これって溺愛ルートってやつですか?

眠れぬ森のゴリ子

文字の大きさ
3 / 7

生存ポイント

しおりを挟む
眩しい。もう朝か。

ん、朝?…
ハッ!やばい。もう仕事行かなくちゃ。太陽がこんなに出てるということはとっくのとうに始発は逃しただろう。部長に叱られる!

俺は柔らかなベットから飛び起きた。

あれ?なんだこの部屋。目の前に大理石で作られたであろうテーブルに見るからに上質なウォーミングチェアが目に入る。見覚えのない部屋だ。広くて大きな部屋には見るからに高級そうなソファが数個置いてある。ベッドは言うまでもなくふわふわで天蓋が付いているしシーツなんてシルクのような触り心地だ。ここの部屋はどこかの王宮の一室だと言われても信じるだろう。

とにかく仕事場に行かなければ。

急いで身支度をしようと鏡を見る。

するとなんと別人がいた。
ふわふわとしたクリーム色の髪は横髪が一房だけ長く、まだ眠たげなエメラルド色の瞳は冷たい視線を帯びていた。

所謂イケメンというやつだ。

そうだった。

神様の気まぐれで意味のわからない状態になってるんだった。なんだか泣けてくる。

恐ろしくイケメンな男すぎて涙が一筋流れている様も美しい光景である。

それから数十分間ほど思考し、部屋を漁ってみたあと再びベッドへダイブした。

すると急に今までの記憶が溢れ出す。どうやら記憶が混乱しているらしい。今までのこの体の主の記憶と藤堂奏としての記憶がごちゃ混ぜになる。


この体の主はレイ・アステリオンという名前で昨日18歳の誕生日を迎えたばかりであった。彼は隠された青い薔薇の世界でも5本の指に入るほど強く、俺様系主人公ルカ・エルミールの家庭教師を務めた人物である。しかし、自分よりも強くなりはじめた幼いルカをレイのプライドが許せず虐待してしまう。その後レイの虐待を耐え続け無事強くなったルカはレイを殺し、そこから物語は本格的に始まるのである。

まずいまずい。このままだと主人公に殺されるぞ。どうすりゃいいんだ。

お、そうだ!そもそも主人公の家庭教師なんか務めるところから間違ってるんだ。生死が関わってるのに家庭教師なんてやってられるか!


「失礼します。レイ様。朝食の準備が整いました。」


この話し方は確かアステリオン家総括執事のじいやさんだな。名前は確か…セドリックさんか。

「あ、はい。只今向かいます。」


   _ピコン!マイナス2ポイント!


「な、なんですぞ。レイ様!どうかされました!?このじいやめに敬語を使うなんて!アステリオン家に勤めてかれこれ50年になりますが、こんなことは執事人生で一度も……も、もしかしてこのじいやめを解雇されるのですか!?レイ様ー!!!!!!」

セドリックさんによった扉がバーンと開け放たれ凄い勢いでおいおいと泣きつかれた。

ん、?さっき変な音がしなかったか?


するとぱちんっと指を鳴らした音がする。

「ちょっとちょっと~。だめだよ~。レイ・アステリオンは公爵家の人間でしょ。使用人に敬語なんて使わないよ~。」

声が聞こえた方を見るとブサクマが宙に浮いていた。優雅にポップコーンを食べてやがる。

とっさにじいやさんを見ると指一本動いてない。どうやら時が止まっているらしい。

「このままだと生存ポイントがマイナスになっちゃうよー。」

「生存ポイント?何なんだそれ?」

その言葉を聞くや否や急に慌て出した。

「え、?僕説明しなかったっけ?アッチャー。まずいまずい。神様に叱られちゃうところだった。セーフセーフ。」


俺は全然セーフじゃないんだが。


「君は神様がお戯れに…じゃなかった、神様の慈悲の心で憑依したって言ったよね?つまり、神様は君の生活を気にしているわけだ。それでなんやかんやで君がこの世界にふさわしくない行動や、キャラクターの関係を無視した行動をしたら生存ポイントが引かれるってルールなわけ。簡単に言えばレイ・アステリオンらしくない行動をしたらさっきみたいにポイントが引かれるってこと。さっきは普段のレイは使用人に敬語を使っていなかったのにいきなり敬語を使い出したレイらしからぬ発言ってことで生存ポイントが2ポイント引かれたってわけだよ。逆に言うとこの世界で馴染んだ行動をする、つまりレイだと見なされたら生存ポイントは引かれず無事生きることができるってわけ。逆になんかいいことをしたらプラスで獲得できるらしいよ。面白いでしょ?神様が2分間で一生懸命考えたシステムだよっ。」

「なんやかんやでってことは面白くなるようにしたってことだろ!しかも2分間ってまじで適当に考えすぎだろ!」

神様のやつあまりにも適当すぎやしないか。

「ちなみに生存ポイントがマイナス0になったらに達した場合から君は徐々に体をうまく動かすことができなくなってマイナス10では呼吸困難、マイナス20になったら大気圏に放り出されてそのままばらばらになるってことなんでそこんとこ4649!!!!」

グットポーズをつくるブサクマの首を今すぐ絞めてやりたい。

「それ1番重要な情報じゃねーか!!!!!」

「きゃ~!怒られた。僕は父親にも怒られたことないのに~。しくしく。しくしく。」

悲しそうに泣きまねをしてる姿をみるとさらに頭が痛くなってきた。てかコイツの父親って誰だ?神様のことか?

「でも安心して!僕はサポートするから。まぁあくまでもサポート役だからね!サポート役!期待はしないでくれよなっ!」

はぁ。先が思いやられる。

「それにね、生存ポイントを貯めるといいことだらけだよ。こうして時間を止めるアイテムとか相手の好感度を上げるアイテムとか新技を習得するためのアイテムとか便利なものが買えるんだ。今こうして時間をとめているのも貴重な瞬間だってことさ。」

「へー。それはいいな。時間を止めるアイテムか、使い勝手良さそうだな。………もしかしてだけど今使っている時間を止めるアイテムはもちろんお前のモノだよな。自腹だよな?そうだよな?そうであってくれ!」

「……。」

「………。」

「…………テヘペロ☆」

「このクソグマァァァァァァァァ!!!」 






そのあと拳で公平に話し合った結果、今回は説明不足だったブサクマに非があったとのことで和解し、一連の様子はチュートリアル的なものとして報告するのでアイテム代はチャラにするとのことでまとまった。





「君、結構過激ボーイなんだね。僕のキュートなボタンが取れちゃったじゃないか。」

「ふんっ。引っ掻き技が得意なお前に言われたくないね。こちとら命かかってんじゃボケ。」



こうして無事タイムストップアイテムの効果は切れ、じいやさんをなだめたあとさっそく朝食へ向かった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。 とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて── 「運命だ。結婚しよう」 「……敵だよ?」 「ああ。障壁は付き物だな」 勇者×ゴブリン 超短編BLです。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

処理中です...