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第4章 噂の一人歩きは本当にやめて欲しいのです
その8
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騎士団が蔦を食い止めている間に急いで避難が行われている。けれどもパニックになった人々は右往左往と走り回り、転び、はぐれるなど避難は遅々として進まない。そうよね、火事や地震は避難訓練していたとしても、街中にあふれかえる蔦なんて予想外よね。
無駄だとは思ったけれど、もう一度浄化ゾウさんを試してみる。が、無駄に終わった。ルナさんの時は瘴気だったけれど、もしかしてラムネ君の蔦は瘴気でできているわけではなく、本物の植物なのかしら。ものは試しよ、
「ファイヤーボール!」
この世界の常識では失敗魔術だけれど、杖の先端から火炎放射器ばりに炎が吹き上がった。というか、これ球じゃないわね。私の世界で魔術が使えたとしても失敗だわ。
ファイヤーボール改を蔦に当て続ければ焦げ臭い匂いとともに火がついた。遅めではあるものの、徐々に炎は燃え広がっていく。
すると蔦が意志でもあるかのようにくねりだす。まるで炎の熱さから逃れようとしているかのようだわ。もしかして、またやらかした?
炎を振り払おうと蔦は暴れまわり、避難が完了していた近くの喫茶店を破壊する。喫茶店は運悪く火をもらい、またたく間に燃え上がった。もしかしなくてもやらかしました。火事に関しては私が戦犯で間違いありません。マイナスの幸運値がまさかこんなところで作動するなんて…。
いやいやいや、ぽかんとしている場合じゃないわ!早く消火しないと!でも私まだ水の魔術教えてもらってないし…。どうしよう?
おろおろとあたりを見回しても、もちろん手の空いている人なんて誰もいない。
そうだわ、魔術じゃなくて魔法を使えばいいのよ。ゾウさんの時みたいにイメージで…!火事といえばもちろん、
「お願い!消防車!」
杖についている魔石から鉄砲水のように水が吹き出した。それに乗って手のひらサイズの消防車が3台現れる。彼等は見事な連携プレイで素早く鎮火させた。さすがだわ。そして私は見事に証拠隠滅を果たしたのだった。
本当にごめんなさい。
※ ※ ※
誰もいないのをいいことに、ゼロは魔獣の姿に戻り時計塔内を浮遊状態で上昇していた。魔力が足りず飛行速度は遅めだが、駆け上がるよりは断然早い。あっという間に最上階までたどり着いたものの、核らしきものは見当たらなかった。念の為鐘の中も調べるが、やはり無い。
(どういうことじゃ…?確かにこの塔が核で間違いないはずなのに、あるはずの核がない)
焦りすぎて見落としたのかと、もう一度塔内部へと探査魔法を発動させる。だが、やはり核はない。
一度夜々子のところに戻ろうかと引き返しかけた時だった。
『せめて…最期の…力…』
(ラムネ!?馬鹿な、意識体は先程消したはず…!)
虫の息と取れる声音でラムネのテレパシーが再び頭の中に語りかけてきた。
『異界…の…勇者は…この…世界の…毒…世界に…破滅を…不幸を…呼ぶ…存在…勇者…こそ…世界の…悪…』
ちっ、と舌打ちし、ゼロは急いで夜々子の元へと戻る。このタイミングでのラムネのテレパシー。これではまるで夜々子がこの状況を作り出した元凶だと捉えられかねない。自分達が全くの無実かと言われれば、そこは肯定しにくいものの、だが夜々子だけの責任ではない。ラムネに止めを刺したのはゼロなのだ。
ラムネの言葉は真実ではない。だが、嘘でもない。
このままでは夜々子に怒りの矛先が向けられる可能性が十分にある。それだけは、なんとしても避けたい。
(ヤヤコ君…!)
崩れゆく時計塔内部よりは飛び降りたほうが早いと判断したゼロは、軽い魔獣形態よりは早く地上に戻れるだろうと青年の姿に化け、再び時計塔の最上階から飛び降りた。
無駄だとは思ったけれど、もう一度浄化ゾウさんを試してみる。が、無駄に終わった。ルナさんの時は瘴気だったけれど、もしかしてラムネ君の蔦は瘴気でできているわけではなく、本物の植物なのかしら。ものは試しよ、
「ファイヤーボール!」
この世界の常識では失敗魔術だけれど、杖の先端から火炎放射器ばりに炎が吹き上がった。というか、これ球じゃないわね。私の世界で魔術が使えたとしても失敗だわ。
ファイヤーボール改を蔦に当て続ければ焦げ臭い匂いとともに火がついた。遅めではあるものの、徐々に炎は燃え広がっていく。
すると蔦が意志でもあるかのようにくねりだす。まるで炎の熱さから逃れようとしているかのようだわ。もしかして、またやらかした?
炎を振り払おうと蔦は暴れまわり、避難が完了していた近くの喫茶店を破壊する。喫茶店は運悪く火をもらい、またたく間に燃え上がった。もしかしなくてもやらかしました。火事に関しては私が戦犯で間違いありません。マイナスの幸運値がまさかこんなところで作動するなんて…。
いやいやいや、ぽかんとしている場合じゃないわ!早く消火しないと!でも私まだ水の魔術教えてもらってないし…。どうしよう?
おろおろとあたりを見回しても、もちろん手の空いている人なんて誰もいない。
そうだわ、魔術じゃなくて魔法を使えばいいのよ。ゾウさんの時みたいにイメージで…!火事といえばもちろん、
「お願い!消防車!」
杖についている魔石から鉄砲水のように水が吹き出した。それに乗って手のひらサイズの消防車が3台現れる。彼等は見事な連携プレイで素早く鎮火させた。さすがだわ。そして私は見事に証拠隠滅を果たしたのだった。
本当にごめんなさい。
※ ※ ※
誰もいないのをいいことに、ゼロは魔獣の姿に戻り時計塔内を浮遊状態で上昇していた。魔力が足りず飛行速度は遅めだが、駆け上がるよりは断然早い。あっという間に最上階までたどり着いたものの、核らしきものは見当たらなかった。念の為鐘の中も調べるが、やはり無い。
(どういうことじゃ…?確かにこの塔が核で間違いないはずなのに、あるはずの核がない)
焦りすぎて見落としたのかと、もう一度塔内部へと探査魔法を発動させる。だが、やはり核はない。
一度夜々子のところに戻ろうかと引き返しかけた時だった。
『せめて…最期の…力…』
(ラムネ!?馬鹿な、意識体は先程消したはず…!)
虫の息と取れる声音でラムネのテレパシーが再び頭の中に語りかけてきた。
『異界…の…勇者は…この…世界の…毒…世界に…破滅を…不幸を…呼ぶ…存在…勇者…こそ…世界の…悪…』
ちっ、と舌打ちし、ゼロは急いで夜々子の元へと戻る。このタイミングでのラムネのテレパシー。これではまるで夜々子がこの状況を作り出した元凶だと捉えられかねない。自分達が全くの無実かと言われれば、そこは肯定しにくいものの、だが夜々子だけの責任ではない。ラムネに止めを刺したのはゼロなのだ。
ラムネの言葉は真実ではない。だが、嘘でもない。
このままでは夜々子に怒りの矛先が向けられる可能性が十分にある。それだけは、なんとしても避けたい。
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