剣より料理が好きな武士

サドラ

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剣より料理が好きな武士

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武士をやっているが、剣道が苦手な私は、日頃惨めな思いをしている。だからと言って、筋トレに走るのはどうかと思うのだが…… しかし! そんな私にも得意分野があったのだ。
そう! 料理である。
私は料理が得意なのだ。
それも、かなりの腕前だ。
自分でも自覚しているくらいだ。しかし、私が台所に立つと、父上に叱られるのだ。「お前のような女が台に立って包丁を使うなど、おこがましい!」
と…… でも、私の料理の腕を認めてくれる人もいる。
それは、母上だ。
「あなたが作ったお味噌汁はとても美味しいわね」
と褒めてくれるのだ。そして、今日もまた私は台所に立った。
今晩は煮物を作ろうと思っている。
大根の葉っぱを大量に買ってきたから、これを使おう。
まずは大根の葉っぱを刻む。
ざくっ! ざくっ! ざくっ!大根の葉っぱってこんなに硬いんだ。なかなか包丁が入らないよ。
ざくっ! ざくっ! ざくっ!………… やっと切れた。
次は出汁を取るために鍋に入れる。
ざばーん!
いい音だ。
「おい、お前!何をしておる!道場にでも行かぬか!」
「ち、父上!こ、これは…」「うるさい!黙れ!」
父上は怒鳴り声をあげながら去って行った。
母上が言うには、父上は最近気が立っているらしい。
そのせいで、家の中の雰囲気が悪いのだそうだ。
まあ、仕方がないかもしれない。
なぜなら、先日、我が家に泥棒が入ったからだ。
うちの家計はかなり苦しくなった。
だからといって、剣術をやめるわけにはいかない。
父上の名誉に関わることだからな。
それに、私だって武士の端くれだ。負けたくないという気持ちもある。
だが、最近はどうすれば良いのか分からない。料理を私から取り上げないでください。父上。お願いですから。
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