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11章

631.蟲の森

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ベイカー達はミヅキとシルバ達を真ん中に四方に別れる事になった。

「いいかミヅキのそばに蟲の魔物を絶対に近づけるなよ」

「そうするとどうなるんだ?」

ロバートが聞くと…

「シルバが暴れる」

「それは…怖いな…」

シルバの恐ろしさを知ってるだけにロバートはゴクリと唾を飲んだ。

「そしてミヅキがいなくなる」

「それも…困る」

ロバートが心配そうに顔を曇らせる。

「獣人は大丈夫なのに蟲は駄目なのか?基準がわからん…でもこんな所で一人になったら大変だ…俺は俺の出来ることをするよ」

「頼む」

ベイカーは頷くと自分の持ち場にかけて行った。

みんなが散らばった所でシンク達と楽しく話をしていたミヅキにシルバが声をかける。

【ミヅキ、すまんが力を貸してくれ】

【ん?私?いいよ~もう目を開けてもいいの?】

【ああ大丈夫だ】

シルバはいま一度回りを確認して蟲が近くにいないことを確認する。

ミヅキはシルバの背中から体を起こしてそっと目を開くと…

「眩しい…」

ずっと目を閉じていたので久しぶりの陽の光に目をシパシパさせる。

【あれ?さっきの森の中だね、どうしたの?】

ミヅキはシルバに聞くと

【どうもこの階の下へと続く階段が見つからんらしい、ミヅキならどっちかわかるかもしれないと思ってな】

【え?私ここに来たこと無いよ?】

ミヅキが周りを見回すがやはり身に覚えはない…それよりもなんだがゾクゾクと背中がむず痒くなった…

【な、なんかすごくここに居たくない感じがするんだけど…シルバ…ベイカーさん達はどこ?】

ミヅキはシーンと変に静まり返った森を見つめた…

そこにはシルバ達と自分しかおらず不安になる。

【ベイカー達は魔物を倒しに行ってるだけだ、呼べばすぐに来る距離にいるぞ】

【そ、そうなんだ】

ミヅキはほっとすると落ち着いて周りを確認する。

じっと森の奥を見つめると…

【あっち…がいいかな?】

適当に指をさした。

【わかった】

シルバは素直にスタスタと進み出すと

【えっ!ほ、本当にそんなんで進むの?適当に冗談で言ったのに~】

ミヅキが慌てると

【ミヅキが言うなら間違いない】

シルバの方が自信満々にミヅキが示した先を目指して歩き出した。

その頃ベイカー達は…

「うん…動き出したな…」

シルバの気配を追って動き出す、すると進む先に蟲が現れる。

「おっとそっちに行かれると困るんだ」

ベイカーは蟲を真っ二つにすると先を急いだ。

コジローとアラン、ディムロスもロブも問題なく蟲を退治しながらシルバの気配を追っていたが…

「嘘だろ…」

ロバートの前に現れたのは先程の巨大な蜘蛛よりも何倍も大きな鬼蜘蛛だった。

「これってこの階の主…とかじゃねぇよな…」

ロバートはミヅキから貰ったメリケンサックを握りしめる。

鬼蜘蛛はイライラしているのか地面を何本もの脚で踏み鳴らし、頭にある無数の目が赤く光っていた。

「まさかさっきのが子供で俺達に殺られて怒ってる…とかじゃねぇよな…」

鬼蜘蛛はロバートの拳を見つめると気持ちの悪い声を出して襲いかかってきた!

「キシャー!」

先程のロブが受けた何倍もの太さの糸をロバート目掛けて放つ。

ロバートはそれを拳で打って軌道を逸らそうとするが

「しまった!」

糸の粘りに拳がくっ付いてしまった。

鬼蜘蛛は糸を振り回すとロバートを地面に叩きつけた。

「ぐっわ!」

ロバートは思いっきり背中から地面に叩きつけられる、どうにか離れたいが手が糸に絡まり逃れられそうもない。

「やばい…何度も食らったら…」

鬼蜘蛛は今度は糸を自分の方に引き寄せる…ロバートも踏ん張って抵抗するがジリジリと鬼蜘蛛との距離は縮まっていく。

鬼蜘蛛は口と思われる場所をパカッと開くとカシャカシャと牙を鳴らした。

ロバートはドンドンとその口に近づいていく…

「くそ…」

ここまでかと諦めかけたその時…

「風刃!」

風の刃が糸を切った!

ロバートはすかさず離れて鬼蜘蛛から距離を取ると…

「ミヅキ!」

そこには青い顔でシルバに乗るミヅキがいた!

「ロ、ロ、ロバートさん…だ、大丈夫?」

ガタガタと震えて鬼蜘蛛を見上げている。

「ミヅキ!お前こそ大丈夫か!?顔色が普通じゃないぞ!」

ロバートが駆け寄ろうとすると鬼蜘蛛が行く手を阻むように動き出した。

「ぎゃーあー!動いた!あ、脚が12本もある!赤い目も12個体からうぶ毛みたいな毛が生えてるー!!しかもカシャカシャ音がするー!」

「そんなに怖いならじっくり見るな!」

ロバートが叫ぶと

「見てないと何されるかわかんないでしょ!こっちに来たら全速力で逃げるからロバートさんも逃げてね!」

「いや!こいつは多分俺を狙ってる。ミヅキこそ怖いなら逃げろ!」

「そ、そんな事出来ない!ロバートさんが危ないもん!さっきだって食べられそうだったよ!」

「あれは油断したからだ!」

ロバートが言うと

【ミヅキ、俺が一撃でしとめるから目を閉じてろ】

シルバが飛びかかろうと姿勢を低くすると

【ま、待って!返り血浴びたらどうするの!?毒あるかもよ!血が緑色かもしれない!いや…体液が紫かも…】

ミヅキがシルバの上でブツブツと呟き出した。

【じゃあ僕が燃やそうか?】

シンクが聞くと

【駄目!焼き蜘蛛の匂いなんて嗅いだら…】

ミヅキの顔色が青から白に変わった。

「そんなになるのになんでここに来たんだ!」

ロバートが叫ぶと

「だって!なんかすごく嫌な予感がしたんだもん!案の定駆けつけてみたらロバートさん食べられそうになってるし!」

ミヅキが叫び返すと鬼蜘蛛の視線がミヅキの方に向いた。

「ひっ…」

ミヅキはシルバの毛をギュッと掴むと硬直した…鬼蜘蛛はそんなミヅキの姿を見てヨダレをダラダラと垂らした。

ふぅー…

ミヅキはその姿に気を失い後ろに倒れ込んだ…

ポヨン!

ミヅキがシルバから落ちるのをムーが体で受け止めると

【ムー…ミヅキをしっかりと抱えておけよ…】

シルバが唸るとムーがブルっと震えた…

【やばーい!シルバが凄い怒ってる~】

シンクはクスクスと笑うと気を失ってるミヅキの元に行きその体の上に止まった。

【ミヅキにはこんな奴らの姿など見せたくなかったのに…】

ギリギリと牙を噛み締めると鬼蜘蛛を睨みつける。

【しかしミヅキが向かってくれと言われれば私達は言う事を聞くしかないだろ?】

プルシアが仕方なさそうにシルバを見ると

【あんなに震えながらもあいつを助けに行くと聞かなかったからな…】

倒れたミヅキに慌てて駆け寄るロバートを見ると…

【まぁミヅキが気を失ってる今がチャンスだ…その姿がもう二度とミヅキの目に触れないようにしてくれる】

シルバがキッと鬼蜘蛛を睨みつけると

【私も協力しよう】

プルシアが元の大きさになるとシルバの隣に並んだ。

二人は鬼蜘蛛をその姿が処滅するまで攻撃をくわえた。
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