乙女ゲームの世界．．．？

プロローグ

「なんなのよっ！！一体！ここは乙女ゲームの世界じゃなかったの？！クソッ！せっかく悪役令嬢に転生したのに．．．ザマァできないじゃない！！！」




俺は偶然にも目撃してしまった。

貴族の鑑と言われ令嬢には憧れられ令息には高嶺の花と頬を赤く染められる幼い頃からの幼馴染が

今までに見たことも無いような般若の顔で地団駄を踏みながら知り合いは誰も居ないであろう平民街の道端で叫んでいた。 

周囲の人々は物凄い美女が物凄い顔で意味不明なことを叫ぶ姿に驚き固まってしまった。幼馴染に声をかけようと近づいていた俺も固まった。

彼女は思い出したかのようにハッとし周りを見渡した。そして目が合った。俺と。 

興奮していた彼女の真っ赤な顔は段々と真っ青に。そして瞳に涙を浮かべ泣き出してしまった。

初めて涙を流す姿を見た幼馴染に俺の止まった思考が動き出した。

(どうしよう．．．！涙を拭かないと！いや．．触れない方が良いか？)

(あ、あれ？いや待て"乙女ゲーム"？？
ここはBLゲームの世界じゃなかったのか？！)

グルグル頭を動かしながら蹲って涙を流す大事な幼馴染に走りよる。

「 ティア！どうしたんだい！大丈夫かい？とりあえずこちらにおいで」

無言で俯きながら泣き続ける彼女の涙をハンカチで拭いながら人目の少ない道の端まで移動させる。

ようやく止まった涙に一安心すると真っ赤になったキリッとしたつり目がこちらを見つめた。

「．．．何も聞かずに見なかったことにして．．」


俺は頷いた。彼女が転生者であることの驚きとここが乙女ゲームの世界かもしれない真事実にパンク寸前の脳みそを抑え込み、何度も頷いた。


そして後々この決断を俺と彼女はお互いに後悔することになる。