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2章
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「マキさん!」
「イズミさん、大丈夫なの?」
「ユウジ、いったい何があったんだ!」
「「「わっ!」」」
私達が外に出ると近所の人から馴染みのお客さんなどが銭湯に押し寄せてきていた。
そして私達の顔をみるなり駆け寄ってきて口々に心配や質問をしてくる。
「み、皆さんどうしたんですか?」
「どうしたじゃないわよ!なんか領主様に言われてしばらくお店に行くのを控えていたら怖そうな人達が押し寄せてきてたって聞いたぞ」
「こんな事なら今まで通り通っていればよかったわ」
みんな心配そうに眉を下げていた。
「ジムさん皆さんにもそんな声をかけていたんですね」
私がジムさんに視線を向けるとすまないと苦笑する。
「他の人に危害を加えないともかぎらないからね、ここでお客さんが怪我をするなんて嫌だと思ってね」
「それは…」
あの男ならやりかねない、今ならみんなを遠ざけていてくれた事に感謝する。
「そうですね、町の事を考えると仕方ない事だよね…」
私はひとり納得した。
「領主様、もうふくまるの湯に通っていいのかしら?」
「おれはもう禁断症状が…銭湯に入らないと腰の調子が…」
「ぼくもお風呂入りたーい!ふくとまるに会いたい!」
みんな不満が溜まっていたのか一気に文句を言い出した。
「マキさん!今からでも入れないの?」
「あっ、私も入りたい!この日の為にお金を貯めておいたのよ」
「え?え?」
もう閉めようと思っていた矢先に大変な騒ぎになってしまった。
「どうしましょ?おじいちゃん火を止めちゃったかな?」
私はお父さんにこそっと耳打ちする。
「多分な、俺はあの後ボイラー室離れたから…」
「そうなると…この興奮する騒ぎの中お断りする?さすがに数人なら入れるけどこの人数となると今からまた火をたかないとだよね」
しかし入る気満々で楽しそうにふくまるの湯の事を話し出すみんなになかなか言えないでいた。
「マキ、おじいちゃんに今から火を炊けるか聞いてきてくれ」
対応に追われるお父さんとお母さんの代わりに私はボイラー室に走った。
「おじいちゃーん」
私がボイラー室に入るとボワッとする熱気に驚いて後ずさる。
そこには今も火の番をしているおじいちゃんがいた。
「おお、マキ。いい火だぞ、きっと今の湯は最高だろうな」
おじいちゃんは火をじっと見つめながら誇らしそうに微笑んでいた。
「おじいちゃん、火を止めてなかったの?」
「ん?あーなんかまだ止めて欲しくなさそうだったからな」
「さすがおじいちゃん!今ねお客さんが沢山来たの、このままお願いします!後でお水持ってくるから飲んでね」
私は早口で喋ると困っているだろうお父さん達の元に急いだ!
ふふ、さすがおじいちゃん!
「みなさーん!ふくまるの湯いつでも入れますよー!」
「「「待ってました!」」」
「マ、マキ!?」
驚くお父さんにおじいちゃんの事を説明する。
「はぁさすがじいさんだな、よし俺は手伝ってくるからここは頼むぞ」
「お父さん!おじいちゃんにお水持っててね!」
お父さんはわかったと手を上げるとボイラー室に急いだ。
「じゃあ私達はお客さん達を案内しましょ」
私はお母さんと脱衣場に向かう。
「あの、俺達は?」
ライリーさん達が入る気満々だったのかこの騒ぎにオロオロとしている。
「あー、入るならお客さんと一緒に入って貰えます?」
「もちろんだ!」
ジムさんとライリーさんはお客さんと一緒に入る事にして他のお付きの人は今回は遠慮する事になった。
「じゃ仲良く譲り合って入ってくださいね!」
お母さんには番台に立ってもらい、私はみんなを誘導して脱衣場に案内した。
「はぁ……気持ちいい」
「これよね……」
「んっ~~!」
「ガッハッハッ!」
ふくまるの湯にはまた賑やかな声が響いていた。
しかし私はそんな声を聞く余裕は無くお客さんの対応に追われる。
でもその忙しさは嬉しいものだった。
「イズミさん、大丈夫なの?」
「ユウジ、いったい何があったんだ!」
「「「わっ!」」」
私達が外に出ると近所の人から馴染みのお客さんなどが銭湯に押し寄せてきていた。
そして私達の顔をみるなり駆け寄ってきて口々に心配や質問をしてくる。
「み、皆さんどうしたんですか?」
「どうしたじゃないわよ!なんか領主様に言われてしばらくお店に行くのを控えていたら怖そうな人達が押し寄せてきてたって聞いたぞ」
「こんな事なら今まで通り通っていればよかったわ」
みんな心配そうに眉を下げていた。
「ジムさん皆さんにもそんな声をかけていたんですね」
私がジムさんに視線を向けるとすまないと苦笑する。
「他の人に危害を加えないともかぎらないからね、ここでお客さんが怪我をするなんて嫌だと思ってね」
「それは…」
あの男ならやりかねない、今ならみんなを遠ざけていてくれた事に感謝する。
「そうですね、町の事を考えると仕方ない事だよね…」
私はひとり納得した。
「領主様、もうふくまるの湯に通っていいのかしら?」
「おれはもう禁断症状が…銭湯に入らないと腰の調子が…」
「ぼくもお風呂入りたーい!ふくとまるに会いたい!」
みんな不満が溜まっていたのか一気に文句を言い出した。
「マキさん!今からでも入れないの?」
「あっ、私も入りたい!この日の為にお金を貯めておいたのよ」
「え?え?」
もう閉めようと思っていた矢先に大変な騒ぎになってしまった。
「どうしましょ?おじいちゃん火を止めちゃったかな?」
私はお父さんにこそっと耳打ちする。
「多分な、俺はあの後ボイラー室離れたから…」
「そうなると…この興奮する騒ぎの中お断りする?さすがに数人なら入れるけどこの人数となると今からまた火をたかないとだよね」
しかし入る気満々で楽しそうにふくまるの湯の事を話し出すみんなになかなか言えないでいた。
「マキ、おじいちゃんに今から火を炊けるか聞いてきてくれ」
対応に追われるお父さんとお母さんの代わりに私はボイラー室に走った。
「おじいちゃーん」
私がボイラー室に入るとボワッとする熱気に驚いて後ずさる。
そこには今も火の番をしているおじいちゃんがいた。
「おお、マキ。いい火だぞ、きっと今の湯は最高だろうな」
おじいちゃんは火をじっと見つめながら誇らしそうに微笑んでいた。
「おじいちゃん、火を止めてなかったの?」
「ん?あーなんかまだ止めて欲しくなさそうだったからな」
「さすがおじいちゃん!今ねお客さんが沢山来たの、このままお願いします!後でお水持ってくるから飲んでね」
私は早口で喋ると困っているだろうお父さん達の元に急いだ!
ふふ、さすがおじいちゃん!
「みなさーん!ふくまるの湯いつでも入れますよー!」
「「「待ってました!」」」
「マ、マキ!?」
驚くお父さんにおじいちゃんの事を説明する。
「はぁさすがじいさんだな、よし俺は手伝ってくるからここは頼むぞ」
「お父さん!おじいちゃんにお水持っててね!」
お父さんはわかったと手を上げるとボイラー室に急いだ。
「じゃあ私達はお客さん達を案内しましょ」
私はお母さんと脱衣場に向かう。
「あの、俺達は?」
ライリーさん達が入る気満々だったのかこの騒ぎにオロオロとしている。
「あー、入るならお客さんと一緒に入って貰えます?」
「もちろんだ!」
ジムさんとライリーさんはお客さんと一緒に入る事にして他のお付きの人は今回は遠慮する事になった。
「じゃ仲良く譲り合って入ってくださいね!」
お母さんには番台に立ってもらい、私はみんなを誘導して脱衣場に案内した。
「はぁ……気持ちいい」
「これよね……」
「んっ~~!」
「ガッハッハッ!」
ふくまるの湯にはまた賑やかな声が響いていた。
しかし私はそんな声を聞く余裕は無くお客さんの対応に追われる。
でもその忙しさは嬉しいものだった。
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