雑談する二人

ハチ助

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【紳士的な見合い相手】

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【★15000文字程の短編作品感覚でお読みください★】



 初夏を感じさせるやや強い日差しを日傘で防ぎながら、小さなボートに乗っていたリリアナは、急に大きくボートが方向転換をした事に驚く。

「きゃっ!」
「失礼。ですが、漕ぎ手としては自信がありますので、どうかご安心ください」
「は、はい……」

 驚いたリリアナの様子を楽しむように大人の余裕を感じさせる笑みをにっこりと浮かべてボートを漕いでいる男性をリリアナは、こっそりと観察する。

 柔らかい印象を与えてくる赤茶色の襟足が少し長いサラサラな髪を黒いリボンで結びまとめ、目が覚めるような鮮やかな濃い青の瞳をした青年は、この辺一帯を領地として管理しているパーキンス子爵家の長男アルバートだ。
 現在22歳の彼は、今年19歳になったばかりのリリアナより3つ年上である。
 ちょうど一カ月程前にリリアナは、縁談という形で初めてこのアルバートという青年と顔合わせをした。

 そんなリリアナは、父の代で商家から成り上がった男爵家の令嬢である。
 主に酒類の取引をメインとしているリリアナの家は、王家にも商品を卸す事も多く、父親がまだ未婚だった頃に上質のワインを広めた功績を称えられ、一代限りの男爵位を賜ったそうだ。

 その事を切っ掛けに社交界に乗り出し、娘のリリアナを貴族へと嫁がせようと王侯貴族の通う女学校に通わせたのだが……。何とリリアナがに在学中に趣味で書いた小説が、たまたま出版社の人間の目に留まり、わずか17歳で女流作家としてデビューを果たした関係で、この年齢になるまで結婚に関して、そこまで両親から口うるさく言われる事はなかった。

 もし万が一、父親に何かがあって男爵家から平民になってもリリアナには、しっかり者の兄がすでに家督を継ぐ準備をしている為、商家として十分やっていける状態だ。

 しかし父親は出来れば自分が爵位を持っている間に娘を貴族に嫁がせたいと言う野心も少なからずあった。そんな父の願いを出来れば叶えたいとリリアナは思っていた為、今回の子爵令息であるアルバートとの縁談を現在前向きに検討している最中である。

 対するアルバートも15歳から18歳までの間、王侯貴族専門の王立士官学校で三年間学んだ後、すぐに野盗や山賊などを捕縛する事をメインとしている王家直属の第三騎士団に入隊。そこから4年間、仕事に没頭し過ぎて婚期を逃していると言う状態だった。

 ただこちらは子爵位の為、一代限りで終わる爵位ではない。
 成人後、仕事にかまけすぎて浮いた話が一切ない息子の状態にお家存続の危機を感じた現パーキンス子爵は、領内にまだ婚約者が決まっていない未婚の令嬢がいないか確認したところ、同じように行き遅れ気味なリリアナが見出され、一カ月前に二人の見合いの場が設けられたのだ。

 だが、お互い社交界でも顔を一度も合わせた事がない状態から、結婚までの期間が短い婚約をいきなり交わす事は、リリアナにとってややハードルが高かった……。
 その為、二が月程お互いを知る期間を設けて欲しいと先方に申し出たところ、パーキンス家側が快く承諾してくれた為、このように定期的に交流を重ねているのが今の現状だ。

 ちなみにアルバートは、すでに第三騎士団を退団し、現状は家督を継ぐ為に現子爵である父親から領地経営の指導を受けているらしい。
 そんなアルバートは元騎士である為、180センチ以上もある長身だが着やせするタイプなのか、あまり筋肉質な体型には見えず、威圧的な雰囲気も無ければ一見優男にも見えてしまう。

 現状リリアナに対しても穏やかな口調で話しかけてくれる上にエスコートも非常にスマート。常に丁寧な接し方をしてくれるので、誠実さも感じられる。その為、騎士特有の粗暴な様子は一切なく、とても紳士的な青年であった。

 しかし、リリアナはそんな紳士的なアルバートとの婚約に踏み切る事をやや躊躇していた……。
 自分に対し常に紳士的であり、誠実そうな人柄でありながらもどこか茶目っ気のある冗談も言える社交的そうなアルバート。
 だが、それはどこか無理をしているような感じを抱く事があったからだ。

 アルバートが所属していた王家直属の第三騎士団は、特攻の要の部隊でもあり、血気盛んな青年騎士が多い。そんな部隊に所属していた男性が、このような穏やかな面しか見せて来ないと言う部分が、どうもリリアナには引っ掛かった。

 かと言って、アルバートが後ろめたさから、故意にその面を隠しているという嫌な雰囲気は一切感じられない。どちらかと言うと、リリアナを気遣って粗暴な面を見せないようにしてくれているのでは、と何故か勘づいてしまっていたのだ。

 もしそうであれば、リリアナは結婚後も一生アルバートに気を遣わせる人生を背負わせてしまうかもしれない……。
 執筆業を生業なりわいとしているリリアナは、どうも人間観察眼が冴えてしまい、相手が隠そうとしている部分にすぐに気付いてしまう。

 そんな見合い相手の本心が垣間見える状況がないかと、アルバートを観察していたリリアナだが、急に目の前に広がっていた湖全体の風景が小窓から覗いているような感覚になった事に驚き、ボートの進行方向へと振り返る。

 どうやら湖から入れる横穴のような場所にアルバートがボートを進み入れたらしい。慌てて日傘を閉じて、向かいでボートを漕いでいるアルバートに目を向けると、ニコリと笑みを返された。

「こちらは我がパーキンス家が管理する村の一つ、イーベル村内にある石橋の下になります。何でもここ一帯だけ地盤の土が柔らかいそうで、湖の水で土壁が削られたようです。その影響でこのような洞窟的な横穴が出来てしまったそうなのですが……よろしければ、奥の方へ目を向けて頂けますか?」

 そう言って、ゆっくりとボートを進めていたアルバートが、リリアナに再び進行方向に目を向けるよう促した。すると……薄暗い洞窟内の石壁でところどころ青白く光る箇所があり、それが何とも言えない幻想的な光景を生み出していた。

「まぁ……。なんて美しい光景なの! アルバート様、何故このように洞窟内の一部が光っているのですか?」
「我が領内に『月光石』という珍しい鉱石が採掘出来る鉱山がある事はご存知でしょうか?」
「ええ。確か月の光を吸収して暗闇で淡い光を発する珍しい石ですよね? 現在王都のご婦人方の間で装飾品として人気のある……」
「この湖は、ちょうどその月光石が採れる鉱山付近から湧き出た水が流れて出来た湖でして。微量ながらその石の発光成分がこの湖にも溶け込んでいる状態なのです。それが流れついた先の鉱物に新たに付着すると、このような状態になるそうですよ」
「では夜になると、この湖の底にある石に付着したその発光成分が光って、更に幻想的な風景が堪能出来ると言う事でしょうか?」
「それが残念な事にこの湖はかなり深い為、水面からは底に沈んでいる石に付着した発光成分には月明かりが届かず、光らないのです……。ですが、この横穴に関しては、先程通過した橋下付近に一部光が差し込む隙間がある為、そこから入った月の光が湖面に反射して、この洞窟内に付着している発光成分が反応するみたいです」

 そう言ってアルバートが横穴内全体を見回す様に視線を巡らせた。それに促されるようにリリアナもその幻想的な光景を堪能する。

「なるほど。ではここが光るのは月光石の発光成分が付着した事で、このような幻想的な風景を生み出しているのですね」
「はい。その通りです。ですが、ここで光っている石は月光石自体ではないので、採掘しても一週間くらいでその付着した成分が取れてしまい、交易品にはならないのですが……。ただ最近、ここが観光スポットとして注目はされ始めてはいます」
「確かにこちらは避暑地としては気候がとても快適ですし、このような幻想的な光景が見られる場所が近くにあれば、良い観光スポットになりそうですわね」
「まぁ、このイーベル村は閑散とし過ぎているので、宿泊場所としては昨日王都からお越しの際、この村の前に立ち寄ったケルン村の方で盛り上げていく予定ですが」

 そう語ったアルバートは、両手に持っていたオールから手を離す。
 どうやらしばらくこの洞窟内の幻想的な光景を楽しむ為、ここに留まってくれるようだ。

 ちなみに現在リリアナは、この湖付近にあるパーキンス子爵家所有の別荘に昨日から兄と共に招かれ、5日程滞在する予定だ。その為、今回はリリアナとアルバートの交流だけでなく、両家の親睦を深める機会としての意味合いもあり、将来的に家督を継ぐリリアナの兄も招かれているのだ。

 そんなパーキンス子爵家が持つこの辺一帯の領地は、夏は爽やかな気候になる為、避暑地として貴族達に人気があるのだが、これと言って見どころになる場所はこの湖くらいしかない。

 そしてその湖に一番近い村がこのイーベル村なのだが、この村は湖周辺の別荘が建ち並ぶエリアから王都方面に行き来する間の小休憩所や護衛の手配所的な場所になる為、歓楽街的な賑やかさなどないド田舎村である。

 だが、そんな村の唯一の見どころスポットが、今二人が訪れているこの青白く幻想的に光るこの湖に面した横穴であり、現在観光スポットとして王都では密かに話題となっている。奥に視線を向ければ仄かに青白く光る幻想的な風景が、横穴の入り口に視線を向けるとまるで暗がりの部屋にある小窓から色鮮やかな美しい湖の風景が楽しめる。そんな入り口からは、涼やかな風が入って来て気持ちが良い。

「こちらは観光名所として、大々的に宣伝をされないのですか?」
「実はもうすでに王都の方では売り込み済みなのです。特にある年齢層のご令嬢方の間では、かなり良い評判が広まっております。今はまだ時期的に少し早いのですが、あと一カ月もすればケルン村の宿泊施設を利用されたお年頃の貴族令嬢や裕福な商家のご令嬢方が、お忍びでお越しくださる時期になりますね」
「若い年代の女性に人気なのですか?」

 アルバートの説明から、何故か一定年齢層の女性に特化した観光名所のように宣伝をしているように聞こえたリリアナは、不思議そうに首を傾げる。
 すると、いつも穏やかで紳士的な笑みを浮かべているアルバートが、最近たまに見せてくれるようになった悪戯小僧のような笑みを浮かべた。

「実はこの場所は――――」

 アルバートが勿体ぶるようにゆっくりとした口調で語ろうとしたその時……。
 その後ろで何かが『ポチャン』という音をたて、それが洞窟内にこだまする。

「「えっ?」」

 あまりにもこの空間に相応しくないその音を立てた元凶が何か、アルバートは自身の背後の水面に向けて目を凝らし始める。
 すると、先程潜り抜けてきた石橋と岸の間に出来ている1メートル程の隙間から、きらりと光る糸のような物が垂れ下がっている事が、リリアナの位置から確認出来た。同時に水面に目を凝らしていたアルバートの方もプカプカと浮かぶ鳥の羽根を確認した後、盛大にため息をつく。

「釣り糸か……。全く! ここは二年前から、釣りは禁止区域となっているのに!」

 珍しく忌々しげに眉間に皺を寄せているアルバートの表情にリリアナが、思わず口元に手を当てて苦笑する。すると、アルバートが不思議そうにリリアナに問い掛けてきた。

「リリアナ嬢? どうされましたか?」
「いえ、その……。アルバート様が、そのような不快そうな表情をされたのを初めて拝見しましたので、つい物珍しくて……」
「これは失礼を。ですが、ここでの魚釣りは禁止だと、村人には厳重に注意を呼び掛けていたにもかかわらず、まだ守っていない輩がいたのかと思うと、つい……」
「ふふ! ですが、禁止にしてしまった分、ここでは立派なお魚が釣れる可能性が高いのでは? 恐らく釣り糸を垂らされた方もきっと、その事に気付かれたのでしょうね」
「それでもルール違反にはなりますけれどね……」

 何故か楽しそうに禁止行為をしている人間を擁護し始めたリリアナにアルバートが、困ったような笑みを浮かべる。だが、その表情はどこか優しげだ。
 そんな和やかな雰囲気で会話を楽しんでいた二人だが……。
 突如、その雰囲気を壊すような賑やかな声が、石橋の上から響き始める。

「ああー!! リクス、ダメなんだー!! ここ、二年前にお魚釣りは禁止になったのに釣りしてるー!!」
「バカ! デカい声出すなよ!! 誰かに見つかったら怒られんだろう!?」
「もうすでに私に見つかっているからね!! いーけないんだぁー、いけないんだぁー!」
「だぁぁぁぁー!! もう分かった! やめる! 釣り、やめるから!! でも……でも一回だけ! 一回だけ試めしに釣りさせて?」
「えー……。それ見逃したら、私も共犯になっちゃうじゃない……」
「一回だけだって! もし魚が釣れたらお前にやるから!!」
「でもそれって、リクスが何の為にお魚釣りしているか分からなくなるよ? そもそも自分がお魚食べたいから、怒られるのを覚悟で当りが良さそうなここで釣りをしているんだよね? 釣れたお魚を私にあげたら、リクスは食べられないよ?」
「安心しろ。俺が釣った魚をお前にやって、お前がそれを調理したら、俺が食う」
「ちっとも安心出来ないよ!! 私、何の得にもなってないじゃん!! むしろ損しているし!!」
「いいじゃねぇーかぁー……。一回! 一回だけ何が釣れるか試させて?」
「ねぇ、前々から思っていたのだけれど、リクスって、釣り下手くそだよね? この前もボウズだったし……。でもモリ突きだと一発で仕留められるよね? 今後は釣りじゃなくて、モリでお魚取った方がいいと思うよ?」
「うるせぇー!! たとえ下手くそでも俺は釣りが好きなんだよ!!」
「いっつも途中で寝ちゃって餌だけ取られているのに?」
「お前……。何でその事、知ってんだよ……」
「村中で有名だよ? リクス、すぐ居眠りするから魚釣ってるんじゃなくて、魚に餌やってるんじゃないかって」
「くっそぉぉぉぉー!! 誰だよ!? そんな事言いふらしてんのは!!」
「主にティクス兄?」
「あんのクソ兄貴めぇぇぇぇー!!」

 まだ10代の若者だろうか……。
 すでに大人並の声変わりをしている少年らしき声と、少し高めで可愛らしい少女の声での賑やかな会話が石橋の上から聞こえてきた。橋の下にいるリリアナ達には、ここが空洞になっているからなのか、二人の声がよく聞き取れる。
 だが、その二人の会話を聞いたアルバートは、何故か盛大に項垂れた。

「まいったな……。よりにもよって上にいるのはリクス達かぁ……」
「アルバート様のお知り合いの方達なのですか?」
「まぁ、知り合いといえば知り合いですかね……。少年の方はこのイーベル村の村長の次男坊で昔から、かなりの悪童でして……。そして恐らく一緒にいるのは、彼の幼馴染のエナと言う少女ですね。毎回、彼の悪戯に巻き込まれている真面目な子です」
「ふふ! 巻き込まれていると言っても今の会話からだと、とても仲良しそうな二人に感じられますけれど」
「あいつらは、そんな可愛らしい存在ではないですよ? 特に少年の方は」

 そう言って二人がいると思われる頭上の石橋を見上げたアルバートが、呆れ気味に苦笑する。すると再びリクスの不満げな声が頭上から降ってきた。

「大体、何でわざわざここを釣り禁止区域にすんだよ……。ここ、丁度魚が隠れやすい場所だから、釣り糸垂らした入れ食い状態で釣れるって昔、兄ちゃんから聞いた事あんだけど」
「何でって……。だって今、王都の女の子達の間では、この橋の下で告白かプロポーズすると絶対に上手くっていう噂が広まってて、カップルでここに来るのが流行ってるじゃん。そんなところに釣り糸なんか垂らされたら、雰囲気ぶち壊しになっちゃうでしょ?」
「たかが釣り糸垂らされたくらいで壊れる雰囲気なら、そいつらもう終わってる気がするぞ?」
「でもその糸にお魚が掛かったらバシャバシャうるさいでしょ!?」
「大体、何で急に恋愛スポットになってんだよ、ここ……」
「なんか一年前に婚約者と破局寸前だった伯爵令嬢が、婚約者と二人でこの橋の下を観光してたら、急に相手の令息がプロポーズしてきて、今では社交界でも有名なくらい仲良し夫婦になったんだって。だからここには縁結びの加護があるんじゃないかっていう噂が広まったんだよ」
「それって、その令息がプロポーズしようとしたタイミングが、たまたま重なっただけじゃねーか?」
「でもその二人、破局寸前だったのにここに来たら急に上手くいったんだよ? もしかしたらそういう加護が、ここには本当にあるかもしれないよ?」
「そうかぁ~? つか最近は逆効果の加護の噂で、ここ有名になってないか? カップルでここを訪れると必ず別れるっていう噂」

 そのリクスの話にアルバートが、ビシリと固まった。

「ええ!! 何その噂!? 私、初めて聞いたよ!? というか、この村の観光営業妨害だよ!! 誰がそんな酷い噂を流しているの!?」
「うーん、多分ここで好きな奴に告白して失敗した女達? ふられた腹いせなのか、ここの悪口を吹聴してるみたいで……。俺もこの間、使いで王都の城下町に行った時に聞いたんだが」
「はぁ!? 何それ!! 酷過ぎる!! というかリクス、何他人事みたいに言ってんの!? うちの村が風評被害を受けているのに!!」
「えー? でもその噂のお陰で、今はカップルだけじゃなくて縁切りたいって奴らも、ここに来るようになってるから、結果的に観光客が増えてんじゃん。でも最近だと、縁を切りたい相手と来る奴らの方が多いみたいだけどなー」

 その話を聞いた瞬間、今度はリリアナがビクリと肩を震わせた。
 現状、今の自分とアルバートはお見合い段階であり、婚約前のお試し期間という状態なのだ。
 そして大体一カ月目で、婚約へと話を進めるかどうかの返答をする事が多い……。

 すなわち先程の少年の話の意味合いで、今日アルバートがこの場所にリリアナを誘ったとしたら、この縁談を断ろうとしている可能性があるのだ。
 その事に気付いてしまったリリアナは、そのままそっと視線を自分の膝の上に落とす。

 だが次の瞬間、リリアナの目の前に何かがバサリと放り投げられた。
 その方向に視線を向けると、何故か上着を脱いで襟元のタイを勢いよく外しているアルバートの姿が目に入る。

「アルバート様……?」
「リリアナ嬢、大変申し訳ないのですが……しばらくの間、この幻想的な風景を堪能しながら、少しだけお待ち頂けますか? すぐに戻りますので!」
「え? 待つのは構いませんが、すぐに戻るとは……」

 現在プカプカと浮かぶボートに二人で乗っている状態なので、もしどこかに移動するのであればボートごと動かなければならないはずなのだが……。何故かアルバートは、まるで自分だけが一瞬だけ席を外すような謎の言い方をしてきたのだ。
 その言い回しに疑問を感じたリリアナが、怪訝そうに首を傾げる。
 すると、アルバートが今日一番の紳士的な笑みをニッコリとリリアナに送って来た。

「それでは……しばし、お待ちくださいね!」

 アルバートは、そう口にした瞬間――――。
 ボートを極力揺らさないようにそのままドボンと、勢いよく湖に飛び込んでしまった。

「ええっ!? ア、アルバート様ぁ!?」

 慌ててボートのアルバートがいた側に移動しようとしたリリアナだが、その反動でボートが大きく揺れてバランスを崩してしまい、アルバートが残していった上着の上にペタンと座り込んでしまう。
 すると、何か固い物がリリアナの脛の辺りを圧迫して来た。

「痛っ……!! な、何?」

 先程、アルバートが脱ぎ捨てた上着の上に座り込む形になってしまったリリアナは、その痛みを与えてきた原因が何か気になり、その上着を拾い上げ膝上で広げた。すると、上着のポケット辺りに何か立方体の固い物が入っている事に気付く。

「小箱……かしら? でもどうしてこんな上着の形が崩れてしまう物なんか……」

 リリアナが不思議そうに呟いた瞬間、頭上から何かが落下してきて水面にバシャンという音を立てる。その音した方へ目を向けると、先程飛び込んだ事でほどけてしまったアルバートの髪を束ねていた黒いリボンと、何故か途中でバッキリと折れた釣り竿の先端と思われる部分が、プカプカと水面に浮かんでいた。
 すると、頭上から再び少年達の叫び声が響き渡る。

「うわっ!! つ、釣り竿が折れた! ヤベーぞ、ここ!! きっとスゲー大物が生息してる!」
「ええ!? ほ、本当だ……。釣り竿が思いっきり折れてる……」
「ふっふっふっ! これはもう釣り人魂的には、この湖のぬしを釣るっきゃねぇーな!!」
「いや、それ……釣り上手な人が言うセリフであって、リクスは言える立場ではないからね?」
「何だよ! 夢ぐらい見させろよ! 俺だって立派な釣り人だっ!」
「……リクス、そういうのを下手の横好きって言うんだよ?」
「俺は、釣りが下手なんじゃねぇー! ちょっと運が悪いだけだ!」

 釣り竿が折れた事で、かなりの大物がいると期待に胸を膨らませている少年達の声に、リリアナが何とも言えない気持ちを抱く。何故ならば……その釣り竿を折ったのは大物の魚ではなく、先程水中に潜ったアルバートなのだ……。
 その事を知らない二人は、頭上の石橋の上で興奮気味に盛り上がっている。
 だが、そんな盛り上がりも少女が発した一声でピタリとおさまった。

「ねぇ、あれ……アルバート様じゃない?」
「本当だ。久しぶりのアルバート様だ。てか、何でアルバート様、びしょ濡れなんだ?」
「さぁ? というか、物凄い大股でこっちに向かってくるね?」
「もしかして、また兄ちゃん達と真っ昼間から酒飲んで、酔っぱらって湖に落ちたんじゃね?」 
「ええー……? アルバート様ってティクス兄達の飲み仲間なの?」
「おう! しかも兄ちゃんよりもザルだから、スゲー酒に強……」

 そう嬉々として語っている様子の少年だったが、次の瞬間――――。
 スパァァァァーンと小気味よい音が、湖畔全体に響き渡った。

「痛ってぇぇぇぇぇぇぇー!! いきなり何すんだよ!! アルバート様!!」
「黙れっ!!  このクソガキ!! ここでは釣り禁止だって看板に書いてあんだろぉーがっ!! バカだとは思っていたが、字も読めねぇーのかよっ!!」
「はぁ!? 自分だって二年前に兄ちゃん達と悪ノリして釣りしてたじゃねぇーか!! アルバート様だけには言われたくないね!!」
「あの時は、まだ本格的に釣り禁止区域にはなってなかっただろーが!!」
「いいえー。もう釣り禁止になってましたぁー! 俺、ちゃんと覚えてますぅー!」
「こんのクソガキ!! 相変わらず大人相手に舐め腐った態度しやがって……」
「大体! 今は時期的に観光客なんて来ねぇーから、ちょっとぐらい釣りしても平気だろ!? 何そんなに怒って……ああー!! さてはアルバート様、今この下にいたんだろ!? そういや兄ちゃんが、アルバート様が最近どっかの令嬢と見合いしてるって言ってた!」

 少年のその情報に今度は傍観していた様子の少女が反応し始める。

「えっ!? じゃあ、今この下にアルバート様のお見合い相手のご令嬢がいるの!?」
「マジか! 俺、見たい!! どんな人!?」
「私も見たい!!」
「うるせぇー! クソガキ共! 人の事気にする前にお前ら、村のルールちゃんと守れよ!!」
「ああー!! もしかしてアルバート様、下にいたのにわざわざ文句言いに泳いで、ここまで来たのか!? じゃあ、俺の釣り竿を折ったのもアルバート様!? ふざけんなよ!! あれ、スゲー気に入っていたのに……弁償しろよ!!」
「釣り禁止区域で釣りをしてたお前が悪いんだろーがっ!! 自業自得だ!! この悪たれクソガキ!!」
「だからって人のモン壊す事ねぇーだろ!? 横暴だ!! 領民に対する不当行為だ!! 訴えてやる!! 見合い相手さぁーん!! こんな男と結婚しない方がいいですよぉー!! この男は将来、絶対に領民を虐げる極悪非道な領主になりますよぉー!!」

 頭上から聞こえてきたあまりにも賑やかで面白い言い分に、思わずリリアナが吹き出す。同時にこの会話から、やっと見えた本来のアルバートの人間性にリリアナの好奇心は、大いに掻き立てられた。先程のスマートな紳士らしさなど、どこ吹く風かと言わんばかりの腕白小僧のようなアルバートの様子にリリアナの心は、かなり惹きつけられている。
 だが次の瞬間、またしても何かをはたく小気味よい音が湖畔中に響き渡る。

「……っ! 痛ぇーなっ!! 何でバカみたいに何回も人の頭、ひっぱたくんだよ!! 口よりも先に手ぇ出すなんて騎士の風上にもおけねぇーぞ!?」
「お前が口で言っても理解出来ないバカだからだろーがっ! 大体、俺はもう騎士じゃねぇ!!」
「一年前まで暴れ馬って呼ばれる程、騎士団で問題児だったじゃねぇーか!」
「お前、どこでそういう情報、仕入れてくるんだよ……」
「前に兄ちゃんが言ってた!」
「情報提供者ティクスかよ……。それより! もうお前ら家、帰れ!! 釣り竿が使えないんだから、ここにいても意味がないだろう!?」
「嫌だね!! 俺、アルバート様の見合い相手を見るまでは絶対に帰らねぇーから!!」
「エナ、こいつ何とかしてくれ……」
「ほら、リクス! アルバート様が困っているから……もう帰ろう?」
「嫌だ!! 大体、まだ俺の釣り竿弁償するって返事も貰ってねぇーし!」
「分かった、分かった。後でお前にピッタリなの弁償してやるから……」
「ほら、弁償してくれるって。だから帰ろう?」
「いーやーだぁー! まだアルバート様の見合い相手、見てねぇぇぇー!」
「もしこのまますぐに帰るなら、朝作ったクルミパンあげるから!」
「よし! エナ、帰るぞ!」
「エナ……。お前、本っ当リクスの扱い上手いな……」
「リクス、食べ物で釣ればすぐに言う事を聞くから。アルバート様、なんか邪魔しちゃって、ごめんなさい……。それじゃ リクス! 私達は帰るよ!」
「おう! 早くクルミパン食おうぜ!」

 何やら賑やかな声が遠ざかっていく気配を頭上で感じながら、リリアナはいつの間にか抱きしめるように抱えていたアルバートの上着に視線を落とす。
 すると、横穴の入口付近でバシャンと派手な水音が立ち、そこから黒い影がススーッとボートの方へと向かって来た。その黒い影はボート付近まで来るとパシャンと水しぶきを立て、そこからアルバートが顔を出す。

「申し訳ない。いきなり湖に飛び込んでしまって……。ただあのルール違反を犯している悪童共に次期領主として一言、注意しなければ気がすまなくなってしまって……」
「い、いえ……。少々驚きましたが……大丈夫です」

 そう言って、アルバートの上着を握りしめたまま、リリアナは先程まで自身が座っていた定位置まで移動し、アルバートがボートに上がりやすいようにスペースを空けた。すると、アルバートがボートをあまり揺らさないように気遣いながら、湖面から上がる。ボートは、アルバートが思いっきり身を乗り上げた際、一度だけ大きく揺れた。

 そんな湖から上って来たアルバートは、ずぶ濡れになった影響で得も言われぬ色香を無駄に醸し出していた。飛び込む前に上着を脱いだ為、びしょ濡れになって透けた状態のシャツが露わとなり、着やせしてしまうアルバートの筋肉質な部分を惜しげも無くさらけ出し、ポタポタと水滴を落とす前髪が更にアルバートに謎の色気を増加させる……。

 その前髪を鬱陶しそうにアルバートがかき上げると、深く濃い青い瞳が現れ、先程の誠実そうで優しい光とは真逆のギラリとした艶っぽい光をリリアナに印象付けさせた。

 先程の紳士的な雰囲気から打って変わって、急に妖艶な雰囲気を漂わせ始めた見合い相手に思わず目のやり場に困り果てたリリアナが、そっと視線を外す。
 すると、何故かアルバートが困った様な……それでいてどこか切なげ笑みをリリアナに向けてきた。

「リリアナ嬢……。その、そろそろ別荘の方に戻りましょうか。私もこのようななりになってしまったので……」

 そのアルバートの申し出にリリアナが、驚くように大きく目を見開く。
 この一カ月間頻繁に交流し、今回は別荘に招かれ、このような恋愛にまつわる噂で話題なっている観光スポットに二人きりの状態で案内をされたら、本日アルバートが何を目的として動いていたかは、流石のリリアナでも容易に想像がつく。

 何よりも先程から両手で抱きかかえているアルバートの上着のポケットで、その存在を主張している角ばった立方体が、本日彼がどういう事を計画していたかを訴えてくるのだ。恐らくアルバートの上着のポケットに入っている角ばった立方体は、互いの見極め期間を良い意味で終了させる為に用意された指輪が入っている小箱だ……。

 だが、今目の前にいるアルバートは、何故かその計画を行わずに早々に別荘へと引き返そうとしている。まるで全てを諦め切ったような、何とも弱々しい笑みを浮かべながら……。

 恐らく先程の少年達とのやり取りで明るみになった自身の粗暴な部分で、リリアナに幻滅されたと思い込んでしまったのだろう。その為、今回はその計画を実行せず、この縁談を進める事を諦めようと思ってしまったらしい……。

 そのアルバートの心情を瞬時に察したリリアナは、先程から抱えている上着を更にギュッと強く握りしめ、何かを決心したように口を開く。

「あ、あの! アルバート様! 一つ確認したい事があるのですが!」
「は、い……。何でしょうか……?」

 何故か気合の入った口調で話しかけてきたリリアナの様子にアルバートが、少しだけ身構えながら質問内容を確認してきた。

「あの……先程、少年達がこの観光スポットについて、ある素敵な加護が得られると語っておりましたが……。わたくし、まだその素敵な加護にあやかれるはずの申し出をアルバート様より頂けていない状況です。それなのに……もうお邸に戻られてしまうのですか……?」
「はい?」

 リリアナの決死の質問内容をすぐには理解出来なかったアルバートが、一瞬怪訝そうな表情をしながら小首を傾げた。

 だが、すぐに自分の上着をギュッと抱え込んでいるリリアナの様子から、ある事に気付く。その上着のポケットの中には、本日大事な言葉と共にリリアナに渡す予定だったある小箱が入っている事に。

「あっ……」

 真っ赤な顔を俯き気味にしてアルバートの上着を抱きしめるリリアナと、リリアナからの質問で何故か真顔になってしまったアルバートは、そのいたたまれない空気の中で互いに無言となる。
 すると、その静寂を強調するかのように一滴の水滴が、ピチョンと横穴内に美しい音色を響かせた。



 それから一ヶ月後――――。
 イーベル村の広場には、少しだけめかし込んだ村人達が大勢集まり、どこかに移動しようとしていた。

「よーし! これからパーキンス子爵家主催のアルバート様の婚約祝賀会に行くぞー。女子供は必ず家族と手ぇ繋いで、はぐれないようになー。ちなみに今回はイーベル村の住人だけを招待してくれたパーティーだから、そんなにかしこまんなくてもいいぞー。あとリクス以外は全員強制参加なー!」
「「「「「「はーい!」」」」」」

 ティクスの呼びかけに村人の数人が反応し、返事をする。
 ちなみに両親である村長夫妻は、すでに会場に向って準備をしている状態だ。その為、今回は長男であるティス久が村人達を会場に先導するらしい。

 ちなみに今回の祝賀会の主役であるアルバート達だが……。
 一カ月前のあの後、アルバートはすぐにリリアナに婚約の申し入れをし、リリアナの方もそれを受け入れ、無事に小箱に入っていた婚約指輪を受け取っていた。
 そんな二人は半年後に挙式も決まっており、イーベル村もこの一カ月間は、かなりお祭り騒ぎな雰囲気になっている。

 だがその中で約一名、ギャーギャーと不満を訴えている人物がいた。
 本日強制参加枠から外されたリクスである……。

「何っっっっで、俺だけ留守番なんだよ!!」
「仕方ねぇーだろう? 村人全員で祝賀会に行ったら、村がもぬけの空になって、野盗や山賊に襲撃されやすくなるだろーが。あ、でも安心しろ! もう少ししたらパーキンス子爵家の騎士団から数名村の護衛で騎士様達が来てくれるらしいから!」
「その騎士様達が来るなら、俺がここに残る必要ねぇーじゃん!!」
「でも村の地形に詳しい奴が一人いないと、何かあった時に騎士様達を誘導案内出来ないだろう?」
「そんなん分かってるよ!! つか、最初その留守番役、にーちゃんがやるって言ってたじゃんか!! 何で急に俺に変更になったんだよ!!」
「知らん。ただよく分からんが、アルバート様から直々にお前にやらせろとご指名が入った」
「何でだよっ!! それ絶対に一カ月前の事、根に持ってるじゃねぇーか!!」
「お前……アルバート様にも例のやらかしやったのか……?」
「好きでやらかしたんじゃねーよ!! そもそも自分の領地の恋愛観光スポットで告白しようとしてるアルバート様の方が、色々とやらかしてるじゃねーか!!」

 婚約祝賀会には当然、平民の村人では滅多に食べられない豪華な食事が振る舞われる。だが今回ご指名で村の留守を任されたリクスは、ただ一人だけそのご馳走にあやかれないのだ……。

「くそぉ……。俺、お気に入りの釣り竿までダメにされたのにぃ……」
「釣り禁止区域で釣りをしていたお前が悪い!」
「横暴だぁぁぁー!! 俺の釣り竿、弁償しやがれぇぇぇー!!」
「お、そうだ! その件でこれ、お前に渡して欲しいってアルバート様から預かってたんだわ。ほれ、リクス。これでお前も魚を取り放題だぞ?」
「もしかして高級釣り竿!?」

 そう言って、兄ティクスから受け取った木箱を地面に置いたリクスが、いそいそとその中身を確認したのだが……次の瞬間、またしてもリクスの不満が爆発した。

「何だよっ!! これ、無駄に豪華な組み立て式のモリじゃねぇーかぁぁぁ!!」
「そうだな。でもお前は、絶対にこっちの方が魚取れると思うぞ?」
「大きなお世話だよ!! 俺がしたいのは魚突きじゃなくて魚釣りなの!!」
「下手くそな分際で何言ってんだよ……。魚突きにしとけ!」
「俺の釣り竿ぉぉぉぉぉー!!」

 木箱を前に膝まづいて絶叫しているリクスにレニー達と一緒にパーキンス子爵家の別荘に向おうとしていたエナが、これ見よがしに声を掛けてきた。

「あっれー? リクス、お留守番~? かっわいそー」
「エナ……。てめぇ……」
「でも安心して! リクスがかわいそうだから、パーティーで余ったご馳走を少し持って帰ってきてあげるから! あっ、でも余ってたらの話だけど~」

「ぷぷー!」と嘲笑してきたエナに対して、リクスの中で何かが切れる。
 次の瞬間、リクスは別荘に向って歩き出そうとしていたエナを後ろから羽交い絞めにして捕獲した。

「ちょ、ちょっと! 何すんのよ!!」
「道連れだ……。エナもここに残って留守番しろ……」
「はぁ!? 留守番頼まれたのリクスだけでしょ!? 私、関係ないじゃん!!」
「うるせぇぇぇぇぇー!! お前も一カ月前、あの場に居たんだから同罪だぁぁぁ! ボケェェェェー!!」
「酷い! 言いがかりな上にそれこそ横暴だよ!!」

 その二人の様子にティクスが気付く。

「おっ? エナも留守番組、希望か?」
「違うよ!! ティクス兄、助けて!! 私も祝賀会行く!! ご馳走食べる!!」
「行かせるかぁぁぁぁぁぁー!!」
「そうだなー。こいつ一人だと居眠りしてサボりそうだから、エナにも留守番で残って貰った方がいいかもなー」
「な、何言って……」
「よっしゃぁぁぁー!! エナも居残り組な! ざまぁーみろ!」
「い、嫌だよ!! 私も祝賀会参加したい!! アルバート様のお嫁さん見たい!! レニー! お、おいていかないで~!! シーナ姉! た、助けてぇぇぇ~!!」

 両手を伸ばしてエナが必死に二人へと助けを求めるもシーナは苦笑し、レニーは憐憫の眼差しを送ってきた。

「あーあ。エナ、諦めなー。こうなるとリクス、意地でも離さないから」
「そ、そんなぁ……」
「エナ、出来るだけ無くなる前にフェリシアと一緒にご馳走持って帰って来るから……。今回は留守番、頑張って!」
「レ、レニーまでぇ……。嫌ぁ……。私も……私も行くぅぅぅー!!」
「ダメだ!! エナも留守番だ!!」

 その後、涙目なエナは足元が宙ぶらりんな状態で後ろから羽交い絞めにされ、騎士達用に準備された待機所にリクスによって連行された為、結局アルバート達の婚約祝賀会には参加出来なかった……。

 後にリクスは、この時の出来事を何十年経ってもエナから文句を言われ続ける事になる。
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