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3巻
3-2
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【じゃあ、今日からまた俺と寝ような】
シルバが嬉しそうに、自分に擦り寄る私を見て言った。尻尾が上機嫌に揺れている。
【うん、シルバとシンクと寝るのが一番気持ちいいよね! ベイカーさん酔っ払うし、しばらくはいいや!】
今夜、寝るのが楽しみだ! 私はシルバとシンクをギュッと抱きしめた。
◆
――ミヅキ達が村を出て二日後、一組の商人達の馬車が村に寄った。
「牛乳を買いたいのですが」
「はいよ!」
早速声をかけて村人に交渉すると、村長が対応してくれた。ここの村は女性が村長のようだ。
「一樽銀貨一枚だよ! いくつ買うんだい?」
そう聞かれて私、ビルゲートは苦笑した。
「一樽で十分ですよ。何樽も買ったって持たないでしょう?」
「いや、うちのは冷えてる場所か収納魔法を使えるなら一週間は、持つよ!」
呆れるように笑っていると、自信満々にそう言われて驚いた。
「牛乳が一週間も持つのですか!」
なぜだと聞くが企業秘密だと教えてもらえない。
「ならとりあえず三樽買いましょう。その言葉が本当ならまた買いに来ますよ」
村長は商品を用意してくると言って、その場からいなくなった。
近くにいた村人にもどんなカラクリなのか尋ねてみる。が、やはり口を割らない。
「お兄さんも買ってくれるのかい?」
お兄さんもってことは、もう買いに来た商人が他にいるのか。驚いていると、自分達が来る少し前に大量に買っていった人達がいたという。
「へー、どこの商人ですかね?」
そんな奴いたかな?
聞けば商人ではなく、旅の途中の人達だという。しかも買ったのは小さな子供らしい。
牛乳を買う為にお金を貯めていたと聞き、更に驚いた。子供が牛乳を買う為に金を貯めるだと?
「また、その子の収納魔法が凄くてな! この樽を十ほど軽々入れてたよ!」
村人は笑って、信じられないことを言っている。牛乳樽を十樽だと!?
改めて樽を見つめた。決して小さいものではない。自分なら頑張っても三樽くらいが限界だろう。
興味を持ったが、なるべく顔には出さないように話を聞く。
「その子は料理の知識も凄くてな! 牛乳を使った料理も教えてくれたんだ。村の店で食べられるから是非味わっていってくれ」
いい客だと思ったのだろう。歓迎するよと言って、村人は肩を叩いて行ってしまった。
「おい、ビルゲートさん、その子もしかして……」
後ろにいた護衛の男が声をかけてきた。
「とりあえずお店に行ってみましょう。その料理、是非とも食べてみたい」
男の話を遮って、この村で少し休むことにした。
ちょうどその時、村長が樽を運んで戻ってきた。代金を支払い、荷馬車にしまっておく。そして、村長に先程の件を尋ねてみた。
「ここで美味しい料理が食べられると聞いたのですが……どこのお店に行けばいいですか?」
村長は人の好い笑みを浮かべ、店まで案内してくれた。
お礼を言って別れて店に入る。早速その料理を人数分頼むと、すぐに運ばれてきた。
見た目は白い煮込み料理のようだった。これは牛乳を温めてあるのか?
熱いから気をつけてと言われたので、冷ましながら口に運ぶ。
「う、美味い!」
「これは……」
初めて食べる味に手が止まらず、皆であっという間に完食してしまった。
「収納魔法に料理の知識……」
いいことを聞いた。私はニヤッと笑う。
「王都に行くと言ってましたね……目的地が一緒でよかったです」
「――おい! あの村にいた子って……」
村を出るなり、護衛を任せている冒険者のライアンが話しかけてきた。
「十中八九、あの町で有名なミヅキって子じゃないですかね」
「あの子は苦手だ……」
笑いながら答えるとライアンの顔が歪んだ。なにか因縁でもあるのか忌々しそうにしている。
「でも、商人としてとってもお近づきになりたいなぁ~。あの子が持ってきた商品をギルマスが隠してしまって、見せてもらってないのです。でも、凄く気になってるんですよね。あの時は全然喋れなかったから……」
先日、私はミヅキという子と商業ギルドで顔を合わせている。商業ギルドのギルドマスターも彼女を買っていて、気になっていたのだ。
ライアンは私の態度に渋面を作るが、冒険者達の事情など知らないし、興味もない。私は構わずに笑みを浮かべた。
「あの子に関わるのはおすすめしないぞ。きっと碌なことにならない」
ライアンがそう苦言を呈する。
「あれからギルマスの様子もおかしかったし……あの子にはなにか秘密がありそうなんですよね」
笑うのをやめられずに口の端がグッと上がった。
「金の匂いがするんですよ~」
冒険者達に、いつもの商人用の爽やかな笑顔を貼りつけて向き合う。冒険者達は、顔を顰めている。だが、金になりそうなことを前に、そんなものは些末な問題だ。
「王都で会うのが楽しみです!」
私は足取り軽やかに王都へ進んだ。
二 王都へ
「到~着!」
王都に着くなり、私は勢いよく馬車から飛び降りた!
馬車の旅に飽き始めていたので地面が嬉しい。土の感触を噛み締める。
「まだ着いてないぞ」
そんな私にベイカーさんが苦笑し、あれを見ろと後ろを指さす。
そこには王都に入る為、城門で手続きをする人や馬車の行列ができていた。
「えー! あれに並ぶの?」
某テーマパークばりの行列が見えてげんなりする。
「王都に入るにはしょうがないだろ」
そんなもんか……まぁ、町に入るだけでも身元確認するもんね。王都となればその規模も人数も桁違いだろう。ここは大人しく並ぶか……
「シルバのところに行ってていい?」
「ああ、警戒されそうだから、従魔ってことを今のうちに確認してもらっとこう。あと! グレートウルフだからな!」
どうせならシルバと並びたい。そう思って尋ねると、ベイカーさんに念押しされる。
おお! そうだった、忘れてた!
シルバは本来フェンリルだが、正直に種族名を告げると警戒されるし、目をつけられるかもしれない。そのため、聞かれたらグレートウルフと答えるようにと、ここに来る馬車の中で口酸っぱく言われていたのだ。
「はーい」
私は適当に返事をして、シルバのもとに向かった。
【シルバ~、一緒に並ぼう!】
シルバのもふもふな体に思いっきり飛びついた。
【乗っていい?】
窺うように見上げると、シルバは当たり前だと言って、乗りやすいように伏せをしてくれる。ありがたくシルバに乗り、馬車の隣に行ってもらう。
【王都に入るのに、この行列に並ぶんだって!】
【塀を乗り越えたほうが早いな】
シルバは面倒臭そうに王都の周りをグルッと囲む高い塀を見上げている。
【シルバ、この塀飛び越えられるの?】
びっくりしてしまう。王都の塀は私達の町の五倍以上ありそうな高さだ!
【途中、脚を引っ掛ければ行けるな】
【僕も翔べば行けるー!】
シンクが私達の頭の上で羽ばたいた。この二人なら余裕そうだ。
【いつかシンクが大きくなったら運んでもらえるかな】
【うん! ミヅキなら乗せてあげるよ!】
シンクに乗せてもらい空を飛ぶことを想像すると、胸が高鳴る。シンクも頼もしく頷いてくれて、つい嬉しくなり、もふもふしてしまった。
二人とじゃれていると時間があっという間に過ぎて、だいぶ列が進んでいた。
「ミヅキー! そろそろ順番がくるぞー」
ベイカーさんが馬車から声をかけてくる。
「はーい! ギルドカードを見せればいいんですよね?」
再度確認すると、バッグからギルドカードを取り出した。それをベイカーさんに向かってかざす。
「ああ、それで平気だ!」
いよいよ城門が近くなり、ベイカーさんも外に出てきた。どうしてわざわざ降りてきたの?
「俺は護衛だからな。ルンバ達とは別に確認事項があるし、依頼書も見せないといけないんだ」
私の顔に「なんで?」と書いてあったのだろう、丁寧に教えてくれた。
へー! 護衛の仕事も大変だなぁ~。
しかしさっきからなんか視線を感じる。チラチラと見られているようだ。
「ベイカーさん……なんか見られてない?」
確認するとベイカーさんがそうだなと頷いた。
やはりシルバが目立つのだろう、まぁかっこいいもんね!
「はぁ……」
一人納得してうんうんと頷く。そんな私を見下ろしながら、ベイカーさんがため息をついた。
え? なに?
「まったく、お前は……注目を浴びてるのが自分だと気づかないのか……本来ならギスギスするこの長蛇の列が、俺達の周りだけこんなに穏やかなのに」
そう言われて周囲を再度見回す。確かに周りにいる人々は優しい表情を浮かべて、こちらを見つめていた。中にはデレッと頬を緩めている人までいる。
「これだから目が離せん。ミヅキ、あまり離れるなよ!」
ベイカーさんは周囲を一瞥すると、私に囁いた。
そうこうしている内に前の列が二つに分かれた。両端に二人ずつ門番が立ち、書類と人数の確認をしている。
私達の馬車の番になると、リリアンさんが王都の商人から預かっていた書類を門番に渡した。中身を確認され、馬車に乗っている人数を聞かれている。
「あの従魔に乗ってる子も一緒です」
リリアンさんが私を指さした。門番がこちらに目を向けて、ギョッと二度見する。
「そ、そちらの魔獣が従魔なんですか?」
門番が信じられないと目を見開き尋ねてくるので、シルバの従魔の腕輪を見せる。
「確かに、従魔の腕輪です……ね、こちらは……グレートウルフですか?」
なんか大きくないかとヒソヒソと話し合っている。
「はい! ギルドカードです!」
私はこれ以上疑われる前にと、門番達に自分のカードをグイッと差し出した。
「あ、ありがとうな」
門番が受け取り確認する。
「君がテイマーなのか? じゃこれは君の従魔?」
「はい、シルバはとってもいい子です。可愛いしかっこいいし……中に入ってもいいですか?」
小さな私を見て、門番は更に驚いてしまったようだ。首を傾げて、懇願するように聞いてみた。
「ああ……大丈夫だよ」
私が小さい子供だからだろう、頭を撫でながら笑って許可してくれた。
なんだか門番さんの顔が優しくなった気がするなぁ。
そんなことを思っていると、ベイカーさんが後ろから咳払いをした。すると、門番が慌てて手を離して行っていいと促した。
よかった! シルバが大人しいからね。無事通れた!
「ありがとうございます! 門番さん、お仕事お疲れ様です!」
声をかけてバイバイと手を振り、馬車と一緒に前に進んだ。
次にベイカーさんが前に進み出た。不機嫌そうに門番達を睨みながら、自分のギルドカードと依頼書を出す。
「あっ! 前の馬車の護衛ですね。あの子可愛いですね。あの夫婦の娘さんですか?」
門番に聞かれるが、「さぁ?」と曖昧に答えている。
「俺達にお疲れ様ですって声掛けてくれる子なんて、なかなかいないよなー!」
もう一人の門番が言うと、相手もうんうんと同意するように頷いた。
「あの人達、お店を出す為に来たって書類に書いてあったし……お店に行けばまたあの子に会えるかな?」
「おいそれよりも、仕事してくれるか!?」
門番さんとベイカーさんが話しているがよく聞こえない。しかし、ベイカーさんの顔がますます不機嫌になっていくので、戻ってみることにした。
「ベイカーさん、どうしたの?」
近くに行こうとする。しかし、なんでもないからこっちに来るなと手でシッシッと追い払われた。
まったく、ベイカーさんわがままなんだから!
私はプーッと膨れながら、リリアンさん達のもとに向かった。
「あいつは、また余計なことをして……」
後ろからベイカーさんのため息が聞こえる。これは怒られる前に離れておいて正解だわ!
「見たかあの顔! 可愛いなぁ!」
「お兄さん! どこでお店出すんですかね? 俺、行きたいんで!」
「おいミヅキ。来て早々目立つなよ……」
ベイカーさんがなにか呟いたけど、無視無視!
チラッと振り返ると、先程の不機嫌な顔を引っ込めて、今度は笑顔で門番と話している。あの顔はなんか嘘をついてる顔だなぁ~。
「まぁいっか!」
それよりも初めての王都だ! ワクワクしながらその門をくぐった。
無事王都に入り、馬車で目的の場所に向かうべく街を進んで行く。とにかく人が多い。ベイカーさんがこれ以上目立つのはよくないと言って、私は馬車に入れられた。代わりにベイカーさんが外に出て、シルバと一緒に歩くことになった。
ベイカーさんとシルバが並ぶと違和感がない……かっこいい冒険者がかっこいい従魔を連れているように見える。
ムッ! シルバは私の従魔なのに!
なんだか面白くなくてちょっと怒っていると、大きな屋敷の前で馬車が止まった。リリアンさんとルンバさんが馬車を降りていく。すると、屋敷から男の人が慌てて出てきた。
「リリアンさん、ようこそおいでくださいました! お迎えに行けずにすみません」
ややおでこが広めの、薄い茶髪の小柄な男の人が、小走りでこちらに向かってくる。彼はリリアンさんの前にたどり着くと、頭をかいて謝った。
「マルコ様、このたびはよろしくお願いします」
リリアンさん達が男の人――マルコさんに頭を下げた。
「やめてください! 私のことは呼び捨てで構いません。こちらの無理なお願いを聞いていただき、本当に感謝しています。私達にできることならなんでもしますので仰ってくださいね」
今回リリアンさん達に仕事を依頼したのは貴族と聞いていたが、マルコさんは腰の低いとても気持ちのいい人だった。年齢はルンバさんと同じくらいの三十代後半くらいに見える。
聞くところによると、とある貴族の人が、彼に今回の話を持ち掛けたのだとか。マルコさんも爵位は低いとはいえ、貴族であるという。
「旦那様!」
屋敷から、執事らしきおじさんとメイド服姿の人達が慌てて出てきた。主人が自分達よりも早く客人を出迎えてしまって、相当焦っているようだ。
「エド! マリア! こちらが今日からお迎えするリリアンさんとルンバさん。それにドラゴン亭の皆さんだ! 粗相のないようにもてなしてくれ!」
そう声を張り上げるマルコさん。なんかテンション高いなぁ……
「旦那様、とりあえず皆さんを屋敷にご案内致しませんと」
執事のエドさんが屋敷前で騒ぐマルコさんを諫めた。
「ああ! すみません。どうぞこちらに」
マルコさんも屋敷の前にいたことを思い出したようだ。エドさんが馬車を誘導してくれ、ようやく屋敷の中に案内された。
「改めてご紹介を、私がドラゴン亭の女将のリリアンと申します。こちらが主人で料理人のルンバ、助手のポルクスです」
リリアンさんの紹介に、二人が頭を下げる。
「そしてこちらが、娘の(ような存在の)ミヅキと、護衛のA級冒険者のベイカーさんです。こちらは従魔達になります」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
娘だって……顔がニヤけるのを抑えて、私達もリリアンさんの後ろからおじぎをする。
「よろしくお願いします。私はリングス商会を経営するマルコ・リングスと申します。こちら執事のエドモンドとメイド長のマリアです。屋敷のことはこの二人になんでも聞いてください」
笑顔で自己紹介をしたマルコさんの後ろでは、エドさんとマリアさんが深く頭を下げている。
おお! この人がルンバさんが(頭髪を)心配してた商人さんか……言うほど後退してない気がするけどなぁ~。それより……
リアル執事! リアルメイド! きたー!
「王都に滞在中はマルコさんの屋敷にお世話になるのですか?」
リリアンさんがなぜか驚いている。
「はい、部屋もありますしそう考えておりましたが、宿を取ったほうがよろしいですか?」
「いえいえ! 私達庶民が貴族様の屋敷に泊まっていいものかと思いまして……」
マルコさんが先走ったかと申し訳なさそうにしている。それに、リリアンさんは勢いよく首を横に振り、少し困惑気味に言った。
リリアンさんの言うことはもっともだ。でも、マルコさんて貴族っぽくないなぁ~。
商人でもあるからかな? なんか親近感が湧く。
「いやー、貴族といっても商人からの成り上がりですから気にしないでください。ほぼ庶民ですから」
気にもしてないようで笑っているが、商人から貴族になったということは、凄く商才のある人なのでは?
私はマルコさんの腰の低さに、前世のサラリーマンのようなものを感じた。
「ふふふ」
思わず笑ってしまうと、マルコさんにじっと見られる。
「リリアンさんとルンバさんにこんなに可愛らしいお子さんがいたとは! うちの子とも歳が近そうだし仲良くしてください。今は妻と出かけてしまっているので、帰ってきたら挨拶をさせますね!」
「いえ! 私達からご挨拶に伺いますので、そこまで気を使わないでください」
リリアンさんが恐縮して言う。さすがにこっちから挨拶に伺わないと失礼だよね。
同じ歳くらいの子か……なんか複雑……おばさんくさくならないようにしないと……
普段、同じ歳くらいの女の子に会う機会があまりないので少し不安だ。
「旦那様、積もる話もおありでしょうがお客様は旅でお疲れでしょうから、一度部屋にご案内致しましょう」
執事のエドさんが気を使ってくれる。なんかとってもできる人っぽい!
「ああ! すみません、来てくださったのが嬉しくて、つい! さぁこちらです、荷物は運ばせるので、なんでもメイド達に申しつけてください!」
メイドさんがゾロゾロ現れると、私達の荷物を持ってくれた。
おー! リアルメイド! 皆可愛いなぁ~。
私はメイドさんの可愛い服を見て、ホクホクとその姿を目で追った。
「では、ご案内致します」
メイド長のマリアさんが声をかけ、先導して歩き出す。その後について行き、階段を上り左に曲がった。
「こちら、ルンバ様とリリアン様、ミヅキ様のお部屋です」
「えっ!」
思わず声が出てしまい、皆が振り返って私を見た。しまったと口を押さえる。
「ミヅキちゃんは一人で寝る?」
リリアンさんが声をかけてきた。
シルバ達もいるしどうしようかと迷っていると、マリアさんが口を開いた。
「では、お隣の部屋をミヅキ様のお部屋に。沢山あるので気になさらないでください」
「すみません……」
わがままを言って申し訳ないなぁ……。私はしょんぼりと俯いた。
「大丈夫ですよ。従魔達がお部屋に入りきらないでしょうから。こんなに大きな従魔とは知らずにこちらの配慮が足りませんでした、申し訳ございません」
「い、いえ! 私のわがままを聞いてくれて嬉しいです。シルバ達はとってもいい子なので迷惑はかけないと思います!」
シルバとシンクを撫でると、二人は嬉しそうに私に擦り寄ってくる。
「ふふ、本当にミヅキ様が好きなんですね。これは別の部屋にする訳にはいきませんね」
マリアさんが私達の様子を見て、「納得です」と言いながら微笑んだ。
「寂しくなったらいつでも部屋にくればいいわ」
リリアンさんが頭を撫でながら、笑顔で言葉をかけてくれる。皆優しいなぁ……
「そのお隣がポルクス様とベイカー様のお部屋になります」
「ミヅキ、寂しくなったら俺達の部屋に来てもいいぞ! なっ、ポルクス」
ポルクスさんも笑って頷いてくれる。
へへっ、ありがたい。でも行くならリリアンさん達の部屋がいいなぁ!
とは、口には出さないけどね……
各自部屋に入って荷物を置くことになり、私もシルバ達と用意された部屋に入った。
「わぁ~! 広ーい!」
綺麗な部屋に興奮して、色々見たり触ったりしてしまう。ベイカーさんの家の部屋より何倍も広い!
「ふふっ」
メイドさんが興奮する私に思わずという感じで笑っている。私はハッとして固まった。
「はしゃいじゃって、すみません……」
謝ると、メイドさんが慌てた様子で口を開く。
「申し訳ございません。ミヅキ様が可愛らしくて、思わず笑ってしまいました」
今度はメイドさんのほうが申し訳なさそうに俯いている。
私は側に近づき、彼女の顔を下から覗き込む。そして、きゅっと両手を握った。突然の私の行動に、メイドさんがびっくりして目を見開く。その姿にふふふっと笑みが零れた。
「これでおあいこですね」
お互いに笑ったし。ウインクをすると、メイドさんはぱちぱちと目を瞬いて、やがて嬉しそうに頷いてくれた。
荷物を置いた後、一度サロンルームに集まることになった。これからについて色々と話し合いをするそうだ。
「お嬢ちゃんは遊んでてもいいよ」
マルコさんに言われるが、リリアンさんがちょっと困った顔をした。
まぁ新作のこととか、私も一緒に考えて来たからなぁ……
「私もお手伝いをするので、お話に参加させてください」
リリアンさんの隣にちょこんと座った。
「小さいのにしっかりしてますね、うちの子にも見習わせたいです」
マルコさんが感心している。へへ! 褒められて悪い気はしないね!
早速、マルコさんが話し始める。
シルバが嬉しそうに、自分に擦り寄る私を見て言った。尻尾が上機嫌に揺れている。
【うん、シルバとシンクと寝るのが一番気持ちいいよね! ベイカーさん酔っ払うし、しばらくはいいや!】
今夜、寝るのが楽しみだ! 私はシルバとシンクをギュッと抱きしめた。
◆
――ミヅキ達が村を出て二日後、一組の商人達の馬車が村に寄った。
「牛乳を買いたいのですが」
「はいよ!」
早速声をかけて村人に交渉すると、村長が対応してくれた。ここの村は女性が村長のようだ。
「一樽銀貨一枚だよ! いくつ買うんだい?」
そう聞かれて私、ビルゲートは苦笑した。
「一樽で十分ですよ。何樽も買ったって持たないでしょう?」
「いや、うちのは冷えてる場所か収納魔法を使えるなら一週間は、持つよ!」
呆れるように笑っていると、自信満々にそう言われて驚いた。
「牛乳が一週間も持つのですか!」
なぜだと聞くが企業秘密だと教えてもらえない。
「ならとりあえず三樽買いましょう。その言葉が本当ならまた買いに来ますよ」
村長は商品を用意してくると言って、その場からいなくなった。
近くにいた村人にもどんなカラクリなのか尋ねてみる。が、やはり口を割らない。
「お兄さんも買ってくれるのかい?」
お兄さんもってことは、もう買いに来た商人が他にいるのか。驚いていると、自分達が来る少し前に大量に買っていった人達がいたという。
「へー、どこの商人ですかね?」
そんな奴いたかな?
聞けば商人ではなく、旅の途中の人達だという。しかも買ったのは小さな子供らしい。
牛乳を買う為にお金を貯めていたと聞き、更に驚いた。子供が牛乳を買う為に金を貯めるだと?
「また、その子の収納魔法が凄くてな! この樽を十ほど軽々入れてたよ!」
村人は笑って、信じられないことを言っている。牛乳樽を十樽だと!?
改めて樽を見つめた。決して小さいものではない。自分なら頑張っても三樽くらいが限界だろう。
興味を持ったが、なるべく顔には出さないように話を聞く。
「その子は料理の知識も凄くてな! 牛乳を使った料理も教えてくれたんだ。村の店で食べられるから是非味わっていってくれ」
いい客だと思ったのだろう。歓迎するよと言って、村人は肩を叩いて行ってしまった。
「おい、ビルゲートさん、その子もしかして……」
後ろにいた護衛の男が声をかけてきた。
「とりあえずお店に行ってみましょう。その料理、是非とも食べてみたい」
男の話を遮って、この村で少し休むことにした。
ちょうどその時、村長が樽を運んで戻ってきた。代金を支払い、荷馬車にしまっておく。そして、村長に先程の件を尋ねてみた。
「ここで美味しい料理が食べられると聞いたのですが……どこのお店に行けばいいですか?」
村長は人の好い笑みを浮かべ、店まで案内してくれた。
お礼を言って別れて店に入る。早速その料理を人数分頼むと、すぐに運ばれてきた。
見た目は白い煮込み料理のようだった。これは牛乳を温めてあるのか?
熱いから気をつけてと言われたので、冷ましながら口に運ぶ。
「う、美味い!」
「これは……」
初めて食べる味に手が止まらず、皆であっという間に完食してしまった。
「収納魔法に料理の知識……」
いいことを聞いた。私はニヤッと笑う。
「王都に行くと言ってましたね……目的地が一緒でよかったです」
「――おい! あの村にいた子って……」
村を出るなり、護衛を任せている冒険者のライアンが話しかけてきた。
「十中八九、あの町で有名なミヅキって子じゃないですかね」
「あの子は苦手だ……」
笑いながら答えるとライアンの顔が歪んだ。なにか因縁でもあるのか忌々しそうにしている。
「でも、商人としてとってもお近づきになりたいなぁ~。あの子が持ってきた商品をギルマスが隠してしまって、見せてもらってないのです。でも、凄く気になってるんですよね。あの時は全然喋れなかったから……」
先日、私はミヅキという子と商業ギルドで顔を合わせている。商業ギルドのギルドマスターも彼女を買っていて、気になっていたのだ。
ライアンは私の態度に渋面を作るが、冒険者達の事情など知らないし、興味もない。私は構わずに笑みを浮かべた。
「あの子に関わるのはおすすめしないぞ。きっと碌なことにならない」
ライアンがそう苦言を呈する。
「あれからギルマスの様子もおかしかったし……あの子にはなにか秘密がありそうなんですよね」
笑うのをやめられずに口の端がグッと上がった。
「金の匂いがするんですよ~」
冒険者達に、いつもの商人用の爽やかな笑顔を貼りつけて向き合う。冒険者達は、顔を顰めている。だが、金になりそうなことを前に、そんなものは些末な問題だ。
「王都で会うのが楽しみです!」
私は足取り軽やかに王都へ進んだ。
二 王都へ
「到~着!」
王都に着くなり、私は勢いよく馬車から飛び降りた!
馬車の旅に飽き始めていたので地面が嬉しい。土の感触を噛み締める。
「まだ着いてないぞ」
そんな私にベイカーさんが苦笑し、あれを見ろと後ろを指さす。
そこには王都に入る為、城門で手続きをする人や馬車の行列ができていた。
「えー! あれに並ぶの?」
某テーマパークばりの行列が見えてげんなりする。
「王都に入るにはしょうがないだろ」
そんなもんか……まぁ、町に入るだけでも身元確認するもんね。王都となればその規模も人数も桁違いだろう。ここは大人しく並ぶか……
「シルバのところに行ってていい?」
「ああ、警戒されそうだから、従魔ってことを今のうちに確認してもらっとこう。あと! グレートウルフだからな!」
どうせならシルバと並びたい。そう思って尋ねると、ベイカーさんに念押しされる。
おお! そうだった、忘れてた!
シルバは本来フェンリルだが、正直に種族名を告げると警戒されるし、目をつけられるかもしれない。そのため、聞かれたらグレートウルフと答えるようにと、ここに来る馬車の中で口酸っぱく言われていたのだ。
「はーい」
私は適当に返事をして、シルバのもとに向かった。
【シルバ~、一緒に並ぼう!】
シルバのもふもふな体に思いっきり飛びついた。
【乗っていい?】
窺うように見上げると、シルバは当たり前だと言って、乗りやすいように伏せをしてくれる。ありがたくシルバに乗り、馬車の隣に行ってもらう。
【王都に入るのに、この行列に並ぶんだって!】
【塀を乗り越えたほうが早いな】
シルバは面倒臭そうに王都の周りをグルッと囲む高い塀を見上げている。
【シルバ、この塀飛び越えられるの?】
びっくりしてしまう。王都の塀は私達の町の五倍以上ありそうな高さだ!
【途中、脚を引っ掛ければ行けるな】
【僕も翔べば行けるー!】
シンクが私達の頭の上で羽ばたいた。この二人なら余裕そうだ。
【いつかシンクが大きくなったら運んでもらえるかな】
【うん! ミヅキなら乗せてあげるよ!】
シンクに乗せてもらい空を飛ぶことを想像すると、胸が高鳴る。シンクも頼もしく頷いてくれて、つい嬉しくなり、もふもふしてしまった。
二人とじゃれていると時間があっという間に過ぎて、だいぶ列が進んでいた。
「ミヅキー! そろそろ順番がくるぞー」
ベイカーさんが馬車から声をかけてくる。
「はーい! ギルドカードを見せればいいんですよね?」
再度確認すると、バッグからギルドカードを取り出した。それをベイカーさんに向かってかざす。
「ああ、それで平気だ!」
いよいよ城門が近くなり、ベイカーさんも外に出てきた。どうしてわざわざ降りてきたの?
「俺は護衛だからな。ルンバ達とは別に確認事項があるし、依頼書も見せないといけないんだ」
私の顔に「なんで?」と書いてあったのだろう、丁寧に教えてくれた。
へー! 護衛の仕事も大変だなぁ~。
しかしさっきからなんか視線を感じる。チラチラと見られているようだ。
「ベイカーさん……なんか見られてない?」
確認するとベイカーさんがそうだなと頷いた。
やはりシルバが目立つのだろう、まぁかっこいいもんね!
「はぁ……」
一人納得してうんうんと頷く。そんな私を見下ろしながら、ベイカーさんがため息をついた。
え? なに?
「まったく、お前は……注目を浴びてるのが自分だと気づかないのか……本来ならギスギスするこの長蛇の列が、俺達の周りだけこんなに穏やかなのに」
そう言われて周囲を再度見回す。確かに周りにいる人々は優しい表情を浮かべて、こちらを見つめていた。中にはデレッと頬を緩めている人までいる。
「これだから目が離せん。ミヅキ、あまり離れるなよ!」
ベイカーさんは周囲を一瞥すると、私に囁いた。
そうこうしている内に前の列が二つに分かれた。両端に二人ずつ門番が立ち、書類と人数の確認をしている。
私達の馬車の番になると、リリアンさんが王都の商人から預かっていた書類を門番に渡した。中身を確認され、馬車に乗っている人数を聞かれている。
「あの従魔に乗ってる子も一緒です」
リリアンさんが私を指さした。門番がこちらに目を向けて、ギョッと二度見する。
「そ、そちらの魔獣が従魔なんですか?」
門番が信じられないと目を見開き尋ねてくるので、シルバの従魔の腕輪を見せる。
「確かに、従魔の腕輪です……ね、こちらは……グレートウルフですか?」
なんか大きくないかとヒソヒソと話し合っている。
「はい! ギルドカードです!」
私はこれ以上疑われる前にと、門番達に自分のカードをグイッと差し出した。
「あ、ありがとうな」
門番が受け取り確認する。
「君がテイマーなのか? じゃこれは君の従魔?」
「はい、シルバはとってもいい子です。可愛いしかっこいいし……中に入ってもいいですか?」
小さな私を見て、門番は更に驚いてしまったようだ。首を傾げて、懇願するように聞いてみた。
「ああ……大丈夫だよ」
私が小さい子供だからだろう、頭を撫でながら笑って許可してくれた。
なんだか門番さんの顔が優しくなった気がするなぁ。
そんなことを思っていると、ベイカーさんが後ろから咳払いをした。すると、門番が慌てて手を離して行っていいと促した。
よかった! シルバが大人しいからね。無事通れた!
「ありがとうございます! 門番さん、お仕事お疲れ様です!」
声をかけてバイバイと手を振り、馬車と一緒に前に進んだ。
次にベイカーさんが前に進み出た。不機嫌そうに門番達を睨みながら、自分のギルドカードと依頼書を出す。
「あっ! 前の馬車の護衛ですね。あの子可愛いですね。あの夫婦の娘さんですか?」
門番に聞かれるが、「さぁ?」と曖昧に答えている。
「俺達にお疲れ様ですって声掛けてくれる子なんて、なかなかいないよなー!」
もう一人の門番が言うと、相手もうんうんと同意するように頷いた。
「あの人達、お店を出す為に来たって書類に書いてあったし……お店に行けばまたあの子に会えるかな?」
「おいそれよりも、仕事してくれるか!?」
門番さんとベイカーさんが話しているがよく聞こえない。しかし、ベイカーさんの顔がますます不機嫌になっていくので、戻ってみることにした。
「ベイカーさん、どうしたの?」
近くに行こうとする。しかし、なんでもないからこっちに来るなと手でシッシッと追い払われた。
まったく、ベイカーさんわがままなんだから!
私はプーッと膨れながら、リリアンさん達のもとに向かった。
「あいつは、また余計なことをして……」
後ろからベイカーさんのため息が聞こえる。これは怒られる前に離れておいて正解だわ!
「見たかあの顔! 可愛いなぁ!」
「お兄さん! どこでお店出すんですかね? 俺、行きたいんで!」
「おいミヅキ。来て早々目立つなよ……」
ベイカーさんがなにか呟いたけど、無視無視!
チラッと振り返ると、先程の不機嫌な顔を引っ込めて、今度は笑顔で門番と話している。あの顔はなんか嘘をついてる顔だなぁ~。
「まぁいっか!」
それよりも初めての王都だ! ワクワクしながらその門をくぐった。
無事王都に入り、馬車で目的の場所に向かうべく街を進んで行く。とにかく人が多い。ベイカーさんがこれ以上目立つのはよくないと言って、私は馬車に入れられた。代わりにベイカーさんが外に出て、シルバと一緒に歩くことになった。
ベイカーさんとシルバが並ぶと違和感がない……かっこいい冒険者がかっこいい従魔を連れているように見える。
ムッ! シルバは私の従魔なのに!
なんだか面白くなくてちょっと怒っていると、大きな屋敷の前で馬車が止まった。リリアンさんとルンバさんが馬車を降りていく。すると、屋敷から男の人が慌てて出てきた。
「リリアンさん、ようこそおいでくださいました! お迎えに行けずにすみません」
ややおでこが広めの、薄い茶髪の小柄な男の人が、小走りでこちらに向かってくる。彼はリリアンさんの前にたどり着くと、頭をかいて謝った。
「マルコ様、このたびはよろしくお願いします」
リリアンさん達が男の人――マルコさんに頭を下げた。
「やめてください! 私のことは呼び捨てで構いません。こちらの無理なお願いを聞いていただき、本当に感謝しています。私達にできることならなんでもしますので仰ってくださいね」
今回リリアンさん達に仕事を依頼したのは貴族と聞いていたが、マルコさんは腰の低いとても気持ちのいい人だった。年齢はルンバさんと同じくらいの三十代後半くらいに見える。
聞くところによると、とある貴族の人が、彼に今回の話を持ち掛けたのだとか。マルコさんも爵位は低いとはいえ、貴族であるという。
「旦那様!」
屋敷から、執事らしきおじさんとメイド服姿の人達が慌てて出てきた。主人が自分達よりも早く客人を出迎えてしまって、相当焦っているようだ。
「エド! マリア! こちらが今日からお迎えするリリアンさんとルンバさん。それにドラゴン亭の皆さんだ! 粗相のないようにもてなしてくれ!」
そう声を張り上げるマルコさん。なんかテンション高いなぁ……
「旦那様、とりあえず皆さんを屋敷にご案内致しませんと」
執事のエドさんが屋敷前で騒ぐマルコさんを諫めた。
「ああ! すみません。どうぞこちらに」
マルコさんも屋敷の前にいたことを思い出したようだ。エドさんが馬車を誘導してくれ、ようやく屋敷の中に案内された。
「改めてご紹介を、私がドラゴン亭の女将のリリアンと申します。こちらが主人で料理人のルンバ、助手のポルクスです」
リリアンさんの紹介に、二人が頭を下げる。
「そしてこちらが、娘の(ような存在の)ミヅキと、護衛のA級冒険者のベイカーさんです。こちらは従魔達になります」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
娘だって……顔がニヤけるのを抑えて、私達もリリアンさんの後ろからおじぎをする。
「よろしくお願いします。私はリングス商会を経営するマルコ・リングスと申します。こちら執事のエドモンドとメイド長のマリアです。屋敷のことはこの二人になんでも聞いてください」
笑顔で自己紹介をしたマルコさんの後ろでは、エドさんとマリアさんが深く頭を下げている。
おお! この人がルンバさんが(頭髪を)心配してた商人さんか……言うほど後退してない気がするけどなぁ~。それより……
リアル執事! リアルメイド! きたー!
「王都に滞在中はマルコさんの屋敷にお世話になるのですか?」
リリアンさんがなぜか驚いている。
「はい、部屋もありますしそう考えておりましたが、宿を取ったほうがよろしいですか?」
「いえいえ! 私達庶民が貴族様の屋敷に泊まっていいものかと思いまして……」
マルコさんが先走ったかと申し訳なさそうにしている。それに、リリアンさんは勢いよく首を横に振り、少し困惑気味に言った。
リリアンさんの言うことはもっともだ。でも、マルコさんて貴族っぽくないなぁ~。
商人でもあるからかな? なんか親近感が湧く。
「いやー、貴族といっても商人からの成り上がりですから気にしないでください。ほぼ庶民ですから」
気にもしてないようで笑っているが、商人から貴族になったということは、凄く商才のある人なのでは?
私はマルコさんの腰の低さに、前世のサラリーマンのようなものを感じた。
「ふふふ」
思わず笑ってしまうと、マルコさんにじっと見られる。
「リリアンさんとルンバさんにこんなに可愛らしいお子さんがいたとは! うちの子とも歳が近そうだし仲良くしてください。今は妻と出かけてしまっているので、帰ってきたら挨拶をさせますね!」
「いえ! 私達からご挨拶に伺いますので、そこまで気を使わないでください」
リリアンさんが恐縮して言う。さすがにこっちから挨拶に伺わないと失礼だよね。
同じ歳くらいの子か……なんか複雑……おばさんくさくならないようにしないと……
普段、同じ歳くらいの女の子に会う機会があまりないので少し不安だ。
「旦那様、積もる話もおありでしょうがお客様は旅でお疲れでしょうから、一度部屋にご案内致しましょう」
執事のエドさんが気を使ってくれる。なんかとってもできる人っぽい!
「ああ! すみません、来てくださったのが嬉しくて、つい! さぁこちらです、荷物は運ばせるので、なんでもメイド達に申しつけてください!」
メイドさんがゾロゾロ現れると、私達の荷物を持ってくれた。
おー! リアルメイド! 皆可愛いなぁ~。
私はメイドさんの可愛い服を見て、ホクホクとその姿を目で追った。
「では、ご案内致します」
メイド長のマリアさんが声をかけ、先導して歩き出す。その後について行き、階段を上り左に曲がった。
「こちら、ルンバ様とリリアン様、ミヅキ様のお部屋です」
「えっ!」
思わず声が出てしまい、皆が振り返って私を見た。しまったと口を押さえる。
「ミヅキちゃんは一人で寝る?」
リリアンさんが声をかけてきた。
シルバ達もいるしどうしようかと迷っていると、マリアさんが口を開いた。
「では、お隣の部屋をミヅキ様のお部屋に。沢山あるので気になさらないでください」
「すみません……」
わがままを言って申し訳ないなぁ……。私はしょんぼりと俯いた。
「大丈夫ですよ。従魔達がお部屋に入りきらないでしょうから。こんなに大きな従魔とは知らずにこちらの配慮が足りませんでした、申し訳ございません」
「い、いえ! 私のわがままを聞いてくれて嬉しいです。シルバ達はとってもいい子なので迷惑はかけないと思います!」
シルバとシンクを撫でると、二人は嬉しそうに私に擦り寄ってくる。
「ふふ、本当にミヅキ様が好きなんですね。これは別の部屋にする訳にはいきませんね」
マリアさんが私達の様子を見て、「納得です」と言いながら微笑んだ。
「寂しくなったらいつでも部屋にくればいいわ」
リリアンさんが頭を撫でながら、笑顔で言葉をかけてくれる。皆優しいなぁ……
「そのお隣がポルクス様とベイカー様のお部屋になります」
「ミヅキ、寂しくなったら俺達の部屋に来てもいいぞ! なっ、ポルクス」
ポルクスさんも笑って頷いてくれる。
へへっ、ありがたい。でも行くならリリアンさん達の部屋がいいなぁ!
とは、口には出さないけどね……
各自部屋に入って荷物を置くことになり、私もシルバ達と用意された部屋に入った。
「わぁ~! 広ーい!」
綺麗な部屋に興奮して、色々見たり触ったりしてしまう。ベイカーさんの家の部屋より何倍も広い!
「ふふっ」
メイドさんが興奮する私に思わずという感じで笑っている。私はハッとして固まった。
「はしゃいじゃって、すみません……」
謝ると、メイドさんが慌てた様子で口を開く。
「申し訳ございません。ミヅキ様が可愛らしくて、思わず笑ってしまいました」
今度はメイドさんのほうが申し訳なさそうに俯いている。
私は側に近づき、彼女の顔を下から覗き込む。そして、きゅっと両手を握った。突然の私の行動に、メイドさんがびっくりして目を見開く。その姿にふふふっと笑みが零れた。
「これでおあいこですね」
お互いに笑ったし。ウインクをすると、メイドさんはぱちぱちと目を瞬いて、やがて嬉しそうに頷いてくれた。
荷物を置いた後、一度サロンルームに集まることになった。これからについて色々と話し合いをするそうだ。
「お嬢ちゃんは遊んでてもいいよ」
マルコさんに言われるが、リリアンさんがちょっと困った顔をした。
まぁ新作のこととか、私も一緒に考えて来たからなぁ……
「私もお手伝いをするので、お話に参加させてください」
リリアンさんの隣にちょこんと座った。
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マルコさんが感心している。へへ! 褒められて悪い気はしないね!
早速、マルコさんが話し始める。
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