助けたキツネが恩返しにきました。もふもふはいるだけで幸せです。

19

「ち、父上…どういう事ですか…」

ダミアンは恐る恐る領主様に問いかけた。

「ダミアン、今までお前の愚行には目をつぶってきたが限界だ。いつかは考えを改めてくれるかと期待したが無駄だったようだな」

「何を…言っているのですか？」

ダミアンは父親が言っている意味が理解できないのか震えていた。

そんなダミアンを無視して領主は主様の前に跪いた。

「我が愚行の行為、どうかお許し下さい。こいつはもちろん私も責任を取ります。ですからどうかこの町には手出しなきようお願い致します」

領主様が頭を下げる姿にそれを見ていた従者やダミアンは自分達が相手にした主様達が手を出しては行けない人達だったのだと理解した。

「も、申し訳ございません！」

従者達は領主様の後ろについて一緒に頭を下げた。

「お、俺は悪くない！そうだ！ジャック、お前のせいだ！全部お前が…」

ダミアンはこの後に及んで人のせいにしようとしていた。

「この者は私の大事な家族の大切な人だ。それは私にとっても大切な友人だ、それがわかっての発言か？」

主様はダミアンを見つめて瞳を細めた。

「うっ、なんでジャックなんか…」

「お前はもう黙って頭を下げろ！」

父親の領主様はダミアンの頭を掴むと地面に叩きつけて頭を下げさせた。

「こいつはこ町から出して手を貸さずに一人で生活をさせます。どうかそれで…」

「この者達に金を借りているはずだが？」

ルナールさんやココをみてダミアンが顔を青くした。
それをみて領主は頭を抱えた。

「お金は全てお返しします。おい！ダミアンがこの方達から借りた金を全て返しなさい」

「ま、待って！それがないと俺は…」

「知るか、自分のツケは自分で返すんだ。もうお前は私の息子ではない。他の者も手を貸すことは許さないから覚えておいてくれ」

「お、おい！お前はついて来るよな！お前だって…可愛がってやっただろ！」

いつもそばに置いていた従者に救いの手を差し伸べるがサッと顔を逸らされていた。

「お前についていく者もいないのだな。本当に育て方を間違えたようだ…」

領主はガックリと肩を落とした。


その後領主様からジャックに金は全て返された。

ダミアンはかなりの借金を抱えていたらしくそのまま強制労働施設に連れていかれ借金が無くなるまでそこで働く事となった。

領主はその地位を人に譲ろうとしたが主様が息子が戻ってくるまでこの地を守る事が罰だといい領主はそのままとなった。

しかし納得いかなかった領主がジャックにその立場を譲ると言ったがそれな面倒な事は願い下げだ。

「俺はのんびりと暮らせればそれでいいんです」

そう言ってココを見れば嬉しそうに頷いていた。

そんな俺達の様子を見ると領主様はそれ以上何も言わなかった。

「主様もルナールさんもありがとうございました。お金はお返しします」

領主様から返されたお金を全て返した。

「いいの？これはあげたんだからジャックくんの好きにしていいのよ」

ルナールさんにそう言われて微笑まれる。

「いいえ、そんなにあっても使えませんしココと食っていくくらいなら俺が働く分で十分食べていけますから」

「うん！ココもご飯撮ってくるから！」

「あら、じゃあもうキノコを用意しておかなくていいのね」

「え？」

俺はココを見つめるとあわあわと慌てていた。

「ココまだご飯取るの下手だから…お姉ちゃん手伝って？」

「可愛い妹の頼みならよろこんで」

ルナールさんはぎゅっとココを抱きしめた。

「ココ、別にルナールさん達と住んでたまに俺のところに遊びにくるんでもいいんだぞ？」

ココは俺とルナールさんを交互に見ると首を振る。

「ううん、ココはジャックといたいの」

「まぁ、やけちゃうわ」

ルナールさんは眉を下げながらも笑っていた。

「じゃあ帰ろうな」

俺が手を差し出すとココはしっかりと握り返す。

「今日は何食べたい？」

「おにくー！」

「よーし、じゃあ町に寄ってから帰るか！」

「うん！」

俺とココは手を繋ぎながら歩き出した。