剣狂いの転生~バケモノ相手に剣一本で挑む~

文月紲

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10.兄は変態だが天才である②

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 男の魔術師が姿を隠す魔術を解除する。

「あっ、クレイズ! どうどうどう!? どうだったかな僕の魔術は!」

 先ほどまでのキリっとした顔は何処に。いつもの変態に戻った兄は、俺に何か期待した顔を向けてきた。鬱陶しい、ウザい、面倒くさい。三重の感情が呆れと共に溜息として出る。

「よし、次行くか」

「うわぁぁん! クレイズに無視されたぁ……!」

「ほらクレイズ様。駄々こねてないで早く行きますよ」

 肩を落として泣きべそをかく兄にアルマが先を促す。あ、もちろん兄の泣きべそは演技じゃない。冗談でもない。マジの奴だ。常日頃から思っているのだが、情緒はどうなっているのだろうか。

 風系統魔術のウィグマルガ風の踊り子は七歳の子供が使える魔術ではない。それは才能がある人間が多い貴族でも同じだ。故に、兄がその魔術を使えるのはとんでもなく凄いことで、いわゆる天才なのだが……変態のせいで台無しである。

 天才だが変態で、変態だが天才なのだ。俺には分からない世界……いや、よく考えれば俺も剣に関しては変態なのか? そう考えると兄の気持ちもわかる……かどうかは不明だが、少しは理解できるのかもしれない。
 

 再びしばらく歩く。まだまだ体力的には問題なく、闘気もまだ一割しか減っていない。余裕持って、あと三回は戦える。

「……魔物がいます。オーク……三体です」

 前の二回と同じように女性の魔術師が報告した。ゴブリン、ラーウルの次はオークか。油断はいけないが、十分に勝てる相手である。

 因みにオークは八級だ。ゴブリンより高く、ラーウルと同じだが過剰に臆す必要はない。

 ぶっちゃけた話だが、危険度というのは人による。遠距離が得意な魔術師ならば、オーク何てただの大きい的だし、逆に素早いラーウルは苦手だ。

 剣士は逆に攻撃力が乏しいラーウルが相手だと楽だし、一撃が重くて破壊力があるオークには気を付けなければいけない。

 重要なのは危険度だけを見るのではなく、自分の攻撃手段と相手の攻撃手段の両方をしっかりと把握することだった。

「兄様。俺とフリルでやっていいですか?」

「クレイズはもちろんだよ! だけどフリル……グギギギ」

 兄は歯軋りをしながらフリルを睨みつける。当のフリルは涼しい顔で、何なら勝ち誇ったような顔をしていた。二人とも面倒くさいな。

「クレイズ様にご指名頂いたのが私なのでー。申し訳ございませんローウェン様ー」

「くそう……侍女の癖にぃっ!」

 兄は分かりやすく悔しそうに顔を歪ませて地団駄を踏む。魔物が先にいるのにこの緊張感のなさ。愚かなのか余裕の表れなのか……。

 アルマも魔術師の二人も呆れを通り越して無表情だ。一応、レイノスティア侯爵家の長男で次期当主なのだが……この調子で大丈夫なのか、俺はいささかか心配だった。

「早く行くぞ」

「はいー」

 ゴブリンの時は奇襲から入ったが、今回はオークに気づかれた状態で戦う。今回の目的は魔物を殺すことではなく、あくまでも鍛錬の一環だ。だから、姿を晒した状況で戦おうと決めていた。

 雑草を踏みつけ、木の根によって隆起した地面を通り、木々の先に行く。

 前世で馴染みのあるオークの体臭が漂ってきた。鼻がひん曲がるほどではないが、十分しっかりと不快な臭いだ。

「フリル。やれるか?」

「もちろんですー。あの豚共は駆除しなきゃですよー」

「口が悪いな」

「あらうっかりー。あまりの醜さに下品な言葉が出てしまいましたー」

 オークは見た目や臭い、それから習性によって俺ら人間……主に女性から嫌われている。嫌われているのは奴らの習性が理由だろう。

 未だに解明されていないのだが、オークは人間の女性を好む。もちろん種族が違うので生殖は出来ない。しかし、なぜか人間の女性に異常な興味と執着を見せるのだ。

 嫌いな魔物の順位をつけるとしたら、上位三位以内には必ず入ると断言できる。そのくらい、オークは嫌われているのだ。

「さてー。どのように殺しましょうかー」

「……まあいいか」

 フリルも例外ではない。普段はフワフワとしている彼女だが、オークが相手となれば別だった。

 心なしか口調に殺気が込められ、闘気も刺々しくなっている。

 少し胃が痛いが……それ以上に剣を振ってオークを殺すのが楽しみだった
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