文字の大きさ
大
中
小
481 / 639
14章
630.ダンジョン地下七階
【森か…】
シルバがボソッと呟くと…
【ミヅキ、ここは目を瞑ってしっかりとうずくまっていろ】
【えっ?目をつぶるの?】
なんでだと聞くがシルバはハッキリと理由を言わずにただそうしろとだけ言ってくる。
【わかった…シルバがそう言うならそうした方がいいんだね】
私はシルバの言うことに素直に従った。
シルバの背中に顔を埋めて目を瞑って体に抱きつくとコハク達の温もりを背中に感じる。
みんなで私を囲んでいるようだった。
「ここも一気に進むぞ!魔物がいたら走りながら対処しろよ、ここに出る魔物は…」
「「あー!!」」
ロブさんが何か言ったがベイカーさんとアランさんの叫び声にかき消された。
「な、何!?」
私は驚いて起き上がろうとすると…
【大丈夫だ、ミヅキは何があっても顔をあげるなよ】
シルバの声にぐっと堪えてまたしっかりと目を瞑った。
「な、なんだよ?」
ロブさんも驚いた声をあげていたがベイカーさん達がボソボソっと何か言うと黙り込んだ。
「まぁ…魔物がいたらみんなで倒せよ…」
そう言うと走り出したようだ、シルバの体も動き出したのを感じる。
何も見えないので音に集中しながらシルバに抱きついていると…
「魔物だ!」
ベイカーさんの声がした!
ガサガサ…
ブルッ!
なんか嫌な音に思わず体が震えた。
【な、なんだろ…すごく嫌な音がするよ…みんな大丈夫?】
私が声をかけると
【大丈夫、大丈夫。魔物が出ただけだよ~ミヅキは気にしないでいなね。そうだムー!ミヅキの耳を塞いでおいてあげなよ】
シンクが言うとムーのひんやりとした体が耳元を覆った。
すると何も聞こえなくなった。
【おお!なんにも聞こえないよ!】
私がみんなに声をかけると
【よかった~じゃあミヅキは僕達とお話してようよ】
【ミヅキ!おはなししよ!】
シンクとコハクが声をかけてきたので私はシンク達と今日のご飯は何にしようかと話し出した。
ミヅキがシンク達との会話に集中すると…
シルバとプルシアはほっと息を吐く。
二人は顔を見合わせるとコクっと頷きあった…そして目の前に迫り来る魔物めがけて牙を剥く!
シルバ達の前には蟲型の魔物が不気味な音を立てて行く手を阻んでいた。
ミヅキがしっかりとこちらの様子をわからないのを確認する。
シンクがパチッとウインクするとシルバとプルシアは一気に蟲の森を駆け抜けた。
「おお…シルバ達すげぇな…」
ベイカー達はその後ろを蟲の死骸を踏みながら追いかける。
「ミヅキに気付かれる前に通り過ぎたいんだろ」
アランが言うと
「ミヅキはそんなにも蟲が苦手なのか?」
「そうだな、きっとその蟲の体液の付いた拳なんか見られたら一日中近寄って来ないと思うぞ」
ベイカーはロブの拳につく緑色の液体を見つめた。
「な、何!?そりゃ困る!」
ロブは急いで近くの木で拳を拭っていると上から何か気配がして見上げる。
「シュルル…」
巨大な蜘蛛がロブめがけて糸を吐いた!
「うわっ!髪につく!」
ロブは慌てて糸を取ろうとするがベタベタとして余計に絡まってしまった。
「おりゃ!」
ロバートは蜘蛛めがけて拳を突き出すとその体を貫通させる。
するとロブに絡まっていた糸がハラハラと落ちていった。
「ロバート助かった!あー髪が乱れたぞ!このバカ蜘蛛が!」
ロブは他にも迫ってきた蜘蛛の魔物に怒りの一撃を食らわせる。
「全く不快な森だ!さっさと通り抜けよう」
ロブのことばにベイカー達は同意するうに頷くとかなり先へと進んでしまったシルバ達のあとを追った。
かなり進んだがシルバの姿は見えないし地下へと進む階段も見つからない…
「この森はかなり広いみたいだ…」
「しかも階段が上手く隠されているな…このままだとここで一泊する事になるぞ」
「それは困る!ミヅキにこんな蟲の森で寝るなんてできないぞ」
「どうにか地下の階段を見つける方法はないのか?」
「ひたすら探すしかない!前に来た時は運がよくすぐに見つけられたんだが…」
「運ねぇ…なぁミヅキってすげぇ運がいいよな。あいつなら階段がある場所わかるんじゃないのか?」
「確かに…」
ベイカーも身に覚えがあるのか頷くと、すぅーっと息を思いっきり吸うと…
「シルバーー!!」
大声で叫んだ!
地面が振動で少し震えると…
ボカッ!
アランが耳を押さえながらベイカーの頭を小突いた!
「いきなり大声出すんじゃねぇよ!ジジイ達が心臓麻痺で死ぬぞ!」
「いっ…あっすまん。まぁギルマス達なら大丈夫だろ」
二人とも直前で耳を塞いだようで無事のようだ。
「じじい共は無事だが…」
チラッとアランは倒れているコジローとロバートを見下ろす。
視線に気が付きベイカーも下を見た。
「あっ…」
白目を向いて倒れる二人を抱き起こして背中をぐっと叩いて気を戻すと
「はっ!」
コジローが目を覚ました。
「すまんな、シルバ達を呼ぶのに大声を出しすぎた。お前達は耳がいいの忘れてた」
ベイカーはロバートの意識も戻すと、ちょうどシルバが戻ってきた。
「グルル…」
なんだと機嫌が悪そうに唸ると
「シルバ、この階は下に降りる階段が見つかりにくい…ミヅキの力が必要なんだ」
「ガウッ!」
シルバが嫌だと首を振る。
「わかってる、蟲を見せたくないんだろ?まぁこんなところでパニックになって一人で迷子にでもなったら困るからな…俺もわかってるがそれよりもここを早く出してやる方がいいんじゃないか?」
ベイカーの言葉にシルバが何か葛藤するように考えると…
「グルル…」
コジローに何か言った。
「はい!」
コジローが頷くと
「ミヅキが目を開く前に周りにいる蟲達を殲滅する事と、移動中ミヅキの目に蟲が入らないようにするならと言ってます」
「その程度は予想していた、お前とミヅキを中心にして俺達が四方を離れて囲んでついて行く。それでどうだ?」
シルバはわかったと渋々頷いた。
シルバがボソッと呟くと…
【ミヅキ、ここは目を瞑ってしっかりとうずくまっていろ】
【えっ?目をつぶるの?】
なんでだと聞くがシルバはハッキリと理由を言わずにただそうしろとだけ言ってくる。
【わかった…シルバがそう言うならそうした方がいいんだね】
私はシルバの言うことに素直に従った。
シルバの背中に顔を埋めて目を瞑って体に抱きつくとコハク達の温もりを背中に感じる。
みんなで私を囲んでいるようだった。
「ここも一気に進むぞ!魔物がいたら走りながら対処しろよ、ここに出る魔物は…」
「「あー!!」」
ロブさんが何か言ったがベイカーさんとアランさんの叫び声にかき消された。
「な、何!?」
私は驚いて起き上がろうとすると…
【大丈夫だ、ミヅキは何があっても顔をあげるなよ】
シルバの声にぐっと堪えてまたしっかりと目を瞑った。
「な、なんだよ?」
ロブさんも驚いた声をあげていたがベイカーさん達がボソボソっと何か言うと黙り込んだ。
「まぁ…魔物がいたらみんなで倒せよ…」
そう言うと走り出したようだ、シルバの体も動き出したのを感じる。
何も見えないので音に集中しながらシルバに抱きついていると…
「魔物だ!」
ベイカーさんの声がした!
ガサガサ…
ブルッ!
なんか嫌な音に思わず体が震えた。
【な、なんだろ…すごく嫌な音がするよ…みんな大丈夫?】
私が声をかけると
【大丈夫、大丈夫。魔物が出ただけだよ~ミヅキは気にしないでいなね。そうだムー!ミヅキの耳を塞いでおいてあげなよ】
シンクが言うとムーのひんやりとした体が耳元を覆った。
すると何も聞こえなくなった。
【おお!なんにも聞こえないよ!】
私がみんなに声をかけると
【よかった~じゃあミヅキは僕達とお話してようよ】
【ミヅキ!おはなししよ!】
シンクとコハクが声をかけてきたので私はシンク達と今日のご飯は何にしようかと話し出した。
ミヅキがシンク達との会話に集中すると…
シルバとプルシアはほっと息を吐く。
二人は顔を見合わせるとコクっと頷きあった…そして目の前に迫り来る魔物めがけて牙を剥く!
シルバ達の前には蟲型の魔物が不気味な音を立てて行く手を阻んでいた。
ミヅキがしっかりとこちらの様子をわからないのを確認する。
シンクがパチッとウインクするとシルバとプルシアは一気に蟲の森を駆け抜けた。
「おお…シルバ達すげぇな…」
ベイカー達はその後ろを蟲の死骸を踏みながら追いかける。
「ミヅキに気付かれる前に通り過ぎたいんだろ」
アランが言うと
「ミヅキはそんなにも蟲が苦手なのか?」
「そうだな、きっとその蟲の体液の付いた拳なんか見られたら一日中近寄って来ないと思うぞ」
ベイカーはロブの拳につく緑色の液体を見つめた。
「な、何!?そりゃ困る!」
ロブは急いで近くの木で拳を拭っていると上から何か気配がして見上げる。
「シュルル…」
巨大な蜘蛛がロブめがけて糸を吐いた!
「うわっ!髪につく!」
ロブは慌てて糸を取ろうとするがベタベタとして余計に絡まってしまった。
「おりゃ!」
ロバートは蜘蛛めがけて拳を突き出すとその体を貫通させる。
するとロブに絡まっていた糸がハラハラと落ちていった。
「ロバート助かった!あー髪が乱れたぞ!このバカ蜘蛛が!」
ロブは他にも迫ってきた蜘蛛の魔物に怒りの一撃を食らわせる。
「全く不快な森だ!さっさと通り抜けよう」
ロブのことばにベイカー達は同意するうに頷くとかなり先へと進んでしまったシルバ達のあとを追った。
かなり進んだがシルバの姿は見えないし地下へと進む階段も見つからない…
「この森はかなり広いみたいだ…」
「しかも階段が上手く隠されているな…このままだとここで一泊する事になるぞ」
「それは困る!ミヅキにこんな蟲の森で寝るなんてできないぞ」
「どうにか地下の階段を見つける方法はないのか?」
「ひたすら探すしかない!前に来た時は運がよくすぐに見つけられたんだが…」
「運ねぇ…なぁミヅキってすげぇ運がいいよな。あいつなら階段がある場所わかるんじゃないのか?」
「確かに…」
ベイカーも身に覚えがあるのか頷くと、すぅーっと息を思いっきり吸うと…
「シルバーー!!」
大声で叫んだ!
地面が振動で少し震えると…
ボカッ!
アランが耳を押さえながらベイカーの頭を小突いた!
「いきなり大声出すんじゃねぇよ!ジジイ達が心臓麻痺で死ぬぞ!」
「いっ…あっすまん。まぁギルマス達なら大丈夫だろ」
二人とも直前で耳を塞いだようで無事のようだ。
「じじい共は無事だが…」
チラッとアランは倒れているコジローとロバートを見下ろす。
視線に気が付きベイカーも下を見た。
「あっ…」
白目を向いて倒れる二人を抱き起こして背中をぐっと叩いて気を戻すと
「はっ!」
コジローが目を覚ました。
「すまんな、シルバ達を呼ぶのに大声を出しすぎた。お前達は耳がいいの忘れてた」
ベイカーはロバートの意識も戻すと、ちょうどシルバが戻ってきた。
「グルル…」
なんだと機嫌が悪そうに唸ると
「シルバ、この階は下に降りる階段が見つかりにくい…ミヅキの力が必要なんだ」
「ガウッ!」
シルバが嫌だと首を振る。
「わかってる、蟲を見せたくないんだろ?まぁこんなところでパニックになって一人で迷子にでもなったら困るからな…俺もわかってるがそれよりもここを早く出してやる方がいいんじゃないか?」
ベイカーの言葉にシルバが何か葛藤するように考えると…
「グルル…」
コジローに何か言った。
「はい!」
コジローが頷くと
「ミヅキが目を開く前に周りにいる蟲達を殲滅する事と、移動中ミヅキの目に蟲が入らないようにするならと言ってます」
「その程度は予想していた、お前とミヅキを中心にして俺達が四方を離れて囲んでついて行く。それでどうだ?」
シルバはわかったと渋々頷いた。
感想 6,830
あなたにおすすめの小説
過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜
由香過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。
初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。
溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)
星乃和花おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。
団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。
副団長「彼女のご飯は軍事物資です」
私「えっ重い」
胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!?
ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。
(完結済ー本編16話+後日談6話)
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
一妻多夫の獣人世界でマッチングアプリします♡
具なっしー前世の記憶を持つソフィアは、綿菓子のような虹色の髪を持つオコジョ獣人の令嬢。
この世界では男女比が極端に偏っており、女性が複数の夫を持つ「一妻多夫制」が当たり前。でも、前世日本人だったソフィアには、一人の人を愛する感覚しかなくて……。
そんな私に、20人の父様たちは「施設(強制繁殖システム)送り」を避けるため、マッチングアプリを始めさせた。
最初は戸惑いながらも、出会った男性たちはみんな魅力的で、優しくて、一途で――。
■ 大人の余裕とちょっと意地悪な研究者
■ 不器用だけど一途な騎士
■ ぶっきらぼうだけど優しい元義賊
■ 完璧主義だけど私にだけ甘えん坊な商人
■ 超ピュアなジムインストラクター
■ コミュ力高めで超甘々なパティシエ
■ 私に一生懸命な天才年下魔法学者
気づけば7人全員と婚約していた!?
「私達はきっと良い家族になれます!」
これは、一人の少女と七人(…)の婚約者たちが、愛と絆を育んでいく、ちょっと甘くて笑える逆ハーレム・ラブコメディ。
という異世界×獣人×一妻多夫×マッチングアプリの、設定盛りだくさんな話。超ご都合主義なので苦手な人は注意!
※表紙はAIです
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。