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第一章(祈)
パンドラ
しおりを挟む「僕が泣いてちょっとお願いすれば、簡単に股開いたよ」
そう言って、目の前の望はくすくす笑っている。
「はじめは拒否してたんだよね」から始まった経緯に、こいつはクズで俺らは双子だと再確認する。
「女って本当に簡単だね。ずっと好きだったって嘘つけば揺らぐし、君がいなきゃ駄目なんだって言えば嬉しそうに頬を染めるんだから」
あーあ、祈以外にあんなこと言ったから口が気持ち悪いと、望はテーブルに用意されている紅茶を一口飲んだ。
黙ってその様子を見ていれば、望がテーブルから身を乗り出して、俺の頬に手を添える。
「大丈夫。お兄ちゃんはずっっと祈のそばにいるよ」
歪んだ青色。
別れた原因が何をほざいているのか。
そう思いながら、あぁ、と相槌を打つ。
嬉しそうに、笑う望。
「これも祈のためだから。僕より祈を大事にしてくれる子じゃないと、祈はあげない。今はまだ、祈は僕のそばにいるべきだよ。だって世界で1番僕が祈を愛しているから」
大きすぎる愛を幼い頃から受けてきて、はじめは重すぎてキツすぎて拒否し続けていたけど、慣れというのは怖いもので、俺の心には望の愛を受け取れるだけの隙間が空いていた。
今だって嫌だよ、こんな兄。
俺は普通の兄が欲しい。普通に友達を作って、普通に彼女を作って、兄に束縛されずに生きていきたい。
きっと、その選択だってできた。できたはずなんだ、でも、俺は結局、望に縛られることを選択している。
俺にだけ心を動かして、俺にだけに本当を見せる。俺だけを愛している望。
そのことに優越感を感じている俺がいて、心の奥底で燻っている気持ちがあって、気づかないふりをしても、それは日に日に大きくなる。
俺の前に立った望は、俺の頭を撫で、瞼を撫で、頬を撫で、「愛してる」と優しく抱きしめた。
何度も言うけど、俺は望が嫌いだよ。
普通になりたい。普通に生活したい。平凡な俺になりたい。
それでも俺の腕は、望の体を確かな力で抱きしめ返していた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
嬉しいです。
next第2章(望)
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