そろそろキス…とかしないの?

サドラ

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そろそろキス…とかしないの?

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少し前、告白された。いきなりだ。約十年苦楽を共にした幼馴染に。中学校を卒業するタイミングで。その日は雨が降っていた。私は傘を忘れてしまって、びしょ濡れになりながら下校していた。そんな私を、彼は自分の傘に入れてくれたのだ。「風邪ひくよ」と一言だけ言って。その瞬間、私の心臓は跳ねた。
「ありがとう。」
「当たり前じゃん。」
「え?」
「好きなんだから…」
「…」
「あの、僕はあなたのことが好きです。大好きなんです。ずっと言おうと思ってて、言うなら今しかないって思ったんだ。」
「え…」
信じられない衝撃だった。今まで恋愛なんてしたことなかったから。もちろん嬉しいけど、どうしていいかわからない気持ちになった。
「ごめんね!急にこんなこと言われても困るよね!」
彼は必死な顔でそう言った。
「ううん。嬉しい。」
彼をそういう目で見たことがないわけじゃない。凄く優しくしてくれるし、頼りにもなる。だけど、それは彼の持ち前で、私だから、ってわけじゃないと思っていた。でも違った。私が気づいてなかっただけで、彼もちゃんと私のことを想ってくれていたんだ。そう思うと、なんだか心があったかくなって、嬉しかった。
「ほんと!?良かったぁー!」
安心しきったような笑顔を見せた。
「私も多分、好き。」
「…」
そういって二人で笑いあった。
その後、なんだかんだ言っていい恋人関係になれているとおもう。月に一回くらいデートすることもある。学校が違うのに、土日を使ってうまくいっている。
しかし、彼は少し、控えめなタイプなのだ。
まず、手を繋いでこない。(私も)
隣を歩くので精一杯だ。あと、スキンシップもない。(私も)
肩を寄せ合うこともない。(私も)
キスどころかハグだってしたことはない。(私も)……あれ?これ付き合ってるのか?という疑問すら湧いてくるレベルである。
まあ、お互い好きって言っているからOKだと思うが、これで本当に大丈夫なのかというのはある。今日は日曜日。明日になれば月曜日になる。
つまり彼と会える時間が少なくなる。
なので、勇気を出して聞いてみることにした。
「ねぇ」
「ん?」
「手繋がないの?」
「えっ!?繋ぎたいです!」
即答だった。「じゃあいこうよ」
「あっはい!」……なんか変な返事が来た気がするがスルーしよう。
さっきまで緊張してたのに、いざ繋ぐとなると恥ずかしいな……。
彼が手を伸ばしてきた。私はそれに応えるように握った。初めてだよ…こんな事するの……。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。」
少し握る力を強くする。すると向こうも同じくらい強く握り返してきた。こういうところを見ると、やっぱり好きだなぁと思う。
そして私たちは歩き始めた。
季節はそろそろクリスマス。私は何を着ようか迷っていた。去年はニットセーターを着ていたのだが、今年はどうするか決めかねていた。その時ふと思い出したのだ。彼に貰ったマフラーのことを。
早速クローゼットを開き、探す。あった!これ可愛いなぁ。
よし決めた。これにしよう。………… 当日になった。待ち合わせ場所はいつもと同じ駅。ちょっと早めに着いたけど、別に問題はないはず。
「お待たせ~」
「待ってないよ。」
うそだ。どうせ凄い早く来て待っていたに決まっている。律儀なんだから。
街は賑やかな飾り付けが施されて明るい。きれいだ。そんな街を私たち二人が歩く。とても楽しい時間が流れていく。まるで幸せを感じているみたいだ。
それから何件か服屋さんを見て回ったり、喫茶店に入って休憩したりしているうちに夕方になってしまった。
「もうすぐ暗くなるね~。」
「そうだね。」
「あのさ、」
思い切りがついて、私は彼の手を取った。
「もう少し一緒に居たいんだけど……だめかな?」
「僕もそうしたかった。」
そう言って彼は笑った。
私も笑って返すと、自然と体が近づいていった。鼓動が速くなっていく。
「ま、マジで?」
「そろそろキスとかしないの?」
そのまま顔を近づける。心臓の音が大きくなってきた。あと数センチで唇が触れる距離で、彼の動きが止まった。
「えっと……」
彼は困っているようだ。私も困っている。この空気に耐えられなくて、つい口を開いてしまっていた。「ごめん、冗談だよ!帰ろうか。」
そう言って手を離そうとした瞬間、腕を引っ張られた。
「えっ……」
目の前には彼の顔がある。唇と唇がくっついている。その事実を理解するまでにしばらくかかった。
「え、えと……あの、ごめんね!急にこんなことしちゃって!」
彼は焦りながら言った。
「ううん、いいよ。」
私はそう言うしかなかった。
「じゃあ、また!」
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