ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

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3巻

3-1

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   プロローグ


 私、美月みづきは前世で事故に遭い、命を落とした。
 しかし、なぜか幼女の体に転生してしまい、ミヅキと名乗ることに。
 この世界で一緒に暮らしているのは、少し私に甘いけど頼りになるA級冒険者のベイカーさんに、強くてかっこいいフェンリルのシルバ! それに可愛い鳳凰ほうおうのシンク。
 トラブルに巻き込まれ体質なのか、誘拐されたり、王子様に求婚されたりと散々な目に遭っている。
 私はのんびり楽しくシルバやシンクと生活できればいいだけなのに、なぜか周りに人が集まり騒がしい毎日。
 神様、せっかく来たこの世界……もう少し、ほっといて下さい……



   一 ポルクスの村


「皆さん、ここです!」

 御者ぎょしゃを務めていたポルクスさんの声と共に馬車が止まった。
 私はこれから、いつもお世話になっている食堂『ドラゴン亭』の女将おかみリリアンさん達と共に、王都に向かう。なんでも王都では『ドラゴン亭』のハンバーグが大人気とのことで、期間限定でお店を出して欲しいと頼まれたのだとか。
 そのお手伝いを頼まれ、王都への道中、ポルクスさんの村に寄って牛乳を調達しようというのだ。
 早速ポルクスさんの村に入ろうとすると、異様な臭いが鼻をついた。

【うっ! ちょっと俺にはキツイな……】

 シルバが顔をしかめて村に入るのを躊躇ちゅうちょする。鼻がいいシルバには、この臭いがキツいみたいだ。

【シルバどうする? 外で待ってる?】
【近くに危険なものはないようだし……そうだな今夜は村の外にいることにしよう。シンク、ミヅキを頼むぞ】

 シルバは仕方なさそうに頷き、シンクに私のことを頼む。シンクが【分かった】と頷いた。
 そして、シルバは私の髪に鼻先を寄せ、クンクンと匂いをぐ。しばらくそうして、気が済んだのかホッと息を吐いた。

【いい子にな】

 シルバはそう言うと村を離れて行った。私は姿が見えなくなるまでその背中を見つめる。

「ミヅキ、シルバはどうした?」

 ベイカーさんが村を離れるシルバの姿を見て、不思議そうに声をかけてきた。

「シルバ、ここの臭いがキツいから外で待ってるって」
「ああ。小さい村だと警備するやつがいないから、周りに魔物避けの薬をくからな……シルバは鼻がいいから堪らんだろ」

 そう教えてくれた。それは仕方ないけど、今までずっと一緒にいたシルバが居ないのはやはり寂しい。でも、わがままは言えないので、無理やり頷いた。
 ベイカーさんはそんな私を抱き上げるとにっこりと笑う。

「じゃあ、今夜は俺と一緒に寝るか?」

 えっ! ベイカーさんと!?
 そう言えば、ベイカーさんと寝たことないなぁ……ちょっと恥ずかしいけど……きっと寂しそうにしていた私を励まそうとしてくれたのだろう。

「うん!」

 私は笑って了承した。ベイカーさんは頬を緩めて、頭を撫でてくれる。
 抱き上げられたまま村に入ると、大きな囲いが目に入った。中には牛が沢山放されている。

「ほれ! ミヅキここに来るの楽しみにしてたんだろ? 牛を見てこいよ」

 ベイカーさんは、牛を珍しそうに見てソワソワする私を地面に下ろす。そして、私の背中をポンッと押した。少し元気になった私は、シンクと共に駆け出した。

「うわぁー! 大っきいね!」

 柵の向こうに放牧される異世界の牛は、日本で見た牛より少し大きい気がする。
 色は茶色と白の模様だった。
 柵に上り眺めていると、牛達がワラワラと側に集まってきた。

「わぁ!」

 えさを持っていると思ったのか沢山集まってきた。驚いて柵から落ちそうになると、誰かが後ろから受け止めてくれた。

「大丈夫かい?」

 振り返ると、優しげな顔のおばさんが笑っていた。

「ありがとうございます」
「牛に好かれるなんて珍しいね」

 お礼を言って頭をペコッと下げる私に、おばさんは嬉しそうに言う。

「触ってもいいですか?」

 まだこっちを見ている牛に目を向けながら聞く。彼女は笑って頷き、柵まで抱き上げてくれた。牛達の頭に手を伸ばして撫でてやると、皆気持ちいいのか目をつむる。可愛い。

「あはは、こいつら気持ちよさそうにしてるよ!」
「――母さん!」

 牛の様子におばさんが豪快に笑った。その笑い声に気がついたのか、荷物を下ろしていたポルクスさんが慌てて駆けつけ、おばさんに声をかけた。

「あら! ポルクス、おかえり」

 おばさんはポルクスさんの顔を見ると、驚きに目を見開く。

「ポルクスさんのお母さん?」

 おばさんとポルクスさんを交互に見ながら尋ねる。おばさんは「そうだ」とにっこりと笑った。

「息子の知り合いかい? 私はこの村の村長をしてるエミリーだよ」
「凄ーい!」

 エミリーさんは女の人なのに村長さんをしてるなんて! 私は尊敬の眼差しを送る。

「旦那が死んじまって、仕方なくね。でも小さい村だから皆で助け合ってるんだよ。ポルクスもよく助けてくれるしね」

 ありがとうな! とポルクスさんの肩をバンッバンッと叩くエミリーさん。ポルクスさんは居心地悪そうだ。そして、話を逸らすように私を紹介してくれた。

「それより、この子は牛乳が欲しいらしいんだ。案内してやってくれよ」
「この小さい子が?」

 エミリーさんがびっくりして私を見下ろした。

「ああ、今流行はやってるハンバーグを考えたのもこの子なんだよ!」
「ミヅキです。よろしくお願いします。私、牛乳が沢山欲しいんです!」

 鼻息荒くエミリーさんに詰め寄る。

「どのくらい? 樽一個分くらいかな?」
「いいえ、このお金で買えるだけ欲しいんです!」

 私はお金が入った袋をドーンとエミリーさんに差し出した。その量を見て、村の皆が集まってきて顔を見合わせた。恐る恐るお金の袋を覗き込んでいる。

「君、一体何樽買う気なんだい?」
「足りませんか?」

 この日の為に頑張ってギルドで依頼を受けてお金を貯めたのに、少なかったかな……
 残念に思い、眉尻が下がっていく。そんな私の様子に村の人達が慌てて首を横に振った。

「いやいや! 多いんだよ。これほとんど銀貨だろ? この金額分買うと五十樽位になっちゃうよ」

 えっ! そんなに買えるの? 一樽にどのくらいの量が入るんだ?
 樽を見ると、まぁ標準な灯油缶位あるかな? てことは十八リットルは入るよな。一樽あたり銀貨三枚位――三千円ほどかと思うけど……

「一樽いくらですか?」
「一樽銀貨一枚だよ」

 えっ! それって千円くらいだよね!? 安すぎない!?
 予想以上の安さに驚いてしまった。

「他の村は牛乳をあまり飲まないからな、チーズとかなら運ぶのも楽なんだが……」

 ポルクスさんが、寂しそうに呟いた。
 わざわざここに買いに来てまで飲む人は少ないようだ。もったいない、しぼり立てなんて美味しいだろうに……

「保管が長いことできないからな」

 村の人達もしょうがないと苦笑し諦めているようだ。

「殺菌はしないんですか?」
「さっきん?」

 あまりにもったいないので、どんな保存方法をしているのか聞いてみた。
 皆なんだそれはと首を傾げる。まさかなにもしないで、そのまま出してるとか……?

「牛乳を六十五度程度の温度で、三十分位ゆっくり加熱するんです。生乳の中の菌が死滅しめつして、くさりにくくなると思います。それだけでも保存期間が延びるんじゃないかな!」

 私の言葉に村の人達がざわつく。

「後は冷たいところに置いておけば一週間くらいは持つと思いますよ! まぁ、早めに使うに越したことはないですけどね」
「それくらい保存期間が延びたら近くの町になら運べるな!」

 牛乳が売れるかもしれないと村の人達の声が明るくなった。

「後はそうだな……牛乳を使ったお料理とかも沢山ありますよ!」

 牛乳は色んな料理に使えるもんね! 私はニコッと笑った。

「ポルクス!」
「な、なんだよ」

 すると突然、エミリーさんが真剣な顔で叫んだ。ポルクスさんが母親の様子に驚き、後ずさる。しかし、エミリーさんは逃がすまいと彼の肩をがっちりと掴んだ。

「今すぐこの子と結婚しな!」

 本気の形相ぎょうそうだ。なんか目が血走ってて怖いなぁ……それに結婚って、ないない。
 心の中で冗談でしょと笑っていると、ポルクスさんがベイカーさんを見て顔色を悪くした。

「変なこと言うな! べ、ベイカーさん冗談ですからね!」

 ベイカーさんは笑顔で固まっている。

「ベイカーさん聞いてます? 嘘ですよ! 冗談! なぁ母さん!」
「あ、ああ……分かってるよ……冗談……だよな、もちろん」

 ポルクスさんがベイカーさんの肩を必死に揺らす。ベイカーさんはハッとして動き出す。そして、変な笑みを浮かべ、ポルクスさんの肩をグッと鷲掴わしづかみにした。

「ぐわぁ!」

 ポルクスさんが急に叫んだと思ったら、顔をしかめて膝をついている。痛そうに肩を押さえている彼に、「悪い悪い」とベイカーさんが謝っている。

「つい、力がこもっちゃった! あはは、ポルクスは大袈裟おおげさだなぁ~」

 乾いた笑いをしている……目が笑ってないよ。

「まったく、冗談も通じないんだから……」

 ポルクスさんはベイカーさんが掴んでいた肩をさすり、チラッと睨みながら呟いた。
 そんな冗談は置いといて、村の人達が殺菌をしてから牛乳を渡してくれると言うので、この日は村に泊まって、明日の朝に牛乳を受け取って出発することになった。
 村の人が、夜通し準備してくれるとのこと。お世話かけます。
 でも、牛乳楽しみだなぁ~、なにを作ろう! まずは、そのまま飲むのがやっぱり美味しいよねー! お風呂上がりに腰に手を当てて、こうグイッと!
 んー考えるだけでヨダレが出そうだ!
 あとはチーズに加工できるなら生クリームとかバターもできるかな?
 ちなみに、さっき出した金額分の牛乳を用意することはさすがにできないそうだ……残念。
 それならどの位買っていこうかな、とベイカーさんに相談する。すると彼は信じられないことを言った。

「五樽ぐらいでいいんじゃないか?」
「五樽!? そんなの全然足りない! もっと欲しいです!」
「だってそんなに持っていけないだろ!」
「収納魔法で持っていきます!」

 ベイカーさんが呆れているので、問題ないと首を横に振る。自慢じゃないが、副ギルドマスターであるセバスさんに教えてもらった収納魔法があるのだ。

「だからそれでも五樽ぐらいが限界だろ! これからも荷物が増えるかもしれないんだ、収納する空間に少し余裕を残しておかないと!」

 え? それでも……もっと入るよね?

「収納空間って、この樽なら五十樽でも余裕で入るよね?」

 不思議に思って尋ねた途端、ベイカーさんのこめかみがピクピクと震え始めた。
 あっ! これは私がなにかやらかした時の顔だ! やばい!
 私は逃げようとくるっと後ろを向くが……ガシッとあっさり捕まる。
 やはりA級冒険者からはそう簡単に逃げられないか……

「ミーヅーキー! それはどういうことだ!」
「ご、ごめんなさ~い!」

 ベイカーさんが私を抱き上げて、叫んだ。なにがまずかったのか分からないが、とりあえず謝って頭を隠す。
 ベイカーさんが言うには、普通の収納空間はたたみ一畳分位らしい。私はというと……

「はっ? この村ぐらいの空間があるのか?」

 いくら小さな村とはいえ面積はかなり大きい。大型のショッピングモール位はあるかな?
 ベイカーさんが村の広さを確認して唖然あぜんとしてる。私はそうだと頷いた。

「だって……空間を作るって言われたから……」

 大きな部屋を想像してしまった。まぁ想像してもこんなに大きな空間は作れないらしいが、私の高い魔力がそれを可能にしているみたいだ。

「どんな巨大な空間を作ってんだ……」

 ベイカーさんがガクッと項垂うなだれた。そしていつものごとく人前で話さないように、そして見せないように厳重に注意される。

「まぁ大量に入れるところを見られなければ、大丈夫だと思うが……」

 うーんと腕を組んで悩んでいる。気をつけて使いますからとなだめると、当たり前だと更に怒られた。牛乳はベイカーさん達の収納魔法にもしまって誤魔化し、倍の十樽分を頼むことに。
 なくなったら帰りにまた寄ればいいもんね!
 村の人達に牛乳の用意をお願いして、私達は夕食をいただき休むことになった。ベイカーさん達大人組は夕食後にお酒を出されて、いい気分で飲んでいる。

「ベイカーさん、もう寝ようよー」
「ああ、もうそんな時間か? よし寝るか」

 ほろ酔いのベイカーさんを揺すると、やっとお酒を置いて私と寝室へ向かってくれた。
 用意された部屋には質素なベッドが置いてあった。そこにベイカーさんと並んで寝っ転がる。
 ベイカーさんは酒で気分がよかったのか、すぐに眠りについてしまった。
 隣で気持ちよさそうに寝ているベイカーさんを見て、私は苦笑してはだけた布を掛けてあげる。自分もまた横になると、シンクが私の頭の横で丸くなり、寄り添って寝ている。

【シルバ……】

 いつもならシルバのフワフワの体に抱かれて寝るが、今夜はそれがない。私はシルバの温もりが恋しくてつい心の中で呟いた……

【ミヅキ、どうした?】

 するとシルバからすぐに返事が聞こえた。

【シルバ!? 今どこに居るの?】
【ミヅキがいる村を見下ろせる高台にいるぞ】

 私は近くにいるのかと起き上がって辺りを見回したが、ガックリとしてまた横になった。でも思ったよりも近くにいたことと、シルバの声を聞けて少しホッとする。

【シルバ……そんなに近くて臭いは大丈夫?】
【ああ、風上にいるから大丈夫だ。ミヅキは今なにしてるんだ?】
【シルバがいないから、ベイカーさんとシンクと寝てるよ】
【なに! ベイカーと寝てるのか……まぁしょうがないか……】

 少し不服そうな声だった。

【ふふ、シルバがいなくてちょっと寂しかったけど……声が聞けてよかった……】


 シルバの声を聞いて安心すると急に眠くなってきた。

【ああ、俺もだ……】

 シルバが答えるが返事ができない。

【ミヅキ、おやすみ】

 シルバは眠りにつく私にそっと語りかけた。


   ◆


「ミヅキおはよう」

 頭の上から声がする。
 まだ眠くてモゾモゾッと暖かいほうへ向かうと、硬いものに顔が当たった。おかしいなと思い目を開ける。それはベイカーさんの胸板だった。

「ベイカーさん、おはよぉ~」

 私は寝ぼけたままベイカーさんにギュッと抱きつき、硬い胸板に顔をすりすりこすりつける。
 うーん、やっぱりシルバのほうがいいなぁ~。ベイカーさんの腕の中も安心するけど、シルバのあのモフモフの毛並みにはかなわない。

【シンク~おはよぉー】

 今度はシンクを抱き上げてふわふわの羽に顔をり寄せる。

【あは、ミヅキくすぐったい!】

 そう言いながらもシンクも私に擦り寄ってくれた。
 三人でのそのそと起きて支度をして部屋を出る。リリアンさんと、旦那さんであるルンバさんはもうすでに起きていた。

「リリアンさん、おはよぉございます」

 挨拶をして近づく。キッチンには美味しそうな香りが漂っている。

「ミヅキちゃん、おはよう。ごはん食べられる? 泊まらせてもらったお礼に朝食を作ったのよ。昨日、ミヅキちゃんが教えてくれた、牛乳のシチューよ!」

 お皿を洗いながら挨拶を返してくる。そう言えば、昨日リリアンさん達にシチューの作り方を教えたんだった!

「わぁ食べたいです! あっ、私もお手伝います」
「じゃあ、旦那のところに行って味見してみてくれる?」

 リリアンさんは笑って料理を作るルンバさんのほうを見た。私は頷き、寸胴ずんどうのような大きな鍋でシチューを混ぜているルンバさんのもとに向かった。

「ルンバさんおはようございます」
「ミヅキ、おはよう。よく寝られたか?」

 挨拶をしながら近づくと、ルンバさんが鍋をかき混ぜつつ返事をした。

「うん。ベイカーさんが一緒に寝てくれたから」

 少し恥ずかしくなって、はにかみながら答えた。
 ルンバさんは「よかったな」と優しく笑ってくれる。そして、早速味見をしてくれと言って、スプーンでひとさじシチューをすくって、私の口元に運んだ。
 フーフーと少し冷ましてパクッと口にする。うん! 美味しい!
 クリーミーで優しい味つけ。さすがルンバさんだ、朝食にもってこい。
 十分いい味だけど、もう少しとろっとしててもいいかな?

「美味しいです。でももうちょっととろみがあったら、もっと美味しくなりませんか?」

 口をきながら提案してみる。

「とろみか……なるほど」

 ルンバさんは腕を組み、じっとシチューを見て考え込んだ。

「今日は朝だしこの位でいいと思います。芋を入れると溶けてとろみも増しますよ」

 そう教えると今度やってみると言ってメモを取っていた。
 ルンバさんの作った朝食は村の人達にも評判がよく、村のおばちゃん達が作り方を教えてもらっていた。この料理が有名になれば、村に牛乳を買いに来る人が増えるかもしれない。
 皆でご飯を食べ終え、村を出る準備をしていると、早速エミリーさんが牛乳を運んできてくれた。

「こっちの分が、ミヅキちゃんのだよ!」

 エミリーさんが、積んである樽をポンと叩いて教えてくれる。

「ありがとうございます! じゃこれお代です!」

 両手で銀貨を十枚渡した。エミリーさんはにっこり笑って受け取ってくれる。

「はい、確かに。こんなに沢山牛乳を買ってくれてありがとうね、これはおまけだよ!」
「いいんですか? 嬉しい!」

 なんと一樽サービスしてくれた!
 喜びのあまりぴょんと飛び跳ねてしまう。私はとびっきりの笑顔でお礼を言った。

「こっちはお店の分だよ!」

 リリアンさん達は四樽買ったようだ。一人一樽ずつ収納して残りは馬車に積むようなので、後で皆の分も収納しといてあげよう!

「じゃ収納しちまおう!」

 ベイカーさんが声をかけると、皆が自分の収納魔法でしまっていく。
 私も自分の分をしまっていくと……

「お嬢ちゃん……すげぇ入るな……」

 喜びのあまり浮かれてひょいひょいしまってる私を見て、村のおじちゃんが驚愕きょうがくしていた。
 あっ! つい全部しまっちゃった!
 ちらっとベイカーさんをうかがう。ポルクスさんと話していてこちらに気がついていない!

「収納する場所、この為に空っぽにしといたんです!」

 身振り手振りで誤魔化してみるが、

「それでも、凄い量だぞ……」

 唖然あぜんとしている。やはり無理があったか……

「うー……おじちゃん……このことベイカーさん達に内緒ね」

 お願いと手を合わせて首を傾げる。ここぞとばかりに思いっきり甘えた声を出してみた。
 すると多少効果があったのか、へらっと笑い「分かったよ」と約束してくれた。
 よし! これでベイカーさんにはバレないな!
 念には念をと、「絶対ね!」とおじちゃんと指切りをした。
 無事(?)牛乳を買えてホクホクの私達は、早速村を出発して王都へと向かう。
 ポルクスさんは出発するまでエミリーさんと話し込んでいたが、話し終わると渋い顔をして戻ってきた。それを見て、ベイカーさんがからかっている。
 まったくベイカーさん、子供みたい!
 ようやく皆出発する準備ができたようだ。

「じゃ行くよー!」

 リリアンさんが声をかけるので、皆で馬車に乗り込んだ。
 先程からかわれたポルクスさんが困った顔をしている。私は笑いかけ、手招きした。

「ポルクスさん、大丈夫? ベイカーさんになにか言われたの?」

 心配して顔を覗き込む。ポルクスさんはビクッと肩を揺らしたものの、なんでもないから気にするなと私の頭を撫でる。
 まぁ大丈夫ならいいけど……
 今度はルンバさんが御者ぎょしゃを務めるようだ。「行くぞー」と皆に声をかけ、馬車が動き出す。

「また来てなぁー!」

 村の人達が見送りに集まってくれて、手を振ってくれる。

「帰りも寄るねー!」

 返事をすると、皆更に大きく手を振った。また来るのが楽しみだなぁ!
 村を出てしばらく馬車で進むと、道沿いにシルバがちょこんと座って待っていた。

【シルバ!】

 私はルンバさんに馬車を止めてもらい、飛び出てシルバのもとまで駆け出した。

【ミヅキ!】

 シルバも私の姿に気づき駆け寄ってくる。そして、思いっきり鼻先を髪に埋めてきて、匂いをぐ。

【ああ、やっぱりミヅキの匂いをぐと安心する……】

 私は皆に頼み込んで、しばらくシルバの背に乗って馬車についていくことにした。ここからは人里はないので大丈夫だろうと、馬車から離れないのを条件に了承を貰った。

【ベイカーと寝てどうだった?】

 シルバは気にしていたのか、振り返ってそんなことを聞いてきた。心なしか面白くなさそうな表情を浮かべている。

【ベイカーさんも安心するけど……やっぱり硬いよね! シルバのこのふわふわの毛並みにはなにもかなわないよー】

 背中に顔をつけてスリスリと甘える。


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