アラフォー主婦が異世界に行ったら同じアラフォーの魔法使でした。

ぺこたま

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冒険者へ

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 うわ、目があった。リバイアサンの時を思い出すわ。敵意のある目。負けてなるものか、と気合いを入れたら、早速きた!
 はやっ。ソロンは余裕でしょ、と言ってたけど、全然余裕なんかないじゃないか!少しでも気を抜けば、あっという間に串刺しだよ?!
 よけるだけでは倒せない、とわかっている。
 その泳ぎのスピードもさながら、その後にくる水流もすごい。さっきぐさっと海底にさし、さらに『グラビティ』をかけた杖が役立っている。これがなかったら、水流に巻き込まれ壁に激突してる。ソロンありがと~貴重な情報はありがたく使わないと。
 しばらく見ているだけだった。動きに一定さがあるわけではない。ランダムだ。考えて動いてる、てことか。その反対か。
 水流がおこって壁にぶつかったあと、一瞬ボスの動きが止まるのがわかった。自分でもその動きがわからないってこと?自分の攻撃が自分に返ってくるかもしれない?ブーメランか。
 エアカッターをぶつけてみる。大打撃は当てられてないけど、かすり傷くらいはつけられるし、イライラはさせられる。自動で傷は治ったりはしていないようだ。そういう機能がないのはありがたい。あれは地味にいらいらさせられる。とりあえず色々試してみないとな。
 あの角を切るには、『エアカッター』でいけるか?アイスニードルではスピードが足りなかったのか、よけられた。イグニッションは目くらましに使えた。ん?眩しいのが苦手?今、ひるんだよね?深海宮だからかしらん。光といえば、ライトニングだ。四層はでなきなかったけど。やってみよう。
 『ライトニング』
 っまぶしっ。ダメもとでやったのになぜここではできた?!できるとは思ってなかったから、自分も眩しかった。自分の魔法で危機になるとか。恥ずかしいじゃないか。うん、一人でよかったよ。
 明るさには弱いとみた。ならば…『ライトニング』を玉として、壁にグラビティで埋め込んでいく。
 めっちゃ照明あたってるステージみたいになった。おう。
 その中で角はいっそう白く輝いて見えた。
 ここは周りなにもないと思ってたけど、下から突出してる岩もあるし、壁もゴツゴツしていた。うん、ボスが暴れて体当たりしたら一部が崩れたよ…。これ全体が崩れて、天井が落ちてくる、とかないよね?
 もう、なんか自暴自棄になってない?ところかまわず突っ込んでくるし。ああ、角が傷ついたらどうしてくれる?!私の杖がっ。
 『サンダーウィップ』
 とりあえず落ち着こうか?ああ?!先にその角を私にくれてもいいんだよ?
 固定しようとイメージしたらムリだった。雷を帯びたムチはボスの体にうまく巻き付いてくれた。
「グガァーッッ」
 のけぞって暴れ出した。尾ビレが当たった岩は粉砕され、砂煙が起きた。魔導具なかったら目がやばかった。当たっただけで岩が砕けるってなんなの?!あっという間に更地になるよ。壁に近づけないようにしよう。ひきづられる。
 くっ。ここで力を緩めたら大変なことになる。私の新たな杖を守る為、魔力を込める。
 落ち着け、静まれっこのっいい加減あきらめろっ!
 暴れられるとひきづられて体力を消耗してしまう。体力には自信がない。海底にさした重い杖を媒体にしたので、つながっているのだ。
 つなひきか?しかしここで負けるわけにはいかない。腰をおとして、靴にも重さを加重して。さらに、アイスニードルもかける。さっきみたいなスピードで動いてないので、対象物に打ち込める。
「ガァァッ」
 サメであんな鳴き声あげる?頭のはじで思う。魔物なんだけどさ。
 さーらーにー、おいうちのー。
『サンダーボルト』
 ムチを通して電流をかける。
「グァァッ」
 ああ、もうしつこいっ。弱ってるのはわかるんだけど、まだ決着はつかないか。段々こっちの魔力も減ってきたのがわかるくらいになってきた。長引かせると、不利だ。一応まだ魔力込めた宝石はあるけれど。前みたいに限界まではやらないつもりだが、ぎりぎりまでやってみたい。どうする?あとどれくらい?考えながら、エアカッターをかけまくる。かすり傷でもたくさんあたれば、ダメージにつながるはず。
 次はどうしようか。うーん。こう大きな一撃がほしい。刀でスパーン!みたいな。物理攻撃かぁ。そんな技量もモノも持ってないわぁ。ナイフしかない。さすがに内部まで届かないな。自動で攻撃してくれる剣とかないもんだろうか。ん?魔法でやればいいのか?自動操縦みたいな?ターゲットを定めれば、それに向かってくみたいなナビつき。どうよ?見た目ホラーな気もするけど。
 …剣を手に入れよう。やってみないことにはわからないしね。刀タイプはここで見たことないんだよねぇ、まだ。武器屋に行ってないから知らないだけかもだけど。少なくとも持ってる人を見たことがない。どこかの地域にはありそうな気はするけど。
 ーあれ?
 叫び声がしないことに気がついた。ムチの先も手応えがない。
 もしや…ボスが。
 おお~!!倒れてた。倒した?!やだ、教えてよー。ラッパの音とか軽快音を流してくれないと~。ムダにエアカッターかけてしまったではないか。
 慎重に近よっていく。…うん、動いてない。
 よっしゃあ!思わずガッツポーズをとる。一人だし~踊ったところで恥ずかしくない!
 ゴゴゴっと奥の方で音がした。地面の一部がへこみ、また上がってきた。宝箱だ。
 これには罠がない。なのでさっさと開ける。
 うん、宝石だね…沈没船からじゃないことを願う。これはティアラだな。何に使うんだろ。装飾用?必要なければ、売ればいいか。次は短剣。これもキラキラしてるなぁ。あとは、ご丁寧にポーションとお金。なんか夢なくない?現実的だ。戦いの後には一番重宝ありがたいものだけどね。もうないかな?まだ一個あった。小さい瓶だから気づかないとこだったわ。中身は…砂?白い砂っぽい。砂糖とか?ちがうな、これ星の形してる。星砂か~懐かしい。おみやげだ。地味に嬉しい。回収~回収~。ボディバッグに全部入れる。
 あ~疲れたー帰ろ帰ろ。おフロにゆっくりつかりたい。マイおフロが待っている。
 あとは角をとって…
 !なんてことだ!やばいっボスが消えかかっていた。
 そりゃそうだ。ダンジョンに返っていくのだから。ボスも例外じゃない。ああ!尾ヒレがない。宝箱をのんびり検分してる場合じゃなかった。あわてる。
 『ここまで何をしにきたんだ?がんばってきたんだよ?』と『初めから角目当てに来たみたいになってるけど、五層に来てから初めて知ったよね?』という自分へのつっこみと忙しい。
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