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13.見過ぎ令嬢は憧れの令息の苦労を垣間見る
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不安そうな表情で彼が語る内容にクラウディアが動揺する。
『彼女たちは、僕のことを表面上でしか見ていない』
三年間も不必要に彼を見つめてしまっていた自分の行動もそれに該当した。
しかしフロリスは、なぜかクラウディアに対してしつこいとは感じていない様子だ。
それだけ温厚なフロリスが思わずきつい言い方をしてしまうほど、その令嬢はしつこかったのだろう。
だが世間は、その令嬢のしつこさよりも意外な一面を見せた彼のほうに注目したらしい。
「その時は騎士団長が令嬢宅まで謝罪する事態に発展してしまって……。以来、僕は彼女たちの理想像をなるべく崩さないよう振舞うことにしたんだ」
その話でフロリスに同情的な視線を向けたクラウディアは、先日の祝賀会で令嬢たちに囲まれていた彼の様子を思い出す。
絶え間ない笑みを浮かべてはいたが、今思うとどこか感情を置き忘れているような印象があった。
同時に上司である兄が、率先して彼を令嬢たちから救い出していた経緯も察してしまう。
過去に責任者である騎士団長が謝罪しなければならない事態を招いた罪悪感から、フロリスは笑顔の仮面が外せなくなってしまったのだろう。
それがますます群がってくる令嬢たちを増長させ、悪循環に陥っている。
我が道を行く兄クレストが、珍しく部下に対して面倒見のよい動きをしていたのは、フロリスの過去にそんな出来事があったからだろう。
手厳しい兄でも、当時フロリスに起こった理不尽な状況は同情せずにはいられなかったようだ。
そんなクレストも婚約前は、多くの令嬢たちに群がられていた。
だが兄の場合、温厚そうな印象は持ち合わせていない。
令嬢たちも冷たくあしらわれることを前提に兄にアプローチをしていたはずだ。
だが、見た目が穏やかそうな雰囲気のフロリスでは状況が変わってくる。
そっけない対応が予測できる兄と違い、優しげな彼が同じ動きをすれば、令嬢たちの心は酷く傷ついてしまう。
彼女たちは『温厚で紳士的なフロリス・シエルは、けして女性を邪険にしない』という勝手なイメージを彼に抱いているのだ。
そのため彼に突き放されるような態度をされてしまうと、ショックが大きい。
そんな勝手な思い込みでフロリスの人格を決めつけている令嬢たち。
しかし自分も彼女たちのように勝手な理想像を彼に押しつけてはいないだろうか。
そんな考えに陥ってしまったクラウディアは、今回新たな一面を見せてきた彼を改めて見やる。
今どきの若者らしい砕けた口調で話す彼。
夜会時では、あざとい仕草や策士的面を見せてきた彼。
意外にもハッキリと自分の意見を口にする彼。
それが令嬢たちの抱く『理想的な男性像』から外れた要素なのか、クラウディアには判断がつかない。
彼女にとって、フロリスを形成する全てが好ましいものにしか映らないからだ。
理想と違う動きをされたとしても、彼の新たな一面を知れたという喜びにしか感じられない。
そう考えると、クラウディアは本来のフロリスの姿に目を向けているほうだ。
しかし、自分の理想像を彼に追い求めてしまっている状況も否定はできない。
「ごめん……なさい……」
思わず口からこぼれた言葉にフロリスが不思議そうに首をかしげる。
「なぜクラウディア嬢が謝るの?」
「わたくしもフロリス様に自身の理想を勝手に押しつけていたので……」
「君は、ただ僕を見つめていただけなのだから、そんなことはないと思うけれど」
「ですが……自分の理想的な男性像としてフロリス様を見ておりました……」
「でも、さっき僕が厳しめなことを口にしても君は受けとめてくれたよね?」
「えっ?」
驚きでフロリス見やると、優しげな視線とぶつかる。
「僕が不快だと訴えたら、君はまず自分の発言内容を見直してくれただろう?」
「それは……実際にわたくしが口にした内容で不快にさせてしまったと感じたから……」
「でもね、大半の令嬢は『お優しいフロリス様に冷たくされた。悲しい』という反応をするんだ……。僕が優しく接しなければ彼女たちは、すぐに自分は被害者だと訴えてくる」
そう口にするフロリスは、何かを諦めきっているような笑みを浮かべていた。
その表情から『紳士的なフロリス・シエル』は、彼がやむを得ず演じていることが痛いほど伝わってくる。
「でも君は違う。確かに僕を過剰に見つめていたとは思うけれど……。君は僕と目が合うと、申し訳なさそうにすぐに視線を外し、その日はなるべく僕の視界に入らないように徹してくれていただろう? それはジッと見つめては僕が不快な思いをすると思ったから、そういう動きをしてくれたんだよね?」
「た、確かにそうですが……不躾な視線を過剰に送り続けていたことには変わりません……」
居たたまれない様子でうつむくクラウディアに、フロリスが柔らかい笑みを向ける。
「でもね、僕は君のその気遣いをとても好意的に感じたんだ」
「好意的……?」
「うん。だって殆どの令嬢が、僕の気持ちなどお構いなしに親密になりたいという自分の欲求を一方的に押しつけてくる中、君だけは違ったから……。控えめに好意を示してくる君の様子に僕はとても惹かれた。そして途中から、君に視線を向けられている時は、敢えて気づかないふりをすることにした」
そう言ってフロリスは悪戯めいた笑みを浮かべる。
「だってそうしないと君は目が合った瞬間、すぐに僕の視界から消えてしまうから。もっと自分を見つめてもらうには、気づかないふりをするしかないなかったんだよね」
「なっ……!」
茶目っ気たっぷりな様子でそう告げられたクラウディアが、またしても耳まで真っ赤になる。
そんな反応を見せる彼女に苦笑しながら、フロリスがゆっくりと口を開く。
「ごめんね、初の交流日にこんな重い話をしてしまって。でも、今話したことは、早い段階で君に伝えたかったことなんだ……」
どこか含みのある言い方をしてきたフロリスにクラウディアが、そっと目を合わせる。
「どうして僕が君を好きになったのか……それを伝えることはとても大切なことだと思ったから」
そのフロリスの言葉にクラウディアの心臓がドキリと跳ね上がる。
「でもかなり重苦しい空気になってしまったね……。次回は、楽しい雰囲気で過ごしやすいように外で会おうか?」
「外……ですか?」
「うん。一緒に買い物をしたり、美味しい物を食べたりして君との交流を深めたい。今回は一方的に僕のことについての話になってしまったから……今度はクラウディア嬢のことを教えてほしいな。例えば好みの食べ物やアクセサリーについてとか」
その瞬間、クラウディアの頭の中が『憧れのデート』という言葉で埋め尽くされる。
「どうかな? でもまだ外で会うことに抵抗があるなら、もう少し交流を深めてからでも――――」
「問題ございません! 是非、お願いいたします!」
またしても食い気味で返答してしまったクラウディアだが、嬉しさのあまり恥じらうことを忘れ、瞳をキラキラさせた。
その様子に驚くもフロリスは、すぐに破顔する。
「良かった! それじゃ、今からどんなところを回りたいか話し合おうか」
「はい!」
嬉々とした様子でクラウディアが、元気いっぱいな返事をする。
この時のクラウディアは、いつの間にかフロリスと普通に会話ができていることに全く気づいていなかった。
『彼女たちは、僕のことを表面上でしか見ていない』
三年間も不必要に彼を見つめてしまっていた自分の行動もそれに該当した。
しかしフロリスは、なぜかクラウディアに対してしつこいとは感じていない様子だ。
それだけ温厚なフロリスが思わずきつい言い方をしてしまうほど、その令嬢はしつこかったのだろう。
だが世間は、その令嬢のしつこさよりも意外な一面を見せた彼のほうに注目したらしい。
「その時は騎士団長が令嬢宅まで謝罪する事態に発展してしまって……。以来、僕は彼女たちの理想像をなるべく崩さないよう振舞うことにしたんだ」
その話でフロリスに同情的な視線を向けたクラウディアは、先日の祝賀会で令嬢たちに囲まれていた彼の様子を思い出す。
絶え間ない笑みを浮かべてはいたが、今思うとどこか感情を置き忘れているような印象があった。
同時に上司である兄が、率先して彼を令嬢たちから救い出していた経緯も察してしまう。
過去に責任者である騎士団長が謝罪しなければならない事態を招いた罪悪感から、フロリスは笑顔の仮面が外せなくなってしまったのだろう。
それがますます群がってくる令嬢たちを増長させ、悪循環に陥っている。
我が道を行く兄クレストが、珍しく部下に対して面倒見のよい動きをしていたのは、フロリスの過去にそんな出来事があったからだろう。
手厳しい兄でも、当時フロリスに起こった理不尽な状況は同情せずにはいられなかったようだ。
そんなクレストも婚約前は、多くの令嬢たちに群がられていた。
だが兄の場合、温厚そうな印象は持ち合わせていない。
令嬢たちも冷たくあしらわれることを前提に兄にアプローチをしていたはずだ。
だが、見た目が穏やかそうな雰囲気のフロリスでは状況が変わってくる。
そっけない対応が予測できる兄と違い、優しげな彼が同じ動きをすれば、令嬢たちの心は酷く傷ついてしまう。
彼女たちは『温厚で紳士的なフロリス・シエルは、けして女性を邪険にしない』という勝手なイメージを彼に抱いているのだ。
そのため彼に突き放されるような態度をされてしまうと、ショックが大きい。
そんな勝手な思い込みでフロリスの人格を決めつけている令嬢たち。
しかし自分も彼女たちのように勝手な理想像を彼に押しつけてはいないだろうか。
そんな考えに陥ってしまったクラウディアは、今回新たな一面を見せてきた彼を改めて見やる。
今どきの若者らしい砕けた口調で話す彼。
夜会時では、あざとい仕草や策士的面を見せてきた彼。
意外にもハッキリと自分の意見を口にする彼。
それが令嬢たちの抱く『理想的な男性像』から外れた要素なのか、クラウディアには判断がつかない。
彼女にとって、フロリスを形成する全てが好ましいものにしか映らないからだ。
理想と違う動きをされたとしても、彼の新たな一面を知れたという喜びにしか感じられない。
そう考えると、クラウディアは本来のフロリスの姿に目を向けているほうだ。
しかし、自分の理想像を彼に追い求めてしまっている状況も否定はできない。
「ごめん……なさい……」
思わず口からこぼれた言葉にフロリスが不思議そうに首をかしげる。
「なぜクラウディア嬢が謝るの?」
「わたくしもフロリス様に自身の理想を勝手に押しつけていたので……」
「君は、ただ僕を見つめていただけなのだから、そんなことはないと思うけれど」
「ですが……自分の理想的な男性像としてフロリス様を見ておりました……」
「でも、さっき僕が厳しめなことを口にしても君は受けとめてくれたよね?」
「えっ?」
驚きでフロリス見やると、優しげな視線とぶつかる。
「僕が不快だと訴えたら、君はまず自分の発言内容を見直してくれただろう?」
「それは……実際にわたくしが口にした内容で不快にさせてしまったと感じたから……」
「でもね、大半の令嬢は『お優しいフロリス様に冷たくされた。悲しい』という反応をするんだ……。僕が優しく接しなければ彼女たちは、すぐに自分は被害者だと訴えてくる」
そう口にするフロリスは、何かを諦めきっているような笑みを浮かべていた。
その表情から『紳士的なフロリス・シエル』は、彼がやむを得ず演じていることが痛いほど伝わってくる。
「でも君は違う。確かに僕を過剰に見つめていたとは思うけれど……。君は僕と目が合うと、申し訳なさそうにすぐに視線を外し、その日はなるべく僕の視界に入らないように徹してくれていただろう? それはジッと見つめては僕が不快な思いをすると思ったから、そういう動きをしてくれたんだよね?」
「た、確かにそうですが……不躾な視線を過剰に送り続けていたことには変わりません……」
居たたまれない様子でうつむくクラウディアに、フロリスが柔らかい笑みを向ける。
「でもね、僕は君のその気遣いをとても好意的に感じたんだ」
「好意的……?」
「うん。だって殆どの令嬢が、僕の気持ちなどお構いなしに親密になりたいという自分の欲求を一方的に押しつけてくる中、君だけは違ったから……。控えめに好意を示してくる君の様子に僕はとても惹かれた。そして途中から、君に視線を向けられている時は、敢えて気づかないふりをすることにした」
そう言ってフロリスは悪戯めいた笑みを浮かべる。
「だってそうしないと君は目が合った瞬間、すぐに僕の視界から消えてしまうから。もっと自分を見つめてもらうには、気づかないふりをするしかないなかったんだよね」
「なっ……!」
茶目っ気たっぷりな様子でそう告げられたクラウディアが、またしても耳まで真っ赤になる。
そんな反応を見せる彼女に苦笑しながら、フロリスがゆっくりと口を開く。
「ごめんね、初の交流日にこんな重い話をしてしまって。でも、今話したことは、早い段階で君に伝えたかったことなんだ……」
どこか含みのある言い方をしてきたフロリスにクラウディアが、そっと目を合わせる。
「どうして僕が君を好きになったのか……それを伝えることはとても大切なことだと思ったから」
そのフロリスの言葉にクラウディアの心臓がドキリと跳ね上がる。
「でもかなり重苦しい空気になってしまったね……。次回は、楽しい雰囲気で過ごしやすいように外で会おうか?」
「外……ですか?」
「うん。一緒に買い物をしたり、美味しい物を食べたりして君との交流を深めたい。今回は一方的に僕のことについての話になってしまったから……今度はクラウディア嬢のことを教えてほしいな。例えば好みの食べ物やアクセサリーについてとか」
その瞬間、クラウディアの頭の中が『憧れのデート』という言葉で埋め尽くされる。
「どうかな? でもまだ外で会うことに抵抗があるなら、もう少し交流を深めてからでも――――」
「問題ございません! 是非、お願いいたします!」
またしても食い気味で返答してしまったクラウディアだが、嬉しさのあまり恥じらうことを忘れ、瞳をキラキラさせた。
その様子に驚くもフロリスは、すぐに破顔する。
「良かった! それじゃ、今からどんなところを回りたいか話し合おうか」
「はい!」
嬉々とした様子でクラウディアが、元気いっぱいな返事をする。
この時のクラウディアは、いつの間にかフロリスと普通に会話ができていることに全く気づいていなかった。
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