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プロローグ
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僕の名前は北山 柊。東京都にある文学系の大学に通う学生だ。昨日サークル仲間からとある情報を聞いたのをきっかけに、今僕は駅前へと向かっている。
「怪談カフェ?」
「そう、駅前に出来たらしいんだよ。何でも外観はどこにでもあるようなおしゃれなカフェらしいんだけどさ」
と、楽しそうに話しているのはサークル仲間の佐藤だ。天然パーマとダボッとした服装がマッチして売れない小説家の様な印象を与える。
彼は無類の心霊マニアで怪談物には目がない。何でも最近駅前にできた怪談カフェがそれはもう凄いと朝から熱を入れていた。
「普通の人は入れないらしいんだよ。いや、入れないというか見えないらしいんだ」
「へぇ...」
対して僕は全くそういうものに興味が無い為話半分に聞いていたのだが、そんな事もお構い無しに佐藤は話を続けた。
「その店に入れるのは人じゃない者かもしくは」
大きく息を吸い、ゆっくりと言った。
「信じていない者だけらしいんだ」
「信じてない者?それってつまり、僕のようなタイプの人間って事か?」
「そう!まさにそうなんだよ!だから今日駅前に行ってそのカフェが見えるかどうか試してきて欲しいんだ!」
両肩を掴む手に力が入り指がくい込んでくる。痛くはなかったが興奮を抑えさせようと冷たく突き放した。
悲しそうな顔をしたものの、僕がそういうものに関して興味が湧かないという事を知ってるのでこの話はここで終わった。
--はずだった。
「見えない者に見える建物、か」
僕は一体何を期待しているんだろう。子供じみた話を信じているとでもいうのか。
駅前に辿り着き佐藤が言っていた場所まで近付いてみる。
「おしゃれなカフェって言ってたよな」
呟きながら辺りをキョロキョロ見渡すがそんなものはどこにも見当たらない。
やっぱり噂の類だったかと思い、帰ろうとした時だった。
「......あった」
先程まで無かったはずのカフェがそこにはあったのだ。洋風の映画とかで出てきそうなおしゃれなカフェだ。クリーム色の外壁とパステル調の緑色のドアがやけに目立つ。
ゆっくりと入口まで近付き、ドアノブをそっと握る。ひんやりとした感触が手から全身まで伝わった気がして、一瞬手を離してしまった。
「まさか、な」
夏も終わり秋になろうとしてるこの時期だ。ドアノブくらい冷たくなるだろう、と自分に言い聞かせ再び握る。
「僕は、信じない」
小さく呟きドアを開けると中は外観と違って明るさはなく、ムード感溢れる暗さの照明で店内が照らされていた。
造りは明治時代を思い出させるようなモダンな感じで真ん中にぽつんと、丸い机と背もたれが付いた椅子が一脚置いてあった。
「ここに座れってことか」
ゆっくりと木の板で出来た床の上を歩きながら椅子に腰かける。見た目とは違ってゆったりと座れる造りになっていた。
「いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですね?」
そう言って奥から現れたのは珈琲屋のマスターの様に黒エプロンを腰にした若い男性だった。キチッとした格好のせいか思わず背筋が伸びてしまう。
「こちらメニュー表になります」
目の前で開かれたメニュー表には飲み物や食べ物の名前は無く、数字だけが書かれていた。
「あの、これは」
「お客様の好きな数字は何ですか?」
「好きな、数字?」
「はい、好きな数字です」
言われてパッと思い浮かばなかったので適当に3と答えると、
「三番、ですか。トライアングルはいつだって不吉を呼び起こすものです。実にいい選択ですね」
男が丸い机に置かれたベルを1回鳴らすと奥から飲み物と食事を乗せたトレイを持った若い女性がやって来た。
「こちら、アイスコーヒーとハニートーストになります」
「あの、僕頼んでないんですが...」
「3番を選択されましたよね。これはそのメニューになります。どうぞごゆっくりお楽しみ下さい」
頭を下げそのまま奥へ去っていく女性の姿を見送ると男が僕の肩をトントン、と2回叩き左隣の大きい白い壁を指さした。
「今からあそこにお客様が注文された怪談が上映されますのでお楽しみくださいませ」
そう告げると男も奥へ去っていき、店内は僕一人だけとなってしまう。少し怖いもののそういった演出をするカフェなのかもしれないと開き直り、壁の方へ向きアイスコーヒーに口をつけた。
「怪談カフェ?」
「そう、駅前に出来たらしいんだよ。何でも外観はどこにでもあるようなおしゃれなカフェらしいんだけどさ」
と、楽しそうに話しているのはサークル仲間の佐藤だ。天然パーマとダボッとした服装がマッチして売れない小説家の様な印象を与える。
彼は無類の心霊マニアで怪談物には目がない。何でも最近駅前にできた怪談カフェがそれはもう凄いと朝から熱を入れていた。
「普通の人は入れないらしいんだよ。いや、入れないというか見えないらしいんだ」
「へぇ...」
対して僕は全くそういうものに興味が無い為話半分に聞いていたのだが、そんな事もお構い無しに佐藤は話を続けた。
「その店に入れるのは人じゃない者かもしくは」
大きく息を吸い、ゆっくりと言った。
「信じていない者だけらしいんだ」
「信じてない者?それってつまり、僕のようなタイプの人間って事か?」
「そう!まさにそうなんだよ!だから今日駅前に行ってそのカフェが見えるかどうか試してきて欲しいんだ!」
両肩を掴む手に力が入り指がくい込んでくる。痛くはなかったが興奮を抑えさせようと冷たく突き放した。
悲しそうな顔をしたものの、僕がそういうものに関して興味が湧かないという事を知ってるのでこの話はここで終わった。
--はずだった。
「見えない者に見える建物、か」
僕は一体何を期待しているんだろう。子供じみた話を信じているとでもいうのか。
駅前に辿り着き佐藤が言っていた場所まで近付いてみる。
「おしゃれなカフェって言ってたよな」
呟きながら辺りをキョロキョロ見渡すがそんなものはどこにも見当たらない。
やっぱり噂の類だったかと思い、帰ろうとした時だった。
「......あった」
先程まで無かったはずのカフェがそこにはあったのだ。洋風の映画とかで出てきそうなおしゃれなカフェだ。クリーム色の外壁とパステル調の緑色のドアがやけに目立つ。
ゆっくりと入口まで近付き、ドアノブをそっと握る。ひんやりとした感触が手から全身まで伝わった気がして、一瞬手を離してしまった。
「まさか、な」
夏も終わり秋になろうとしてるこの時期だ。ドアノブくらい冷たくなるだろう、と自分に言い聞かせ再び握る。
「僕は、信じない」
小さく呟きドアを開けると中は外観と違って明るさはなく、ムード感溢れる暗さの照明で店内が照らされていた。
造りは明治時代を思い出させるようなモダンな感じで真ん中にぽつんと、丸い机と背もたれが付いた椅子が一脚置いてあった。
「ここに座れってことか」
ゆっくりと木の板で出来た床の上を歩きながら椅子に腰かける。見た目とは違ってゆったりと座れる造りになっていた。
「いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですね?」
そう言って奥から現れたのは珈琲屋のマスターの様に黒エプロンを腰にした若い男性だった。キチッとした格好のせいか思わず背筋が伸びてしまう。
「こちらメニュー表になります」
目の前で開かれたメニュー表には飲み物や食べ物の名前は無く、数字だけが書かれていた。
「あの、これは」
「お客様の好きな数字は何ですか?」
「好きな、数字?」
「はい、好きな数字です」
言われてパッと思い浮かばなかったので適当に3と答えると、
「三番、ですか。トライアングルはいつだって不吉を呼び起こすものです。実にいい選択ですね」
男が丸い机に置かれたベルを1回鳴らすと奥から飲み物と食事を乗せたトレイを持った若い女性がやって来た。
「こちら、アイスコーヒーとハニートーストになります」
「あの、僕頼んでないんですが...」
「3番を選択されましたよね。これはそのメニューになります。どうぞごゆっくりお楽しみ下さい」
頭を下げそのまま奥へ去っていく女性の姿を見送ると男が僕の肩をトントン、と2回叩き左隣の大きい白い壁を指さした。
「今からあそこにお客様が注文された怪談が上映されますのでお楽しみくださいませ」
そう告げると男も奥へ去っていき、店内は僕一人だけとなってしまう。少し怖いもののそういった演出をするカフェなのかもしれないと開き直り、壁の方へ向きアイスコーヒーに口をつけた。
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