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第3章 油断大敵
4.あったかいおおかみ
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ここはどこだろう。
私は落ち葉が沢山積もった森の中を、あてもなく歩いていることに気付いた。
黄色と赤の落ち葉が降り積もって見事な絨毯を作っているが、膝上まですっぽりと包んでいて歩きにくい。
見渡してみると、どうやらここは葉っぱが全て落ちた寂しい灰色の木しかない森らしい。
空を見上げれば、どんよりとした灰色の雲が覆っていて今にも雨が降ってきそうだ。
方向感覚をなくしたまま歩き続けていると、どこからか視線を感じて立ち止まった。
周りを見てみると、白と灰色の毛並みの中に所々金色の毛が生えている目付きの悪い狼が、ジッとこっちを見ていた。
「おーい」
私がその視線に気付いて声をかけながら手を振ると、狼はゆっくり絨毯をかき分けながら近寄ってきた。
「君、目つき悪いなぁ。ルクトみたい」
目の前まで来た大きな狼に笑いながら話しかけると、一瞬ムッとした顔をしたような気がした。
「あれ、怒ってるの?んじゃ、凛々しくてカッコイイ狼って訂正するよ」
狼は嬉しそうに目を細めると、短く息を吐きながら私の足元にスリスリと顔を擦り付けてきた。
「君は狼なのに人懐っこいんだね。でも、どうしてこんな所に1人でいるの?仲間は?」
私がしゃがんで狼に話しかけたが、狼は反応を返すことは無く、私の顔をペロペロと舐め始めた。
「あはは!くすぐったいよ。君ははぐれちゃったのかな?私、迷子になっちゃったみたいなんだ」
どうしてこんな場所にいるのか思い出そうとしても、何故か頭の後ろがガンガンと鈍い痛みを訴える。
魔法を使って治療すればいいと思うのに、何故か魔法の使い方が分からなくなっていた。
「ルクト、迎えに来てくれるかな。それとも…みんなと一緒に戦場に戻っちゃうのかなぁ。
ん?みんな…?みんなって誰だっけ?」
狼は心配そうに私を茶色の瞳でジッと見ていて、その真っ直ぐな眼差しが何となく心地よかった。
「ほら、君は仲間の元に戻りなよ。私は1人でも大丈夫だから。ね?」
狼はすっと立ち上がると、もう一度私の顔をペロリと舐め、何度も振り返りながら去って行った。
「さて、私はどうしようか。どこに進めば良いのかな。雨降りそうだから、雨宿りできそうな場所を探さないと…」
ガサガサと落ち葉の絨毯をかき分けながら、ただ何となく視線の先へと進んでいった。
歩くのにも疲れた頃。
何かが頭に落ちてきたような気がして上を見上げれば、灰色の空からポツリポツリと雨が降ってきた。
なぜだかその雨は、誰かの流している涙のように感じた。
「あーあ。降ってきちゃった。雨宿りできそうな場所、見つからないなぁ」
どこを歩いても周りの木々は葉っぱが全て落ちてしまって、身を隠せる場所は無い。
仕方なく木に背中をくっつけて葉っぱに埋もれるように座ると、何となく脇腹が痛いことに気付いた。触ってみると血が出ている。
「どうして怪我をしているんだろう?何でこんなに頭が痛いんだろう?
何でこの景色に見覚えがあるのかな…。うーん。何でかな」
雨に打たれていると段々と体温が奪われて寒くなってくる。
身を温めるものも無くて、私は身をギュッと縮めて小さく蹲った。
脇腹が余計に痛くなるが、寒さの方が深刻になってきて痛みは気にならなかった。
そんな時、隣に温かいものを感じて慌てて顔を起こすと、さっきの狼が身体をすり寄せていた。
「君、また来たの?結構心配性なんだね。あはは。ありがとう、君が来てくれて少し温かいよ」
私は暖かさが欲しくて、狼にそっと抱きついてみた。
嫌がる素振りを見せない狼は、心配そうな顔をしながらペロペロと頬を舐めた。
「君は優しいね。私も君みたいに優しく出来ればいいのにな」
狼をそっと撫でると、目付きの悪い茶色の瞳と視線が合った。
「やっぱり君はルクトに似てるなぁ。君がこうして一緒にいてくれるように、私もルクトと一緒に戦場を駆け回れたら良かったな。
黒魔法が使えたらそれも出来たんだろうけど。今更どう言っても変わらないんだけどね」
何故か急に涙が溢れ出し、視界がぐにゃりと歪んだ。
止まらない涙が頬を幾筋も落ちて行った時、狼がペロリと涙を舐め取った。
ーーこれからはちゃんと俺が守るから
「え?今、君が喋ったの?」
狼が喋った気がして驚いて問いかけると、私の前でおすわりをして、「撫でろ」と言わんばかりの期待に満ちた顔をしている。
「君は良い子だね。強くて優しい子」
中腰になってワシャワシャと撫でながらそう言うと、狼は嬉しそうに目を閉じて、私の額飾りの上に自分の額を直接すり寄せた。
その時、狼が私の頭の中に直接何かを喋ったような気がした。
「ねぇ、今なんて……。うわっ!」
もう一度聞こうと口を開いたら、急に激しい突風が吹いてきた。
黄色と赤の絨毯が一斉に舞い上がり、顔に張り付くようにくっついて視界を遮った。
張り付いた葉っぱが邪魔して見えないが、狼がいた方向に手を伸ばすと一瞬温かい体温を感じた。
そして次の瞬間には身体が何かに吸い込まれるようになり、意識が遠くなった。
私は落ち葉が沢山積もった森の中を、あてもなく歩いていることに気付いた。
黄色と赤の落ち葉が降り積もって見事な絨毯を作っているが、膝上まですっぽりと包んでいて歩きにくい。
見渡してみると、どうやらここは葉っぱが全て落ちた寂しい灰色の木しかない森らしい。
空を見上げれば、どんよりとした灰色の雲が覆っていて今にも雨が降ってきそうだ。
方向感覚をなくしたまま歩き続けていると、どこからか視線を感じて立ち止まった。
周りを見てみると、白と灰色の毛並みの中に所々金色の毛が生えている目付きの悪い狼が、ジッとこっちを見ていた。
「おーい」
私がその視線に気付いて声をかけながら手を振ると、狼はゆっくり絨毯をかき分けながら近寄ってきた。
「君、目つき悪いなぁ。ルクトみたい」
目の前まで来た大きな狼に笑いながら話しかけると、一瞬ムッとした顔をしたような気がした。
「あれ、怒ってるの?んじゃ、凛々しくてカッコイイ狼って訂正するよ」
狼は嬉しそうに目を細めると、短く息を吐きながら私の足元にスリスリと顔を擦り付けてきた。
「君は狼なのに人懐っこいんだね。でも、どうしてこんな所に1人でいるの?仲間は?」
私がしゃがんで狼に話しかけたが、狼は反応を返すことは無く、私の顔をペロペロと舐め始めた。
「あはは!くすぐったいよ。君ははぐれちゃったのかな?私、迷子になっちゃったみたいなんだ」
どうしてこんな場所にいるのか思い出そうとしても、何故か頭の後ろがガンガンと鈍い痛みを訴える。
魔法を使って治療すればいいと思うのに、何故か魔法の使い方が分からなくなっていた。
「ルクト、迎えに来てくれるかな。それとも…みんなと一緒に戦場に戻っちゃうのかなぁ。
ん?みんな…?みんなって誰だっけ?」
狼は心配そうに私を茶色の瞳でジッと見ていて、その真っ直ぐな眼差しが何となく心地よかった。
「ほら、君は仲間の元に戻りなよ。私は1人でも大丈夫だから。ね?」
狼はすっと立ち上がると、もう一度私の顔をペロリと舐め、何度も振り返りながら去って行った。
「さて、私はどうしようか。どこに進めば良いのかな。雨降りそうだから、雨宿りできそうな場所を探さないと…」
ガサガサと落ち葉の絨毯をかき分けながら、ただ何となく視線の先へと進んでいった。
歩くのにも疲れた頃。
何かが頭に落ちてきたような気がして上を見上げれば、灰色の空からポツリポツリと雨が降ってきた。
なぜだかその雨は、誰かの流している涙のように感じた。
「あーあ。降ってきちゃった。雨宿りできそうな場所、見つからないなぁ」
どこを歩いても周りの木々は葉っぱが全て落ちてしまって、身を隠せる場所は無い。
仕方なく木に背中をくっつけて葉っぱに埋もれるように座ると、何となく脇腹が痛いことに気付いた。触ってみると血が出ている。
「どうして怪我をしているんだろう?何でこんなに頭が痛いんだろう?
何でこの景色に見覚えがあるのかな…。うーん。何でかな」
雨に打たれていると段々と体温が奪われて寒くなってくる。
身を温めるものも無くて、私は身をギュッと縮めて小さく蹲った。
脇腹が余計に痛くなるが、寒さの方が深刻になってきて痛みは気にならなかった。
そんな時、隣に温かいものを感じて慌てて顔を起こすと、さっきの狼が身体をすり寄せていた。
「君、また来たの?結構心配性なんだね。あはは。ありがとう、君が来てくれて少し温かいよ」
私は暖かさが欲しくて、狼にそっと抱きついてみた。
嫌がる素振りを見せない狼は、心配そうな顔をしながらペロペロと頬を舐めた。
「君は優しいね。私も君みたいに優しく出来ればいいのにな」
狼をそっと撫でると、目付きの悪い茶色の瞳と視線が合った。
「やっぱり君はルクトに似てるなぁ。君がこうして一緒にいてくれるように、私もルクトと一緒に戦場を駆け回れたら良かったな。
黒魔法が使えたらそれも出来たんだろうけど。今更どう言っても変わらないんだけどね」
何故か急に涙が溢れ出し、視界がぐにゃりと歪んだ。
止まらない涙が頬を幾筋も落ちて行った時、狼がペロリと涙を舐め取った。
ーーこれからはちゃんと俺が守るから
「え?今、君が喋ったの?」
狼が喋った気がして驚いて問いかけると、私の前でおすわりをして、「撫でろ」と言わんばかりの期待に満ちた顔をしている。
「君は良い子だね。強くて優しい子」
中腰になってワシャワシャと撫でながらそう言うと、狼は嬉しそうに目を閉じて、私の額飾りの上に自分の額を直接すり寄せた。
その時、狼が私の頭の中に直接何かを喋ったような気がした。
「ねぇ、今なんて……。うわっ!」
もう一度聞こうと口を開いたら、急に激しい突風が吹いてきた。
黄色と赤の絨毯が一斉に舞い上がり、顔に張り付くようにくっついて視界を遮った。
張り付いた葉っぱが邪魔して見えないが、狼がいた方向に手を伸ばすと一瞬温かい体温を感じた。
そして次の瞬間には身体が何かに吸い込まれるようになり、意識が遠くなった。
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