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序章「昔話」
第2話「救世主」
しおりを挟む「母ちゃんに言われてんだ。男とか女とか関係無しにたくさんの人と仲良くしろってな」
「そうなんだ…」
太陽は少しオレンジ色になりかけていた。下校路を家族以外の誰かと歩くのは生まれて初めてだ。陽真君は私の数歩先を歩く。私は彼のランドセルを背負った後ろ姿を眺めながら、彼の話を聞く。
「母ちゃんったら、たまにとんでもねぇこと言うんだぜ。今朝なんか今日中にクラスメイト全員に話しかけて仲良くなってこいって…」
「うん…」
しかし、さっきから話を聞いているだけで、まともな会話ができていない。友達と雑談をしたことがない私は、「そうなんだ」と「うん」以外の言葉を発することができなかった。それでも陽真君は私の返事など気にもとめずに話を続ける。
「まっ、なんとか全員と話すことはできたんだけどな」
陽真君は頭の後ろに手を組み、オレンジがかる空を見上げる。確かに、優しさと面白さをうまい具合に調合したような彼の性格であれば、たった一日でクラスメイト全員と親しくなることは容易いように思える。内気な私にもぐいぐい迫ってきて、一緒に下校路を歩かせるまでに心を積め寄ってきた。
「最後の一人が凛奈、お前だぜ」
「え?」
陽真君は首だけ後ろを向き、無邪気に笑った。素晴らしい作品を作ったことを親に誉めてもらいたがっている子どものような笑顔、素敵だ。ちょうど前から夕日が照らしてきて陽真君の明るさがさらに印象付けられる。
「ずっと本ばっか読んでて話しかけづらかったぜ。でも、なんとか凛奈とも仲良くなりたいって思ってたからよ」
そうだったんだ。それは申し訳ないことをした。休み時間は所々いじめっ子にページを破られたり、悪口や落書きをされた児童文庫を読むのに夢中になっていた。陽真君はずっと話しかけようとしてくれていたのに。今度からちゃんと周りも気にしよう。他人が話しかけにくい雰囲気をわざとつくるのはやめよう。
「ごめんね…」
「別にいいよ」
私と陽真君の間に沈黙が停滞する。彼の方からも何か言うこともなくなり、気まずい空気が流れる。私は下を向く。だが、彼はすぐに沈黙を破ってくれた。
「なぁ、この後時間あるか?あるならこの近くの公園にでも寄って少し遊んでこうぜ!」
「え?」
私は陽真君を見返した。一緒に遊ぶ?まぁ、今は午後4時21分。遊ぶ時間はあるにはある。だが、誰かと遊ぶのも生まれて初めてだ。友達と一緒に遊ぶ私。いくら想像しても今一つ実感が湧かない。
「うん。いいよ…」
「よっしゃ!じゃあ、行こうぜ!」
ガッツポーズをした陽真君は、私の腕を掴んで走り始めた。引っ張られた私は戸惑ったが、嫌な気分はしなかった。陽真君と一緒に住宅街を駆け回るのは気持ちよかった。
私と陽真君は公園に着いた。そこは、この間怖い男の人達に誘拐されそうになった公園だった。あの時はどこからともなく何かが襲ってきそうな怖い闇の世界だったが、まだ日に照らされている今の時間帯に見れば、ただのありふれた日常風景だった。幸いにもあの恐怖がフラッシュバックすることはなかった。
「ここ、最近見つけてよ。結構気に入ってんだ♪」
ベンチにランドセルを置き、陽真君は駆け出した。その勢いのままジャングルジムに飛びかかり、すいすいと登って行った。素早い動きに圧倒され、私は驚いた表情のまま陽真君を見つめる。陽真君は10秒足らずで4メートルもの高さのジャングルジムの頂上に登りつめた。ぱちぱちぱち。私は拍手する。
「陽真君すごい…」
「へっへ~♪お~、いい眺め!」
陽真君は額に手を当てて公園中をぐるりと見渡す。相変わらず表情がいきいきとしている。楽しそうだ。あぁいう風に物事を純粋に楽しめるなんてすごい。私にはとうてい…
「お~い、凛奈も登ってこいよ~」
「え?」
陽真君は頂上から呼び掛ける。私が?無理だよ。ジャングルジムなんて登ったことないもん。どうやって登るかもわかんないし…。
「大丈夫、簡単だって。ほら来いよ」
陽真君は隣にある棒をぽんぽんと叩く。よし!自分のランドセルを陽真君のランドセルの横に置き、私は勇気を出してジャングルジムへ近づく。目の前の棒を握る。
「足を持ち上げて、高いとこに乗せて。ハシゴみたいに登るんだ」
陽真君からアドバイスをもらい、私は大きく足を上げて棒につく。腕を伸ばして上の棒を掴み、自分の体重を思い切り持ち上げて登る。
「そうだ。その調子~」
同じ動きをしばらく繰り返す。すごい。私、登れてる。陽真君がもう目の前に近づいてくる。
「よし。あと少しだ」
ヒュー
急に風が吹き、私の髪とワンピースを揺らす。それは高さを感じさせ、私を恐怖させた。
「あぁ…」
高い…。怖い…。私は目をつぶってしまう。目の前の棒に頭をつける。そのまま動けなくなってしまう。落ちたら大怪我をしてしまう。恐怖は一瞬にして私の体を氷なりに固めてしまった。誰か助けて…。
「凛奈!掴まれ!」
陽真君の声だ。私は目を開ける。目の前に陽真君が私に向けて手を伸ばす。私は藁にすがる思いで陽真君の手を取る。陽真君は私の手を掴むと、恐怖を感じさせないようにゆっくりと引っ張った。私も引っ張っられながら必死に登る。
そしてようやく私も頂上に着いた。
「ふぅ…大丈夫か?」
「うん。ありがとう…」
「それじゃあ、見てみろよ」
「うわぁ~」
素晴らしい光景だった。公園全体だけでなく、周りの住宅も歩道も見渡せた。風を感じながら眺める別視点の日常。ありふれた人々の動きや植物のざわめきがいつもとは違うように感じた。今の私と陽真君は遠くまで見通せる。たかが4メートル上からの景色なわけだから、そんなに遠くが見通せるわけではない。だが当時の自分からすれば、そのような高い場所から景色を見ることは初めてだった。世界のすべてを見渡している気分だった。私と陽真君は隣り合って楽しみを共有した。風が私達二人の心を揺らした。
「いい景色…」
「だろ♪」
陽真君は胸を張る。自慢の宝物を見せつけたかのように。私もつい口元が緩む。
「すごくいい!」
「んじゃ、今度は鬼ごっこだ!このジャングルジムの上でだけ!凛奈が鬼だ!よ~い、スタ~ト~!」
「え?」
陽真君は私からだんだん離れていった。あの軽やかな素早い動きで。ジャングルジムの棒の上をすたすたと動き回る。私は慌てて追いかける。
「あ、待ってよ~!」
「ほらほら、捕まえてみな~」
「も~!」
私はもう恐怖など感じていなかった。陽真君を追いかけながら棒をつたう動きがあっという間に体に染み付いていた。時間が経つのも、自分がワンピースを着ていることも忘れ、私は陽真君と思い切り鬼ごっこを楽しんだ。
「こっちだよ~」
「待て~!」
私が追いかければ陽真君が逃げる。それの繰り返し。永遠だったとも感じれるあの時間。私はすごく幸せだった。陽真君と一緒に遊んでいる時だけはいじめのことも、家族についている嘘も、日々の辛い記憶をすべて忘れることができた。誰かと一緒に遊ぶことがこんなに楽しいなんて…。陽真君に大いに感謝した。こんな素晴らしい気持ちも初めてだ。次から次へと初めてが舞い降りてきて、なんだか楽しい。
「お前、結構面白いところあんじゃん」
「え?」
遊び終えて公園を出発し、下校路を歩く途中で陽真君が呟いた。
「最初は話しかけづらい大人しいやつだと思ってた。でもよく笑うし、ちゃんと喋れるし、全然違った。お前面白いやつじゃん」
「…」
誰かに自分の性格を肯定的に捉えられたのも初めてだ。一体陽真君は私にどれだけの「初めて」をもたらすつもりなのか。
「お前と遊んでて俺も楽しかったぜ。なぁ、また明日も遊ばね?放課後にさ!」
陽真君は私に顔を近づける。もう一度遊びに誘われた。これってもしかして…私、彼と友達になれたってことなのかな?
「うん!遊ぼう!」
「よっしゃ!決まり~♪」
陽真君はガッツポーズをする。やはり感情の動きが勇ましい。
「あ、私の家ここ…」
「お、ここか。やっぱ近ぇじゃん」
いつの間にか自分の家に着いてしまっていた。楽しい時間が早く経つように感じるのも初めてだ。少し名残惜しく感じるのも。
「じゃあな!凛奈。また明日!」
「じゃあね、陽真君。ばいば~い」
私は夕焼け空に向かって歩いていく陽真君に向けて大きく手を振った。見えなくなるまで何度も「ばいばい」と叫んだ。陽真君は振り向かずに手を振った。
その後ろ姿は、すごくカッコよかった。あんなカッコいい子と、私は今日友達になれたのだ。
家に入ってパパとママに陽真君と遊んだことを話した。パパもママも友達と仲良くやっている私を見て安心したようだった。初めて家族と友達の話題で話をしたと思う。寝る瞬間まで口元が緩みっぱなしだった。翌日の朝の目覚めも心地よかった。昨日のわくわくした気分が朝まで続いていた。
タタタタタ
ランドセルを背負って玄関へ向かう。
ガチャッ
ドアを開けると、門の前に陽真君がいた。
「おはよう、凛奈!一緒に行こうぜ~」
「陽真君…おはよう」
そういえば彼とは家が近いのだった。もしかして一緒に登校するために、朝から待っててくれていたのか。
「んじゃ、競争だ~」
陽真君は学校のある方角を指差し、走り去って行った。私は慌てて玄関のドアを閉める。
「あ、陽真君待って!あ、ママ、行ってきます」
居間から出てきたママにドアの隙間から挨拶し、陽真君を追いかける。
「さっきの声...お友達?まあ、お友達と一緒に登校かしら♪」
ママも朝からご機嫌だったという。
学校でも陽真君はぐいぐいと迫ってきた。授業と授業の間の休み時間の度に私の席にやって来た。私は彼が来た時はなるべく読書を中断して彼の話を聞いた。周りのクラスメイトは困惑しているようだった。昨日はクラスメイトのほとんどと遊んでいた転校生が、今日はいつも一人でいる女の子に執着している。一番の驚きの目は、いつの間にか陽真君と仲良くなっている私に向けられた。今まで一人も友達と遊んだ姿を見られたことがないため、当然のことだが。
「凛奈、放課後俺ん家来いよ。俺の母ちゃんに紹介したいんだ」
「いいの?」
二日目にして早くも自宅に上がらせてもらうまでに私達の距離は発展した。クラスメイトのみんなはさらに驚愕した。
「なんだよアイツ…」
陽真君はどうか知らないが、私は見逃していなかった。教室の端にいる彼らの姿を。そう、例のいじめっ子達だ。私は嫌な予感がした。
「じゃあ俺、先生に日誌届けてくる。校門の前で待っててくれ」
「わ、私も手伝う…」
「別にいいよ、渡すだけだし。そんじゃあ後でな~」
今日は陽真君が日直。書き終えた日誌を手に抱えて教室を出ていく。私はなるべく一人になりたくなかった。一人になるのが怖いのだ。なぜなら…
ガラッ
「おい、凛奈」
来た、いじめっ子達だ。私は身構える。体の怯えが始まる。
「お前さ、なんか調子乗ってねぇか?」
「お前みてぇなやつが軽々しく陽真と仲良くしてんじゃねぇよ」
「お前はお前らしく一人でいりゃいいんだよ」
次々と罵倒を浴びせてくるいじめっ子達。やはり陽真君が私の元から離れたタイミングを見計らって仕掛けてきた。
「わ、私は…」
「あぁ!?なんか文句あんのか!?」
怒鳴り声に驚き、私の体は縮こまる。すぐに涙がにじむ。
「二度と陽真と馴れ馴れしくすんじゃねぇ、クズが」
「そうそう。クズのくせに陽真を独り占めとかすんなよな」
「誰かと仲良くなんかしてねぇで、さっさと消えろよ」
いじめっ子達は次第にヒートアップし、罵倒を浴びせながら鉛筆や消しゴム、定規などを投げつけてきた。痛い。体に当たる度に涙の線が落ちていく。これは罰か。 やはり自分が誰かと仲良くするなど許されることではないのか。自分は自分で生き方を選択することはできないのか。彼らの世界のゴミ箱以外の生き方を…。
「この弱虫が…」
彼らはあざ笑いながら呟く。私はその場で倒れ込む。物を投げつける彼らの手が止まった。いじめっ子達は私をけなすのに満足したようだ。私は陽真君を心の中で求めた。
“助けて…陽真君…”
「…だっせー」
廊下から声がした。空いている教室のドアの後ろから、陽真君が出てきた。
「本当にだせーよな…」
陽真君は何かに呆れた様子だった。いじめっ子達はその発言に乗っかる。
「だよな。クズのくせに誰かと仲良くなっていい気になってるし」
「やられてばっかでやり返しもしねぇし」
「なよなよしてて気持ち悪ぃし」
さらに追い討ちをかけるいじめっ子達。言葉の一つ一つが重くのし掛かかり、私の心を押し潰す。陽真君は近づく。さっきまで私の方を見ながら話していたが、今度は視線をいじめっ子達の方に向ける
「バカか?全然ちげぇよ」
陽真はいじめっ子の男子達を睨みつけて言う。
「お前らだよ、だせーのは」
陽真君は堂々と言い放つ。いじめっ子達は困惑する。先程まで味方だと思っていた者が突如敵に回ったのだから。
「弱い者いじめするとか、だせーと思わねぇのかよ」
陽真君の口調は不良な息子を叱りつける父親のようだった。
「で、でもこいつ泣き虫だし、全然喋らなくて愛想悪いし…」
「そうそう…」
「そんなやつが誰かと仲良くするなんて…」
いじめっ子達は抵抗する。だが、歯向かう言葉に力は込もっていなかった。圧倒的に陽真君の心の強さに押されている。決定的な証拠を見せつけられた犯罪者のようだ。
「愛想悪い?そりゃお前ら、凛奈と真剣に向き合ったことがねぇからだろ。こいつはちゃんと笑うし、ちゃんと喋れる。普通のやつだ。泣き虫で弱虫?だから何だよ?そんなんで誰かと仲良くしたらダメなんて、そんなことあるわけねぇだろが!何だよそのデタラメな考え方、ふざけんじゃねぇ!」
陽真君の叫びが教室中に響き渡り、机や窓ガラスを揺らす。いつの間にか頬の涙の流れが止まる。陽真君の激しくも優しい言葉が、私の潰れそうな心を包み込む。
「人を嫌うなとは言わねぇ。誰だって嫌いなやつくらいいるからな。だけどな、嫌うなら誰もが納得するようなちゃんとした理由を持って嫌えよ!デタラメな理由で誰かを嫌ったりするなよ!」
いじめっ子達はその場に倒れ、陽真君の言葉に聞き入っている。陽真君は険しい表情を緩やかにして続ける。
「中途半端な理由で嫌うくらいなら、誠意を持って仲良くしようぜ」
いじめっ子達はお互いを見合い、静かに立った。そして、私に向かって歩いてきた。
「ちっ、悪かったな。ひでぇことして…」
「今までごめん…」
「もう今度からはしねぇよ」
頭を下げる彼ら。私は涙を拭いながら答える。
「うん…」
陽真君が手を差し伸べる。その手を取って私は立ち上がる。絶望の底からようやく這い上がることができた。彼の手助けのお陰で。
私としてはいじめたこと自体は許してもよいが、陽真君がこっそり担任の先生に話しており、先生の間で瞬く間に広まった。いじめの存在を認知していながらも、手を差し伸べなかった陽真君以外のクラスメイトのことも問題となり、一層のいじめ防止対策が推進されていった。私の件はいじめっ子達の親が一緒になって謝り、私もそれで許して正式に解決ということになった。陽真君や学校の先生には感謝しきれないが、同時に申し訳なさを感じた。ずいぶんと迷惑をかけてしまったから。
「俺、ああいうの許せないタイプなんだよな~」
「…」
同じ帰り道を、私は陽真君の後ろ着いていきながら歩く。パパやママのところにもいじめの話が伝わっていることだろう。嘘をついていたわけだから、余計に不安がっているに違いない。私は結局、関わった者全員に迷惑をかけてしまった。
「辛かったろ?もう大丈夫だぞ」
「うん…ありがとう…」
まだ感謝よりも申し訳なさが勝っている。私は勇気を出してそのことを伝えようと思った。
「ねぇ!陽真君!」
「ん?」
陽真君は進める足を止め、私の方を振り向く。
「ごめんね…」
「なんで謝るんだ?凛奈…」
「だって…これは私の問題だったのに陽真君に頼って解決してもらって…」
「それが何か悪いのか?」
「悪いよ…。陽真君や先生に迷惑かけてるし、私自身は何もしてないもん。これは私が解決しなきゃいけないことだったのに…」
気がつくと、私はまた涙を流していた。今度は罪悪感と責任感が私の心を押し潰す。ここまで泣き虫様を晒してしまうとは、さすがの陽真君も呆れてしまうかもしれない。
「凛奈…」
しかし、陽真君の反応は違った。私の想像の斜め上を行った。
「一人で何でも抱え込む必要なんてねぇよ。お前にはもういるだろ?友達が。俺でよければお前のことはいくらでも助けてやる。迷惑だとか、そんなこと考えなくていい。迷惑かけて、迷惑をかけられてこその友達だろ?そんなのいくらでも許してやるよ」
「陽真君…」
そう言って、陽真君は私の頭を撫でた。彼の温かい手に、罪悪感と責任感は溶け消えていった。彼の言動には魔法がかかっており、頬を流れる悲しみの涙を嬉し涙に変えた。そうか…彼は…
「ありがとう。陽真君は私のかみさまだね」
「んぁ?なんだそりゃ...」
陽真君は小馬鹿にするように笑った。かみさまは困っている人に救いの手を差し伸べてくれる存在。私にとって、それはまさしく陽真君だった。他の誰もいじめに苦しんでいる私を気にしてくれなかった。助けてくれなかった。たが、陽真君だけが私を見ていてくれた。私と、私の世界を救ってくれた。
「ま、いいや。これからもよろしくな!」
陽真君はまた笑った。とても眩しい笑顔だった。私に取り巻く負の感情を取り除かんとするように明るい。
「よろしく!」
私はようやく心の底から笑えるようになった。彼の笑顔にはまだ程遠いが、いつか私も彼のような素敵な人間になりたいと思った。誰かを助けられるような、そんな強い人間に。
「それじゃあ、俺ん家来いよ!母ちゃんに紹介してやる。俺の親友だってな!」
「うん!」
私達は山影に沈む夕日目掛けて駆け出した。陽真君と一緒なら、どこにだって行ける気がした。
“ありがとう、陽真君。私を助けてくれて”
高鳴る心臓の鼓動の正体を、幼い私は知らなかった。
それから7,8年程してようやく気づいたことだが、その感情は恋と呼ぶらしい。私にとっては初めての恋だ。
私の初恋は、かみさまでした。
応援ありがとうございます!
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