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ブラッドを見送ると…リードとナッツがいつの間にか側にいた。

「ふたりともありがとう…私が叩かれたのをブラッドに言いに行ってたのかな?」

二匹は気まずそうに顔を逸らす。

「気持ちだけでいいんだよ…無理しないでね。また見つかったら今度は怪我じゃすまないよ…」

そう言って優しく二匹を手のひらで包むんでお礼をすると…

「よし!みんなに心配かけない為にも料理を頑張ろう!」

リリアナは立ち上がるとキッチンへと向かった…。



リリアナが料理を進めていると…

「リリアナー!」

ビーズが慌ててキッチンに駆け込んで来た!

「はい…すみません…まだ料理の準備が終わってなくて…」

「何を作ってるの?」

ビーズが鍋の中を覗くと…いつもとは違う地味な料理に顔を顰める。

「ちょっと!何よこの地味な料理は!いつも見たく派手な彩りにして頂戴!」

「で、でもお義母様…痩せられる料理にしろと…」

「そんなのはどうでもいいのよ!今夜は大切なお客様が来るのよ!最高のおもてなしをしなくちゃ!いい!こんなのは捨てて最高の料理を作りなさい!」

そう言ってリリアナが作った料理を流しに捨ててしまった…。

「あっ…」

「なに?何か文句でもあるの?」

ギロっとリリアナを睨む。

リリアナが目を伏せて下を向く…その姿はみすぼらしい装いなのに美しく華がある…ビーズはさらにイライラとする…。

「…いい!お客様が来たらあなたは部屋に戻って決して出て来ないで頂戴!あなたみたいな醜い子がいたら食欲も無くなっちゃうわ!」

「はい…お義母様…」

「…後…そのお義母様って言うのもやめてもらえる。これからはビーズ様と呼びなさい」

「えっ?」

「私、あなたの母親じゃ無いもの」

そう言ってビーズは自分の準備をする為に急いで部屋に行ってしまった…。


ギョクが魔族の国から持ってきた実を咥えてリリアナが見える窓枠に来ると…

カリカリカリ…

窓を引っ掻く

「にゃーん…」

音に気が付きリリアナが振り向くと…

ガリッ!

【リリアナ!】

ギョクの手に力が入ってしまい…窓にヒビがはいる…。

リリアナが窓を開けてくれるとヒョイとリリアナの肩に乗るそして流れている涙を心配そうに舐めだした…

【リリアナ…なんで泣いてるの…】

「えっ?」

リリアナが自分の顔を触る…

「あれ?なんでだろ?」

リリアナは涙を拭いて笑顔を見せるが…またポロッと涙が出てくる…。

【リリアナ…】

ギョクがリリアナの顔にスリスリと身体をくっつける。

【泣かないで…僕がいるよ…】

「ギョクっ…ありがとう…」

リリアナはギョクを抱きしめると…泣き崩れた…

しばらく泣くとリリアナも落ち着いて来たようだ、もう涙をしまってギョクを見つめる。

「ギョクありがとう…ギョクがいてくれてよかった」

【それで?何があったの?リリアナがあんなに泣くところなんて…初めて見たよ!】

「うん…」

リリアナは言いにくそうに悲しそうに笑う…

【僕らには言えない事?】

「そんな事はないよ…さっきね…言われちゃった…おか…ビーズ様に私は家族じゃないって…」

ハハ…と笑うと…ギョクが唸る…。

ギョクが毛を逆立てると、みるみると身体が大きくなっていく…

「ギ、ギョク!どうしたの?」

【リリアナ!あいつを切り裂いてくる!】

「だめだよ!ギョク落ち着いて…そんな事をしたらギョクが捕まっちゃう!」

【平気…僕は魔族なんだ…人間なんかには捕まらないから…】

「それでもだめ!ギョクが人を傷つけるところなんて見たくない!いいの!私…ここを出ていくからだからいいの」

【ならリリアナは僕らとおいでよ!】

ふるふると首を横にする

【なんで?ここにもう居られないなら僕らと行こうよ!】

「ブラッドやファイやギョクは魔族なんでしょ?魔族の国に人間が入るなんて駄目だよ…」

【大丈夫だよ!僕らがいるから!】

「ありがとう…でも聞いた事あるよ…魔族の国には選ばれた人間しか入れないって…魔王様の許可がないと入れない特別な場所だって…」

【リリアナなら大丈夫!リリアナは特別だから!】

「ふふふ…そう言ってくれるのはみんなだけだね」

そう言ってギョクの頭を撫でると…

「ギョクのおかげで元気が出たよ、これで料理を作れる…ありがとう」

【まだあいつらに作るの?】

ギョクがイラッとすると

「お客様がくるんだって…折角来てくれるのに…何も無かったら失礼でしょ?これを作ったら…大事なものをまとめないと…」

【リリアナ…ならこの実を使って…リリアナが困ってると思って取ってきたんだ…】

そう言ってリリアナに魔族の国の実を渡す…。

【痩せる実だよ…だからリリアナは食べないでね…リリアナには必要無いものだから】

「そうなの?」

【うん…リリアナには必要ない!だから約束だよ食べないでね…リリアナみたいに痩せてる子が食べたら…大変な事になるからね】

「ふーん…わかったギョクが言うなら食べないよ、わざわざありがとう」

【いいんだ…でもリリアナ…考えといて…リリアナなら僕達はいつでも歓迎するよ】

リリアナは困ったように笑うとギョクを抱き上げる、ギョクが来た窓枠に乗せて上げると…

「みんなにもありがとうって伝えて…」

チュ…

ギョクの頭にキスを落とすと…

「…さようなら…」

窓を閉めると…また一人…料理を作り始めた…。
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