貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

261.おもい

｢お父さん…レスター様に何かしてあげられる事はないかな？｣

｢大丈夫だ、レスターはそんなヤワじゃない、あいつにも大切な家族がいる。それに俺達が何とかする｣

｢俺達？｣

ローズとキャシーが顔を見合わせる。

｢お前達が心配する事はない！あいつの事は俺達に任せておけ｣

父の頼もしい言葉にローズは安心して頷いた。


｢そういえば、隣国の王子がこの件に関わっていたそうですね？どんな方でしたの？｣

キャシーが聞くと

｢ガブリエルさんですね、あっ！ガブリエル様か！？｣

ローズが失言と口を抑えると

｢なんだが軽そうな方でしたね｣

クレアさんが顔を顰めて思い出す。

｢あれ？クレアさんガブリエル様に会ったんですか？｣

ローズがいつ会ったのだろうと首を傾げると…

｢あっ…｣

口を手で覆った。

｢先程ローズ様がまだお休みの時にご挨拶に来たのですが…ローズ様はまだ気が付かれておりませんでしたので…よろしくと仰ってましたよ｣

スチュアートさんが説明すると

｢そうなんですか…ガブリエル様には私も助けてもらいました。お礼を言いたかったなぁ｣

｢まぁ…そうだったんですか？では、失礼な事をしてしまいました…｣

クレアさんが顔色を悪くする。

｢確か…うちの領土を越えると言ってたな。て事はあそこを通れば間に合うかもな…ローズ行くか？｣

チャートがローズを見ると悩みながらシンパそうにする二人に顔を向ける。

｢クレアさん、スチュアートさん…いいですか？｣

伺うと仕方ないと眉を下げて了承してくれた。

｢ですが一人は駄目ですよ！｣

｢大丈夫だ、クレアさん俺が娘を連れていくから｣

チャートはクレアさんにウインクすると…何故かキャシーが頬を染めていた。

クレアさんにササッと支度を整えて貰うと、チャートがローズを抱き上げた。

｢うわ！ローズ…重くなったな…｣

チャートが重そうな顔をすると

｢お父様…タウンゼントに帰ったら覚えておいてくださいね…しばらくは野菜だけのメニューにしますから！｣

ジロっと父親を睨みつけた。

｢チャート様、ローズ様が重いなんて事はございませんよ。鍛え方が足りないのでは？｣

スチュアートが首を傾げると

｢い、いや…小さい時と比べてって事だよ！最後に抱き上げたのは何年前だと思ってるんだよ！｣

チャートが慌てると

｢ロ、ローズ？このくらいで怒ってないよな？ママよりは全然軽いぞ？｣

チャートがローズの顔色を伺うと

｢あーあ…ママがこれ聞いたら…お父さん天国で会ったら怒られますね…しーらない｣

ローズはぷいっと顔を逸らした。

不機嫌なローズをお姫様抱っこしてヘコヘコと頭を下げながらチャートはスチュアートさんの馬を借りるために厩舎に向かった。

それを見つめる驚く兵士達の姿があった…

｢ローズ様…まさかあの鬼神のチャート様のご息女だったとは…｣

｢どおりで強いわけだよ｣

兵士達はため息をつく。

｢ロイ王子とカイル様はどうすんのかな？｣

みんなが気になっていたことを言うと

｢あの父親に娘を下さいって言えるか？｣

｢言えないね！｣

｢だな｣

兵士達がウンウンと頷く。

｢まぁそこはロイ王子とカイル様に頑張ってもらおうぜ｣

兵士達は他人事のように笑っていた。