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第弐幕 宿祢
第十六話
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宿祢を抱いていた冬を背後から突き刺した刃は、そのまま宿祢も貫いた。
どちらも運よく急所は免れていたが、急いで止血をしなければ危ない。
「遅かったなぁ、洛穣」
「主役は遅れてやってくるものさ」
ニヤニヤ笑う听穣に、洛穣と呼ばれた天狗は当然だと言わんばかりの笑みで答えた。
『冬!しっかりして、冬!』
幽霊のお姉さんが必死に叫ぶ。
だが冬は宿祢を抱いたまま倒れ、ピクリとも動かない。
「やってくれたな」
それまでただ听穣の相手をしていただけの迦楼羅丸が、本気で臨戦態勢を取る。
「そうこなくちゃ面白くない」
唇をぺろりと舐め、听穣は歯をむき出しにして笑った。
殺意を纏った迦楼羅丸が射殺すように睨みつけるが、どこ吹く風といった様子だ。
「遊んでいる場合か。早いところ宿祢の首を持って帰るぞ」
「こいつと決着をつけてからでも遅くはないさ。放っておいても問題ないだろう」
「…お前の悪い癖だな」
ため息を一つ付き、洛穣は冬達の傍に座り込んだ。
听穣の言う通り、この場には止血をできる者がいない。
このまま放っておけば、二人とも失血死だ。
「听穣、さっさと終わらせろ」
傍観を決め込んだのだろう、洛穣がそう声をかけた。
その言葉に听穣が何か還すよりも先に、迦楼羅丸が怒鳴りながら地を蹴った。
「それはこっちのセリフだ!」
今の迦楼羅丸には、早く二人を倒して冬達を秋桜館に連れて帰る以外の選択肢はない。
先程よりも格段に速さを増す斬撃に、听穣は楽しくて仕方がないといった笑みを見せた。
どうやら彼は根っからの戦闘狂らしい。
『冬!冬!』
必死に呼びかける事しかできない自分を、これ程までに恨んだ事はない。
霊体となって初めて存在に気づいてくれた、妹のように大切な少女。
そんな彼女に、何もしてやれない事が悔しい。
止血だけでもできないかと霊力を集中させるが、多少物に触れたり動かしたりする事はできても、人体に影響を及ぼすような力は発揮できなかった。
『お願い迦楼羅!早く二人を助けてっ』
聞こえないとわかっていても、叫ばずにはいられない。
無駄だとわかっていても、霊力を注ぎ続けているのは、ある種の祈りだったのかもしれない。
その祈りが届いたのか、宿祢の手が動いた。
ゆっくりと、冬の腹部――傷口へと移動していく。
迦楼羅丸と听穣は戦いに集中していて気が付いていない。
洛穣も二人が目を覚ますはずがないと思っているのか、気づいた様子はない。
自分の霊力がもしかしたら少しは影響したのかと、ほんのわずかな希望を抱いて注ぐ霊力を強めた。
小さく宿祢の口が動く。
なにやら呪いの言葉が紡がれているようだが、こんなに近くにいる幽霊のお姉さんにも聞こえないのだ、観戦に集中している洛穣の耳に届くはずもなかった。
宿祢の手から、微かだが光が溢れ出す。
それは彼の瞳と同じ、優しい水色の光だった。
ゆっくりとだが、冬の出血が止まり始めた。
『戻ってきて、冬!』
その声が届いたのか、ぴくりと冬の指が動いた。
どちらも運よく急所は免れていたが、急いで止血をしなければ危ない。
「遅かったなぁ、洛穣」
「主役は遅れてやってくるものさ」
ニヤニヤ笑う听穣に、洛穣と呼ばれた天狗は当然だと言わんばかりの笑みで答えた。
『冬!しっかりして、冬!』
幽霊のお姉さんが必死に叫ぶ。
だが冬は宿祢を抱いたまま倒れ、ピクリとも動かない。
「やってくれたな」
それまでただ听穣の相手をしていただけの迦楼羅丸が、本気で臨戦態勢を取る。
「そうこなくちゃ面白くない」
唇をぺろりと舐め、听穣は歯をむき出しにして笑った。
殺意を纏った迦楼羅丸が射殺すように睨みつけるが、どこ吹く風といった様子だ。
「遊んでいる場合か。早いところ宿祢の首を持って帰るぞ」
「こいつと決着をつけてからでも遅くはないさ。放っておいても問題ないだろう」
「…お前の悪い癖だな」
ため息を一つ付き、洛穣は冬達の傍に座り込んだ。
听穣の言う通り、この場には止血をできる者がいない。
このまま放っておけば、二人とも失血死だ。
「听穣、さっさと終わらせろ」
傍観を決め込んだのだろう、洛穣がそう声をかけた。
その言葉に听穣が何か還すよりも先に、迦楼羅丸が怒鳴りながら地を蹴った。
「それはこっちのセリフだ!」
今の迦楼羅丸には、早く二人を倒して冬達を秋桜館に連れて帰る以外の選択肢はない。
先程よりも格段に速さを増す斬撃に、听穣は楽しくて仕方がないといった笑みを見せた。
どうやら彼は根っからの戦闘狂らしい。
『冬!冬!』
必死に呼びかける事しかできない自分を、これ程までに恨んだ事はない。
霊体となって初めて存在に気づいてくれた、妹のように大切な少女。
そんな彼女に、何もしてやれない事が悔しい。
止血だけでもできないかと霊力を集中させるが、多少物に触れたり動かしたりする事はできても、人体に影響を及ぼすような力は発揮できなかった。
『お願い迦楼羅!早く二人を助けてっ』
聞こえないとわかっていても、叫ばずにはいられない。
無駄だとわかっていても、霊力を注ぎ続けているのは、ある種の祈りだったのかもしれない。
その祈りが届いたのか、宿祢の手が動いた。
ゆっくりと、冬の腹部――傷口へと移動していく。
迦楼羅丸と听穣は戦いに集中していて気が付いていない。
洛穣も二人が目を覚ますはずがないと思っているのか、気づいた様子はない。
自分の霊力がもしかしたら少しは影響したのかと、ほんのわずかな希望を抱いて注ぐ霊力を強めた。
小さく宿祢の口が動く。
なにやら呪いの言葉が紡がれているようだが、こんなに近くにいる幽霊のお姉さんにも聞こえないのだ、観戦に集中している洛穣の耳に届くはずもなかった。
宿祢の手から、微かだが光が溢れ出す。
それは彼の瞳と同じ、優しい水色の光だった。
ゆっくりとだが、冬の出血が止まり始めた。
『戻ってきて、冬!』
その声が届いたのか、ぴくりと冬の指が動いた。
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