貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

連載

315.領主

男がストンと腰を抜かして尻もちを付くとそのままうつ伏せに倒れ込んだ。

その様子に盗賊達がシーンとしていると…

｢酷い！みて！服が破れた！｣

男を殴ったお姉さんが泣きべそをかきながらおばさん達に破れた箇所を見せている。

｢あらあら、酷いわね。でも大丈夫よ、このくらいならすぐに綺麗に直せるわ｣

おばさんがにっこり笑うと

｢よ、よかった～ユリさんありがとうございます！｣

嬉しそうに頬を赤らめている。

｢え？｣

｢今何があった？｣

｢見たの俺だけ？｣

盗賊達が目を合わせると皆が同じように困惑した顔をしていた。

｢なぁ…なんかおかしくないか？俺達…どんどん人数…減ってるよな…｣

襲いかかってた仲間達が次々にやられて地面に倒れている。見るとたくさん居たはずの仲間が半分になっていた。

｢こいつら…ただの町民だよな？兵士じゃないよな？このばばあ…いや、おばさんなんて武器持ってないよな？｣

おかしな様子にやっと気がついてきた。

｢ここは一度体制を整えて出直そう…｣

盗賊の一人の提案に残りの男達が頷き合う。

盗賊達が距離を取ろうとすると…

｢お前達！大丈夫か！！｣

チャート様達が馬に乗って駆けつけた！

｢あっチャート様お久しぶりですね｣

｢問題無いですよ、チャート様はおかえり下さい｣

おばさん達がチャート様(領主)に気がつくと大丈夫だと手を振る。

｢ええ～そんな事言うなよ…俺だってたまには暴れたい…｣

町の人達が追い返そうとしてくるのでチャートが文句を言うと…

｢皆様、私達もお手伝いさせて下さい｣

スチュアートさんが苦笑して後ろから声をかけた。

｢スチュアート様！｣

｢もちろんです！もう私達だけでは手一杯で…ほら私達か弱いでしょ？お手伝いお願い出来ますか？｣

おば様達が顔を輝かせてスチュアートさんを見上げた。

｢どこに、か弱いのが居るんだ？｣

チャート様が周りをキョロキョロと確認すると盗賊達を見て頷く。

｢ああ！盗賊共の事か！｣

｢チャート様少し黙って下さい！｣

｢文句言うなら帰っていいんですよ！｣

おばさん達がにっこり笑ってチャート様を見つめた。

｢そ、それでは残りは私とチャート様で…｣

スチュアートさんが慌てて間に入るとご婦人達をなだめた。

｢｢｢よろしくお願いしまーす！！｣｣｣

町の女性達が満面の笑みと高い声で答えた。

｢くっそ…なんだよこの態度の違い…俺は領主のはずなのに…この気持ち…お前らで発散させてもらう！！｣

チャートはギロッと盗賊達を睨みつける。

｢こ、こいつが領主…こいつを殺れば…｣

盗賊達は顔を見合わせて残りの全員でチャート様に襲いかかった！

それを見ていた町民達とスチュアートさんは…

｢あーあ、本当に馬鹿な人達ね。一体誰が一番強いのかわかってないみたい｣

｢だから盗賊なんてやってるんでしょ？｣

｢それもそうね、あーあせっかくローズ様達見ていい気分だったのに…目が汚れたわ｣

｢本当に…ねぇ口直しにもう一回ローズ様達の様子見に行かない？｣

お姉さん達がニヤリと笑うと

｢｢｢いいわね～！｣｣｣

キャキャと跳ねて手を叩く。

｢ユリさん！私達ローズ様の様子見に行って来てもいいですか？｣

お姉さん達がおばさん達に許可を求めると

｢邪魔しない所で見るのよ、後ずっとは駄目よ！｣

｢はい！多分カイル様はわかってると思うので少し見たらすぐに帰ります！｣

おばさん達の苦笑する姿にお姉さん達は凄い速さで町に戻って行った。