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体は覚えている。多分、今は昼休みだ。とりあえず仕事場に戻ろうと思ったら足が行き先を教えてくれる。
王城といっても職場は勿論王族たちのすむ城からは離れていて、敷地の一番端だ。門に近いのはいい、通勤の意味では。三階の石塔、ディタはその二階で個部屋(狭くて本当に一人しか座れないし入り口はあきっぱなしでドアはない)が与えられている、フロアには真ん中に大きいい四角のテーブルが三つある。実力でいうならなんとディタは魔法使局一番だ。すごくない?それに小さい頃からいる。だからこその庶民の個部屋。丸見えだからプライバシーもなにもないけどさ。ちなみに三階は貴族専用と局長室がある。
右につまれている空の石を手に取り、魔力をうつして、左の袋に入れる。仕事はこれだけだ。単純作業で暇すぎる。BGMほしい。よく耐えてきたぁ、こんな毎日。
いうのは簡単だけど意外とこつはいる。まあディタは小さい頃からやっているので慣れている。ブラックだねえ。フォローする人もいないなんて。
この魔力の込められた石を魔導石といい、まぁ電池みたいなものだ。一般の家だと、コンロにつかったり灯りにつかったり。
魔導石をつかって新たな物を開発するのが魔導局。昔は魔法使局と魔導局はひとつだったらしい。ディタが教わった記憶だと仲が悪い。絶対魔導局のほうがやりがいあって面白そうだけどなぁ。冷蔵庫とか洗濯機とか作ったりするんでしょ?家事の味方グッズ。オーブンないかなぁ。そしたら焼きたてパン作れて食べられるしね~。一度見学いきたいなぁ。転職できたりしないかしら。
仕事内容もだけど上司がまたイヤなやつなんだよね。ランドンの後任者は当然貴族でディタのことを嫌っている。態度にだすし、隠そうともしない。ディタは無表情で何も感じていない。それが余計に怒りをかい、会うと嫌みばかりいい、仕事はしないダメ上司だ。仕事できな上司はありえないよねぇ。なんでこんな人物が局長やってるんだ?他にいないのか、魔法使局。王家も無関心すぎる。誰が魔力高いのか、結界を張っているのか。
この部屋には時計がある。ランドンが仕事ばかりしすぎるディタを心配してつけてくれてものだ。夕方4時になったら、担当の王城門結界の見回り確認、帰ってきて5時になったら帰ること。全く守られてないけどね。
ランドン退職後、他の見回りを貴族の魔法使に押しつけられ、終わったあともまだ石に魔力をこめる仕事をしている。よく魔力がなくならないものだ。我ながら感心するよ。
でも!今日から私はそんなことはしない。さっき確認してきた。一応マニュアル本みたいのがあって。いやびっくり、あったんだよねえ、これが。今日から見回りはディタの決められた分しかしない。ちゃんと当番は外面的に張られているし、時間も5時までとあった。え、なにみんなサービス残業してるの?冗談じゃない。
というわけで、私ディタは定時で帰ります。帰り支度をして(石を片づける程度)、部屋を出るときに部屋中の視線を感じたけど無視だよ。
門をでると(門番までに不振な顔されてたわ)足は自然に自宅に向かう。一軒家なんだよね。なんとちいさいながら庭付きよ。憧れのマイホームが今ここに~。さすが局一番のエリート。居住スペースはほぼ二階だけです。一階はガランとしてる。片隅に積まれた魔石以外。なんとディタは家でもやることなくて仕事していたのでだ。これ、もう中毒じゃない?本当どれだけ魔力有り余ってるの?もっと効率いい他の使い方あるでしょうよ。
私がまずしたいこと。それは身なりを整えること。だってだって、あまりにボサボサの髪、手入れのされてないガザガザの肌。我慢ならない。貴族のように、とまでは求めない。だが、せめて自分が納得する姿でいたい。同じ年の女性として。
化粧水と乳液が普通の店に売っているわけがない。いやもしかしたら貴族の店にはあるかもしれないけど、この姿じゃ入らせてもくれないだろうね。通販ないし。なら、つくればいいじゃない?
というわけでまずマジックバッグを作ろうと思います。買い物にいく前に入れ物を。
名前に『魔法』がつくということは、作れるはず。だって夢の世界だから。自分に都合のいいようにできているのだ。
まずはたまに食料買いに行く肩掛けカバンに魔力を流して細工する。うん、いい感じ。その感じがなぜかわかる。手を入れて…おお、どんどん入る。石を入れて、はなす。また手を入れて『石よ、こい』念じる。手に石が当たった。よし、できた。一丁上がり~。これで両手いっぱいに荷物を持つこともない。物取りにあっても安心だ。
善は急げ。時は金なり。日が暮れる前に商店街へ行き、花屋でラベンダーとバラを買う、正確にバラではなかった。まあ、似たようなものでも大丈夫。多分この世界でもバラは高級品だろうし。屋台でちょこちょこ夕飯のおかずを手に入れ、布屋で服を買う。一気に回れるのはこのバッグのおかげ。重くならないって重要。作戦がちだね。
と、自分に満足しつつ帰宅。門を閉めながら女性一人でこの家は物騒だと思った。一応対応はほどこしているらしい。ディタ以外門をさわると電流が走るとか。なにその危険度?!いや、確かに訪ねてくる人はいないけどさ。もし作動したら反対に訴えられるじゃん。
やること(改善)がいっぱいだわ。だが、楽しみすぎる。
それから毎日定時に帰り、自宅と自分改造に励んだ。
庭にちょっとした畑を作り、ラベンダーを育て(さすがに切り花のバラもどきはダメだった)化粧水を作り、グレープシードオイルで肌のマッサージと頭皮もマッサージ。髪の手入れ、シャンプーの改善。
今までなにもやってきてない分効果がすごい。肌はしっとりしてきたし、明るくなってきた気がする。髪に艶が出てきた。かなりの自己満足。髪は後ろで一本の三つ編みにした。髪には魔力が宿るらしい。というわけで、魔力持ちは髪を長くするのが一般的。本当は切りたいんだけど、美容院がない。ハサミを使って自分で切るのもちょっと怖いし。保留中。
さて、家の門だがガーゴイルを設置してみた。シーサー的な?
呼び鈴をつけ、そこをならすとガーゴイルが、
「ナンノゴヨウデスカ」
と言うのだ。いや知らなかったら怖いか。まあ、ならす人はいなさそうだけどね。びっくりして通報されてもあれなので、隣お宅には挨拶を兼ねて報告しに行った。奥様がたいそう驚いていた。ひいてた、とういうか。手土産に甘いお菓子を持って行ったので、初めおっかなびっくりだったが、笑顔になってくれた。引っ越してきた時にランドンにつれられて挨拶に行っ以来だ。
どの世界でも甘いお菓子は正義である。材料は売ってある。砂糖は予想通り高かったけど、お金はあるからねぇ。これ一度言ってみたかったセリフ!
くすんだ黒ローブは、魔法使の証だそうだ。なんのため?と思ったけど、制服と思えば仕方ない。
なので私服を明るくしてみた。花柄(まだいけるはず)とか色味大人明るめのワンピース。これだけで気分があがるから不思議。下はスパッツみたいなもの。もっと緩い感じの。作れないから既製品だけど悪くない。冒険者も下はこんな感じなのかも。
定時に帰るのが一度だけでなく毎日続いたので職場の人たちは驚いていた。が、誰も話しかけてこなかった。誰か一人くらい聞いてこようよー。かなりボッチだ。いいよ、やることたくさんあるからさ。
と思ってたら、局長に呼びつけられた。ディタっぽくノックして無言で行くと早速顔がしかめつらだ。いやその態度本当どうなのよ?
「近頃早く帰ってるそうじゃないか。仕事はしてるのか?仕事外することのないだろう」
余計なお世話だコノヤロー。仕事はきちんとしてるだろうが。おまえよりもな。
「……」
「…っ、ま、まぁやってるならいい」
この上司誰がどれだけやってるかのチェックもしないのである。
「おまえに仕事だ。マウシャ帝国へ第三王女セリカ様の警護だ。うちから一人、魔導局から一人。おそらくヨゾンが出てくる」
ライバルの名を出すだけで嫌そうだ。
王族の警護で隣国へ?つまり海外出張じゃないですかー。やったね、公費だから基本ただだよね?
「ひきこもりのおまえもたまには外にでた方がいいだろう。わたしのようは気配りのできる上司をもてて幸せだな」
「さすがです」
腰ぎんちゃく(今更ながら存在に気づいたよ)が言う。
完全に嫌がらせだろうが、残念でしたーこっちは大歓迎だよ。おっとディタらしく表情に出さないようにしないと。ついにやけてしまいそうになる。まだ言い続けて二人に「わかりました」といって部屋を出る。無駄な時間はすごさないよ。
さて、やること増えた。旅の前に重要なのは準備!
王城には図書館がある。王城に勤めてる人しか入れない立派な図書館が。今まで忙しくて二の次にしてたけど、今日から調べまくるぞ。なにせスマホで簡単に検索というわけにはいかないからね。
この日から昼休みに図書館通いという課程が増えた。和紙みたいな紙はある。魔法コピペでマイガイドブック作ろう。テンション上がるわ~旅行の楽しみって行く前の準備半分だよね。
隣国であるマウシャ帝国。王国とはそれこそ百年前くらいには戦争が続いてたみたいだけど、今はそんなことはないらしい。争ってもいいことなんてない。平和でよかった。むしろ貿易国でいい相手らしい。だから地図も載ってる。地形は海に面している。つまり魚っですよ。こっちは内陸だからねぇ。皇族と名産品と通貨と観光地。服装に気候。自由時間あるよね?観光する気満々です。ぜひとも海産物は持ち帰りたい。専用のマジックバッグ持って行こう。小舟が移動手段。ベネチアみたいなイメージであってるかな。やっぱり食べ物は海産物多いかなぁ。楽しみだわ。
出発直前に打ち合わせというか顔合わせ会議があった。しかも直前になって言いに来やがった。あせる顔が見たかったんだろうが、わかっててみせると思うか?内心「ふざけるな、使えない奴めっ」とののしっても無表情で。最近寝る前に筋トレ、ストレッチを。朝はラジオ体操して体力ついてきたんだよ、なめんなよ。姿が見えないことを確認して超ダッシュ!間に合った、よかったー。久しぶりにあせったじゃないか。
さすがに王女様はいなかった。同行者の魔導局局長ヨゾン、女騎士隊長マミヤ、第二騎士団長デレスの三人。第三王女付き侍女アーデルはすぐに出て行った。あれお嬢様じゃない?いやもう態度がね。まあ、王族の侍女なんて高い身分か。
騎士団とは別に女騎士隊というのがあるらしい。主に女性王族の警護してるみたい。騎士団て何個まであるんだろう。
顔と名前は覚えた。ディタの仕事は魔法での警備、王女様の警護だ。みた感じ戦力としては期待されてないっぽい。数あわせみたいな。いいよー、仕事しなくてただ観光なんてラッキーじゃん。さあ、今日も準備準備。
☆
「あれが魔法使局一番の魔力持ちか」
「大丈夫なんでしょうか」
「魔導局からは局長が出てこられてるのに、愛想のない小娘というか」
「俺はセリカ様に近いからな。多分チースの嫌がらせだな」
「あの男は本当肝玉の小さい。おっと失礼」
「魔導局で使う石でもディタのは質がいい。それを使って馬車を強化させよう」
「気を引き締めて参ります」
王城といっても職場は勿論王族たちのすむ城からは離れていて、敷地の一番端だ。門に近いのはいい、通勤の意味では。三階の石塔、ディタはその二階で個部屋(狭くて本当に一人しか座れないし入り口はあきっぱなしでドアはない)が与えられている、フロアには真ん中に大きいい四角のテーブルが三つある。実力でいうならなんとディタは魔法使局一番だ。すごくない?それに小さい頃からいる。だからこその庶民の個部屋。丸見えだからプライバシーもなにもないけどさ。ちなみに三階は貴族専用と局長室がある。
右につまれている空の石を手に取り、魔力をうつして、左の袋に入れる。仕事はこれだけだ。単純作業で暇すぎる。BGMほしい。よく耐えてきたぁ、こんな毎日。
いうのは簡単だけど意外とこつはいる。まあディタは小さい頃からやっているので慣れている。ブラックだねえ。フォローする人もいないなんて。
この魔力の込められた石を魔導石といい、まぁ電池みたいなものだ。一般の家だと、コンロにつかったり灯りにつかったり。
魔導石をつかって新たな物を開発するのが魔導局。昔は魔法使局と魔導局はひとつだったらしい。ディタが教わった記憶だと仲が悪い。絶対魔導局のほうがやりがいあって面白そうだけどなぁ。冷蔵庫とか洗濯機とか作ったりするんでしょ?家事の味方グッズ。オーブンないかなぁ。そしたら焼きたてパン作れて食べられるしね~。一度見学いきたいなぁ。転職できたりしないかしら。
仕事内容もだけど上司がまたイヤなやつなんだよね。ランドンの後任者は当然貴族でディタのことを嫌っている。態度にだすし、隠そうともしない。ディタは無表情で何も感じていない。それが余計に怒りをかい、会うと嫌みばかりいい、仕事はしないダメ上司だ。仕事できな上司はありえないよねぇ。なんでこんな人物が局長やってるんだ?他にいないのか、魔法使局。王家も無関心すぎる。誰が魔力高いのか、結界を張っているのか。
この部屋には時計がある。ランドンが仕事ばかりしすぎるディタを心配してつけてくれてものだ。夕方4時になったら、担当の王城門結界の見回り確認、帰ってきて5時になったら帰ること。全く守られてないけどね。
ランドン退職後、他の見回りを貴族の魔法使に押しつけられ、終わったあともまだ石に魔力をこめる仕事をしている。よく魔力がなくならないものだ。我ながら感心するよ。
でも!今日から私はそんなことはしない。さっき確認してきた。一応マニュアル本みたいのがあって。いやびっくり、あったんだよねえ、これが。今日から見回りはディタの決められた分しかしない。ちゃんと当番は外面的に張られているし、時間も5時までとあった。え、なにみんなサービス残業してるの?冗談じゃない。
というわけで、私ディタは定時で帰ります。帰り支度をして(石を片づける程度)、部屋を出るときに部屋中の視線を感じたけど無視だよ。
門をでると(門番までに不振な顔されてたわ)足は自然に自宅に向かう。一軒家なんだよね。なんとちいさいながら庭付きよ。憧れのマイホームが今ここに~。さすが局一番のエリート。居住スペースはほぼ二階だけです。一階はガランとしてる。片隅に積まれた魔石以外。なんとディタは家でもやることなくて仕事していたのでだ。これ、もう中毒じゃない?本当どれだけ魔力有り余ってるの?もっと効率いい他の使い方あるでしょうよ。
私がまずしたいこと。それは身なりを整えること。だってだって、あまりにボサボサの髪、手入れのされてないガザガザの肌。我慢ならない。貴族のように、とまでは求めない。だが、せめて自分が納得する姿でいたい。同じ年の女性として。
化粧水と乳液が普通の店に売っているわけがない。いやもしかしたら貴族の店にはあるかもしれないけど、この姿じゃ入らせてもくれないだろうね。通販ないし。なら、つくればいいじゃない?
というわけでまずマジックバッグを作ろうと思います。買い物にいく前に入れ物を。
名前に『魔法』がつくということは、作れるはず。だって夢の世界だから。自分に都合のいいようにできているのだ。
まずはたまに食料買いに行く肩掛けカバンに魔力を流して細工する。うん、いい感じ。その感じがなぜかわかる。手を入れて…おお、どんどん入る。石を入れて、はなす。また手を入れて『石よ、こい』念じる。手に石が当たった。よし、できた。一丁上がり~。これで両手いっぱいに荷物を持つこともない。物取りにあっても安心だ。
善は急げ。時は金なり。日が暮れる前に商店街へ行き、花屋でラベンダーとバラを買う、正確にバラではなかった。まあ、似たようなものでも大丈夫。多分この世界でもバラは高級品だろうし。屋台でちょこちょこ夕飯のおかずを手に入れ、布屋で服を買う。一気に回れるのはこのバッグのおかげ。重くならないって重要。作戦がちだね。
と、自分に満足しつつ帰宅。門を閉めながら女性一人でこの家は物騒だと思った。一応対応はほどこしているらしい。ディタ以外門をさわると電流が走るとか。なにその危険度?!いや、確かに訪ねてくる人はいないけどさ。もし作動したら反対に訴えられるじゃん。
やること(改善)がいっぱいだわ。だが、楽しみすぎる。
それから毎日定時に帰り、自宅と自分改造に励んだ。
庭にちょっとした畑を作り、ラベンダーを育て(さすがに切り花のバラもどきはダメだった)化粧水を作り、グレープシードオイルで肌のマッサージと頭皮もマッサージ。髪の手入れ、シャンプーの改善。
今までなにもやってきてない分効果がすごい。肌はしっとりしてきたし、明るくなってきた気がする。髪に艶が出てきた。かなりの自己満足。髪は後ろで一本の三つ編みにした。髪には魔力が宿るらしい。というわけで、魔力持ちは髪を長くするのが一般的。本当は切りたいんだけど、美容院がない。ハサミを使って自分で切るのもちょっと怖いし。保留中。
さて、家の門だがガーゴイルを設置してみた。シーサー的な?
呼び鈴をつけ、そこをならすとガーゴイルが、
「ナンノゴヨウデスカ」
と言うのだ。いや知らなかったら怖いか。まあ、ならす人はいなさそうだけどね。びっくりして通報されてもあれなので、隣お宅には挨拶を兼ねて報告しに行った。奥様がたいそう驚いていた。ひいてた、とういうか。手土産に甘いお菓子を持って行ったので、初めおっかなびっくりだったが、笑顔になってくれた。引っ越してきた時にランドンにつれられて挨拶に行っ以来だ。
どの世界でも甘いお菓子は正義である。材料は売ってある。砂糖は予想通り高かったけど、お金はあるからねぇ。これ一度言ってみたかったセリフ!
くすんだ黒ローブは、魔法使の証だそうだ。なんのため?と思ったけど、制服と思えば仕方ない。
なので私服を明るくしてみた。花柄(まだいけるはず)とか色味大人明るめのワンピース。これだけで気分があがるから不思議。下はスパッツみたいなもの。もっと緩い感じの。作れないから既製品だけど悪くない。冒険者も下はこんな感じなのかも。
定時に帰るのが一度だけでなく毎日続いたので職場の人たちは驚いていた。が、誰も話しかけてこなかった。誰か一人くらい聞いてこようよー。かなりボッチだ。いいよ、やることたくさんあるからさ。
と思ってたら、局長に呼びつけられた。ディタっぽくノックして無言で行くと早速顔がしかめつらだ。いやその態度本当どうなのよ?
「近頃早く帰ってるそうじゃないか。仕事はしてるのか?仕事外することのないだろう」
余計なお世話だコノヤロー。仕事はきちんとしてるだろうが。おまえよりもな。
「……」
「…っ、ま、まぁやってるならいい」
この上司誰がどれだけやってるかのチェックもしないのである。
「おまえに仕事だ。マウシャ帝国へ第三王女セリカ様の警護だ。うちから一人、魔導局から一人。おそらくヨゾンが出てくる」
ライバルの名を出すだけで嫌そうだ。
王族の警護で隣国へ?つまり海外出張じゃないですかー。やったね、公費だから基本ただだよね?
「ひきこもりのおまえもたまには外にでた方がいいだろう。わたしのようは気配りのできる上司をもてて幸せだな」
「さすがです」
腰ぎんちゃく(今更ながら存在に気づいたよ)が言う。
完全に嫌がらせだろうが、残念でしたーこっちは大歓迎だよ。おっとディタらしく表情に出さないようにしないと。ついにやけてしまいそうになる。まだ言い続けて二人に「わかりました」といって部屋を出る。無駄な時間はすごさないよ。
さて、やること増えた。旅の前に重要なのは準備!
王城には図書館がある。王城に勤めてる人しか入れない立派な図書館が。今まで忙しくて二の次にしてたけど、今日から調べまくるぞ。なにせスマホで簡単に検索というわけにはいかないからね。
この日から昼休みに図書館通いという課程が増えた。和紙みたいな紙はある。魔法コピペでマイガイドブック作ろう。テンション上がるわ~旅行の楽しみって行く前の準備半分だよね。
隣国であるマウシャ帝国。王国とはそれこそ百年前くらいには戦争が続いてたみたいだけど、今はそんなことはないらしい。争ってもいいことなんてない。平和でよかった。むしろ貿易国でいい相手らしい。だから地図も載ってる。地形は海に面している。つまり魚っですよ。こっちは内陸だからねぇ。皇族と名産品と通貨と観光地。服装に気候。自由時間あるよね?観光する気満々です。ぜひとも海産物は持ち帰りたい。専用のマジックバッグ持って行こう。小舟が移動手段。ベネチアみたいなイメージであってるかな。やっぱり食べ物は海産物多いかなぁ。楽しみだわ。
出発直前に打ち合わせというか顔合わせ会議があった。しかも直前になって言いに来やがった。あせる顔が見たかったんだろうが、わかっててみせると思うか?内心「ふざけるな、使えない奴めっ」とののしっても無表情で。最近寝る前に筋トレ、ストレッチを。朝はラジオ体操して体力ついてきたんだよ、なめんなよ。姿が見えないことを確認して超ダッシュ!間に合った、よかったー。久しぶりにあせったじゃないか。
さすがに王女様はいなかった。同行者の魔導局局長ヨゾン、女騎士隊長マミヤ、第二騎士団長デレスの三人。第三王女付き侍女アーデルはすぐに出て行った。あれお嬢様じゃない?いやもう態度がね。まあ、王族の侍女なんて高い身分か。
騎士団とは別に女騎士隊というのがあるらしい。主に女性王族の警護してるみたい。騎士団て何個まであるんだろう。
顔と名前は覚えた。ディタの仕事は魔法での警備、王女様の警護だ。みた感じ戦力としては期待されてないっぽい。数あわせみたいな。いいよー、仕事しなくてただ観光なんてラッキーじゃん。さあ、今日も準備準備。
☆
「あれが魔法使局一番の魔力持ちか」
「大丈夫なんでしょうか」
「魔導局からは局長が出てこられてるのに、愛想のない小娘というか」
「俺はセリカ様に近いからな。多分チースの嫌がらせだな」
「あの男は本当肝玉の小さい。おっと失礼」
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