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12.ゴッド・ボイス
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突如乱入してきてくれた妹のローズマリーの声でアイリスは、やっと我に返る。
「あら、もしかしてわたくし、お二人が盛り上がっていたお話の腰を折ってしまったかしら? 申し訳ございません……。カトレア様、大変失礼致しました」
そう言って困った様な表情を張り付けているローズマリー。
「そうそう。オリビア様! 我が自慢の姉は如何でございますか? オリビア様はずっと姉の事を気に掛けてくださり、とても熱心にわたくしに姉の詳細をよくお尋ねになっておりましたでしょ? 気性は少々粗い所もございますが、この姉の美貌は、妹のわたくしにとっては本当に自慢ですの! よろしければじっくりご覧になってくださいね?」
我が妹ながら、キツイ性格だと思ったアイリスだが、正直あの時ロースマリーが入ってきてくれなければ、アイリスは動けないままだった。
すると今度は四女のマーガレットが、アイリスの手を引っ張って来た。
「アイリス姉様! あちらでブレスト家の姉妹が姉様とお話したいって!」
そういって10歳前後くらいの二人の姉妹の方にアイリスの手を引っ張って行く。
マーガレットがアイリスを自分達の方へ連れて来てくれた事にブレスト家姉妹は、頬を紅潮させながら目をキラキラさせていた。
そう言えば、アズリエールが叔母のエリアテールの影響でブレスト家の現在の風巫女達は、アイリスのファンだと言っていた。
「お初にお目にかかります。ラフェナ様、リフェナ様」
「は、初めまして! アイリス様! お目に掛れて光栄です!」
「叔母エリアテールより素晴らしい歌声をされていると聞いておりまして、ずっとお会い出来る事を楽しみにしておりました!」
そう言ってキラキラした目でアイリスを見つめてくる二人。
その横で妹のマーガレットが姉ローズマリー達の様子を伺っているところを見ると、今回アイリスは、完全に妹達に助けられてしまった様だ。
するといつの間にかアズリエールの妹でもあるエアリズム家の令嬢達二人と、レイニーブルー家の末娘まで集まって来た。
どうやら10歳未満の年少組巫女達は、かなり仲が良いらしい。
「アイリス様、こんにちは~!」
「こんにちは~!」
「アイリス様、凄くお綺麗ね! 髪の色もとっても綺麗! 触ってもいい?」
「ずるい! 私も触りたい!」
「私もー!」
チビッ子巫女達に囲まれたアイリスは、いつの間にか自分の妹達によって、レイニーブルー家の二人から遠ざけられていた。
どうやらこの後、アイリスはとびきり美味しいクッキーと、お下がりでない素敵な髪飾りを妹二人に贈らなければないないようだ。
そんな事を考えながら、小さな巫女達の相手をしていると、いつの間にかアレクシスが全員分の面談を終えたようで、会場に戻ってきていた。
すると問題のレイニーブルー家の二人は、早々にアレクシスの方へと声を掛けに行く。どうやらアズリエールの言っていた事は本当のようで、姉妹二人で取り合う様にアレクシスに話掛けている。
その隙にローズマリーがアイリスの方へとやって来た。
「姉様、油断し過ぎ! 向こうは恋する乙女なんだから何だってありよ?」
「ごめんなさい……。でもまさかこちらの過去をあそこまで調べてくるなんて思ってもみなかったから……」
「自分がアズリル使って情報収集したんだから、相手だって同じ事するって少し考えれば姉様なら気付くでしょ……?」
「完全に侮っていたわ……。でも大丈夫! これからは本気で行くから!」
「あまり本気出し過ぎないでね? 向こうは攻撃力は高くても防御力は低すぎて、お話にならないレベルなんだから」
「それ、攻撃性が高い癖に打たれ弱いっていう最悪なタイプじゃない……」
「潰してもいいけど……せめて弱き者への情けとして、トラウマが残らない様な潰し方にしてあげてね?」
「ローズィー、あなた本当にキツイ性格よね……」
「姉様にだけは、言われたくないのだけれど……」
そんな悪態を付く頼もしい妹だが、正直あの時、割って入って来てくれた事は、本当に助かったのだ。
そして同時にアイリスにとって10年前の雨巫女のお披露目式の件は、自分が思っている以上にトラウマになっているらしい……。
実際にアイリスはこの10年間、徹底してアレクシスに自分の歌声を聴かせない様に細心の注意を払ってきた。
雨乞いの儀をする時は、例え遠出になったとしても水害の起こりにくい場所までわざわざ行って行い、王妃セラフィナの依頼で歌を披露する際は、必ず国王陛下の晴天の力を借りていた。
しかし本来ならば、それはアレクシスの役割であり、桁違いのアイリスの巫女力を抑える適任者も現王家内では一番力の強い晴天の力を持つ彼となる。
それでもどうしても歌声を聴かれたくなかったアイリスは、アレクシスの晴天の力の補助を頑なに拒んだ。
そしてその意思の根源は、自分の歌声を否定したアレクシスになど絶対に聴かせたくないという嫌悪感からだと、自分に言い聞かせているアイリス。
だが本当は、再び歌声を聴いた時のアレクシスの反応を心のどこかで恐れている自分の弱さからの逃げである事も悔しいが、しっかり認識している。
それだけ10年前の雨巫女のお披露目式の件は、アイリスにとって一番触れられたくない過去なのだ。だからこそ、カトレアが放った言葉に酷く動揺してしまった。
そもそもその10年前の出来事を自分よりも年下のカトレアが、何故知っているのか……。それだけ相手は、本気でアイリスを潰しにかかって来ているという事だ。
油断していたとはいえ、その自分の弱さに付け込まれてしまった事にアイリスは、思わず唇を噛んだ。
だが相手が本気ならば、こちらも本気で立ち向かうまでだ。
恐らくこの後にカトレアが取る行動は、簡単に予測出来る。
そう腹をくくったアイリスは、カトレアが動くのを静かに待った。
すると案の定、カトレアが動き出す。
「アレク様、実は先程アイリス様とお話をさせて頂いたのですが……。どうやら、わたくし達はアイリス様の根も葉もない噂をかなり鵜呑みにしてしまい、大変な誤解を抱いていた事にやっと気づきまして……」
「そうだね。彼女は今まで公の場に出て来なかった所為で、なかなか面白い噂を持っているから。でも誤解が解けたのなら、良かったよ」
「それでですね。折角ならば悪い噂の真相だけでなく、良い噂の真相の方も是非お見せ頂けないかと思いまして」
「良い噂?」
「はい。アイリス様は大変素晴らしい歌声をお持ちですよね? ですがここに集まった巫女の大半は、その素晴らしい歌声をお聴きした事がある方は極わずかです。なので、ご親睦を深めるという意味でも是非その素晴らしい歌声をここで披露して頂ければと思いまして」
にっこりと提案するカトレアの言葉にアイリスは「やはり、そう来たか」と心の中で呟いた。その攻撃法は、アイリスが同じ立場でも容易に思いつく。
ましてや先程、アイリスはその件でかなり動揺した反応を見せてしまった。
その反応からカトレアは、かなり有効な攻撃方法だと確信したのだろう。
しかし、こちらだって先程しっかり腹をくくったのだ。
売られたケンカは、きっちり倍返しで受けたつのがアイリスのポリシーだ。
そう思い、カトレアの要望に応えようとアイリスが口を開きかけた時、アレクシスが信じられない言葉を発した。
「カトレア。申し訳ないのだけれど、ここではアイリスの歌声は披露出来ないよ」
その瞬間、アイリスが目を見開く。
「何故ですの? ここにいる半数以上はアイリス様の歌声の熱狂的なファンの方ですし、わたくし達も同じ巫女仲間として、一度でいいので是非その神のような歌声を聴いてみたいのですが……」
「アイリスの巫女力は、君達が思っている以上にかなり強力なんだ。こんな場所でその巫女力を使ってしまったら、城下町周辺に水害が出てしまう」
「ですが、それはアレク様がここにいらっしゃるのですから、晴天のお力で抑える事がお出来になるのでは?」
そのカトレアの返答にアレクシスが珍しく言葉を一瞬、詰まらせた。
その一瞬の隙をカトレアは見逃さない。
「皆様もアイリス様の素晴らしい歌声を是非お聴きしたいですわよね?」
間髪入れずにカトレアが会場にいる全ての巫女達に呼びかける。
するとティアドロップ家とエアリズム家の令嬢達は歓喜の声を上げ、賛同する。
それに釣られる様に他巫女達も歌を聴きいてみたいと声を上げ出した。
その状況にカトレアは、うっすらと意地の悪い笑みを浮かべた。
しかし、ここで意外な人物がカトレアに異議を唱えた。
「カ……カトレア!」
その声のした方に目を向けると、本日ずっと壁際で気配を消していたレイニーブルー家の次女クラリスの物だった。
分厚い瓶底の丸メガネは、彼女の表情を完全に読み取りにくくしており、全身紺づくめのドレスは、全力で皆と交わる事を拒否しているような服装だ。
その彼女が、まるで力を絞り出す様にカトレアに声を掛けた。
「あの、それは辞めた方がいいわ……。アレクシス様もアイリス様もそのように急にお願いしては困っ……」
「クラリスは黙ってて!」
アイリス達を気遣った言葉を発しようとした三つ年上の姉の言葉をカトレアは容赦なく、ぴしゃりと遮った。そもそも姉を呼び捨てするなど、アイリスのスコール家ではあり得ない事だ。
「わたくしは皆様のご意見を代表して申し上げているだけよ? そもそも10年前に伝説の雨乞いの儀をご披露されたアイリス様でしたら、この様な少人数の前で歌われる事等、容易な事ではありませんこと?」
するとストーム家のリデルシアもスッと手を上げる。
「私も是非アイリス様のその素晴らしい歌声を聴いてみたいのですが……」
その言葉に他巫女達の期待も更に高まった。
もうこの辺りが潮時だとは思っているアイリスは、歌う事の承諾を得ようとアレクシスの許に向かって歩き出す。
しかし……その間にアレクシスは、再び彼らしくない言葉を発した。
「申し訳ないのだけれど、彼女の強力すぎる雨乞いの儀は、簡単に見世物に出来る程、軽はずみに行っていいものではないんだ。すまないけど、それは出来ない」
その瞬間、アイリスは足を一瞬止めた。
そのまま目を見開きながら、うっすらと開かれた唇は僅かに震えだす。
普段のアレクシスなら、この様な状況になれば面白がってアイリスを挑発しながら、この場で雨乞いの儀をやる様に仕向けてくるはず……。
だが今日のアレクシスは、その要望を間髪入れずに却下した。
当人であるアイリスの了承も一切得ずに……。
そのアレクシスの判断は、アイリスには絶対に引き受ける事など出来ないと、頭から断定した故の行動としか思えなかった。
それを理解した瞬間、アイリスの中に物凄い怒りが沸き上がる。確かに自分にとって10年前の出来事は相当なトラウマとなっている。だが、自分はそれに立ち向かえない程、弱い人間ではない。
しかし今のアレクシスの行動は、アイリスにはそれをこなす事が出来ないと勝手に判断し、まるで弱い人間だと決めつける事と同じだ。
再び勢いよく靴音を立てながら歩き出したアイリスは、皆を説得にかかっているアレクシスのもとに着くなり右腕をやや乱暴に掴み、自分の方へと振り向かせた。
「アレク。申し訳ないのだけれど、あなたの晴天の力を貸して頂けるかしら?」
アイリスのその言葉に今まで見た事がないくらい驚いた表情で、アレクシスが大きく目を見開いた。
同時に他巫女達もアレクシスの事を略称の上に敬称すら付けない呼び方をしたアイリスに驚き、固まってしまう。
「アイリス……。だけど……っ!」
「それともあなたの晴天の力では、私のような化け物じみた巫女力を抑える事は難し過ぎるのかしら?」
そう告げるアイリスには、つい先程まで貼り付けていた笑顔の仮面が、どこにも見当たらない。それどころか、いつも通りのアレクシスを煽る小生意気で挑発的な美し過ぎる笑みを意地悪そうに浮かべている。
そんなアイリスの様子にアレクシスは、盛大に息を吐く。
「まさか冗談だろ? 君如きの巫女力なんて僕になら簡単に抑え込められる」
そう言って、アレクシスもいつも通りの意地の悪い笑みを返す。
そのアレクシスの見た事もない表情に隣にいたカトレアが、目を見開いた。
「皆、どうやらアイリスは自慢の素晴らしい歌声を披露してくれる様だよ?」
アレクシスの言葉を合図にアイリスはその場で靴を脱ぎ、そのまま会場の見晴らしの良い窓際まで移動した。そして窓に背を向け、全員の方に向き直る。
今回は室内で行う為、大気を直に感じる事はあまり出来ないが、窓越しから微かに感じ取りながら、アイリスが瞳を閉じて意識を集中する。
すると……アイリスの背後の窓ガラスが一瞬で白く曇り出した。
同時に部屋の気温も少し下がる。
会場全体がやや肌寒さに包まれると、俯いたままアイリスがゆっくり歌い出す。
静かに立ち上がるその歌を胸の辺りで祈る様に手を組み、徐々に顔を上げながら天井に向かって捧げる様に歌い始めたアイリス。
狂うしい程、慈しむように歌われ出した歌詞だが……その繊細さとは裏腹にアイリスが選んだ今回の歌は『戦士の歌』だ。
出だしの切なさそうに紡ぎ出されたその歌声に感受性の豊かそうなティアドロップ家の令嬢達が、早くも涙ぐんでいる。
その歌声に惹きつけられる様に窓の外では雨雲が集まり始める。
つい先程までの爽やかすぎる程の青空は、いつの間にか灰色掛っていた。しかしその間からは、先程までの青空をチラリと顔を覗かせ、そこから後光のような光を地上に降り注いでいる。
しかし、急速に集まって来た真っ黒な雨雲に時折その光は遮られ、何度も地上に光と闇を交互に与え続けた。
その光と闇を窓越しに受けながら、アイリスが掌を上に向けた状態で両手を広げ、徐々に高める様に歌い上げて行く。
すると窓にパチパチと大きな雨粒がぶつかり出し、遠くの方でゴロゴロと雷の音が聞こえ始めた。
それを合図にようやくアレクシスが片手を上げて晴天の力を発動し出す。
そのアレクシスが上げる片手に合わせる様にアイリスが大きく息を吸い込んだ。
次の瞬間、それに抗う様にアイリスが体を大きく揺り動かし、全力で歌のサビ部分を叫ぶ様に歌い出す。その凄まじいエネルギーの塊のような歌声は、会場全体の空気をビリビリと震わせ、その場にいた全員に痺れる様な感覚を与えた。
同時に窓の外では、空全体がカーテンで覆いかぶされるように大量の雨が滝の様に一気に降り注ぐ。
まるで自身の身を削る様に紡がれるアイリスの歌声は、闘志を奮い立たせる戦士というよりも、特攻し命を燃やし尽くす覚悟を決めた激しい気性の戦士の様だ。
そのあまりにも激しい歌方をするアイリスと一瞬だけ目が合ってしまったカトレアは、その気迫に背中をぞくりとさせた。
そしてアイリスとの格の違いを嫌でも認めざる得ない威圧感を感じ、唇をぎゅっと噛みしめる。
その隣では無表情のアレクシスが、ひたすら晴天の力を発動させていた。
すると窓の外の薄黒い雨雲が、まるで開かれるカーテンの様にバックリと左右に退け始める。その下からは後光の射した薄暗い曇り空が現れた。
その光を浴びる様にアイリスが、最後のフレーズを歌い切る。
それと同時に今度はその薄暗い曇り空が開け、間から鮮やかな青空が現れた。
歌い切ったアイリスが一礼すると、建物の屋根から落ちる雨の雫の向こう側に見事な虹が現れた。
そのあまりにも見事な雨乞いの儀に言葉を失ってしまい、誰もが動けなくなる。
そんな中、アイリスはスッとアレクシス達の許へ戻り、先程脱いだ靴を履いた。
そして茫然としながらアイリスを見つめるカトレアに一言告げる。
「カトレア様? これでご満足頂けましたでしょうか?」
そして綺麗過ぎて恐怖さえ感じる程の美しい微笑みを向けた。
その瞬間、号泣しながらティアドロップ家の令嬢達が拍手を始める。
それを切っ掛けに他の巫女達も我に返り、盛大な拍手をアイリスに送った。
それに応える様にアイリスが何度もお辞儀をする。
もはやこの状況では、もう誰もアイリスの悪い噂など信じる者はいない。
この場にいる殆どの人間は、皆アイリスに魅了されてしまっているのだから。
その現実を未だに受け入れられないカトレアは、キッとアイリスに目を向ける。
「アイリス様、大変素晴らしい歌声でしたわ! ところでアレク様は、今回のこの素晴らしいご婚約者様の歌声をどう感じられましたか?」
その瞬間、アイリスは二人に背を向けたまま、一瞬だけ体を強張らせた。
そしてゆっくりアレクシスの方に目を向けると、そのアレクシスが口を開く。
しかし次の瞬間、全く予想もしていなかったパシンッという音が鳴り響いた。
「カトレア!! いい加減にしなさいっ!!」
平手打ちの音と共にそう叫んだのは、レイニーブルー家の次女クラリスだった。
「あら、もしかしてわたくし、お二人が盛り上がっていたお話の腰を折ってしまったかしら? 申し訳ございません……。カトレア様、大変失礼致しました」
そう言って困った様な表情を張り付けているローズマリー。
「そうそう。オリビア様! 我が自慢の姉は如何でございますか? オリビア様はずっと姉の事を気に掛けてくださり、とても熱心にわたくしに姉の詳細をよくお尋ねになっておりましたでしょ? 気性は少々粗い所もございますが、この姉の美貌は、妹のわたくしにとっては本当に自慢ですの! よろしければじっくりご覧になってくださいね?」
我が妹ながら、キツイ性格だと思ったアイリスだが、正直あの時ロースマリーが入ってきてくれなければ、アイリスは動けないままだった。
すると今度は四女のマーガレットが、アイリスの手を引っ張って来た。
「アイリス姉様! あちらでブレスト家の姉妹が姉様とお話したいって!」
そういって10歳前後くらいの二人の姉妹の方にアイリスの手を引っ張って行く。
マーガレットがアイリスを自分達の方へ連れて来てくれた事にブレスト家姉妹は、頬を紅潮させながら目をキラキラさせていた。
そう言えば、アズリエールが叔母のエリアテールの影響でブレスト家の現在の風巫女達は、アイリスのファンだと言っていた。
「お初にお目にかかります。ラフェナ様、リフェナ様」
「は、初めまして! アイリス様! お目に掛れて光栄です!」
「叔母エリアテールより素晴らしい歌声をされていると聞いておりまして、ずっとお会い出来る事を楽しみにしておりました!」
そう言ってキラキラした目でアイリスを見つめてくる二人。
その横で妹のマーガレットが姉ローズマリー達の様子を伺っているところを見ると、今回アイリスは、完全に妹達に助けられてしまった様だ。
するといつの間にかアズリエールの妹でもあるエアリズム家の令嬢達二人と、レイニーブルー家の末娘まで集まって来た。
どうやら10歳未満の年少組巫女達は、かなり仲が良いらしい。
「アイリス様、こんにちは~!」
「こんにちは~!」
「アイリス様、凄くお綺麗ね! 髪の色もとっても綺麗! 触ってもいい?」
「ずるい! 私も触りたい!」
「私もー!」
チビッ子巫女達に囲まれたアイリスは、いつの間にか自分の妹達によって、レイニーブルー家の二人から遠ざけられていた。
どうやらこの後、アイリスはとびきり美味しいクッキーと、お下がりでない素敵な髪飾りを妹二人に贈らなければないないようだ。
そんな事を考えながら、小さな巫女達の相手をしていると、いつの間にかアレクシスが全員分の面談を終えたようで、会場に戻ってきていた。
すると問題のレイニーブルー家の二人は、早々にアレクシスの方へと声を掛けに行く。どうやらアズリエールの言っていた事は本当のようで、姉妹二人で取り合う様にアレクシスに話掛けている。
その隙にローズマリーがアイリスの方へとやって来た。
「姉様、油断し過ぎ! 向こうは恋する乙女なんだから何だってありよ?」
「ごめんなさい……。でもまさかこちらの過去をあそこまで調べてくるなんて思ってもみなかったから……」
「自分がアズリル使って情報収集したんだから、相手だって同じ事するって少し考えれば姉様なら気付くでしょ……?」
「完全に侮っていたわ……。でも大丈夫! これからは本気で行くから!」
「あまり本気出し過ぎないでね? 向こうは攻撃力は高くても防御力は低すぎて、お話にならないレベルなんだから」
「それ、攻撃性が高い癖に打たれ弱いっていう最悪なタイプじゃない……」
「潰してもいいけど……せめて弱き者への情けとして、トラウマが残らない様な潰し方にしてあげてね?」
「ローズィー、あなた本当にキツイ性格よね……」
「姉様にだけは、言われたくないのだけれど……」
そんな悪態を付く頼もしい妹だが、正直あの時、割って入って来てくれた事は、本当に助かったのだ。
そして同時にアイリスにとって10年前の雨巫女のお披露目式の件は、自分が思っている以上にトラウマになっているらしい……。
実際にアイリスはこの10年間、徹底してアレクシスに自分の歌声を聴かせない様に細心の注意を払ってきた。
雨乞いの儀をする時は、例え遠出になったとしても水害の起こりにくい場所までわざわざ行って行い、王妃セラフィナの依頼で歌を披露する際は、必ず国王陛下の晴天の力を借りていた。
しかし本来ならば、それはアレクシスの役割であり、桁違いのアイリスの巫女力を抑える適任者も現王家内では一番力の強い晴天の力を持つ彼となる。
それでもどうしても歌声を聴かれたくなかったアイリスは、アレクシスの晴天の力の補助を頑なに拒んだ。
そしてその意思の根源は、自分の歌声を否定したアレクシスになど絶対に聴かせたくないという嫌悪感からだと、自分に言い聞かせているアイリス。
だが本当は、再び歌声を聴いた時のアレクシスの反応を心のどこかで恐れている自分の弱さからの逃げである事も悔しいが、しっかり認識している。
それだけ10年前の雨巫女のお披露目式の件は、アイリスにとって一番触れられたくない過去なのだ。だからこそ、カトレアが放った言葉に酷く動揺してしまった。
そもそもその10年前の出来事を自分よりも年下のカトレアが、何故知っているのか……。それだけ相手は、本気でアイリスを潰しにかかって来ているという事だ。
油断していたとはいえ、その自分の弱さに付け込まれてしまった事にアイリスは、思わず唇を噛んだ。
だが相手が本気ならば、こちらも本気で立ち向かうまでだ。
恐らくこの後にカトレアが取る行動は、簡単に予測出来る。
そう腹をくくったアイリスは、カトレアが動くのを静かに待った。
すると案の定、カトレアが動き出す。
「アレク様、実は先程アイリス様とお話をさせて頂いたのですが……。どうやら、わたくし達はアイリス様の根も葉もない噂をかなり鵜呑みにしてしまい、大変な誤解を抱いていた事にやっと気づきまして……」
「そうだね。彼女は今まで公の場に出て来なかった所為で、なかなか面白い噂を持っているから。でも誤解が解けたのなら、良かったよ」
「それでですね。折角ならば悪い噂の真相だけでなく、良い噂の真相の方も是非お見せ頂けないかと思いまして」
「良い噂?」
「はい。アイリス様は大変素晴らしい歌声をお持ちですよね? ですがここに集まった巫女の大半は、その素晴らしい歌声をお聴きした事がある方は極わずかです。なので、ご親睦を深めるという意味でも是非その素晴らしい歌声をここで披露して頂ければと思いまして」
にっこりと提案するカトレアの言葉にアイリスは「やはり、そう来たか」と心の中で呟いた。その攻撃法は、アイリスが同じ立場でも容易に思いつく。
ましてや先程、アイリスはその件でかなり動揺した反応を見せてしまった。
その反応からカトレアは、かなり有効な攻撃方法だと確信したのだろう。
しかし、こちらだって先程しっかり腹をくくったのだ。
売られたケンカは、きっちり倍返しで受けたつのがアイリスのポリシーだ。
そう思い、カトレアの要望に応えようとアイリスが口を開きかけた時、アレクシスが信じられない言葉を発した。
「カトレア。申し訳ないのだけれど、ここではアイリスの歌声は披露出来ないよ」
その瞬間、アイリスが目を見開く。
「何故ですの? ここにいる半数以上はアイリス様の歌声の熱狂的なファンの方ですし、わたくし達も同じ巫女仲間として、一度でいいので是非その神のような歌声を聴いてみたいのですが……」
「アイリスの巫女力は、君達が思っている以上にかなり強力なんだ。こんな場所でその巫女力を使ってしまったら、城下町周辺に水害が出てしまう」
「ですが、それはアレク様がここにいらっしゃるのですから、晴天のお力で抑える事がお出来になるのでは?」
そのカトレアの返答にアレクシスが珍しく言葉を一瞬、詰まらせた。
その一瞬の隙をカトレアは見逃さない。
「皆様もアイリス様の素晴らしい歌声を是非お聴きしたいですわよね?」
間髪入れずにカトレアが会場にいる全ての巫女達に呼びかける。
するとティアドロップ家とエアリズム家の令嬢達は歓喜の声を上げ、賛同する。
それに釣られる様に他巫女達も歌を聴きいてみたいと声を上げ出した。
その状況にカトレアは、うっすらと意地の悪い笑みを浮かべた。
しかし、ここで意外な人物がカトレアに異議を唱えた。
「カ……カトレア!」
その声のした方に目を向けると、本日ずっと壁際で気配を消していたレイニーブルー家の次女クラリスの物だった。
分厚い瓶底の丸メガネは、彼女の表情を完全に読み取りにくくしており、全身紺づくめのドレスは、全力で皆と交わる事を拒否しているような服装だ。
その彼女が、まるで力を絞り出す様にカトレアに声を掛けた。
「あの、それは辞めた方がいいわ……。アレクシス様もアイリス様もそのように急にお願いしては困っ……」
「クラリスは黙ってて!」
アイリス達を気遣った言葉を発しようとした三つ年上の姉の言葉をカトレアは容赦なく、ぴしゃりと遮った。そもそも姉を呼び捨てするなど、アイリスのスコール家ではあり得ない事だ。
「わたくしは皆様のご意見を代表して申し上げているだけよ? そもそも10年前に伝説の雨乞いの儀をご披露されたアイリス様でしたら、この様な少人数の前で歌われる事等、容易な事ではありませんこと?」
するとストーム家のリデルシアもスッと手を上げる。
「私も是非アイリス様のその素晴らしい歌声を聴いてみたいのですが……」
その言葉に他巫女達の期待も更に高まった。
もうこの辺りが潮時だとは思っているアイリスは、歌う事の承諾を得ようとアレクシスの許に向かって歩き出す。
しかし……その間にアレクシスは、再び彼らしくない言葉を発した。
「申し訳ないのだけれど、彼女の強力すぎる雨乞いの儀は、簡単に見世物に出来る程、軽はずみに行っていいものではないんだ。すまないけど、それは出来ない」
その瞬間、アイリスは足を一瞬止めた。
そのまま目を見開きながら、うっすらと開かれた唇は僅かに震えだす。
普段のアレクシスなら、この様な状況になれば面白がってアイリスを挑発しながら、この場で雨乞いの儀をやる様に仕向けてくるはず……。
だが今日のアレクシスは、その要望を間髪入れずに却下した。
当人であるアイリスの了承も一切得ずに……。
そのアレクシスの判断は、アイリスには絶対に引き受ける事など出来ないと、頭から断定した故の行動としか思えなかった。
それを理解した瞬間、アイリスの中に物凄い怒りが沸き上がる。確かに自分にとって10年前の出来事は相当なトラウマとなっている。だが、自分はそれに立ち向かえない程、弱い人間ではない。
しかし今のアレクシスの行動は、アイリスにはそれをこなす事が出来ないと勝手に判断し、まるで弱い人間だと決めつける事と同じだ。
再び勢いよく靴音を立てながら歩き出したアイリスは、皆を説得にかかっているアレクシスのもとに着くなり右腕をやや乱暴に掴み、自分の方へと振り向かせた。
「アレク。申し訳ないのだけれど、あなたの晴天の力を貸して頂けるかしら?」
アイリスのその言葉に今まで見た事がないくらい驚いた表情で、アレクシスが大きく目を見開いた。
同時に他巫女達もアレクシスの事を略称の上に敬称すら付けない呼び方をしたアイリスに驚き、固まってしまう。
「アイリス……。だけど……っ!」
「それともあなたの晴天の力では、私のような化け物じみた巫女力を抑える事は難し過ぎるのかしら?」
そう告げるアイリスには、つい先程まで貼り付けていた笑顔の仮面が、どこにも見当たらない。それどころか、いつも通りのアレクシスを煽る小生意気で挑発的な美し過ぎる笑みを意地悪そうに浮かべている。
そんなアイリスの様子にアレクシスは、盛大に息を吐く。
「まさか冗談だろ? 君如きの巫女力なんて僕になら簡単に抑え込められる」
そう言って、アレクシスもいつも通りの意地の悪い笑みを返す。
そのアレクシスの見た事もない表情に隣にいたカトレアが、目を見開いた。
「皆、どうやらアイリスは自慢の素晴らしい歌声を披露してくれる様だよ?」
アレクシスの言葉を合図にアイリスはその場で靴を脱ぎ、そのまま会場の見晴らしの良い窓際まで移動した。そして窓に背を向け、全員の方に向き直る。
今回は室内で行う為、大気を直に感じる事はあまり出来ないが、窓越しから微かに感じ取りながら、アイリスが瞳を閉じて意識を集中する。
すると……アイリスの背後の窓ガラスが一瞬で白く曇り出した。
同時に部屋の気温も少し下がる。
会場全体がやや肌寒さに包まれると、俯いたままアイリスがゆっくり歌い出す。
静かに立ち上がるその歌を胸の辺りで祈る様に手を組み、徐々に顔を上げながら天井に向かって捧げる様に歌い始めたアイリス。
狂うしい程、慈しむように歌われ出した歌詞だが……その繊細さとは裏腹にアイリスが選んだ今回の歌は『戦士の歌』だ。
出だしの切なさそうに紡ぎ出されたその歌声に感受性の豊かそうなティアドロップ家の令嬢達が、早くも涙ぐんでいる。
その歌声に惹きつけられる様に窓の外では雨雲が集まり始める。
つい先程までの爽やかすぎる程の青空は、いつの間にか灰色掛っていた。しかしその間からは、先程までの青空をチラリと顔を覗かせ、そこから後光のような光を地上に降り注いでいる。
しかし、急速に集まって来た真っ黒な雨雲に時折その光は遮られ、何度も地上に光と闇を交互に与え続けた。
その光と闇を窓越しに受けながら、アイリスが掌を上に向けた状態で両手を広げ、徐々に高める様に歌い上げて行く。
すると窓にパチパチと大きな雨粒がぶつかり出し、遠くの方でゴロゴロと雷の音が聞こえ始めた。
それを合図にようやくアレクシスが片手を上げて晴天の力を発動し出す。
そのアレクシスが上げる片手に合わせる様にアイリスが大きく息を吸い込んだ。
次の瞬間、それに抗う様にアイリスが体を大きく揺り動かし、全力で歌のサビ部分を叫ぶ様に歌い出す。その凄まじいエネルギーの塊のような歌声は、会場全体の空気をビリビリと震わせ、その場にいた全員に痺れる様な感覚を与えた。
同時に窓の外では、空全体がカーテンで覆いかぶされるように大量の雨が滝の様に一気に降り注ぐ。
まるで自身の身を削る様に紡がれるアイリスの歌声は、闘志を奮い立たせる戦士というよりも、特攻し命を燃やし尽くす覚悟を決めた激しい気性の戦士の様だ。
そのあまりにも激しい歌方をするアイリスと一瞬だけ目が合ってしまったカトレアは、その気迫に背中をぞくりとさせた。
そしてアイリスとの格の違いを嫌でも認めざる得ない威圧感を感じ、唇をぎゅっと噛みしめる。
その隣では無表情のアレクシスが、ひたすら晴天の力を発動させていた。
すると窓の外の薄黒い雨雲が、まるで開かれるカーテンの様にバックリと左右に退け始める。その下からは後光の射した薄暗い曇り空が現れた。
その光を浴びる様にアイリスが、最後のフレーズを歌い切る。
それと同時に今度はその薄暗い曇り空が開け、間から鮮やかな青空が現れた。
歌い切ったアイリスが一礼すると、建物の屋根から落ちる雨の雫の向こう側に見事な虹が現れた。
そのあまりにも見事な雨乞いの儀に言葉を失ってしまい、誰もが動けなくなる。
そんな中、アイリスはスッとアレクシス達の許へ戻り、先程脱いだ靴を履いた。
そして茫然としながらアイリスを見つめるカトレアに一言告げる。
「カトレア様? これでご満足頂けましたでしょうか?」
そして綺麗過ぎて恐怖さえ感じる程の美しい微笑みを向けた。
その瞬間、号泣しながらティアドロップ家の令嬢達が拍手を始める。
それを切っ掛けに他の巫女達も我に返り、盛大な拍手をアイリスに送った。
それに応える様にアイリスが何度もお辞儀をする。
もはやこの状況では、もう誰もアイリスの悪い噂など信じる者はいない。
この場にいる殆どの人間は、皆アイリスに魅了されてしまっているのだから。
その現実を未だに受け入れられないカトレアは、キッとアイリスに目を向ける。
「アイリス様、大変素晴らしい歌声でしたわ! ところでアレク様は、今回のこの素晴らしいご婚約者様の歌声をどう感じられましたか?」
その瞬間、アイリスは二人に背を向けたまま、一瞬だけ体を強張らせた。
そしてゆっくりアレクシスの方に目を向けると、そのアレクシスが口を開く。
しかし次の瞬間、全く予想もしていなかったパシンッという音が鳴り響いた。
「カトレア!! いい加減にしなさいっ!!」
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