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二章 夜市編
二章終幕 夜市
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扉を開いてゆっくりと進んでいく。
妖花はあと少しで元の世界に帰れるのだとホッとしながら歩いていた。
夜市の出来事を振り返るとほとんど式神に助けられてばかりだった。自分でしたことはあの家屋の中で服の妖怪と交戦したぐらいか。
「あと少し、私本当に帰れるのかな」
妖花の目の前には光が見えていた。
「あそこか」
その光は近づくにつれて大きくなる。そしてそのまま光の奥に入った。光に包まれた妖花はその眩しさに思わず目を瞑った。
そして光が止み、目を開けると家の前に立っていた。
「本当に帰っとこれた…?」
力が抜け落ち膝から崩れ落ちた。砂がお尻についたことなどを気にすることはない。
安心して空を見上げる。いつもの夜空。
前を見るといつもの夜景。そして後ろにはいつも帰ってくる家がある。
「本当に帰ってこれたんだ!良かった、良かった。本当に良かった…」
すると私を呼ぶ声が聞こえた気がして振り返るとそこには式神がいた。
それをみて驚きの声を上げる。
「ど、どうしてここに!?」
「なぜだろうな。お前、無事帰ってこれたんだな。良かったな」
「はい、ありがとうございました」
何か濁された気もするがあまり気にしなかった。また式神に会えた。こんなにも早いとは思っていなかったけれど。
「あっ、今何時だろう」
時計を見ると時針は7時、分針は50分に差し掛かろうとしていた。
こんなにも長い時間いたのか。あの世界での1時間がこの世界での1分。
初めにこの世界に帰ってきてから家に着くまで何分かかったのかは分からないが長い時間夜市にいたのだろう。
「時間はさほど経過してないだろう」
「はい、あちらの世界とこちらの世界の時間の違いは大体わかってたので」
「そうか、知っていたのか」
「はい!」
妖花が告げると式神がうなづきながら話を始めた。
「頼みたいことがあるんだ」
「式神さんが頼みたいこと?」
「あぁ」
式神はいつもと変わらない表情。妖花はなんだろうと聞き耳を立てる。
「実はお前の近くに私と近いような人物がいるんだ」
「え!?それってどういうことですか?」
妖花が聞くと識神は「そうだな」と続けて話す。
「もちろん人ではある。ただ私と近い存在なんだ。いわば片割れというべきなのだろうか。あちらにはもちろん私の記憶はない。ただ私はあちらの記憶を見れるんだ」
「そうなんですか。だから私のことを助けようと?」
「その通りだ。お前の存在に気づいてすぐに向かったんだ。お前を助けるためにな。私の片割れは名前からしてもわかりやすい。ただこのことは他言無用だ。だからそいつとは仲良くやってほしい、それだけだ」
式神と近い存在。それは多分李王さん、部長だろう。苗字が式紙という名前の時点で察しはつく。助けてくれた式神の願いなのだ。それを守るのが今の私の役目だろう。
「はい、私は助けてくれた方の頼みなら聞きますよ」
「あぁ。よろしく頼む」
その頼みを聞いた妖花は明日からの日々を大切にしようと決意した。
話をしている間に時間は過ぎていく。色々なことを話して最後、妖花は式神に聞く。
「式神さんはこの後どこにいくんですか?」
「そうだな。私を使役している陰陽師のところに戻るとする」
「なら本当に会えるのは最後かもしれないですね」
「そうだな。私を使役している者はこの県から離れている場所にいるからな」
少し寂しいが仕方がない。元々私を助けたのも気まぐれだったのだから、また何かあったら守って欲しいだなんて言えない。
「じゃあまた会えたらいいですね」
「そうだな。それでは私は去るとする」
式神がそう言った直後強い風が吹き付け思わず目を瞑る。
目を開けるとそこにはもう式神はいなかった。
「本当にありがとうございました。この恩は忘れないです」
そう言いながら家の中に入った。
「ただいま」
なんだか懐かしい気持ちになる。ほんの数時間違う異世界に居ただけなのに。
するとリビングから大きな声が聞こえてリビングの扉が開いて母が私を抱きしめる。
「どこに行ってたのよ!心配したのよ?」
「ごめんなさい」
「無事で良かった。遅くなるときは連絡してって言ったでしょ?」
「うん。今度からはそうする」
「それで何してたの?」
妖怪のいる世界に行っていた。なんて言っても仕方がない。そんなことを言っても信じてもらえるわけがないのだから。
「少し部活で遅くなってね」
「そう、それならいいの。ご飯できてるから食べなさい」
そう言いながら私と母はリビングに入り、いつもの机に美味しそうなご飯とおかずが並んでいた。
「いただきます」
ゆっくりと食べながら今日のことを思い出す。
今日は色々なことがあった。妖怪は実在するし私を助けてくれた妖怪を倒す"怪者払い"存在も思い出した。
これからの人生私はこのことを忘れることはないだろう。自分に起きたことは紛れもない現実、今こうして私が食事をしている時も妖怪達が何かしているかもしれない。
しかし優しい、助けてくれる妖怪もいる。だから不安はあまりない。今こうして私が生活しているのもその妖怪が助けてくれたからだ。
「ご馳走様」
妖花は食事を終えて自室へと向かった。
ベッドに横になり目を瞑る。
「安心してるけど、これからも出会うかもしれない」
そう。これからも妖怪と出会うかもしれない。その時誰も頼る者がいなければ自分でなんとかしなければならないのだ。一人で家屋から脱出した時のように。
「よし、お風呂行こう!」
妖花は脱衣所に向かい服を脱ぐ。
あれだけのことがあって忘れていたが、汗がべったりついていてなんとも気持ちが悪い。
「すごい汗。流石にこれはね…」
制服を脱いで洗濯機に入れて風呂場に入る。
すぐに浴槽のお湯をすくいとり、体にかけた。汗が落ち、なんとも気持ちがいい。
体を洗い、流し、紙を洗い、流して浴槽に浸かった。
今日の疲れが徐々に抜けていくのを感じる。
お風呂がこんなにも気持ちいいと思うのは初めてかもしれない。
「ふぅ…あったまるー」
あったまりながら妖花はふと思う。
柳と神楽は無事に帰ったのだろうか。
あの後夜市に招かれたのは私だけだった。気になった妖花だったが二人の連絡先を知らないため明日会ってみるしかないと思った。大変な1日が終わりを迎え、妖花は風呂を後にする。紙を乾かし、整えて赤暗色の髪が揺れる。
「おやすみなさいー」
父は仕事でまだ帰っていないらしく母はそれを待つようだった。それを聞いて妖花は父を待つのも良かったが母に早く寝るように言われたため二階へと向かった。
自室の扉を開いて机にあった携帯電話を見る。
何人かから連絡は来ているものの柳と神楽の話ではなかった。
「とりあえずは明日しかないよね」
そう言いながら目を瞑る。
妖花は吸い込まれるように眠りに落ちた。
次の日の朝すぐに妖花は学校へと向かった。
二人は無事かどうかが気になって仕方がなかったからだった。
「おはよう」
そう言いながら二人の席を見るとまだ二人とも来ていなかった。
やはり何かあったのかもしれない。そう思った時肩を叩かれて後ろを振り向く。
「おはよう、昨日はすごかったね」
そう言ってきたのは神楽だった。その姿を見て妖花は安心する。
「うん。色々あったね」
「どうしたの?」
神楽にそう聞かれて妖花は苦笑いを浮かべた。
「いや、なんでもないよ。昨日の体験がすごく怖くて、でもそれ以上に得ることがあって、なんだかこの体験はあまり人に言わないほうがいいのかなって」
妖花の話を聞いて神楽は「そうだね」と笑って返す。
「確かに、こんな話を誰かに話しても信じてもらえるわけないもん」
そう言った神楽は自分の席に座って私を呼ぶ。
「妖花ちゃん。こっち座って」
神楽にそう言われて妖花は自分の席につく。すると紙を渡された。
「これ、私の携帯の番号。これでいつでも連絡取れるからさ、たくさん色々なこと話そうよ」
「うん!分かった!」
神楽から紙を受け取って大事にしまった後柳が来るのを待つ。
柳は無事だろうか。そう思っていたがそんな心配はいらないようだった。
「おはよう、二人とも」
柳は元気に登校していた。昨日の話をしてくるかと思ったがそんなことはなく、ただ私たちと挨拶を交わして自分の席に座った。
「あのね、妖花ちゃん。元々誰かに昨日の話をするつもりなかったんだ。それを言い出したのは柳くん。なんでも妖怪はどこにでもいるけど、どこにでもはいないらしくていつ私たちの話を聞かれるかはわからないから、もし聞かれたら連れ去られてしまうかもしれないってね」
確かに柳の言う通りだと思った。妖怪達は自分達の存在を隠している。だから今まで本当にいるなんて話がなかったのだ。もしも体験した話を他の人にも話したりすれば妖怪達は自分達の存在を知られないためにあの手この手で私たちを消しにかかる。そんなことになれば困るのは妖怪達ではなく私たちの方だ。
「確かにそうだね」
「だからね、あの話は秘密ね!」
「うん!」
そんな話をしながら妖花は学校生活を送る。
いつもどおりオカルト部に行き、話を聞いたりしたりして過ごしていく毎日。
妖怪の存在を言わない方がいいのは確かだが、ならなぜ柳は自分の話をしたのだろうか。
それを聞く者が信じれば困るだろうに。
しかし柳は言っていた。意識をしていないだけだと。
見える見えないではなく意識の問題。
意識をしたら妖怪達も分かる、と言うことなのだろうか。
だからあの時柳は妖怪の話していたが、その時何も起こらなかったのは妖怪のことを意識していなかったからだろう。だからあそこに仮に妖怪が居ても意識をしなければ特にその妖怪も戯言だと思うだけ。
柳は知っていたんだ、それを。だから私たちに伝えた。妖怪を意識してはダメだと言うことを。
「本当に何を考えているのかわからない人だな」
妖花はそんなことを思いながら今日も妖怪のことを意識せずにオカルト部での活動を行う。何かあればそれは誰かが意識をしていると言うことだろうから。
妖花はあと少しで元の世界に帰れるのだとホッとしながら歩いていた。
夜市の出来事を振り返るとほとんど式神に助けられてばかりだった。自分でしたことはあの家屋の中で服の妖怪と交戦したぐらいか。
「あと少し、私本当に帰れるのかな」
妖花の目の前には光が見えていた。
「あそこか」
その光は近づくにつれて大きくなる。そしてそのまま光の奥に入った。光に包まれた妖花はその眩しさに思わず目を瞑った。
そして光が止み、目を開けると家の前に立っていた。
「本当に帰っとこれた…?」
力が抜け落ち膝から崩れ落ちた。砂がお尻についたことなどを気にすることはない。
安心して空を見上げる。いつもの夜空。
前を見るといつもの夜景。そして後ろにはいつも帰ってくる家がある。
「本当に帰ってこれたんだ!良かった、良かった。本当に良かった…」
すると私を呼ぶ声が聞こえた気がして振り返るとそこには式神がいた。
それをみて驚きの声を上げる。
「ど、どうしてここに!?」
「なぜだろうな。お前、無事帰ってこれたんだな。良かったな」
「はい、ありがとうございました」
何か濁された気もするがあまり気にしなかった。また式神に会えた。こんなにも早いとは思っていなかったけれど。
「あっ、今何時だろう」
時計を見ると時針は7時、分針は50分に差し掛かろうとしていた。
こんなにも長い時間いたのか。あの世界での1時間がこの世界での1分。
初めにこの世界に帰ってきてから家に着くまで何分かかったのかは分からないが長い時間夜市にいたのだろう。
「時間はさほど経過してないだろう」
「はい、あちらの世界とこちらの世界の時間の違いは大体わかってたので」
「そうか、知っていたのか」
「はい!」
妖花が告げると式神がうなづきながら話を始めた。
「頼みたいことがあるんだ」
「式神さんが頼みたいこと?」
「あぁ」
式神はいつもと変わらない表情。妖花はなんだろうと聞き耳を立てる。
「実はお前の近くに私と近いような人物がいるんだ」
「え!?それってどういうことですか?」
妖花が聞くと識神は「そうだな」と続けて話す。
「もちろん人ではある。ただ私と近い存在なんだ。いわば片割れというべきなのだろうか。あちらにはもちろん私の記憶はない。ただ私はあちらの記憶を見れるんだ」
「そうなんですか。だから私のことを助けようと?」
「その通りだ。お前の存在に気づいてすぐに向かったんだ。お前を助けるためにな。私の片割れは名前からしてもわかりやすい。ただこのことは他言無用だ。だからそいつとは仲良くやってほしい、それだけだ」
式神と近い存在。それは多分李王さん、部長だろう。苗字が式紙という名前の時点で察しはつく。助けてくれた式神の願いなのだ。それを守るのが今の私の役目だろう。
「はい、私は助けてくれた方の頼みなら聞きますよ」
「あぁ。よろしく頼む」
その頼みを聞いた妖花は明日からの日々を大切にしようと決意した。
話をしている間に時間は過ぎていく。色々なことを話して最後、妖花は式神に聞く。
「式神さんはこの後どこにいくんですか?」
「そうだな。私を使役している陰陽師のところに戻るとする」
「なら本当に会えるのは最後かもしれないですね」
「そうだな。私を使役している者はこの県から離れている場所にいるからな」
少し寂しいが仕方がない。元々私を助けたのも気まぐれだったのだから、また何かあったら守って欲しいだなんて言えない。
「じゃあまた会えたらいいですね」
「そうだな。それでは私は去るとする」
式神がそう言った直後強い風が吹き付け思わず目を瞑る。
目を開けるとそこにはもう式神はいなかった。
「本当にありがとうございました。この恩は忘れないです」
そう言いながら家の中に入った。
「ただいま」
なんだか懐かしい気持ちになる。ほんの数時間違う異世界に居ただけなのに。
するとリビングから大きな声が聞こえてリビングの扉が開いて母が私を抱きしめる。
「どこに行ってたのよ!心配したのよ?」
「ごめんなさい」
「無事で良かった。遅くなるときは連絡してって言ったでしょ?」
「うん。今度からはそうする」
「それで何してたの?」
妖怪のいる世界に行っていた。なんて言っても仕方がない。そんなことを言っても信じてもらえるわけがないのだから。
「少し部活で遅くなってね」
「そう、それならいいの。ご飯できてるから食べなさい」
そう言いながら私と母はリビングに入り、いつもの机に美味しそうなご飯とおかずが並んでいた。
「いただきます」
ゆっくりと食べながら今日のことを思い出す。
今日は色々なことがあった。妖怪は実在するし私を助けてくれた妖怪を倒す"怪者払い"存在も思い出した。
これからの人生私はこのことを忘れることはないだろう。自分に起きたことは紛れもない現実、今こうして私が食事をしている時も妖怪達が何かしているかもしれない。
しかし優しい、助けてくれる妖怪もいる。だから不安はあまりない。今こうして私が生活しているのもその妖怪が助けてくれたからだ。
「ご馳走様」
妖花は食事を終えて自室へと向かった。
ベッドに横になり目を瞑る。
「安心してるけど、これからも出会うかもしれない」
そう。これからも妖怪と出会うかもしれない。その時誰も頼る者がいなければ自分でなんとかしなければならないのだ。一人で家屋から脱出した時のように。
「よし、お風呂行こう!」
妖花は脱衣所に向かい服を脱ぐ。
あれだけのことがあって忘れていたが、汗がべったりついていてなんとも気持ちが悪い。
「すごい汗。流石にこれはね…」
制服を脱いで洗濯機に入れて風呂場に入る。
すぐに浴槽のお湯をすくいとり、体にかけた。汗が落ち、なんとも気持ちがいい。
体を洗い、流し、紙を洗い、流して浴槽に浸かった。
今日の疲れが徐々に抜けていくのを感じる。
お風呂がこんなにも気持ちいいと思うのは初めてかもしれない。
「ふぅ…あったまるー」
あったまりながら妖花はふと思う。
柳と神楽は無事に帰ったのだろうか。
あの後夜市に招かれたのは私だけだった。気になった妖花だったが二人の連絡先を知らないため明日会ってみるしかないと思った。大変な1日が終わりを迎え、妖花は風呂を後にする。紙を乾かし、整えて赤暗色の髪が揺れる。
「おやすみなさいー」
父は仕事でまだ帰っていないらしく母はそれを待つようだった。それを聞いて妖花は父を待つのも良かったが母に早く寝るように言われたため二階へと向かった。
自室の扉を開いて机にあった携帯電話を見る。
何人かから連絡は来ているものの柳と神楽の話ではなかった。
「とりあえずは明日しかないよね」
そう言いながら目を瞑る。
妖花は吸い込まれるように眠りに落ちた。
次の日の朝すぐに妖花は学校へと向かった。
二人は無事かどうかが気になって仕方がなかったからだった。
「おはよう」
そう言いながら二人の席を見るとまだ二人とも来ていなかった。
やはり何かあったのかもしれない。そう思った時肩を叩かれて後ろを振り向く。
「おはよう、昨日はすごかったね」
そう言ってきたのは神楽だった。その姿を見て妖花は安心する。
「うん。色々あったね」
「どうしたの?」
神楽にそう聞かれて妖花は苦笑いを浮かべた。
「いや、なんでもないよ。昨日の体験がすごく怖くて、でもそれ以上に得ることがあって、なんだかこの体験はあまり人に言わないほうがいいのかなって」
妖花の話を聞いて神楽は「そうだね」と笑って返す。
「確かに、こんな話を誰かに話しても信じてもらえるわけないもん」
そう言った神楽は自分の席に座って私を呼ぶ。
「妖花ちゃん。こっち座って」
神楽にそう言われて妖花は自分の席につく。すると紙を渡された。
「これ、私の携帯の番号。これでいつでも連絡取れるからさ、たくさん色々なこと話そうよ」
「うん!分かった!」
神楽から紙を受け取って大事にしまった後柳が来るのを待つ。
柳は無事だろうか。そう思っていたがそんな心配はいらないようだった。
「おはよう、二人とも」
柳は元気に登校していた。昨日の話をしてくるかと思ったがそんなことはなく、ただ私たちと挨拶を交わして自分の席に座った。
「あのね、妖花ちゃん。元々誰かに昨日の話をするつもりなかったんだ。それを言い出したのは柳くん。なんでも妖怪はどこにでもいるけど、どこにでもはいないらしくていつ私たちの話を聞かれるかはわからないから、もし聞かれたら連れ去られてしまうかもしれないってね」
確かに柳の言う通りだと思った。妖怪達は自分達の存在を隠している。だから今まで本当にいるなんて話がなかったのだ。もしも体験した話を他の人にも話したりすれば妖怪達は自分達の存在を知られないためにあの手この手で私たちを消しにかかる。そんなことになれば困るのは妖怪達ではなく私たちの方だ。
「確かにそうだね」
「だからね、あの話は秘密ね!」
「うん!」
そんな話をしながら妖花は学校生活を送る。
いつもどおりオカルト部に行き、話を聞いたりしたりして過ごしていく毎日。
妖怪の存在を言わない方がいいのは確かだが、ならなぜ柳は自分の話をしたのだろうか。
それを聞く者が信じれば困るだろうに。
しかし柳は言っていた。意識をしていないだけだと。
見える見えないではなく意識の問題。
意識をしたら妖怪達も分かる、と言うことなのだろうか。
だからあの時柳は妖怪の話していたが、その時何も起こらなかったのは妖怪のことを意識していなかったからだろう。だからあそこに仮に妖怪が居ても意識をしなければ特にその妖怪も戯言だと思うだけ。
柳は知っていたんだ、それを。だから私たちに伝えた。妖怪を意識してはダメだと言うことを。
「本当に何を考えているのかわからない人だな」
妖花はそんなことを思いながら今日も妖怪のことを意識せずにオカルト部での活動を行う。何かあればそれは誰かが意識をしていると言うことだろうから。
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