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第三幕 かりん
第二話
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五〇近くいるであろう猫達が廃寺に集っている。それも、普通の猫ではなく百年生き妖力を得た猫達――猫又と呼ばれるモノノケへと昇華した猫達だ。
猫又は大きく分けて二通りの種別に分けられる。一つは飼い猫として愛された猫が猫又へと昇華した存在。もう一つは野生の猫が百年生き、猫又へと昇華した存在。同じ猫又である事に違いはないのだが、本質が違うとされている。
家猫が昇華した存在である猫又は人間に対し友好的で、座敷童のように家に憑き家主に幸運を運んでくると云われている。
対して野生の猫が昇華した存在である猫又を『金華猫』あるいは『猫鬼』と呼び、彼等は人間にいたずらをしたり、作物を食い荒らしたりと…所謂『害獣』と呼ぶべき存在になるものが多い。過去には人間を襲ったという報告もあげられている。
もちろん例外はあるのだが、火埜では昔から金華猫による作物への被害が多く、忌み嫌われていた。
二股に分かれた尾をもつ猫又達の前に、リーダー各の猫又が歩いてくる。その姿を見とめると猫又達のざわめきはすぐに消えてなくなった。
「皆、よく集まってくれた。今宵招集をかけたのには二つの理由がある。良い知らせと悪い知らせだ。まずは良い知らせからいこう。さあ、こちらへ来なさい」
「は、はい…」
リーダーに促され、一匹の猫又が彼の元へと近づいてきた。リーダーよりも一回り小さい猫又はほかの猫又と違って炎のように赤い毛並みだった。緊張しているのか、視線はほとんど下を向いたままだ。
「三日前の満月の日、彼女は無事に猫又へと昇華した。久方ぶりの新入りだ、皆仲良くしてやってくれ」
「よ、よろしく…お願い…します」
尻すぼみになった挨拶に、リーダーは「そんなに固くなるな」と笑った。
「こいつにはまだ名前がなくてな、後でいい名前を考えてやろう」
その言葉にどんな名前がいいか猫又達は楽しそうに顔を合わせた。リーダーは咳払いで騒めきを鎮めると、もう一つの理由『悪い知らせ』を切り出す。
「もう知っている者もいるだろうが、悪い知らせというのは他でもない、舞花の事だ」
その言葉に息をのむ者、顔を強張らせる者、何事かと顔を見合わせる者でほんの少しざわついた。
「昨日、舞花が人間共に捕まった。偵察の話では妖力を封じる檻に入れられたそうだ」
「本当ですか!?」
「姐さんに限ってそんな…」
「信じられん」
「残念ながら、事実だ。処刑されるのか、妖力を封じられ飼い殺されるのかはわからん。だが、俺は舞花を助けに行こうと思う。これ以上、人間共の好きにはさせん」
「俺達も力を貸しますぜ。なあ、みんな!」
「もちろんだ!」
「みんなで姐さんを助けるぞ!」
「人間共の好きにさせてたまるか!」
「舞花を救い出し、我々を虐げてきた人間共に復讐をする。どうか俺に皆の力を貸して欲しい」
「もちろんだぜ、大将!」
「人間共をぶっ殺せ!」
「今までの恨みを晴らすんだ!」
「おおー!」
どんどん殺気立っていく猫又達を見て、赤い猫又は恐怖に身を竦めていた。
猫又は大きく分けて二通りの種別に分けられる。一つは飼い猫として愛された猫が猫又へと昇華した存在。もう一つは野生の猫が百年生き、猫又へと昇華した存在。同じ猫又である事に違いはないのだが、本質が違うとされている。
家猫が昇華した存在である猫又は人間に対し友好的で、座敷童のように家に憑き家主に幸運を運んでくると云われている。
対して野生の猫が昇華した存在である猫又を『金華猫』あるいは『猫鬼』と呼び、彼等は人間にいたずらをしたり、作物を食い荒らしたりと…所謂『害獣』と呼ぶべき存在になるものが多い。過去には人間を襲ったという報告もあげられている。
もちろん例外はあるのだが、火埜では昔から金華猫による作物への被害が多く、忌み嫌われていた。
二股に分かれた尾をもつ猫又達の前に、リーダー各の猫又が歩いてくる。その姿を見とめると猫又達のざわめきはすぐに消えてなくなった。
「皆、よく集まってくれた。今宵招集をかけたのには二つの理由がある。良い知らせと悪い知らせだ。まずは良い知らせからいこう。さあ、こちらへ来なさい」
「は、はい…」
リーダーに促され、一匹の猫又が彼の元へと近づいてきた。リーダーよりも一回り小さい猫又はほかの猫又と違って炎のように赤い毛並みだった。緊張しているのか、視線はほとんど下を向いたままだ。
「三日前の満月の日、彼女は無事に猫又へと昇華した。久方ぶりの新入りだ、皆仲良くしてやってくれ」
「よ、よろしく…お願い…します」
尻すぼみになった挨拶に、リーダーは「そんなに固くなるな」と笑った。
「こいつにはまだ名前がなくてな、後でいい名前を考えてやろう」
その言葉にどんな名前がいいか猫又達は楽しそうに顔を合わせた。リーダーは咳払いで騒めきを鎮めると、もう一つの理由『悪い知らせ』を切り出す。
「もう知っている者もいるだろうが、悪い知らせというのは他でもない、舞花の事だ」
その言葉に息をのむ者、顔を強張らせる者、何事かと顔を見合わせる者でほんの少しざわついた。
「昨日、舞花が人間共に捕まった。偵察の話では妖力を封じる檻に入れられたそうだ」
「本当ですか!?」
「姐さんに限ってそんな…」
「信じられん」
「残念ながら、事実だ。処刑されるのか、妖力を封じられ飼い殺されるのかはわからん。だが、俺は舞花を助けに行こうと思う。これ以上、人間共の好きにはさせん」
「俺達も力を貸しますぜ。なあ、みんな!」
「もちろんだ!」
「みんなで姐さんを助けるぞ!」
「人間共の好きにさせてたまるか!」
「舞花を救い出し、我々を虐げてきた人間共に復讐をする。どうか俺に皆の力を貸して欲しい」
「もちろんだぜ、大将!」
「人間共をぶっ殺せ!」
「今までの恨みを晴らすんだ!」
「おおー!」
どんどん殺気立っていく猫又達を見て、赤い猫又は恐怖に身を竦めていた。
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