お題：一万字で、薬草を手に入れること。

第１０話

「落ち着け、大木女」

ノイエンスに襲いかかったタイボク女にチョップをする。

「いたぁっ！」

大木女は悲鳴をあげ、ノイエンスを開放すると、両手で鼻頭を守るように覆って、しゃがみこむ。

チョップは、脳天ではなく、顔面に放った。そっちの方が丁度いい位置だったので仕方ない。効果も、ご覧の通り高いのがわかっていたからだ。

「痛いじゃないですかっ、家永さん！」

立ち上がった大木女が、赤くなった鼻を撫でながら、文句をいってきた。

「大木女オオギメ、同性でも、セクハラは成立するんだぞ」

「そんな？！　わたしは、ただ、かわいいノイエンスちゃんと仲良くしたいだけなのにぃっ！」

「本人が、怯えているので無理だな。またの挑戦をお待ちしています」

当のノイエンスは、解放された途端すぐさま、俺の方に駆けてきて、後ろに隠れるようにして腰にしがみついている。

今は、警戒するように顔を覗かせ、涙目で大木女のことを睨んでいる。

このときだ。このときに、大木女なんかに構っておらず、サッサッと三番の部屋に入って入ればよかった。そうすれば、厄介事を持ってくるアレとの遭遇を避けられたかもしれなかったのだ。