貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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245.逃亡

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怒った顔のスチュアートさんにローズは伺うように声をかける。

「すみません…無理して…でもどうしても自分の手でやりたくて」

「だからといってまさか怪我した足まで使うとは…」

「だって足を使わないと全力出せませんから、どうせやるなら全力でやらないと…」

拳を突き出すローズにスチュアートはその赤くなったの右手をそっと握りしめた。

「拳まで怪我して…」

ダンテ先生から薬を貰うといたわるようかける。

「私が変わって粛清してもよかったのですよ…」

スチュアートさんが呟く。

「それは駄目です、スチュアートさんがやったらあの人死んじゃいますからね。彼女には他の罪もありますからしっかりと償ってもらいます」

「な、なんだと…あれで罪は無くなると言ったじゃないか!」

話を聞いていたボストンが声を出した。

「それは衣装を破いた罪ですよね…他の罪はまた違いますよ、そんな事当たり前ですよね?」

ローズがロイ達を見ると

「当然だ。そこの女は牢屋に入れておけ気が付き次第他の罪の尋問を始めろ」

ロイが兵士に指示を出すと

「この囚人怪我はどう致しますか?」

「そのままでいいだろ」

どうでもいいとロイは手で払う。

「そ、そんな!顎の骨が折れただろ!直してやってくれ」

ボストンが頼むと

「囚人に使う回復薬などありませんよ」

ダンテ先生が首を振る。

「そ、そこにあるんだろ!彼女を治したその残りをやってくれ!」

「無理です」

「何故だ!」

ボストンが叫ぶと

「あなたが大臣の時に言ったのでしょ?囚人に回復薬など使わないでいいと」

「あっ…」

自分が何気なく言った言葉が自分の首を絞める。

「私は何度も言いました、囚人達にも時と場合には回復薬を使ってはどうかと…それを否定したのはあなたです」

ダンテ先生がボストンを見下ろす。

「あなたも結構な怪我をしていますね…まぁ私には関係ありませんが…ではローズさんお大事にしてくださいね」

ダンテ先生はローズに笑いかけるとボストンやジュリアの事は無視して部屋を出て行った。

ジュリアも兵士に担がれて牢屋へと連れていかれる。

すると入れ違うようにマデリンを捜索していた兵士達が戻ってきた。

「陛下お知らせ致します!」

慌てた様子にみんなが注目すると

「マデリン婦人ですが馬車に荷物を詰め込み王都を出たと報告がありました!」

「なんだと…」

レインが椅子の肘掛を握りしめるとミシッと音がなった。

「なぜ門を通した!」

「商人の馬車に紛れて通過した模様です…馬車も逃亡用の物を用意していたようです…」

「マデリン…」

ボストンが信じられないとへたり込む…

「元から一緒にお前と逃げる気は無かったようだな…」

ロイがボストンを鼻で笑うと

「すぐに追いかけよう!きっと行き先は隣国だろう!」

ロイがカイルを見て頷きあう、兵士達を連れて部屋を飛び出そうとすると…

「待て!そうかマデリンは隣国に行くのだな…」

レイン陛下が何か思案する。

「父上!早くしないと本当に隣国に行ってしまいますよ!」

ロイが急かすがレインは一人笑っていた。
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