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第3章 魔王退治に魔王が同行するってどういう事?

その1

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ふと目が覚めた。
見知らぬ部屋の、見知らぬベッドの中にいるみたい。
ドアの向こうから話し声が聞こえる。
「まったく…情けないったらありませんわ」
「きっと疲れが溜まっていたんですよ」
「それにしたって…」
コンコン、とノックされる。
「ヤヤコ、入りますわよ」
そう言って入ってきたのはオルレンシアさんと見知らぬ男性。
「もう、目が覚めているのなら返事くらいしなさいな」
「あ…すみま…せん」
「まあまあ、目が覚めたばかりでちゃんと覚醒していないのでしょう」
聞き覚えのあるその声に、誰だっけと働かない頭で考える。
「シャキッとしたら降りてきなさい。ゼロさん、参りましょう」
「あ、俺はもうちょいここにいます。異世界人に興味あるんで」
「物好きですこと」
そう言ってオルレンシアさんはさっさと出て行ってしまった。
ゼロ、という名前で急速に頭が覚醒していく。
状況はさっぱり読み込めないけれど、少なくともまだ生きてはいるみたい。
「聞きたい事が山ほどある、という顔じゃな」
そういうとゼロさんはドアを閉め、椅子を持ってきてベッドの側に腰掛けた。
まだ横になっていたかったけれど、話をするなら起き上がらないとね。
ゼロさんはさりげなく背中に手を置いて、上体を起こすのを手伝ってくれた。
こんなに気を使ってくれるのに、魔王なのよね?
なんだかすごく不思議。
この人は一体、どういう人なのかしら。
ゼロさんが指を鳴らすと、部屋がほんの少しだけ暗くなった気がした。
「これから話す内容を誰かに聞かれるのは流石にマズイのでな。一応結界を張らせてもらった。なぁに、取って食いはせんよ」
「その気があるなら、私は今頃あの世ですよ」
「ははは。そうだな。さて、何から説明したものか」
「あの、本当にゼロさんなんですよね?魔王の」
「うむ。本名はリューベングールという。今の容姿と名は親友から借りたものじゃ。ややこしいからゼロでよいぞ」
「なんで助けてくれたのか、とか色々聞きたいですけど、貴方の目的はなんですか?」
「儂の目的はただ一つ。今、世界を蝕んでいる厄災を止める事じゃ。その為にヤヤコくん、君の力を借りたい」
「厄災を、止める? ちょ、ちょっと待ってください。厄災ってゼロさんが起こしているって聞きましたよ?」
「儂は何もしていない。が、儂が目覚めたのが原因なのは確かじゃ」
「どういうことですか?」
「その説明の為にも、この世界について話そう。と言っても、儂の知識は3000年前の物だがの」
そう前置きして、ゼロさんはこの世界について教えてくれた。
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