かみさまの忘れ人

KMT

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第二章「フォーディルナイト」

第10話「異世界居酒屋」

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「来て。更衣室はこっちよ」

凛奈達は長い廊下を歩きながら、エリーの後ろを着いていく。今からバーの制服に着替えて仕事を始める。昨晩の料理の代金を無償にしてもらい、このバーに住み込みを許可してもらう代わりに、従業員の一員としてしばらくの間働く。そういう条件になっていた。お店自体は朝の10時から始まるようだ。

「ここよ」

昨日入った豪華なお風呂の二部屋先に更衣室があった。凛奈達はエリーに案内され、更衣室の中へと足を踏み入れる。中は10畳程で、ほどよく広かった。木製のロッカーが壁沿いに立ち並び、中央にもまた木製のベンチが設置されていた。ここでウェイトレスやシェフが制服に着替える。

「はぁ~、広いわね…」

哀香が天井からぶら下がった電球を眺めながら呟く。

「はい、ウェイトレスの制服よ」

いつの間にかエリーが別の部屋から制服を持ってきていた。何も臆することなく手に抱えたそれを、凛奈と哀香に見せる。

「これって…」
「メイド服…?」

エリーの持っているそれは、どこからどう見てもメイド服だった。都市の様々な場所に健在するメイド喫茶なるもので、優美な女性が身にまとってご主人様をもてなすあのメイド服だ。白と黒がうまい具合に配色されたオフショルダーのワンピースに、フリルの付いた白いエプロンドレス、同じく白いフリルの付いたカチューシャ、そのセット一式がエリーの手の上に綺麗に畳まれてある。しかし、なぜバーにメイド服が?

「これ、ここの制服だったんだ…」

思い返せば、昨晩のエリーや他のウェイトレスもこれと同じものを着ていた。恥じらいもなく。エリーの様子を見る限り、ふざけているわけではない。どうやらちゃんとここでの立派な制服らしい。

「まんまメイド服じゃん…」
「メイド服?これはスミルよ」
「スミル?」

エリーの謎の訂正が入る。この世界での正式名称は「スミル」というらしい。形はまんまメイド服だが。

「はい、早速着てみましょう」
「えぇ…」

エリーはさぞ当たり前のようにスミルを差し出すが、凛奈達は着ることに抵抗を感じる。

「あ、着方わからない?大丈夫よ。私が手伝ってあげるから」

“そういうことじゃない!”

着方は正直わからないが、別にそれで抵抗を感じたわけではない。凛奈達は心の中でツッコミをした。メイド服のイメージの問題だ。純粋に恥ずかしい。無駄に肌を露出させた衣装で店内を動き回るということが耐えられない。思春期真っ盛りの乙女にそのような羞恥をさせるとは、これは如何に。しかし…

「着るしかないわよね…」
「うん、働くって約束だし…」

二人はしぶしぶスミルを受け取る。一旦ベンチにセット一式を起き、今着ているネグリジェを脱ごうとする。

「…」

その前に、凛奈達はごく自然に乙女だけの空気に溶け込む蓮太郎へ顔を向ける。

「…」

哀香は蓮太郎を睨み付ける。

「さっさと出てけっ!!!」
「がはっ」

バーン
哀香は蓮太郎を蹴り飛ばし、強引に更衣室のドアを閉めた。蓮太郎は背中に激しい痛みに苦しみながら廊下の床に倒れた。ここの更衣室は男女併用らしい。




コンコン
蓮太郎は更衣室のドアをノックした。

「もう入っていい?」
「いいわよ~」

エリーの返事が聞こえた。蓮太郎はドアを開ける。

ガチャッ

「おぉ…」

スミルを身につけた凛奈と哀香がいた。二人共、少々恥じらいのある様子だ。ちなみにエリーも着ていた。

「結構似合ってるじゃん」
「…ほんと?ありがとう!」

凛奈は笑顔になる。

「…」

蓮太郎は哀香がうつ向いていることに気がつく。

「哀香も似合ってるよ」
「…///」

哀香は普段からこういう女の子らしい服を好んですることがないため、凛奈よりも慣れなくて恥じらいのある様子だ。哀香は何も言葉が続かない。

「おーい、蓮太郎君。君の制服だよ」

廊下からユタが顔を出し、蓮太郎のために用意したコックコートを手渡した。

「君が料理ができるみたいでよかった。特にキッチンに人が足りてなくてね…」
「そうですか…ならぜひとも協力させてください」

どうやら昨晩のうちに蓮太郎の仕事内容は決まったようだった。料理が得意なことも承知済みらしい。

「あぁ、頼むよ!」

ユタは笑いながら蓮太郎の肩をパンパンと叩く。男らしい馴れ合いだ。凛奈は哀香に小声でこっそりと尋ねる。

「ねぇ、蓮君って料理得意なの?」
「え?あぁ…まぁね。私もあいつから教わったし」
「そうなんだ。知らなかった…」

凛奈は納得した。いつぞや哀香に、陽真のためのスポーツマンの体に健康的な料理のレシピを相談したことがあったが。あれは元々蓮太郎が哀香に伝授したようなものだったのだ。自分とどこか少し似ていて頼りないイメージだった蓮太郎。しかし、彼にも他人に誇れる才能があり、それを堂々と発揮できる場所がある。今は頼もしく思えた。よく一緒に行動していたが、知ることはなかった友人の意外な一面。まるで学校の修学旅行で感じるような驚きだった。

「…」

それと同時に、他人に負けないような自分だけの特別な才能がないことに、ひどく劣等感を感じる凛奈だった。

「さぁ、店の準備をしようか。今日も忙しくなるぞ~」

ユタは自分のロッカーから、勢いよくコックコートを引っ張り出した。凛奈達は開店準備に取りかかった。



   * * * * * * *



「エビピラフ3つ」
「チキンカレー頼む」
「私ナポリタン1つね」
「ごちそうさん。会計頼むよ」
「おーい、そこの姉ちゃん。水持ってきてくんね?」

お店が開いた。私は手伝いを約束したことを後悔してしまうような忙しさに翻弄される。私と哀香ちゃん、エリーちゃん、他のウェイトレスさんの仕事は主に接客。お客さんから注文を聞き、料理を運ぶことだ。

「かしこまりました!」

二分に一回は必ずその返事をした。一目で見るのも嫌になる程のお客さんの数。わずか十分でテーブルは満席となった。そして、濁流のような勢いで人の注文がやってくる。もはやわざわざ席まで行って聞きに行くようなことはしなかった。注文を聞いたり、料理を運んだり、あっちこっちぐるぐる。もはや少々肌を露出させたスミルの恥ずかしさを感じる余裕すらなかった。

「エビピラフ3つ、チキンカレー1つ、ナポリタン1つお願いします!」

注文を確認したら、キッチンで働いている人に向けてそれを伝達する。「了解」と短く返事して、シェフのみんなは食材をまな板の上に転がす。まだ注文を聞くだけなら簡単な作業だ。本当に辛いのは…

「蓮太郎君はナポリタンを頼む!材料はそこの冷蔵庫にあるから。作り方は教えてる時間はない、悪いが体で覚えてくれ!」
「はい!」

キッチンは比べ物にならないほどの忙しさだった。特に蓮君はいきなり料理を任されたのだから、さぞかし苦しいことだろう。

バラバラバラ
お湯を張った鍋に麺を入れ、素早くソーセージやタマネギ、ピーマンをまな板に並べ始める蓮君。一つ一つの腕の動きに迷いが見られない。開店作業をしている間、蓮君はメニューの料理のレシピが書いてあるであろうメモを見ていたけど、どうやらある程度覚えてしまったようだ。あんな短時間で…すごい…。

「はい!デミステーキ。9番テーブルね」

私はハッと我に帰った。シェフさんが目の前の棚にデミグラスソースのハンバーグステーキが乗ったお皿を置いた。シェフさんはすぐさま次の作業へと走っていく。ジューと肉汁が溢れ出す音が、私を現実の忙しさへ連れ戻してくる。そうだ。ぼーっとしてる暇はない。料理を運ばなきゃ。私はデミグラスソースのハンバーグステーキを9番テーブルに運んだ。

ガッ

「お待たせしました!ご注文の料理でございます!」

私は目の前の忙しさにぶつかり合った。





午後3時を差し掛かる頃から、お客さんの数がぽっと減ったように感じた。どうやらピークの時間を切り抜けたようだ。それでもお客さんが一人もいなくなった訳ではない。私はもう一度気を引き締め直す。

「…」

私は改めてホール中のお客さんを見渡す。みんないかつい格好をしているけど、あのギャング達と比べたら、表情はおおらかな方だ。どうやらこのバーはここらへんの街の住民のほとんどが利用しており、旅人もしくは仕事の合間を練って来た武器の職人や商人達で賑わっているらしい。昼間は比較的温厚なお客さんで席が埋まった。昨晩のようなむさ苦しいギャング達しか来ないのかと心配だったけど、安心した。むさ苦しいと思うと失礼かもしれないけど、向こうもこっちにいやらしいことをしてきたのだから、十分むさ苦しい。

「凛奈」

エリーちゃんが話しかけてきた。

「人もだいぶ少なくなってきたことだし、休憩しよ♪」
「うん」

よかった。こういうのは自分から休憩しに行くのは、罪悪感を感じてついためらってしまう。私はエリーの後ろを着いて行って更衣室へ向かった。どうやら更衣室は休憩室とも兼ねているようだ。

「あぁぁ…疲れたぁ~」

哀香ちゃんはおじさんのように大股に足を開いてベンチに座った。私はその横にちょこんと座ってため息をつく。確かに疲れが尋常でない。

「どう?楽しい?」
「うーん、楽しくなくはないけど…すごい疲れるわね」

哀香ちゃんは苦笑いで答える。楽しさと忙しさが半々で、良くもなく悪くもなくという感じだ。

「夜になるともっと忙しくなるわよ~?」
「うへぇ…」

哀香ちゃんの眉が垂れ下がる。何か苦いものを口にしたかのように顔が歪む。

「あ、一応言っておくけど、夜は気を付けてね。昨日のギャング達がまたやってくるかもしれないから」

エリーちゃんが警告するように言う。どうやらギャングは午後6時からラストの時間に集中して押し掛けてくるようだ。怖い…。昨日のことが再び起きたらどうしようかと不安に狩られる。

「そうなんだ…」
「大丈夫よ、何か言われても適当にあしらっとけばいいから」

簡単に言ってくれる。どれだけ失礼な人間でも、やっぱりお客さんだ。従業員という立場であるために、行き過ぎた行動はできない。反対に、向こうはお酒に酔って昨日みたいな変なことを平気でしでかしそうだ。

「まぁ、何かあったら助けを呼んでちょうだい。ユタさんか他の人がなんとかしてくれると思うから。頑張って!」

笑顔で励ましてくれるエリーちゃん。この仕事に随分慣れてるみたいだ。まだまだ不安が残るけど、とりあえず頑張ってみよう。私はスミルのスカートの上に乗せた手を握り拳に変えて力を込める。



「ちっ、ブァンフかよ。一回休みだから、次お前だろ」
「よーし…お♪ツァローだ、ラッキー♪」
「あ?」
「これで上がり~♪」
「なっ…マジかよ!?」

案の定ギャング達がやって来てお店の席を占領してきた。よく見てみるとタコスやケバブを片手で食べながら、仲間同士でカードゲームのようなもので遊んでいた。よくわからないワードが次から次へと口から放たれる。昨日のような卑猥な行為をしてこないことはいいけど、もう少し大人しくできないのかな。

「おい、お前水持ってこい」
「あ、はい」

ギャングの一人が荒々しい声で水を要求する。私はしぶしぶ空のコップを受け取って水をくみに行く。

「おい料理まだかよ!こっちは腹減ってんだぞ!」
「はい!ただいま」

他のウェイトレスさんに料理が出されるのが遅いと注意する別のギャング。ウェイトレスさんは怒りを抑えながら返事をする。

「…ッチ」

返事の直後に舌打ちも聞こえたような気がする。やっぱりみんなギャング達の態度に迷惑しているみたいだ。

「グーガー」

寝ているギャングを見つけた。お酒の飲み過ぎで寝てしまっているらしい。こんな酔っぱらいオヤジみたいな人、初めて見た。

「ねぇお嬢ひゃん…可愛いねぇその服ぅ~♪」
「ひいっ…」

数々のギャング達の様子を見ていると、私のすぐ後ろにまた別のギャングがいた。鼻の下を伸ばしながら、顔中真っ赤でニタニタと気持ち悪く笑っていた。細かく指を動かしながら、手を私の体に近づけようとしてきた。このギャングも酔っぱらっているらしい。

ピーーーー バーン
エリーちゃんがとっさに笛を鳴らした。秒でバーの入り口が開き、騎士達が入ってきた。

「おい!そこのお前!」
「またこの店?勘弁してくれよ…」

騎士達は呆れながら、私に近づいてきた。酔っぱらいギャングは戸惑いながら騎士達に連行されていった。

「へ?ほら、なにをふるぅ~。はわるなぁ~」

絵に描いたような酔っぱらいの仕草をしながら馬車らしきもの乗せられるギャング。

「はいはい、幽閉場で酔いを覚まそうな~」
「どうもすみませんでした、俺達はこれで失礼します」

一人の騎士が頭を下げ、すぐにきびすを返して店を出ていった。ギャングと騎士を乗せた馬車は、すぐに城の方角へと走り去って小さな森の中へと消えていった。捕まってから連行されるまでの一連の流れが、まるで漫才コンビのやり取りのようにコミカルだった。笑ってしまいそうだ。いや、笑い事ではない。一方間違えれば危険な目に遭っていたかもしれないんだから。





その後、懲りもせず続くギャング達のマナーの悪さに耐えながら、私達は最後まで屈強に接客をした。全員のギャングが大人しく食事を済ませてお店を出ていったのを見計らい、入り口を閉めて「CLOSE」の看板を掛けた。どうやらこのバーは閉店時間が正確に定まっていないらしい。客足がばったり途絶えたタイミングで閉めるという曖昧な基準にしているようだ。午後8時に早閉めしたり、遅い時には午後2時まで営業することもあるそうだ。ほとんどがギャング達の入り浸る度合いによって左右されるという。大変だなぁ…。

「みんなお疲れ様…」

エリーがテーブルを布巾で拭きながら、ホール内のウェイトレスに呼びかける。

「えぇ…」
「お疲れ様…」
「うん…」

みんな見るからにクタクタだ。老人のように肩や背中が垂れ下がっている。だけど、返事ができるだけまだ大丈夫だ。私や哀香ちゃん、蓮君はもはや声を出す気力すら残っていない。

「凛奈ちゃん、哀香ちゃん、蓮太郎君、後は僕らがやっておくから。休憩してきな」
「ありがとうございます…」

ユタさんが書類のようなものを確認しながら言う。なんとか力を振り絞って声を出す。その優しさに乗っかり、私達は営業スペースを後にした。唯一ユタさんだけが疲れを見せずに堂々としていた。すごい人だ。

私達は更衣室で昨日の私服へと着替えた。終わると同時にエリーちゃんがお店から戻ってきた。閉店作業が全部終わったらしい。そのままお風呂に入り、ユタさんが作り置きをしておいてくれたサンドイッチで夕食を済ませた。全てがあっという間に感じた。私はアルバイト経験も無いため、一日がこんなに早く感じるのは、陽真君と遊んだ時以外は初めてだった。ギャングやその他のお客さんに翻弄される大変な生活だけど、その中でもそれなりの充実感を得ることができた。早くもこの世界に徐々に慣れつつある自分に気づいた。





「今日は本当にありがとうね、三人とも」

ベッドに座りながら笑顔を向けるエリーちゃん。ちなみに、今だけは蓮君もユタさんも女子の部屋に入ることが許可されている。もう夜中だけど、全員で確認しておきたいことがあるからだ。

「私達はこの人を探してるんです」

私は鞄の中から写真を取り出し、マットの上に置く。入学式の時に陽真君と一緒に撮ったあの写真だ。そう、偶然とはいえ、元々この世界へは陽真君を探してやって来たのだ。陽真君を見つけ出すことが本来の目的。私は写真に写った陽真君を指差ししながら尋ねる。

「この人、見たことありませんか?こっちの世界に来てるかもしれないんですけど…」

「うーん、見たことないなぁ…」

首をかしげるユタさん。対してエリーちゃんは写真の陽真君をまじまじと見つめる。

「この人、どっかで見たことあるような…」

エリーちゃんは写真を手に取って更に顔を近づける。

「あっ!思い出した!この間ギャングを連行してった騎士の人達の中に、この人見かけたわ!」
「えぇ!?」
「うん。凛奈達がここに来る前にも昨日や今日と似たことがあってね…」

思いがけない有力情報が引き出された。ここのウェイトレスさん達はギャングによく狙われるらしい。私達も昨日今日と続いてギャングに危ない目に遭わされそうになり、その時にユタさんやエリーちゃんが笛を吹いた。その笛を吹くと現れる騎士の人達。その人達の中に陽真君がいた?陽真君はこの世界で騎士の人達と一緒にいるということなの?

「確かこの男の人も他の騎士と同じ格好してたわ。凛奈達の仲間だったのね」
「一体どうして…」

どうして陽真君がこの世界で騎士になっているのか。エリーの話していることを信じないわけではないけど、数々の疑問が残る。

「騎士ってことは…あの城の騎士団に入ってるのか」

ふと、ユタさんが呟く。

「騎士団?」
「あぁ、クラナドスナイツ。クラナドス家が所有する騎士団だよ」

クラナドス家って確か、このフォーディルナイトを統治している王家だったよね。昨日エリーちゃんに教えてもらった。王家の人達はあのお城に住んでいる。そしてクラナドスナイツというのは、その王家に仕えている騎士達の集団のようだ。ユタさんが言うには、剣術や格闘術に優れた騎士で構成されていて、フォーディルナイトでの警察的な役割を果たしているらしい。毎日街に出て見廻りをしていて、不祥事が発生した時に駆けつけて、犯罪者の取り締まりをしているんだとか。犯罪者と言っても、ほとんどがあのギャング達らしいんだけど…。昨日や今日、笛を鳴らして騎士達がすぐに駆けつけて来れたのは、常に街で見廻りをしているからだったんだ。

「そこに陽真君がいるの?どうして…」

蓮君がひとりごとのように呟く。まだまだわからないことだらけだけど、私は一つの確信のようなものを得たような気がする。

「わからない…。でも、何か理由があるのかもしれない」

私は答える。もしかしたら今の私達のように、異世界にやって来たことに戸惑いを感じながらも、なんとか居場所を見つけて生きているのかもしれない。お城に住んでいる人達に助けられているのかもしれない。理由はどうであれ、陽真君も確実にこの世界に来ていることがわかってよかった。これで本格的に捜索が始められる。

「ありがとうございます。ユタさん、エリーちゃん」

私は二人にお礼を言って、もう一度写真に写っている陽真君を見る。隣にいる私も幸せそうだ。この素敵な日々を、絶対に取り戻してみせる。

「陽真君…必ず助けるからね…」

陽真君を見つけ出す決意をさらに固めた。夜空の星は今にも消えそうな程弱い光を放っていた。



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