12 / 17
第一章(祈)
諦めるしかないだろ
しおりを挟む暑い。苦しい。そう思って目を開けると、カーテンから漏れる陽の光が目に入る。
首に回る真っ白な腕と体を拘束されているような感覚に、またか、とため息をがでた。顔は見えないが犯人はどうせ。
「おいこら、離せ」
そいつから離れようと身をよじるが拘束は強くなっていく。仕方なく首に回っていた腕に噛みつくとビクッと体を反応させたそいつは、小声で唸りながら目を覚ました。
「おはよう。祈」
「おはよう、じゃねぇわ。さっさと離せよ」
目を覚ましたくせに俺から離れようとしない兄の望に苛立ちが募る。
望は「えぇ」と不満の声を出しながら俺の髪に頭を埋めた。それだけでも勘弁してほしいのに、あろうことか望は俺の髪の匂いを嗅ぎはじめた。
「おいっ嗅ぐな気持ち悪い!てか、まじで離して!」
無理矢理起き上がると首に回っていた望の腕が離れた。ベットから降りて上から望を見下ろす。
「俺何度も言ったよな。寝るときは別々。部屋に入ってくるなって」
「やっぱり無理だよ。1人で寝るなんて。今まで一緒に寝てたじゃん。急に一人で寝ろって言われても寂しくて無理」
「ふざけんな。お前いくつだよ。子供じゃねぇんだからさっさと俺離れしろ」
「祈離れ?何それ?できるわけないじゃん」
祈は馬鹿だな~と、肩を落として笑っている望。
…こいつ殴ってもいいよな?ボコしても俺悪くないよな??
固く握った拳を望の頭に落とすと決意したが、それは望に軽々と阻止されてしまった。
俺と同じ青い瞳が怪しく光る。
「駄目だよ」
柔らかく俺の拳を包み込んだ望はそのまま俺の握った拳を開いていく。
「グーで殴ったら、祈が痛いでしょ?だから、こっち」
俺の手をパーに開くと望は満足げに笑った。
「はい、これでいいよ」
「どうぞ」と目を瞑って俺に頬を差し出すこの男は、やはり頭のネジが何本か外れているようだ。
「きもい」
きもすぎて殴る気力も叩く気力も削がれた。このイカれた人間の相手をするなんて時間の無駄だったわ。
ベットの上で怪しく笑う兄を置いて部屋から出る。
真っ赤なカーペットが敷かれた廊下も、端で頭を下げている使用人も、俺にとっては日常で、この楪(ゆずりは)家では当たり前の光景だった。
この国トップの財閥であるこの家で育った俺は金に困ったことがない。欲しいものは基本的に何でも手に入る。ただ、この俺の恵まれた環境に一つ難をつけるのであれば、兄、望の存在だ。
今となれば信じられないが、昔の望は感情のない言われた通りに動くロボットみたいなやつだった。でも、望は変わった。予兆のない急激な変化だった。
俺の存在を疎ましく思っていたはずの兄が俺を可愛がり始め、俺の前で感情を出すようになった。それだけなら、別に良かったんだけど、望の愛は重すぎて人としての一線を軽く超えてしまうところがある。
あれは、俺が8歳の頃。8歳の頃の俺はことあるごとに望と比べられていた。
一番ひどかったのがその頃の俺の剣術の指導者で、そいつは俺の精神を追い詰めて悦を感じる変態だった。
今考えれば、両親に助けを求めたり誰かに話せば良かったんだけど、幼い俺はそいつに逆らう心なんて持ち合わせてなくて、ただただ言われたことを真に受けて追い詰められていた。
そして、それを知った望がその指導者を半殺しにしたんだ。
あいつは簡単に人の骨を砕き、無表情で人を殺せる。あの時ヨルが止めなかったら確実に殺していただろう。
望が本当に頭のイカれた危険な奴なんだと自覚した俺は、望から離れようとした、避け続けたが望は俺から離れようとしなくて。
俺が避けても近づいてきて何度も謝って俺を甘やかしてくる。あまりのしつこさに俺の方が折れてしまった。
あいつを拒むより流す方が、避けるよりうまくコントロールした方が楽だと気づいたんだ。
0
あなたにおすすめの小説
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったら引くほど執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる