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第参幕 霊具
第二十話
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「つまり、その種とやらを破壊すればいいんだな」
「しかし、それで細殿が元に戻るかどうか…」
「お願い、兄様を助けて。アタシの、たった一人の家族なのよ…」
「あられ…」
あられの為にもささめさんを助けたい。
でも、種を破壊してささめさんが元に戻る保証もない。
「確かに異変源を破壊すれば暴走は止まるねぇ」
また人の姿をとった更科様が言う。
がりがりと頭を掻きながら続ける。
「止まるだけで、元に戻るわけじゃないけど」
「それ、死ぬって事か?」
「泰時は直球だねぇ。オブラートに包むって言葉、知ってるのかい」
「まどろっこしいのは嫌いだ」
断言した泰時様を見て更科様は肩を竦めた。
「異変源を破壊すれば、暴走は止まって元の姿には戻る。けど、そいつは同時に魔物化現象したやつの死を意味する」
「あ、兄様を…助ける方法は…」
「ないね。殺してやるのが唯一の救いさ」
「そんな…」
きっぱりと断言した更科様の言葉にショックを受け、あられが倒れる。
その体を慌てて支えたけれど、わたしにはかける言葉がない。
こんなにはっきりと断言されたら、もう、どうしようも…。
「一つだけ方法がありますよ」
「え?」
その言葉に、わたし達の視線が一斉に誠士郎様に集まる。
「細さんの体を蝕んでいる穢れを浄化すればいいのですよ」
「浄化って……一体、どうやってだ?」
「霊具に宝珠の力を乗せて異変源を破壊すればいいのです」
「宝珠とは、まさか四季の宝珠の事でござるか?」
「はい」
「簡単に言うがな、誠士郎。肝心の宝珠はどこにあるというんだ」
「冬さんがお持ちのはずですよ」
「え!?わたし!?」
突然そんな事を言われて、わたしは自分を指差して聞き返した。
驚いたみんながわたしを見るけれど、わたしも驚いて誠士郎様を見返す。
だってわたし、四季の宝珠なんて持ってないよ。
四季の宝珠って姫巫女が持っているものでしょ?
わたしはまだ見習いで、宝珠なんて見た事ないよ。
「秋さんから、宝珠を受け取りましたよね」
「は、はい。両親の形見だとかで…。えっと、帯の結び目に入れて…」
「ああ、出さなくて結構です。肌身離さず持っていれば、ちゃんと使えますから」
「使える…?」
「まだわかりませんか?冬さんが受け継いだその宝珠こそが『四季の宝珠』ですよ」
「四季の……えええええええ!?」
ただの形見だと言って渡されたこの水晶玉が、四季の宝珠!?
秋ちゃん、わたしそんな事、一言も聞いてないよ!
あまりにも驚きすぎて次の言葉が出てこない。
とりあえず腰の後ろに手を回し帯の結び目を触る。
うん、中にちゃんと宝珠入ってる。
リボン結びの帯。
なんでその中に宝珠を入れているかというと、袖の中だと落としそうだったから。
着物の袖はちょっとした袋みたいになっているけど、そこだとなんか重いし手が動かしにくいし、やっぱり落としそうだし。
でも秋ちゃんに『肌身離さず持っているんだよ』と言われた以上、この場所が一番ベストだと思ったの。
でも、ただの水晶玉だと思ってたのに…。
宝珠って言われると、途端に高級な感じがしてくる。
わたしの扱い、雑すぎたかな?
「本当に、宝珠の力を使えば兄様を元に戻せるの?」
「ええ。前に一度、この目で見ていますから」
「見てって…誰かが魔物化現象を鎮めたって事ですか?一体誰が?」
「本人に『僕がやった事は絶対に誰にも言わないで』と口止めされていまして。『誰が』というのは教えられませんが、『どうやるのか』は教えられますよ」
「冬!お願い、兄様を助けて!」
「ま、待ってよあられ。わたしこれが四季の宝珠だなんて知らなかったし、どうやるのかだって今から聞くわけで…」
「お願い!」
必死に頼み込んでくるあられに、わたしは胸を張って「任せて!」と言えない。
もちろんささめさんの事は助けたい。
助けたいけど、自信がない。
わたしは姫巫女の、しかも見習いとして修行を始めたばかり。
霊力は少しだけ自由に扱えるようになったし、宿祢と式神契約もした。
けど、いきなりの実践が魔物化現象を鎮めるだなんて、ハードルが高すぎる。
「ささめさんは、わたしだって助けたいよ。でも、わたしはまだ修行を始めたばかりで…」
「大丈夫、冬さんなら出来ます」
「誠士郎様…」
不安でどうしようもないわたしに誠士郎様は優しく微笑んだ。
近付いて、少し腰を落としてわたしと視線を合わせ、優しく頭を撫でてくれた。
「姫巫女になると決めたのでしょう?細さんを助けたいのでしょう?」
「はい、ささめさんを助けたいです。あられの為にも、ささめさんの為にも」
「だったら、自信を持ってください。大丈夫。冬さんのその『優しい心』に、宝珠は必ず応えてくれますから」
本当に、応えてくれるのかな?
ううん、応えてもらわなくちゃいけない。
この水晶玉が本当に『四季の宝珠』なら、ささめさんを助けられるのはもう、この宝珠しかないんだから。
わたしは、姫巫女になるの。
困っている人を助ける姫巫女になるの。
そうだよ、弥生さんに約束したじゃない。
自分の為じゃなく、誰かの為に強くなるというわたしの志を証明するって。
一か八かの賭けでもいい。
ほんの一パーセントでもささめさんを助けられる可能性があるのなら、わたしはそれに賭けるわ!
「しかし、それで細殿が元に戻るかどうか…」
「お願い、兄様を助けて。アタシの、たった一人の家族なのよ…」
「あられ…」
あられの為にもささめさんを助けたい。
でも、種を破壊してささめさんが元に戻る保証もない。
「確かに異変源を破壊すれば暴走は止まるねぇ」
また人の姿をとった更科様が言う。
がりがりと頭を掻きながら続ける。
「止まるだけで、元に戻るわけじゃないけど」
「それ、死ぬって事か?」
「泰時は直球だねぇ。オブラートに包むって言葉、知ってるのかい」
「まどろっこしいのは嫌いだ」
断言した泰時様を見て更科様は肩を竦めた。
「異変源を破壊すれば、暴走は止まって元の姿には戻る。けど、そいつは同時に魔物化現象したやつの死を意味する」
「あ、兄様を…助ける方法は…」
「ないね。殺してやるのが唯一の救いさ」
「そんな…」
きっぱりと断言した更科様の言葉にショックを受け、あられが倒れる。
その体を慌てて支えたけれど、わたしにはかける言葉がない。
こんなにはっきりと断言されたら、もう、どうしようも…。
「一つだけ方法がありますよ」
「え?」
その言葉に、わたし達の視線が一斉に誠士郎様に集まる。
「細さんの体を蝕んでいる穢れを浄化すればいいのですよ」
「浄化って……一体、どうやってだ?」
「霊具に宝珠の力を乗せて異変源を破壊すればいいのです」
「宝珠とは、まさか四季の宝珠の事でござるか?」
「はい」
「簡単に言うがな、誠士郎。肝心の宝珠はどこにあるというんだ」
「冬さんがお持ちのはずですよ」
「え!?わたし!?」
突然そんな事を言われて、わたしは自分を指差して聞き返した。
驚いたみんながわたしを見るけれど、わたしも驚いて誠士郎様を見返す。
だってわたし、四季の宝珠なんて持ってないよ。
四季の宝珠って姫巫女が持っているものでしょ?
わたしはまだ見習いで、宝珠なんて見た事ないよ。
「秋さんから、宝珠を受け取りましたよね」
「は、はい。両親の形見だとかで…。えっと、帯の結び目に入れて…」
「ああ、出さなくて結構です。肌身離さず持っていれば、ちゃんと使えますから」
「使える…?」
「まだわかりませんか?冬さんが受け継いだその宝珠こそが『四季の宝珠』ですよ」
「四季の……えええええええ!?」
ただの形見だと言って渡されたこの水晶玉が、四季の宝珠!?
秋ちゃん、わたしそんな事、一言も聞いてないよ!
あまりにも驚きすぎて次の言葉が出てこない。
とりあえず腰の後ろに手を回し帯の結び目を触る。
うん、中にちゃんと宝珠入ってる。
リボン結びの帯。
なんでその中に宝珠を入れているかというと、袖の中だと落としそうだったから。
着物の袖はちょっとした袋みたいになっているけど、そこだとなんか重いし手が動かしにくいし、やっぱり落としそうだし。
でも秋ちゃんに『肌身離さず持っているんだよ』と言われた以上、この場所が一番ベストだと思ったの。
でも、ただの水晶玉だと思ってたのに…。
宝珠って言われると、途端に高級な感じがしてくる。
わたしの扱い、雑すぎたかな?
「本当に、宝珠の力を使えば兄様を元に戻せるの?」
「ええ。前に一度、この目で見ていますから」
「見てって…誰かが魔物化現象を鎮めたって事ですか?一体誰が?」
「本人に『僕がやった事は絶対に誰にも言わないで』と口止めされていまして。『誰が』というのは教えられませんが、『どうやるのか』は教えられますよ」
「冬!お願い、兄様を助けて!」
「ま、待ってよあられ。わたしこれが四季の宝珠だなんて知らなかったし、どうやるのかだって今から聞くわけで…」
「お願い!」
必死に頼み込んでくるあられに、わたしは胸を張って「任せて!」と言えない。
もちろんささめさんの事は助けたい。
助けたいけど、自信がない。
わたしは姫巫女の、しかも見習いとして修行を始めたばかり。
霊力は少しだけ自由に扱えるようになったし、宿祢と式神契約もした。
けど、いきなりの実践が魔物化現象を鎮めるだなんて、ハードルが高すぎる。
「ささめさんは、わたしだって助けたいよ。でも、わたしはまだ修行を始めたばかりで…」
「大丈夫、冬さんなら出来ます」
「誠士郎様…」
不安でどうしようもないわたしに誠士郎様は優しく微笑んだ。
近付いて、少し腰を落としてわたしと視線を合わせ、優しく頭を撫でてくれた。
「姫巫女になると決めたのでしょう?細さんを助けたいのでしょう?」
「はい、ささめさんを助けたいです。あられの為にも、ささめさんの為にも」
「だったら、自信を持ってください。大丈夫。冬さんのその『優しい心』に、宝珠は必ず応えてくれますから」
本当に、応えてくれるのかな?
ううん、応えてもらわなくちゃいけない。
この水晶玉が本当に『四季の宝珠』なら、ささめさんを助けられるのはもう、この宝珠しかないんだから。
わたしは、姫巫女になるの。
困っている人を助ける姫巫女になるの。
そうだよ、弥生さんに約束したじゃない。
自分の為じゃなく、誰かの為に強くなるというわたしの志を証明するって。
一か八かの賭けでもいい。
ほんの一パーセントでもささめさんを助けられる可能性があるのなら、わたしはそれに賭けるわ!
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