たちも行きたーい!」

「俺、ちゃりを取ってくる。俺を置いていくなよ」

「りょーかい!」



ものすごく盛り上がっている。みんな元気だな。なんか疲れてきた。




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