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僕とお使い
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赤羽奏多との賭けポーカーに負けた僕は、シャーチャとやらを買うために夜の街へと繰り出した。ポーカーを始めたのが夜ご飯終わりだったから、もう街は静まり始めているかと思ったが、意外にも灯りが煌々と灯っていて賑やかだ。
なんだかんだ1人で街に出るのはこれが初めてだ。少し緊張する。
歩いていると、程なくして飲食店らしき建物を発見した。よし、すぐに帰れそうだ。
「すみません。シャーチャって飲み物売ってますか?」
僕が飲食店の店主らしきおじさんにそう聞くと、店内は一気に静まり返った。
かと思うと、次の瞬間、食事をしていた客も店員のおじさんも大声をだして笑い始めた。
「ダッハハハ!兄ちゃん、シャーチャがこんなとこで売ってるわけないだろう!まさか酔ってんのか?」
客達もそれを聞いて大爆笑している。
「そもそもお前、シャーチャが何か知らねえんじゃねぇか?」
1人の客がヤジを飛ばす。
ああ知らないさ!赤羽が勝手に命令した飲み物だ!僕が知ってるわけない!
そう僕が反論する間も無くその客は続けた。
「ボウズ、シャーチャってのはな、ルージャが集めた蜜のことを言うんだ」
………ん?今なんて?
ルージャって単語には聞き覚えがある。いや心の底から勘違いであってほしいんだけど。もしも万が一、僕に記憶が正しければ、ルージャってのはでかい二足歩行のトカゲだったような………。
「あの、それはどこで手に入りますか?」
薄々分かってはいるけど一応聞いておこう。
「決まってんだろ!ルージャの巣に採りにいくんだよ!あいつらは草食だけど、シャーチャに手を出すやつには容赦なく攻撃してくるんだ。ボウズみたいなヒョロヒョロのガキじゃ、採ってくるのはまず無理だろうな。ガハハ!」
はい。詰みです。
さっさと帰って赤羽に謝ろう。土下座したら許してくれるだろうか。
………いや、待てよ。本当にそれでいいのか進藤歩夢。赤羽に何一つ勝てないばかりか、頼まれたお使いもこなせない。そんなんでいいのか?
少しの間考えた後、僕は拳を強く握り、店を出ようとドアに手をかけた。
「お、おい兄ちゃん、まさか、シャーチャを採りに行くっていうんじゃねぇだろうな。悪いことは言わねぇ、やめとけ!大怪我するかもしれねぇんだぞ!」
「僕、もう決めたんです。行きます!」
それだけ言って僕は店を後にした。
店内のざわつきが外まで聞こえている。
あー、僕ってなんてカッコいいんだろう。勇気ある男だ!
………な訳ないだろー!大馬鹿野郎だよ!なんであんなこと言っちゃったんだ!ああもう嫌!
心の中でベタベタなノリツッコミをしてしまうほど、進藤歩夢は激烈に後悔していた。しかし、もう後戻りもできない。重そうに足を持ち上げながら草原へと向かったのだった。
なんだかんだ1人で街に出るのはこれが初めてだ。少し緊張する。
歩いていると、程なくして飲食店らしき建物を発見した。よし、すぐに帰れそうだ。
「すみません。シャーチャって飲み物売ってますか?」
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かと思うと、次の瞬間、食事をしていた客も店員のおじさんも大声をだして笑い始めた。
「ダッハハハ!兄ちゃん、シャーチャがこんなとこで売ってるわけないだろう!まさか酔ってんのか?」
客達もそれを聞いて大爆笑している。
「そもそもお前、シャーチャが何か知らねえんじゃねぇか?」
1人の客がヤジを飛ばす。
ああ知らないさ!赤羽が勝手に命令した飲み物だ!僕が知ってるわけない!
そう僕が反論する間も無くその客は続けた。
「ボウズ、シャーチャってのはな、ルージャが集めた蜜のことを言うんだ」
………ん?今なんて?
ルージャって単語には聞き覚えがある。いや心の底から勘違いであってほしいんだけど。もしも万が一、僕に記憶が正しければ、ルージャってのはでかい二足歩行のトカゲだったような………。
「あの、それはどこで手に入りますか?」
薄々分かってはいるけど一応聞いておこう。
「決まってんだろ!ルージャの巣に採りにいくんだよ!あいつらは草食だけど、シャーチャに手を出すやつには容赦なく攻撃してくるんだ。ボウズみたいなヒョロヒョロのガキじゃ、採ってくるのはまず無理だろうな。ガハハ!」
はい。詰みです。
さっさと帰って赤羽に謝ろう。土下座したら許してくれるだろうか。
………いや、待てよ。本当にそれでいいのか進藤歩夢。赤羽に何一つ勝てないばかりか、頼まれたお使いもこなせない。そんなんでいいのか?
少しの間考えた後、僕は拳を強く握り、店を出ようとドアに手をかけた。
「お、おい兄ちゃん、まさか、シャーチャを採りに行くっていうんじゃねぇだろうな。悪いことは言わねぇ、やめとけ!大怪我するかもしれねぇんだぞ!」
「僕、もう決めたんです。行きます!」
それだけ言って僕は店を後にした。
店内のざわつきが外まで聞こえている。
あー、僕ってなんてカッコいいんだろう。勇気ある男だ!
………な訳ないだろー!大馬鹿野郎だよ!なんであんなこと言っちゃったんだ!ああもう嫌!
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