貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

223.クリスと…

クリスとスピアはレスター大臣の元に向かうとあの書類を見せる…そこにはレスターが見たくないものが書かれていた…

レスターは覚悟はしていたものの耐え難い現実に頭を抱える。

｢レスター様…｣

心配そうにスピアが声をかけると、レスターは顔をあげた。

しっかりとした表情でスピアとクリスを見ると…

｢スピア、お前はこの書類に書かれていることの裏を取れ。どんな言い逃れも出来ないようにしっかりとな｣

｢は、はい！｣

スピアに書類を渡す。

｢クリスはスティーブとこの首になったメイドを探し出してくれ｣

｢わかりました…レスター様は？｣

｢私は…王に話を通したあと…妻の…いや、マデリンを捕らえに行ってくる。ここに書かれていることが確かならあれを許しておくわけにはいかない。お前達には嫌な仕事をさせるがよろしく頼む｣

レスターは二人に頭を下げると

｢最後までお付き合い致します｣

スピアは胸に手を当ててレスターに再び忠誠を誓った。

三人は部屋を出ると、クリスはスティーブに声をかける。

扉の外で待っていたスティーブは待ってましたとばかりに剣を掴む！

｢やっとあいつらを叩きのめせるんですね！｣

スティーブの言葉にレスターは苦笑すると

｢すまんな、お前はクリスと行ってくれ。私は一人で大丈夫だ｣

スティーブは一瞬顔を曇らせると、クリスはそれをみて…

｢僕は大丈夫です、知り合いに心当たり居ますので彼と向かいます。スティーブさんはレスター様を守ってください｣

｢クリス…｣

スティーブは申し訳なさそうにクリスを見ると

｢知り合いとは誰だ？｣

スピアが聞くと

｢ガルムさんです｣

｢ああ、彼か…彼なら大丈夫だな｣

レスターも納得すると

｢ガルムさんも何か動いていたいと思いますので…｣

｢ではスティーブ、私と来てくれるか？｣

レスターが聞くと

｢もちろんです！最後までお供致します｣

スピア同様、スティーブもレスターに剣を捧げた。

クリスは王宮を出ると門番のカールにガルムさんの場所を聞く。

｢ガルムさんなら医務室にいますよ｣

｢えっ！怪我してたんですか？｣

｢いえ、煙を吸いすぎて少し…でも本人は任務に戻りたいと暴れたのでみんなで押さえつけて医務室に運びました…あんなに荒れてるガルムは初めてですよ｣

カールがため息をつくと、クリスはお礼をいって医務室に向かった。

医務室に行くと、ダンテ先生が一人座って書類を書いていた。

｢先生…ガルムさんは？｣

クリスが声をかけると…ガタガタ！

カーテンで目隠しされた場所から物音がする。

｢ああ…君は確か最近入った子かな？ガルムに何か用かい？今取り込んでるんだけど…｣

｢そんなに調子悪かったんですか？｣

心配そうに聞くと

｢んー！んー！｣

何やら口を塞がれているような声がする。

｢あーまた暴れだした…｣

ダンテ先生がため息をつくと、カーテンを開いた。

見るとガルムさんがベッドに縛られて猿轡をされている。

｢こうしないと任務に行こうとするんだよ…今日はもう休めと上官に言われているのに…このまま離したら命令違反をしてしまいそうだからね｣

｢ガルムさん…あれはガルムさんのせいではありませんよ。それに姉さんは大丈夫です。カイルさんや他のみんなもスチュアートさんも探してくれています｣

クリスが声をかけるとガルムは大人しくクリスの言葉を聞いている。

｢それに今のガルムさんや僕が姉さんの事に関わると冷静じゃいられなくなります。ここは仲間を信じて待ちませんか？｣

ガルムはフーっと息を吐いて何か考える。

｢それでも何かしたいと言うなら…僕の手伝いをしてくれませんか？きっと姉の為にもなりますから｣

クリスがそう言って微笑むとガルムは落ち着いて息を整えるとコクッと頷いた。

クリスはニコッと笑うと、先生にガルムさんの縄を解いて貰う。

｢本当に大丈夫かい？｣

ダンテ先生が心配すると

｢はい、ガルムさんの今の心音はとっても安定してます。それに姉さんの為になって尚且つ動けるならガルムさんにとっては願ったり叶ったりですよね？｣

ガルムさんを見ると

｢はい、ダンテ先生…ご心配おかけしてすみませんでした…仲間達にも後でしっかりと謝っておきます。でも今はクリスさんの手伝いをさせて下さい｣

いつも通りのガルムの様子にダンテ先生は頷くと

｢良かった、いつもの君に戻って…よく分からないが二人とも気をつけてね。あと心配だから一応これを…｣

ダンテ先生は急ぐ二人に回復薬を持たせて送り出した。