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「「条件?」」

「あぁそうだ、それを守れなければ今度は貴族の力を最大限に使ってリコをうちの子にする」

ジンジャーが脅すように睨みをきかせた。
ただならぬ雰囲気にラウルはゴクリと喉を鳴らした。

「な、なんでしょう。俺にできることならなんでも……金を作れと言うなら何年かかっても」

「私も手伝う!」

二人が慌てる様子にジンジャーは驚いた顔をした後にクスッと笑った。

「そんなんじゃないよ。少し脅しすぎたかな?」

ジンジャーの様子に少しほっとしていると名前を呼ばれた。

「まずはラウル」

「は、はい」

「君にはきちんとした定職についてもらう。でないとリコを養っていけないからね」

「定職……」

ラウルは眉をひそめた難しい顔をした。

ラウルは冒険者として暮らしていた、それはラウルが料理人としてその職にしかつけなかったからだ。

しかし冒険者と言ってもピンキリで稼ぐものはかなり稼いでいる。
ただラウルはキリの方で食っていくのがやっとだった。

なんとも答えられずにいるとジンジャーが続けた。

「まぁ地位も金もない君にいきなり定職につけとは難しいと思うので私から店を貸してやる」

「え!?」

「お店?」

料理人にとって自分の店は夢だった。

「俺に店を持たせてくれるのか?」

「君にではない、リコと君にだ!そこは間違えるなよ」

「な、なるほど」

俺に店なんてとち狂った事を言うと思ったがリコがいてこそだった。

「リコの料理の知識があればやって行けると私はふんでいる」

「しかし……いきなり名声もない俺達の店に人が来るかな?」

「そこは私の名前を使っていい、その代わり売上の半分は貰う」

「半分……」

「それで嫌なら……断ってくれていい。その代わり自分で仕事を探せ」

ラウルの固まった顔にジンジャーが突き放すとラウルは慌てて首を振った。

「それで大丈夫だ!いや、それでお願いします」

ラウルはジンジャーに頭を下げた。

「しばらくは他の店で見習いとして働け、お前の働き次第で店を任せてやる」

「ありがとうございます。リコ!やったな!」

「うん、頑張ろうね」

リコは事の重大さをわかっているのかニコニコと笑っていた。

「わかるか!俺達の店をもてるかもしれないんだぞ」

「私はラウルさんといられるならなんでもいいよ」

「うお……可愛い事言ってくれる」

ラウルは思わず膝をついてしまった。

「だ、大丈夫!?」

リコがいきなり崩れた俺を心配してそばに来ると顔を覗き込んだ。

「大丈夫だ、リコがあんまりにも優しいから驚いたんだよ」

ありがとうなとお礼を言って頭を撫でて心配ないと笑ってみせた。

「リコの為にも俺は頑張るからな」

俺のやる気にジンジャーは頷きリコをみた。

「そしてリコにも条件だ」

今度はリコに向き合った。
ラウルの時とは違い優しく笑って目線を合わせている。

「君には週に1回我が家に来ていっしょに食事をとって貰う」

「食事?」

「あぁ、その時にラウルの事やお店の事、自分の事を報告するんだ。もしなにか困ったことがあれば必ず言うこと」

リコはわかったと頷くとジンジャーは約束だと笑った。

リコが帰る支度をすると言うのでメイドに任せてラウルとジンジャーで待っていた。

ラウルは改めてジンジャーに頭を下げた。

「あなたを誤解していたようだ、本当に感謝します」

ジンジャーはきまり悪そうに視線を逸らした。
「何度も言うが君の為じゃない、あの子の為だ。リコはきっとこれからすごい事をすると思っている」

「リコが……」

確かにあの幼さであの料理の知識と腕なら何にでもなれそうだ。

「だからあの子にはちゃんとした場所を用意しなければいけないと思っていた。それが私の元でないことだけが残念だ」

「本当に俺でいいんですかね……」

今になり自信がなくなってきた。

「あの子が選んだんだ、自信をもて」

バンッ!と背中を押されてラウルはグッと踏ん張った。
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