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3.朝食を食べながら
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「髪を切れ」
「んむ…?」
ルディがアメリアの面倒を見ると決まって直ぐの事。朝食を頼んで食べていたアメリアは、ルディの言葉に口を動かしながら首を傾げた。
「いくらここが迷宮都市でお前の顔を知ってる奴がいないとはいえ、いずれ追手がここまで来るぞ」
「む…一応ここは王都からかなり離れていると思うが…」
口の中のものを飲み込んだアメリアはルディの言葉に異議を唱える。
「馬鹿か。このアルデンティア王国内だったら全ての場所に追っ手の目があると思え」
「そんな私に労力を割くものなのか…?」
「当たり前だ。仮にお前が他国に攫われたらこの国は不利になるんだぞ」
「あ…確かに…」
いくら第二王女という王族の中では微妙な地位とはいえ王族には変わりない。少々この王女様は自分の外的な価値に気づいてないなとルディは思った。
「だからお前が第二王女アメリアじゃなくて、ただのアホな少女だということにしなきゃならん」
「なっ…アホってなんだ!」
「何も持たずに城から抜け出して腹減って倒れるってアホ以外の何物でもないだろ」
「ぐっ……」
図星を突かれてアメリアは肩を落とす。そんな彼女にルディは呆れてはいるが、嫌な感情を持ってはいなかった。
「だからその無駄に長い髪を切れ」
「うむ、わかった。あ、髪色は変えなくていいのか?」
髪を切るだけでなく、髪色を変えた方がより見つかる可能性が減るとアメリアは考えた。
だが、その提案にルディは首を振る。
「いや、髪色は良い。確かに変えた方がより見つからんと思うが…髪が痛むんだよ」
「ほう、そうなのか?」
「そうだ。お前も髪をボロボロにしたくないだろ?」
「まあ…そうだな」
前世なら一回や二回の髪染めはあまり負担にならない。しかし、この世界の髪染めは刺激の強い染料を使うので一回でも髪が痛むのだ。
「ってことで食い終わったら宿の裏手で切るぞ」
「了解した。ん?誰が切るのだ?」
パンをちぎって口に入れようとした手を止め、アメリアはふと疑問を呟いた。この街の床屋かとも思ったが、それならば店に行くはずだ。
「俺だ」
「え…お主が切るのか⁉」
「なんだよ」
あまりの衝撃に持っていたパンを落としそうになるアメリア。何故なら、この世界での髪を切る人は女性が殆どだからだ。
それに、顔は整っているが厳つい印象のあるルディが人の髪を切る姿を想像できなかった。ハサミで髪を切るよりも、ナイフを持って魔物の解体をする方が似合っている。
「お前、俺の腕を舐めるなよ?これでもメイに好評なんだぞ」
「む…それなら安心、か…」
メイだけでなく偶に冒険者の髪も切っているが、正直野郎の髪を切るのは楽しくないのだ。冒険者共は髪の手入れなんぞ一切していないし普通に臭い。
だから美意識が高い女性を切る方が楽しかった。
「にしてもここの食事は美味しいな」
アメリアが食べているのはふっくらとしたロールパン二つに具だくさんの野菜スープ、カリカリに焼いた分厚いベーコンだ。
「王城でこれよりいいもん食ってんじゃねぇのか?」
ルディの想像では、王族は毎食高級な食材が使われた豪華な料理を食べているものだった。
「確かに食材はこれより良いものだと思うが…毎回毒見がされるから、私が食べる頃には冷めきってしまっていてな」
「あー、なるほどな」
何か毒物を入れられていないか確認する毒見は大切だ。しかし、それによって本体温かい料理であるはずが冷めてしまう。
「そういえば昨日はどこに泊まったんだ?」
粗方食べ終えたルディは茶を飲みながらアメリアに尋ねた。先程のメイが言っていたことからすると、少なくともこの宿には泊まっていないことは分かる。
「んっ……冒険者ギルドに隣接されている宿だ。その時、お主の居場所も聞いてな」
「誰に聞いたんだ?」
「受付にいた筋肉ゴリラみたいな人だったな」
「ああ…」
受付にいる筋肉ゴリラという言葉を聞いてルディは合点した。
「その筋肉ゴリラ、ギルドマスターだぞ」
「へぁっ⁉」
まさかの事実にアメリアは変な声を出す。
「な、なんでギルドマスターなのに受付にいるんだ?」
「調子乗った冒険者とか受付嬢にちょっかいだす冒険者をシメるためだ」
「なるほど…確かにあの外見で睨まれたら震えそうだ…」
昔はギルドマスター専用の部屋にいたのだが、迷宮都市ということもあいまってガラの悪い冒険者が増えたことで今の状態になったのだ。
今では冒険者の質も良くなったので、仮に屑野郎がいたとしても冒険者たちにボコボコにされるので問題はなかった。
「んじゃ食い終わったことだし髪切るぞ」
「うむ。よろしく頼む」
二人はメイに盆を返した後、宿の裏手に回った。
「んむ…?」
ルディがアメリアの面倒を見ると決まって直ぐの事。朝食を頼んで食べていたアメリアは、ルディの言葉に口を動かしながら首を傾げた。
「いくらここが迷宮都市でお前の顔を知ってる奴がいないとはいえ、いずれ追手がここまで来るぞ」
「む…一応ここは王都からかなり離れていると思うが…」
口の中のものを飲み込んだアメリアはルディの言葉に異議を唱える。
「馬鹿か。このアルデンティア王国内だったら全ての場所に追っ手の目があると思え」
「そんな私に労力を割くものなのか…?」
「当たり前だ。仮にお前が他国に攫われたらこの国は不利になるんだぞ」
「あ…確かに…」
いくら第二王女という王族の中では微妙な地位とはいえ王族には変わりない。少々この王女様は自分の外的な価値に気づいてないなとルディは思った。
「だからお前が第二王女アメリアじゃなくて、ただのアホな少女だということにしなきゃならん」
「なっ…アホってなんだ!」
「何も持たずに城から抜け出して腹減って倒れるってアホ以外の何物でもないだろ」
「ぐっ……」
図星を突かれてアメリアは肩を落とす。そんな彼女にルディは呆れてはいるが、嫌な感情を持ってはいなかった。
「だからその無駄に長い髪を切れ」
「うむ、わかった。あ、髪色は変えなくていいのか?」
髪を切るだけでなく、髪色を変えた方がより見つかる可能性が減るとアメリアは考えた。
だが、その提案にルディは首を振る。
「いや、髪色は良い。確かに変えた方がより見つからんと思うが…髪が痛むんだよ」
「ほう、そうなのか?」
「そうだ。お前も髪をボロボロにしたくないだろ?」
「まあ…そうだな」
前世なら一回や二回の髪染めはあまり負担にならない。しかし、この世界の髪染めは刺激の強い染料を使うので一回でも髪が痛むのだ。
「ってことで食い終わったら宿の裏手で切るぞ」
「了解した。ん?誰が切るのだ?」
パンをちぎって口に入れようとした手を止め、アメリアはふと疑問を呟いた。この街の床屋かとも思ったが、それならば店に行くはずだ。
「俺だ」
「え…お主が切るのか⁉」
「なんだよ」
あまりの衝撃に持っていたパンを落としそうになるアメリア。何故なら、この世界での髪を切る人は女性が殆どだからだ。
それに、顔は整っているが厳つい印象のあるルディが人の髪を切る姿を想像できなかった。ハサミで髪を切るよりも、ナイフを持って魔物の解体をする方が似合っている。
「お前、俺の腕を舐めるなよ?これでもメイに好評なんだぞ」
「む…それなら安心、か…」
メイだけでなく偶に冒険者の髪も切っているが、正直野郎の髪を切るのは楽しくないのだ。冒険者共は髪の手入れなんぞ一切していないし普通に臭い。
だから美意識が高い女性を切る方が楽しかった。
「にしてもここの食事は美味しいな」
アメリアが食べているのはふっくらとしたロールパン二つに具だくさんの野菜スープ、カリカリに焼いた分厚いベーコンだ。
「王城でこれよりいいもん食ってんじゃねぇのか?」
ルディの想像では、王族は毎食高級な食材が使われた豪華な料理を食べているものだった。
「確かに食材はこれより良いものだと思うが…毎回毒見がされるから、私が食べる頃には冷めきってしまっていてな」
「あー、なるほどな」
何か毒物を入れられていないか確認する毒見は大切だ。しかし、それによって本体温かい料理であるはずが冷めてしまう。
「そういえば昨日はどこに泊まったんだ?」
粗方食べ終えたルディは茶を飲みながらアメリアに尋ねた。先程のメイが言っていたことからすると、少なくともこの宿には泊まっていないことは分かる。
「んっ……冒険者ギルドに隣接されている宿だ。その時、お主の居場所も聞いてな」
「誰に聞いたんだ?」
「受付にいた筋肉ゴリラみたいな人だったな」
「ああ…」
受付にいる筋肉ゴリラという言葉を聞いてルディは合点した。
「その筋肉ゴリラ、ギルドマスターだぞ」
「へぁっ⁉」
まさかの事実にアメリアは変な声を出す。
「な、なんでギルドマスターなのに受付にいるんだ?」
「調子乗った冒険者とか受付嬢にちょっかいだす冒険者をシメるためだ」
「なるほど…確かにあの外見で睨まれたら震えそうだ…」
昔はギルドマスター専用の部屋にいたのだが、迷宮都市ということもあいまってガラの悪い冒険者が増えたことで今の状態になったのだ。
今では冒険者の質も良くなったので、仮に屑野郎がいたとしても冒険者たちにボコボコにされるので問題はなかった。
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