ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩

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虹色の虫2

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【とりあえずリジィを村に帰して儀式を遅らせて貰おう!その間に…雨が降らなくなった原因を解明しないとかな…】

「リジィ!私も綺麗なお姉さんが生贄になるのなんて許せない!力を貸すよ!」

「ミヅキが?」

「私はこう見えても冒険者なんだよ!どうにかお姉さんを救ってみせる!だからリジィは村に帰って儀式を遅らせて欲しい!」

「ミヅキ…なんで見ず知らずの僕を助けてくれるんだ…」

「困ってる人を助けるのに理由なんている?」

ミヅキは立ち上がりリジィに手を伸ばす、リジィはミヅキの小さい手を見つめ…力強く握りしめた!


リジィをシルバに乗せると…

「リジィしっかりとシルバに捕まっててね村まで送るから!私はシンクと雨の原因を調べて来る」

「ありがとう…ミヅキ」

「お礼は早いよ!それは解決してからね!」

【シルバよろしくね!】

【ああ…シンク、コハクミヅキを頼むぞ。ミヅキは無理するなよ!】

【【【はい!(きゃん!)】】】

さぁ急げと二手に別れてはしり出した!

【とりあえず村の西の方に行ってみよう!リジィが言うには雨が降る前は西の方が暗くなるって言ってたから!】

【西だね!ならしょっぱい水の方だね!】

【えっ海の方って事?】

【うん!僕がさっき飛んだ時に東の方に人の住まいが見えたよ】

【海か…海があるなら雨は降りそうな気がするけどなぁ…】

ミヅキ達はとりあえず海に向かって飛び立っていった…。

海に着くと波が高くうねり荒々しく水しぶきが上がる!

【何これ?なんでこんなに荒れてるの?】

【僕が来た時もこんな感じだったよ?】

【嵐?それにしては雨も降ってないし…なんかおかしいなぁ…】

【きゃん!きゃん!】

コハクがピンと鼻先を伸ばして何かを教えようとしている…シンクがその方向に進むと…さらに風が強くなり…ゴロゴロと音が轟、雲が広がっていた…。

【あれは…雨雲?なら雨が降ってもいいのに…】

【ミヅキ!なんかいるよ!】

黒い雲が広がったと思うと…サァーと雲を切り裂いて雲が散っていった…すると空が現れ雨雲が消えていく…。

【なんで雲が?】

ミヅキがじぃーっと目を凝らすと…二羽の大きな鳥の様なものが激しく鳴きあっていた…。

【シンク!あれ!なんか大きな鳥さんが喧嘩してる!?】

【なんか…言い争ってる見たい…お前が悪いとか…お前のせいだ…とか】

【あのふたりが原因なのかも!どうにか喧嘩をやめさせられないかな?】

【倒しちゃっていいの?】

【それは駄目だよ!何か悪い事をしたのかもわからないのに!】

【なら…】

シンクが炎の渦を作るとじわじわと喧嘩をしている二匹に近づける…。

炎に気がついた二羽だったが既に周りは火に囲まれている…隙間を逃げようと陸地の方に向かうとシンクが逃げ道を塞いだ。

【君達!なんで喧嘩してるの?】

シンクが炎で囲みながら話しかける。

「ギャーギャー!」

「グワァーグワァー!」

【なんだって?】

【うーん…なんかこいつが悪いとかあいつが悪いしか言わない…】

【なんか…興奮しちゃってるのかな?】

どうしよう…とミヅキが困っていると…二羽が急にビクッとすると…シナシナっと力なく地面に落ちていった…。

【キャン!】

【あっシルバだ!】

振り返りとシルバが二羽に向かって威圧を放っていた!

【ミヅキが質問をしている、お前らは素直に従うんだ…】

「キャ…」

「クワァ…」

二羽が怯えるように返事をした…。

【で?どんな感じ?】

ミヅキが話を聞いたシルバとシンクを見ると…

【うーん…なんか喧嘩してたみたい】

シンクが言うと…

【それはわかるよ…喧嘩の原因は?】

【なんかこっちの子の好物をあっちの子が取っちゃった事が原因で…それが積もり積もってずっと続いてるみたい】

【なにそれ!?雨が降らないのはなんか原因があるの?】

シンクが訳すと…

【こっちの金色のやつが雷鳥でこっちの水色のやつが風鳥らしい…金色が雲を作って水色が風で大きくして雨を降らしていたらしい】

【それで喧嘩したから雨が降らなくなったの?】

ミヅキが呆れると…二羽が急に羽根を広げる。

【なんか…その取り合った好物が雨を降らせるためには必要な食べ物なんだって…】

【それってどんな物なの?】

「ギャー!」

「グワァー!」

【虹色に光る雨虫だって…】

【それって…!】

ミヅキが捕まえた虹色の虫を取り出すと…

「ギャッ!ギャー!」

「グワァッー!」

二匹が騒ぎ出す。

【黙れ!】

シルバが吼えると、シュンと大人しくなる…

【シルバ!そんなに怯えさせないの!】

ミヅキは二羽に近づくと…

「これね…一匹しかいないの…でも二人なら仲良く分けて食べられるよね?ずっと一緒にいた大切な仲間なんでしょ?」

二羽を撫でると気持ちよさそうにして気まずそうにチラッと目を合わせる…。

「もし…仲良くしてくれるなら…この近くの村の人に頼んで虫を捕まえてくれるように頼んであげるよ!」

ミヅキの言葉に二羽は嬉しそうに羽根を羽ばたかせる。
そしてミヅキから虫を受け取ると仲良く分けて食べ出した。

「だから…お願いこれからも仲良く雨を降らしてあげて…あなた達の喧嘩でこの先の村の人達が困っているの…」

二羽は目を合わせると一緒に飛び立った!
空中で二匹がダンスを踊るように飛んでいるとみるみると雲が膨れ上がる!

【雨を降らしてくれるようだな…】

「ありがとう~!雷鳥さんに風鳥さん!これからも仲良くねー!」

ミヅキは二匹にお礼を言うと…急いで村に向かって行った!


その頃村では着々と生贄の儀式の準備が進んでいた…。

「お願いだ!もう少し…もう少し様子を見てください!姉さんを殺さないで!」

「リジィ…俺達だって好きでロミを死なせるんじゃ無いんだ…村の為なんだわかってくれ…」

「何が村の為だ!コレで雨が降らなかったらどうするんだ!そしたら姉さんは死に損じゃないか!」

「リジィ…いいのよ…私が生贄になる事で雨が降るかも知れない…それでみんなが助かるなら…」

「姉さん…」

リジィが力無く肩を落としていると…

「お、おい!空に何か出たらしぞ!水神様の使いだって言ってる!」

(ミヅキ?間に合ったのか?)

村の人達は急いで広場に集まる、リジィ達も後を追うと…

空には赤い鳥に乗ってマントに身を包んだ人が村の人達を見下ろしていた…。

(ミヅキ…にしては大きい…でもあの鳥はミヅキといた鳥だ…)

リジィが心配そうに見つめていると…

『私は…水神の使い…この村に雨を届けにきた…』

「おお!水神様の使い!お願いします!この通り生贄も用意致しました!」

『馬鹿者!』

水神の使いが怒鳴り声をあげる!

『その娘の命で雨を降らせようとするなど烏滸がましい!!貴様は神にでもなったつもりか!』

「……」

『人を生贄にするような神になど祈るな!神は弱きものを助けるものだ!それが命を奪うなどあってはいけない!!』

「では…何故雨を降らせて頂けなかったのですか?」

『…虫のせいだ…』

「虫?」

『虹色に光る雨虫が足りなかったのだ…』

「あの虫が?雨を降らせるのに必要なのですか?」

『そ、そうだ!その虫を捕まえて海の側に奉れ!さすれば雨が降るだろう!』

水神の使いの頭がモゾモゾと動くと…

(あっ…コハク!もう少し我慢して!)

『わ、わかったな!人を生贄にする事はするな!生贄は雨虫だ!』

「わ、分かりました…」

急に慌て出す水神の使いに怪訝な顔を向ける者もいた…。

「あれ…本物か?」

「なんか怪しいな…」

(不味い…怪しまれた!?)

『では約束の雨だ!』

ミヅキは水魔法で村人達の頭に水を降らす…

(ついでた!畑にも!)

枯れ果てた畑にも水を降らすとみるみると野菜達が元気になっていく…その様子に村人達が気がついた!

「みろ!畑が!」

「野菜が!作物が!蘇っていく!」

やった~!涙を流して喜び水神の使いを見ると…その姿はもう何処にも無かった…空には大きな虹がかかっていた…。

「村長!」

「ああ!本物の水神様の使いだ!ロミは?ロミを解放しろ!これからは生贄を出してはならない!」

「姉さん!」

リジィが姉に駆け寄ると二人して涙を流して喜び合う。

(ミヅキ…ありがとう…)

リジィはもう会うことの無い女の子に感謝の祈りを捧げた…。


【ぶぅーどうかな?上手く騙せたかな?】

【泣いて喜んでたから大丈夫じゃないか?】

【しばらくして、また来れたら様子を見に来ようね】

【…それより…ミヅキ、早く帰らないと不味いんじゃないか?】

【そ、そうだね!リジィが王都の方角はあっちだって言ってたよ!】

ミヅキが指す方角を見ると…空に黒雲が広がっている…時折ピカっと稲光が見える…。

【…あれって…】

【セバスだな…】

【ど、どうしよう!セバスさんが怒ってるよ!】

【絶対原因はミヅキだろ!早く帰るって言ったのにもう夕方を過ぎてるんだぞ!】

【だ、だって~とりあえず!シルバ急いで!】

【わかってる!飛ばすぞ!みんな捕まってろよ!】

シルバが駆け出すとミヅキはコハクとシンクをだき抱えてシルバにギュッと捕まった…。

ミヅキ達は黒雲広がる大地に向かい猛スピードでかけて行った…。
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