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第二幕 埜剛と埜壬
第三話
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そうこうしているうちにようやくお店も落ち着いたようで、さっきの店員さんがやってきた。
「悪いね、待たせて。…おや?一人増えてるね」
「店員さん。あの、俊介さんは?」
「俊介は俺だよ。村友俊介だ。改めてよろしく、お嬢さん」
「わたしは七草冬と申します。あの、これ、秋ちゃんから俊介さんにと…」
秋ちゃんから預かった手紙と風呂敷包み俊介さんに渡す。
どれどれ…といって読み始めた俊介さんは、手紙を読み進めるにつれてにやにやし始めた。嬉しいことでも書いてあったみたい。でも、ちょっと傍から見ると怪しい。
「役に立ったみたいで何より何より。ところで深冬ちゃん、やっくんは元気かい?」
「やっくん?というか、わたしは『みふゆ』じゃなくて『ふゆ』なんですけど」
「ああ、ごめんごめん。冬ちゃんね。やっくんっていうのは、啼々泰時の事」
「俊介さん、泰時様のお知り合いなんですか?」
「まあね。あの子、ちゃんと皆と仲良くしてる?意地っ張りで泣き虫だから心配なんだよねー」
「いじっぱりで…なきむし…」
「泰時殿の印象とはかけ離れているでござるな」
「そう?」
「泰時様は元気ですよ。いつも通り泰時様していました」
「うん、よくわからないけどよくわかったよ」
俊介さんがお茶のお代わりを淹れようとしたとき、お店の中に二人の少女が飛び込んできた。
「俊さん、大変だよー!」
「八百万屋始まって以来の大ピンチなのー!」
「…そのセリフ、今月に入ってもう三回目なんだけど」
またか…という顔をした俊介さんにお構いなく、少女達はずずいっと詰め寄った。
双子とか姉妹というわけではなさそうだけれど、色違いの同じ着物を着ている。前掛け付きのフリフリな着物が似合っていてとっても可愛い。髪型もそろえていて、アイドルユニットでもいけそうな気がする。
「俊さんは乙女の味方でしょー」
「そうなのそうなの。助けるのー」
「いやでも、来客中だし」
その言葉に少女達はぐるりと首を回してわたし達を見た。
「こ、こんにちは」
わたしが声をかけると少女達は素早くお互いの身だしなみを整え、軽く着物の裾をつまんで、まるで異国のお姫様がするような可愛いポーズであいさつを返してくれた。
「八百万屋看板娘その一、燵浪蓮花です」
「同じくその二、夕凪魅莱ですの」
「は、初めまして。姫巫女見習いの七草冬です。こっちは宿祢で、こちらは埜壬さん」
「やじん?」
「蓮ちゃん、さっきの人…」
「うん。あの、もしかして、埜剛さんという方をご存知だったりしませんか?」
蓮花さんと魅莱さんはお互いに顔を見合わせて頷いた後、そう切り出した。
わたしと宿祢には心当たりはなく、俊介さんも知らないと首を振った。
「埜剛?…金の髪で、浅黒い肌をしている眼帯の大男か?」
「そうです」
問う埜壬さんに二人は頷く。それを見て何か嫌な予感でもしたのか、埜壬さんは眉を寄せた。
「某の兄者だ。今度は一体、何をしでかした?」
「しでかした訳じゃないの。どちらかというと、助けてくれたほうなの」
「レンちゃんもミラちゃんも落ち着こうか。最初からちゃんと教えてくれないと、話が見えないからさ」
「それもそうなの」
「実は…」
蓮花さんと魅莱さんの二人は、この篠崎にある八百万屋というなんでも屋のスタッフなんだって。普段は受け付けのような事をしているらしいの。
最近、近くの山に山菜を取りに行った人達が行方不明になる事件が頻発していて、今日はその調査に何人かが山に向かったんだって。
ところが、霧が濃くなって動けなくなった探索チームにモノノケが襲い掛かってきたらしいの。応戦したけれどもモノノケはかなり手強く、みんな捕まっちゃったらしい。
一人だけ何とか逃げ出して帰ってきたらしいんだけど、このままじゃ捕まった人達が殺されちゃうかもしれない状況みたいなの。
一番強い紫堂戒さんって人は、今は別の仕事で篠崎にはいない。困り果てていたところに埜剛さんが通りかかって、救出してくると二人の制止も聞かずに山に入って行っちゃったんだって。
俊介さんは八百万屋のメンバーじゃないけど、カラクリを作るのが得意で、よく力を貸しているらしい。それで困り果てた二人は俊介さんに助けを求めに来たんだって。
「悪いね、待たせて。…おや?一人増えてるね」
「店員さん。あの、俊介さんは?」
「俊介は俺だよ。村友俊介だ。改めてよろしく、お嬢さん」
「わたしは七草冬と申します。あの、これ、秋ちゃんから俊介さんにと…」
秋ちゃんから預かった手紙と風呂敷包み俊介さんに渡す。
どれどれ…といって読み始めた俊介さんは、手紙を読み進めるにつれてにやにやし始めた。嬉しいことでも書いてあったみたい。でも、ちょっと傍から見ると怪しい。
「役に立ったみたいで何より何より。ところで深冬ちゃん、やっくんは元気かい?」
「やっくん?というか、わたしは『みふゆ』じゃなくて『ふゆ』なんですけど」
「ああ、ごめんごめん。冬ちゃんね。やっくんっていうのは、啼々泰時の事」
「俊介さん、泰時様のお知り合いなんですか?」
「まあね。あの子、ちゃんと皆と仲良くしてる?意地っ張りで泣き虫だから心配なんだよねー」
「いじっぱりで…なきむし…」
「泰時殿の印象とはかけ離れているでござるな」
「そう?」
「泰時様は元気ですよ。いつも通り泰時様していました」
「うん、よくわからないけどよくわかったよ」
俊介さんがお茶のお代わりを淹れようとしたとき、お店の中に二人の少女が飛び込んできた。
「俊さん、大変だよー!」
「八百万屋始まって以来の大ピンチなのー!」
「…そのセリフ、今月に入ってもう三回目なんだけど」
またか…という顔をした俊介さんにお構いなく、少女達はずずいっと詰め寄った。
双子とか姉妹というわけではなさそうだけれど、色違いの同じ着物を着ている。前掛け付きのフリフリな着物が似合っていてとっても可愛い。髪型もそろえていて、アイドルユニットでもいけそうな気がする。
「俊さんは乙女の味方でしょー」
「そうなのそうなの。助けるのー」
「いやでも、来客中だし」
その言葉に少女達はぐるりと首を回してわたし達を見た。
「こ、こんにちは」
わたしが声をかけると少女達は素早くお互いの身だしなみを整え、軽く着物の裾をつまんで、まるで異国のお姫様がするような可愛いポーズであいさつを返してくれた。
「八百万屋看板娘その一、燵浪蓮花です」
「同じくその二、夕凪魅莱ですの」
「は、初めまして。姫巫女見習いの七草冬です。こっちは宿祢で、こちらは埜壬さん」
「やじん?」
「蓮ちゃん、さっきの人…」
「うん。あの、もしかして、埜剛さんという方をご存知だったりしませんか?」
蓮花さんと魅莱さんはお互いに顔を見合わせて頷いた後、そう切り出した。
わたしと宿祢には心当たりはなく、俊介さんも知らないと首を振った。
「埜剛?…金の髪で、浅黒い肌をしている眼帯の大男か?」
「そうです」
問う埜壬さんに二人は頷く。それを見て何か嫌な予感でもしたのか、埜壬さんは眉を寄せた。
「某の兄者だ。今度は一体、何をしでかした?」
「しでかした訳じゃないの。どちらかというと、助けてくれたほうなの」
「レンちゃんもミラちゃんも落ち着こうか。最初からちゃんと教えてくれないと、話が見えないからさ」
「それもそうなの」
「実は…」
蓮花さんと魅莱さんの二人は、この篠崎にある八百万屋というなんでも屋のスタッフなんだって。普段は受け付けのような事をしているらしいの。
最近、近くの山に山菜を取りに行った人達が行方不明になる事件が頻発していて、今日はその調査に何人かが山に向かったんだって。
ところが、霧が濃くなって動けなくなった探索チームにモノノケが襲い掛かってきたらしいの。応戦したけれどもモノノケはかなり手強く、みんな捕まっちゃったらしい。
一人だけ何とか逃げ出して帰ってきたらしいんだけど、このままじゃ捕まった人達が殺されちゃうかもしれない状況みたいなの。
一番強い紫堂戒さんって人は、今は別の仕事で篠崎にはいない。困り果てていたところに埜剛さんが通りかかって、救出してくると二人の制止も聞かずに山に入って行っちゃったんだって。
俊介さんは八百万屋のメンバーじゃないけど、カラクリを作るのが得意で、よく力を貸しているらしい。それで困り果てた二人は俊介さんに助けを求めに来たんだって。
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