87 / 103
第四幕 愉比拿蛇
第二六話
しおりを挟む
「一つだけ、方法があるかもしれない」
考え込んでいた迦楼羅丸が言う。
半信半疑のような表情だけれど、弥生さんを助けられるならどんなに小さな望みでもいいよ!
「方法?」
「秋の知り合いに鬼がいただろう?奴は神鬼という種族だ。奴の力を使えば、あるいは」
「本当!?」
「断言はできん。だが、試してみる価値はある」
「それでいいよ!諦める前に出来る事をやらなくちゃ!」
わたしはごしごしと涙を拭く。
迦楼羅丸が弥生さんの体を抱き上げた。
こういうのは一刻も早い方がいいに決まっている。
わたし達は障害物を乗り越えながら全速力で元来た道を戻る。
途中で何度も道が塞がれていて、わたしの霊具と宿祢の妖術でこじ開けながら進んだ。
『見えたわ!あと少しよ!』
前方、胴の隙間から微かに光が漏れている。
あと少しで脱出できるんだね。
そうしたら弥生さん、助けられるんだよね。
けど、やはりそううまくは行かないもの。
わたし達の進路を塞ぐように霊魂の大群が現れた。
「えいっ」「はっ」
わたしと宿祢で蹴散らしている間に迦楼羅丸にはなんとか弥生さんの体を安全な場所に連れて行ってもらわないといけない。
わたし達じゃ力不足で迦楼羅丸も妖術で援護してくれる。
絶対に、絶対に助けるんだから!
弥生さんは死なせたりしない!
『きゃあ!』
「お姉さんはいいから先に脱出して!」
『でも…!』
「こいつら、愉比拿蛇の手下なんでしょ?だったら霊体であるお姉さんが一番危ないよ!」
お姉さんの道案内が無くても出口ならちゃんと視界の隅に捉えている。
「弥生さんをお願い!」
『わかったわ。弥生』
『うん』
けれど、二人の進路を霊魂の大群が遮った。
「水よっ」
宿祢が妖術で払うものの、すぐに塞がってしまう。
これじゃあきりがないよ。
とうとうわたし達は霊魂に囲まれてしまった。
あと少しなのにっ。
迦楼羅丸が弥生さんの体を守ってくれている以上、わたしが頑張らなくちゃいけないのに!
このままじゃ…このままじゃみんな、やられちゃうっ!
力不足が悔しくて、涙が溢れてくる。
泣いている場合じゃないのにっ。
しっかりしてよ、わたし!
『ありがとう、冬』
「え?」
何を思ったのか、弥生さんがわたしの前に出た。
『あたし、信じてた。信じてよかった』
「弥生、さん…?」
『約束通り、助けに来てくれてありがとう。最期に冬に会えて本当に良かった』
「な、何言ってるの…?最期って…」
『あたしが囮になるわ。だから天狗、冬を連れて脱出しなさい』
「弥生さん!?嫌よ!わたし絶対に嫌!弥生さんも一緒に…」
『冬!』
「…っ」
『このままじゃ全員死ぬのよ』
「で、でも…」
『あたし…』
そう言って振り向いた弥生さんは、笑っていた。
どこか寂しげなその笑顔に、胸がぎゅっと苦しくなる。
『体だけでも、お兄様の元に帰りたい』
返す言葉が、見つからなかった。
霊魂は飛びだした弥生さんを追っていく。
わたしは宿祢に手を引かれるまま走り出した。
ここで立ち止まる事は、弥生さんの気持ちを無駄にする事だから。
わたしが今、やらなきゃいけないのは、無事に脱出する事だから。
『冬…。あたし、あんたと友達になりたかった…』
「…っ。なに、言ってるの…。わたし達…」
振り向いた先には、霊魂に襲われる弥生さんの姿。
それも直ぐに涙でにじんでわからなくなる。
「わたし達、とっくに友達だよ!弥生ちゃん!」
考え込んでいた迦楼羅丸が言う。
半信半疑のような表情だけれど、弥生さんを助けられるならどんなに小さな望みでもいいよ!
「方法?」
「秋の知り合いに鬼がいただろう?奴は神鬼という種族だ。奴の力を使えば、あるいは」
「本当!?」
「断言はできん。だが、試してみる価値はある」
「それでいいよ!諦める前に出来る事をやらなくちゃ!」
わたしはごしごしと涙を拭く。
迦楼羅丸が弥生さんの体を抱き上げた。
こういうのは一刻も早い方がいいに決まっている。
わたし達は障害物を乗り越えながら全速力で元来た道を戻る。
途中で何度も道が塞がれていて、わたしの霊具と宿祢の妖術でこじ開けながら進んだ。
『見えたわ!あと少しよ!』
前方、胴の隙間から微かに光が漏れている。
あと少しで脱出できるんだね。
そうしたら弥生さん、助けられるんだよね。
けど、やはりそううまくは行かないもの。
わたし達の進路を塞ぐように霊魂の大群が現れた。
「えいっ」「はっ」
わたしと宿祢で蹴散らしている間に迦楼羅丸にはなんとか弥生さんの体を安全な場所に連れて行ってもらわないといけない。
わたし達じゃ力不足で迦楼羅丸も妖術で援護してくれる。
絶対に、絶対に助けるんだから!
弥生さんは死なせたりしない!
『きゃあ!』
「お姉さんはいいから先に脱出して!」
『でも…!』
「こいつら、愉比拿蛇の手下なんでしょ?だったら霊体であるお姉さんが一番危ないよ!」
お姉さんの道案内が無くても出口ならちゃんと視界の隅に捉えている。
「弥生さんをお願い!」
『わかったわ。弥生』
『うん』
けれど、二人の進路を霊魂の大群が遮った。
「水よっ」
宿祢が妖術で払うものの、すぐに塞がってしまう。
これじゃあきりがないよ。
とうとうわたし達は霊魂に囲まれてしまった。
あと少しなのにっ。
迦楼羅丸が弥生さんの体を守ってくれている以上、わたしが頑張らなくちゃいけないのに!
このままじゃ…このままじゃみんな、やられちゃうっ!
力不足が悔しくて、涙が溢れてくる。
泣いている場合じゃないのにっ。
しっかりしてよ、わたし!
『ありがとう、冬』
「え?」
何を思ったのか、弥生さんがわたしの前に出た。
『あたし、信じてた。信じてよかった』
「弥生、さん…?」
『約束通り、助けに来てくれてありがとう。最期に冬に会えて本当に良かった』
「な、何言ってるの…?最期って…」
『あたしが囮になるわ。だから天狗、冬を連れて脱出しなさい』
「弥生さん!?嫌よ!わたし絶対に嫌!弥生さんも一緒に…」
『冬!』
「…っ」
『このままじゃ全員死ぬのよ』
「で、でも…」
『あたし…』
そう言って振り向いた弥生さんは、笑っていた。
どこか寂しげなその笑顔に、胸がぎゅっと苦しくなる。
『体だけでも、お兄様の元に帰りたい』
返す言葉が、見つからなかった。
霊魂は飛びだした弥生さんを追っていく。
わたしは宿祢に手を引かれるまま走り出した。
ここで立ち止まる事は、弥生さんの気持ちを無駄にする事だから。
わたしが今、やらなきゃいけないのは、無事に脱出する事だから。
『冬…。あたし、あんたと友達になりたかった…』
「…っ。なに、言ってるの…。わたし達…」
振り向いた先には、霊魂に襲われる弥生さんの姿。
それも直ぐに涙でにじんでわからなくなる。
「わたし達、とっくに友達だよ!弥生ちゃん!」
0
あなたにおすすめの小説
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる