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★オマケ★
見た目が気にくわないと嘘を付いていた夫のその後
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窓から差し込む眩しい日の光でセリアネスは、ゆっくりと瞳を開いた。
どうやらいつもの朝食の時間は、とうに過ぎてしまったようだ。
寝過ごした事を認識したセリアネスは、重くなってくる瞼に気合を入れるように目元に力を込め、再度目を見開いた。
そしてそのまま起き上がろうとしたのだが……何故か身動きが取れない。
何故そのような状況になってしまっているのか、すぐにその原因を理解したセリアネスは、自分の首筋部分に顔を埋めるように絡みついているその元凶の夫から身体を離そうと試み始める。
しかし、本日の夫ライナスのホールドは何故か強固だった……。
毎朝セリアネスが目覚めると必ずと言っていい程、後ろからセリアネスを抱きしめるように眠る夫ライナスのこの寝方は、挙式したその晩から当たり前のように続いていた。
そして毎回、妻の美しいプラチナブロンドの髪を堪能するようにその首筋に自身の鼻先を埋めてくるのだ。
そうなってしまった経緯は、恐らく婚約者時代にセリアネスがバッサリと髪を切り落とした事が、ライナスにとって相当トラウマになってしまっている事を物語っている……。
そんな状況で毎朝目覚めるセリアネスだが、本日も朝一番にやや呆れながら深く息を吐く。
「ライナス様。起きていらっしゃいますよね?」
「いや、まだ寝ている……」
「寝ている方は返事などなさらないはずです」
「………………」
「今から寝たふりをなさっても無駄ですから。そんな事よりそろそろ起床したいのですが、両腕の力を緩めて頂けませんか?」
「断る」
妻の要望を即答で拒否したライナスは、更にセリアネスの襟足部分に顔を埋め出す。そんな夫の態度に慣れているセリアネスは、一度その拘束から逃れる事を諦めかける。しかし、このまま自分達が起床しなければ、身の周りの世話をしてくれている使用人達の仕事にも支障が出てしまう事も十分理解していた。
夫の気まぐれで、使用人達がこなす日々のルーティンワークを狂わす訳にはいかない。
「ライナス様……。いい加減になさってください」
「昨日はリシウス兄上より大量の確認書類を寄越された所為で、寝不足なのだ……。もう少し寝かせろ」
「ならばお一人で寝坊なさればよろしいのでは?」
「俺は繊細な人間だから、普段と同じ状況下でないと、なかなか寝付けない」
「どの口がそのような事をおっしゃるんですか……。ライナス様が繊細とは初耳なのですが?」
「俺は生まれた時から繊細だ……」
まるで口から生まれたたかのように屁理屈をこねながら、自身に絡みついたまま再び眠りに落ちようとしている夫の状態にセリアネスは、何かを決意したように小さく息を吐いた。
「わかりました。それならば私も自分なりに繊細なライナス様を労う事にします」
そう言って、セリアネスはライナスの胸元から少し上に這い出ると、ちょうどライナスの頭部がセリアネスの胸の辺りに位置付いた。そのライナスの頭部を両手で優しく抱え込むようにセリアネスは抱きしめる。
そんな妻の予想外の行動に胸元のライナスが驚きから瞳を大きく見開き、顔を上げた。
「セリ……どうした? 普段のお前ならば、このような反応など絶対にしな……」
驚きながら、それでも珍しく自分を甘えさせてくれそうな妻の態度に仄かな期待を抱き始めたライナスだったが……次の瞬間、それは大きな間違いだったと気付かされる。
先程、優しく包み込むように自分の頭部に廻された妻の両腕が、何故か容赦がない程の凶悪な力を込め始めたからだ。
「ちょっ……待てっ!! セリ!! く、首が……首が折れる!!」
「折らなければ今の現状をご理解頂けないようなので、強行手段を取らせて頂きました」
「強行手段!? いや、この状況はもう夫を絞め殺しに掛かっているだろっ!!」
「いっそサクッと締めて差し上げた方がよろしいかと思いまして」
「いいわけないだろ!! 真顔で言うのはやめろ!! お前が言うと全く冗談に聞こえないぞ!?」
優秀な騎士を輩出しているリアクール家の三女でもあるセリアネスは、父や兄弟達と同様に優秀な騎士でもある。そんな妻がギリギリといたぶるように頭部を締めに掛かってきた為、その痛みに耐えかねたライナスが両腕でガッチリとホールドしていたセリアネスの腰を解放する。それと同時にセリアネスの方もライナスの頭部を解放した。
「危なかったですね。もう少し遅ければ危うくライナス様の首をへし折る所でした」
「朝っぱらから夫に締め技をかけるのは、やめろ!!」
「先に締め技を掛けてきたのはライナス様ではありませんか……」
「俺のは締め技ではなく、妻に対する愛情表現の一つとしての抱擁だ!!」
「随分、煩悩と欲にまみれた愛情表現ですね……」
「お前、もう少し夫である俺を労ってもいいと思うぞ?」
「おかしいですね。私なりに日々労っているつもりなのですが……」
寝台の上で胡坐をかいて乱暴に頭をガシガシと掻き、ブツブツと文句を言うライナスとは対照的にセリアネスは、ヒラリと寝台から降りて隣の衣裳部屋の方へと足を向けた。
「さぁ、ライナス様も早くお支度を!」
「お前なぁ……。先程も言ったが、俺は昨日リシウス兄上から送りつけられた大量の書類の処理で、あまり寝ていないのだぞ? 大体、昨夜俺が寝台に潜り込んだ時、お前は一瞬目を覚ましていたように思えたのだが?」
「ええ。確か……夜中の3時頃にご就寝されてましたよね?」
「それを知っていて支度を急かすのか!?」
「以前、あまりにもご公務を溜め込まれた際、三日間寝ずに取り組まれていた事がございましたよね? その時に比べたら、今回は睡眠時間を三時間も得られておられますので、ライナス様にとっては余裕かと……」
「お前、やはり俺の事をもう少し労え!!」
不満ばかりを訴えて全力で構って欲しいアピールをしてくる夫を尻目にセリアネスは、キビキビと衣裳部屋の方へ向かい、身支度を始めようとする。
そんな妻の後ろ姿を見つめながら、寝台の上のライナスは胡坐をかいたまま盛大に項垂れた。
「ライナス様、早くお支度を!」
「分かっている……」
「本日のお仕事を早く開始して終わらせれば、ゆっくり出来るお時間が得られますよ?」
「そうだな……」
「そうすれば本日は早くお休みになれます」
「だと、いいな……」
「お仕事さえ終わらせて頂ければ、いくらでも労いますので」
「本当だなっ!?」
つい先程まで項垂れていたライナスが、急に水を得た魚のように勢いよく顔を上げたので、一瞬セリアネスがビクリと反応する。だがすぐに呆れた表情を浮かべ、一言だけ釘を刺した。
「ええ。お約束します。ただし、対応可能な内容での労い方法になりますが」
「そこは問題ない! なんせこの伯爵家の未来にとって必須行為の一つの労い方法になる!」
「もうそのご返答で嫌な予感しかないのですが……」
「だが先程いくらでも労うと言ったのはお前だぞ?」
「はいはい。ですが、その前に現在溜め込まれているお仕事を終わらせてからにしましょうね……」
「約束だからな!? 絶対だぞ!!」
何度も言質を取ってきたライナスは寝台から飛び降り、先程とは打って変わって素早く自身の衣裳部屋へと退室して行った。その様子を唖然としながら見つめていたセリアネスだが……。流石にライナスとは幼少期からの付き合いなので、この後どういう行動に出て、どういう結果をもたらすのか大方予想が付いてしまった。
「リシウス殿下にもう少し処理する仕事を追加して頂くようお願いしてみよう……」
少し前までセリアネスの見た目が気に食わないと言い張っていたライナスだが……。
素直に容姿を好ましく思っていると認めた後も、セリアネスに対しては過剰に絡んでくるその鬱陶しい態度は変わらないので、この先セリアネスの苦労はまだまだ続く事になる。
そんな二人はこの後、立て続けに三人の息子達に恵まれる事になるのだが……。
面白がった夫が、大人げなく全力で幼い息子達三人と妻を取り合う大攻防戦を繰り広げるのは、また別の話である。
どうやらいつもの朝食の時間は、とうに過ぎてしまったようだ。
寝過ごした事を認識したセリアネスは、重くなってくる瞼に気合を入れるように目元に力を込め、再度目を見開いた。
そしてそのまま起き上がろうとしたのだが……何故か身動きが取れない。
何故そのような状況になってしまっているのか、すぐにその原因を理解したセリアネスは、自分の首筋部分に顔を埋めるように絡みついているその元凶の夫から身体を離そうと試み始める。
しかし、本日の夫ライナスのホールドは何故か強固だった……。
毎朝セリアネスが目覚めると必ずと言っていい程、後ろからセリアネスを抱きしめるように眠る夫ライナスのこの寝方は、挙式したその晩から当たり前のように続いていた。
そして毎回、妻の美しいプラチナブロンドの髪を堪能するようにその首筋に自身の鼻先を埋めてくるのだ。
そうなってしまった経緯は、恐らく婚約者時代にセリアネスがバッサリと髪を切り落とした事が、ライナスにとって相当トラウマになってしまっている事を物語っている……。
そんな状況で毎朝目覚めるセリアネスだが、本日も朝一番にやや呆れながら深く息を吐く。
「ライナス様。起きていらっしゃいますよね?」
「いや、まだ寝ている……」
「寝ている方は返事などなさらないはずです」
「………………」
「今から寝たふりをなさっても無駄ですから。そんな事よりそろそろ起床したいのですが、両腕の力を緩めて頂けませんか?」
「断る」
妻の要望を即答で拒否したライナスは、更にセリアネスの襟足部分に顔を埋め出す。そんな夫の態度に慣れているセリアネスは、一度その拘束から逃れる事を諦めかける。しかし、このまま自分達が起床しなければ、身の周りの世話をしてくれている使用人達の仕事にも支障が出てしまう事も十分理解していた。
夫の気まぐれで、使用人達がこなす日々のルーティンワークを狂わす訳にはいかない。
「ライナス様……。いい加減になさってください」
「昨日はリシウス兄上より大量の確認書類を寄越された所為で、寝不足なのだ……。もう少し寝かせろ」
「ならばお一人で寝坊なさればよろしいのでは?」
「俺は繊細な人間だから、普段と同じ状況下でないと、なかなか寝付けない」
「どの口がそのような事をおっしゃるんですか……。ライナス様が繊細とは初耳なのですが?」
「俺は生まれた時から繊細だ……」
まるで口から生まれたたかのように屁理屈をこねながら、自身に絡みついたまま再び眠りに落ちようとしている夫の状態にセリアネスは、何かを決意したように小さく息を吐いた。
「わかりました。それならば私も自分なりに繊細なライナス様を労う事にします」
そう言って、セリアネスはライナスの胸元から少し上に這い出ると、ちょうどライナスの頭部がセリアネスの胸の辺りに位置付いた。そのライナスの頭部を両手で優しく抱え込むようにセリアネスは抱きしめる。
そんな妻の予想外の行動に胸元のライナスが驚きから瞳を大きく見開き、顔を上げた。
「セリ……どうした? 普段のお前ならば、このような反応など絶対にしな……」
驚きながら、それでも珍しく自分を甘えさせてくれそうな妻の態度に仄かな期待を抱き始めたライナスだったが……次の瞬間、それは大きな間違いだったと気付かされる。
先程、優しく包み込むように自分の頭部に廻された妻の両腕が、何故か容赦がない程の凶悪な力を込め始めたからだ。
「ちょっ……待てっ!! セリ!! く、首が……首が折れる!!」
「折らなければ今の現状をご理解頂けないようなので、強行手段を取らせて頂きました」
「強行手段!? いや、この状況はもう夫を絞め殺しに掛かっているだろっ!!」
「いっそサクッと締めて差し上げた方がよろしいかと思いまして」
「いいわけないだろ!! 真顔で言うのはやめろ!! お前が言うと全く冗談に聞こえないぞ!?」
優秀な騎士を輩出しているリアクール家の三女でもあるセリアネスは、父や兄弟達と同様に優秀な騎士でもある。そんな妻がギリギリといたぶるように頭部を締めに掛かってきた為、その痛みに耐えかねたライナスが両腕でガッチリとホールドしていたセリアネスの腰を解放する。それと同時にセリアネスの方もライナスの頭部を解放した。
「危なかったですね。もう少し遅ければ危うくライナス様の首をへし折る所でした」
「朝っぱらから夫に締め技をかけるのは、やめろ!!」
「先に締め技を掛けてきたのはライナス様ではありませんか……」
「俺のは締め技ではなく、妻に対する愛情表現の一つとしての抱擁だ!!」
「随分、煩悩と欲にまみれた愛情表現ですね……」
「お前、もう少し夫である俺を労ってもいいと思うぞ?」
「おかしいですね。私なりに日々労っているつもりなのですが……」
寝台の上で胡坐をかいて乱暴に頭をガシガシと掻き、ブツブツと文句を言うライナスとは対照的にセリアネスは、ヒラリと寝台から降りて隣の衣裳部屋の方へと足を向けた。
「さぁ、ライナス様も早くお支度を!」
「お前なぁ……。先程も言ったが、俺は昨日リシウス兄上から送りつけられた大量の書類の処理で、あまり寝ていないのだぞ? 大体、昨夜俺が寝台に潜り込んだ時、お前は一瞬目を覚ましていたように思えたのだが?」
「ええ。確か……夜中の3時頃にご就寝されてましたよね?」
「それを知っていて支度を急かすのか!?」
「以前、あまりにもご公務を溜め込まれた際、三日間寝ずに取り組まれていた事がございましたよね? その時に比べたら、今回は睡眠時間を三時間も得られておられますので、ライナス様にとっては余裕かと……」
「お前、やはり俺の事をもう少し労え!!」
不満ばかりを訴えて全力で構って欲しいアピールをしてくる夫を尻目にセリアネスは、キビキビと衣裳部屋の方へ向かい、身支度を始めようとする。
そんな妻の後ろ姿を見つめながら、寝台の上のライナスは胡坐をかいたまま盛大に項垂れた。
「ライナス様、早くお支度を!」
「分かっている……」
「本日のお仕事を早く開始して終わらせれば、ゆっくり出来るお時間が得られますよ?」
「そうだな……」
「そうすれば本日は早くお休みになれます」
「だと、いいな……」
「お仕事さえ終わらせて頂ければ、いくらでも労いますので」
「本当だなっ!?」
つい先程まで項垂れていたライナスが、急に水を得た魚のように勢いよく顔を上げたので、一瞬セリアネスがビクリと反応する。だがすぐに呆れた表情を浮かべ、一言だけ釘を刺した。
「ええ。お約束します。ただし、対応可能な内容での労い方法になりますが」
「そこは問題ない! なんせこの伯爵家の未来にとって必須行為の一つの労い方法になる!」
「もうそのご返答で嫌な予感しかないのですが……」
「だが先程いくらでも労うと言ったのはお前だぞ?」
「はいはい。ですが、その前に現在溜め込まれているお仕事を終わらせてからにしましょうね……」
「約束だからな!? 絶対だぞ!!」
何度も言質を取ってきたライナスは寝台から飛び降り、先程とは打って変わって素早く自身の衣裳部屋へと退室して行った。その様子を唖然としながら見つめていたセリアネスだが……。流石にライナスとは幼少期からの付き合いなので、この後どういう行動に出て、どういう結果をもたらすのか大方予想が付いてしまった。
「リシウス殿下にもう少し処理する仕事を追加して頂くようお願いしてみよう……」
少し前までセリアネスの見た目が気に食わないと言い張っていたライナスだが……。
素直に容姿を好ましく思っていると認めた後も、セリアネスに対しては過剰に絡んでくるその鬱陶しい態度は変わらないので、この先セリアネスの苦労はまだまだ続く事になる。
そんな二人はこの後、立て続けに三人の息子達に恵まれる事になるのだが……。
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