これって溺愛ルートってやつですか?

眠れぬ森のゴリ子

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なんとかじいやさんを宥めて朝食へと向かう。

「お兄様、おはようございます。この時間にいらっしゃるのは珍しいですね。」

「え、ああ、おはよう。」

あっぶねぇぇ。いつも部長に挨拶するみたいに斜め45度のビジネスお辞儀かます所だった。

レイ・アステリオンよりも濃いミルクティー色の髪に冷たい印象を与える薄いエメラルド色の瞳を持っているクールな美少女が目の前にいた。

この子は確か妹のエミリー・アステリオンだな。エミリー・アステリオン、彼女もまた主人公ルカに恋心を寄せる女性のうちの1人だった。

兄であるレイが主人公にしたことを憎み、主人公にレイの情報を流しており、主人公がレイを倒すのに一役買っていたはずだ。

そのあとも陰ながら主人公のピンチを救っていたが結局主人公はレイを深く憎んでいるためエミリーを受け入れることは出来ず、その事実に絶望したエミリーは自殺してしまう。

そのストーリーを知っているせいかエミリーに対して罪悪感が芽生える。
なにより俺の平穏な人生のために仲良くしておく必要があるな。

「よく眠れましたか?昨日はお誕生日おめでとうございました。」

「ありがとう。エミリーもよく眠れたか?」

「えっ…。」

ニコッとした笑顔もおまけにつけてお礼を伝えるとエミリーはレイとよく似たエメラルド色の瞳をまんまるく開け、まるで幽霊でも見たかのように驚いている。
なんだ、俺何かしたか。

<ちょっとー。君またやっちゃったんじゃないのー?神様は今、新作アクションゲームに夢中になってるからポイント引かれなかったけどまずかったんじゃないー?>

頭の中でブサクマの声が流れた。急いで周りを見渡すがブサクマの姿は見えない。

<僕は今から仮眠とる予定だから適当にうまくやってよねー。システムもあんまりうるさくならないようにしておくから。余計なことして僕を呼び出さないでね。じゃあばいちゃっ!>

システムって結構ガバガバなんだな。こっちは命かかってるちゅーのに。てか思ったより神様あんまり興味ないのかよ。ま、それならそれで楽だからいいんだけど。 

そこで俺はレイについて考えてみた。

レイは基本的に他人には冷たい人物で妹でも例外ではなかったはずだ。そんなレイがいきなり笑いかけてお礼を言うなんてそりゃびっくりするはずだ。

でもあんまり冷たくしすぎると俺の生存に問題が生じる。

今俺がすべきことは友好関係を築くことだ。神様はあんまり注目して見てるわけじゃないし、これは徐々に慣らしていくしかないな。

それに生存ポイントはいきなりレイらしからぬ行動をとった場合に引かれるポイントだ。

裏を返せば、今はダメでもレイの行動を少しずつ変えていくことで少しずつ周りも変わっていくはず。

その中である程度友好関係を築いた状態だった場合はポイントが引かれないのではないか。


計画その一、主人公ルカの家庭教師の任命を辞退すること。
計画そのニ、エミリーとの冷め切った関係を修復し最低でも殺されない程度の中になること。
計画その三、淡々と業務だけをこなしたあと頃合いを見て爵位を断り田舎でニート生活を優雅すること。

これ、完璧な計画じゃないか。なんか意外とできる気がする。
ずっと社畜サラリーマンとして忙しい生活を過ごしてきてニート生活を夢見ていたんだ。
ここにきてニート生活の夢を叶えられるのなら神様の暇つぶしとやらも俺にとって薔薇色の人生になるのかもしれない。

よし、そうときたらさっそく計画の実行だ!!


「どうされたのです?お兄様、熱でもあるのですか?」

「いや、違うんだ。昨夜ずっと考えていたんだ。俺は今まで他人に興味がなさすぎたと。それで剣術や勉学ばかりでろくに妹と話をしていなかったと思ってな。これからは少しずつでも良いから俺と過ごす時間を増やしてくれないか?」

潤げな感じでバチッと決めてやった。さぁどうだ!無表情クール属性の妹エミリー。少し強引でこじつけのような理由になってしまったがさすがのエミリーも無垢の塊のようなこの話術は断れないだろう。

必死こいて営業やってきてよかった。

この話術を得るために俺は日夜馬車馬のように働いてきて雨の日も風の日も虫ケラのような目で見られても必死で営業こなしてきたんだ。

相当の努力を重ねた俺の話術はなかなかのものだと自負している。

みんなが残業してる横で仕事押し付けて颯爽と帰りやがったクソ上司には感謝しないけどな。今でも許せねぇ。

「…………はい。」

我が妹エミリーは長い沈黙の後顔色ひとつ変えずに小さな声で了承すると一度も目を合わせずに部屋に帰っていった。それに少し声色が震えていたようだった。

こんなに嫌われているとは大誤算だ。確かに大嫌いで敵対している相手に私はあなたの味方ですよ、対話したいと思っています、今すぐ武器を置いて話し合いましょう、と近寄られたとしてもはい、そうしますとは言いたくないだろう。

エミリーは渋々承諾してくれたのだ。

なんせ俺はこの世界でめちゃめちゃに強くて冷酷であることで有名だ。

おまけに他人のことなどどうなってもお構いなしの人間である。いきなりそう言われたら承諾するしかない筈だ。

エミリーときゃっきゃうふふしながら花畑を駆け巡るような兄弟関係になるにはかなりの時間が有するだろう。




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