貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

91..老体※

「私達がそうならないようにバルトさん、よろしくお願いしますね」

「わかってる」

「それとローズ様はなぜあそこに戻って来たのでしょうかね？  私はバルトさんの事は任せて戻って欲しいとお願いしたはずですが？」

あっ……やっぱり忘れてないよね。

私はタラっと背中に汗をかく。

「すみませんでした。軽率な行動だったと反省してます……でも体が勝手に動いていて気がついたらバルトの前にいました」

スチュアートさんははぁと深くため息を吐くと心配そうに私を見つめてきた。

「ローズ様がそういう方だとはわかりますが、無理をしてこの老体を心配させないで下さいね」

スチュアートさんが悲しそうにに眉を下げる。

「ご老体？」

「おい……そんなのどこにいるんだ？」

ロイ王子とカイル様がコソッと囁き合っている。そんな二人は無視して私はスチュアートさんに頭を下げた。

「すみませんでした。スチュアートさんに無理させてしまいました……本当にごめんなさい」

「ローズ様は本当に素直でいい子ですね」

スチュアートさんは微笑むと私の頭を子供を褒めるように撫でてくれた。

そしてロイ王子とカイル様に目を向けた。

「あとはロイ王子とカイル様、先ずは女性の部屋で騒ぐなど品がないですよ……それと先程の事、聞こえてましたからね」

「げっ……この距離で聞こえたのかよ。どこが老人なんだよ」

「老人なんて言っておりませんが？」

「あっ……」

ロイ王子がしまったと口を抑えて視線を逸らした。

「王子達の指導もしたいのですが、このあとは捕まえた男達の尋問がありますので……また失礼致します」

「スチュアートさんまた行ってしまうのですか？」

私はせっかく戻ってきたのにとシュンとしてしまう。

「申し訳ございません、何か用がありましたか？」

「実はバルトが美味しい実がなってる所に案内してくれるそうでスチュアートさんを待っていたんです」

「そうでしたか……しかし、しばらくは一緒に行くのは難しそうですね」

スチュアートさんが顔を顰めながらどうしようかと迷っていた。

「では俺がお供しましょうか？」

カイル様が名乗りを上げてくれた。

「カイル様が……どうでしょうかローズ様？」

私は少し考える、カイル様にそんな事で付き合わせるのは申し訳ないが時間もない。

「ではカイル様お願い出来ますか？」

私はカイル様に頭を下げてお願いした。

「ああ任せてくれ！  しっかりとローズを守ろう」

カイル様は嬉しそうに胸を叩く。

そんなにスチュアートさんの汚名を挽回したかったのかな？

私は陽気なカイル様に笑ってしまった。

「じゃあ俺も行こうかな」

ロイ王子がカイル様と私の間に顔を出してきた。

「えっロイ王子が？」

私は心配になってスチュアートさんとクレアさんを見つめる。

「お二人で行くよりはいいですが、ロイ王子近衛兵をおつけしますか？」

「王宮内の庭園なんだろ？  いらないよカイルがいるしね。それに僕とローズにこの魔獣もいるし何とかなるだろ」

「戦力としては十分でしょうが、先程侵入者もいた事ですし……」

スチュアートさんが心配そうにしている。

「別に戦いに行くわけじゃないだろ？  果物採取なんだから」

「しかし……」

まだ渋い顔をするスチュアートさんにロイ王子が思考する。

「なら、警備兵を見回りに出そう。俺達も見回りのついでに採取に行けばいいんじゃないか？」

「そうですね……その方がいいでしょう。では兵士達に声をかけておきます。皆が集まるまで絶対に四人で先走って行かないようにお願いしますよ」

スチュアートさんは私達に挨拶をすると部屋を出ていってしまった。

「忙しいそうですね……」

私は少ししか話せなかった事に残念に思い寂しそうにスチュアートさんの背中を見送った。

「ほら、ローズはお茶会の準備もあるんだろ？   さっさとその美味いっていう果物取りに行こう」

ロイ王子がそんな私に明るく声をかけてくれる。

「スチュアートさんの分も俺達がしっかりと守るよ」

カイル様も気を使って声をかけてくれた。

「ではローズ様、またお着替えですね」

そしてクレアさんが楽しそうに微笑んだ。