天使な狼、悪魔な羊

駿馬

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第14章 会いたい人

3.赤い悪魔の特別授業 ※R18

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傭兵の兄ちゃんから剣を教えてもらい始めて3日目。

朝ご飯を食べ終えて部屋に戻った兄ちゃん達だったけど、兄ちゃんだけが部屋から出てきて迷わず俺の所に歩いてきた。



「なぁ。お前、もうちょっと剣の練習したいか?」

「うん!もっと教えてもらいたいことあるし」

背の高い赤い髪の兄ちゃんは、必ず俺の頭をクシャリと大きな手で撫でてくれる。その大きな手は自分とは全然違って力強くて、自信に満ち溢れた憧れの手だ。


「じゃあ、明日からは朝から晩まで付き合ってやるよ」

「本当?!良いの?」


姉ちゃんの護衛の仕事があるからと、今までは夕食までの数時間だけしか剣の稽古をつけて貰えなかった。
力の運び方や、咄嗟の反応の仕方など、聞きたいことはたくさんある。この強い兄ちゃんからもっと話を聞きたいし、剣の稽古も付けて欲しい。
だから朝から晩まで自分に付き合ってくれると聞いて、飛び上がるほど嬉しかった。


「構わねえよ。じゃあ、今から仕事してくるから夕方まで待っとけ」

「うん!いってらっしゃーい!」

仕事に行く兄ちゃん達を宿の外の扉まで見送ると、物陰にいた友達が駆け寄ってきた。


「なぁセジル!お前、あの傭兵に何か教えてもらってるのか?」

「うん!剣の稽古してもらってるんだ!いいだろ!」

自分がそう言ってノーズ、ハイグ、デルの3人に自慢すると、みんなが期待に満ちた目で俺を見てきた。



「えー!羨まし~い!俺も混ぜてよ!」

「俺も俺も!」

「俺も~!」

「ダ~メ!俺だけが『特別に』教えて貰ってるの!」


3人にはみんな父ちゃんがいる。

『今日は父ちゃんと剣の稽古するから、もう帰るね!バイバイ!』
『今から隣町まで父ちゃんと一緒に買い出しに行くんだ!またな!』
『さっき父ちゃんに叱られちゃってさ~』



そういう友達にとっては当たり前で何気ない話を聞く度に、自分にはいない『父親』という大きな存在を感じて、とても羨ましかった。

どうして自分の父ちゃんは病気で死んでしまったのだろう。どうして居て欲しい時に居てくれないんだろう。父ちゃんがいないのはどうしようもない事だとは分かっていても、友達から『父ちゃん』と聞く度にいつも胸が締め付けられてモヤモヤしていた。


そんな時。


『お前は特別な』


そう言ってくれた兄ちゃんは父親じゃないけど、憧れの傭兵が自分を特別扱いしてくれているのはとても誇らしく、自慢したくて、独り占めして堪らなかった。




「やっぱり本物の傭兵って全然雰囲気が違うじゃん!」

「あの兄ちゃん、目つきがキツイし、めっちゃ強そうだし!俺たちも仲良くなりたい!」

「セジルだけ特別扱いされてズルいよ!」

3人の言葉は自分が褒められているようで、とても嬉しくて堪らない。だからこそ、兄ちゃんと仲がいい『特別』は自分だけでありたい。





「お前らは父ちゃんがいるから、そっちから色々と習ってるじゃないか。兄ちゃんは俺だけのものなの!」

「えー!!ずるい、ずるいよ!」

「独り占めするなんて、もうセジルなんて知らねぇからな!」

自分が大声を張り上げてそう言うと、3人はブッスーとした顔をしてどこかへ行った。



ーーいいもん。俺には兄ちゃんがいるから!

ちょっとだけ胸がチクチクとするけど、兄ちゃんとの楽しい時間を考えればすぐに忘れられた。



その日の夕方。木の所々の隙間からサラサラと雪が落ちてくる中、宿の裏の空き地で俺は赤い髪の兄ちゃんに剣を教えてもらい始めた。

木刀を振りかざして襲いかかっても、兄ちゃんは半歩引くだけで軽々と避けてしまう。
ヤケクソになって何度も攻撃を与えようとしても躱され続け、腕をトンと叩かれるだけで木刀を落として地面に膝をついてしまう。


「う……」

「お前は左にばかり避ける癖があるな。攻める方も避ける方も、あんまり同じ方向ばかりに偏っているとすぐに相手に先手を打たれる。そういうのは命取りになるから、バランス良くやらねぇとダメだ」

「そんな癖があるのって気付かなかった。ねぇねぇ、なんでちょっと叩くだけでこんな風になるの?」

兄ちゃんが伸ばしてくれた大きな手を掴むと、軽々と引っ張り起こしてくれた。
地面に膝をつく度にこうして引っ張り起こしてくれるのがとても嬉しくて、膝をつくことが実はあまり悔しくない。


「力の加え方だ。今のお前みたいにヤケクソでやってたら、体力の無駄な消費ばかりですぐにバテる。力の入れ方、抜き方を学ばないと、どんなに体力がある奴でも戦場だとやっていけない」

「そう…なんだ。今までの練習は無駄だったのかな…」

学校で習ったこと、友達と一緒に練習してきたことは無駄だったのだろうかと泣きそうになった時、兄ちゃんがフードの上から押さえつけるようにポンポンと叩いてくれた。


「あとでちゃんと力の入れ方と抜き方を教えてやる。今は遊びや学校で剣の練習をやってるだろうが、それは無駄なことじゃない。失敗や無駄なことをしないと上手くならないから、今できることをしっかりやっとけ」

「うん!」

兄ちゃんはそう言って、地面に落ちたままだった木刀を拾い上げて渡してくれた。

ずっと前。母ちゃんに父ちゃんのことを聞いた時、「父ちゃんは男の子が欲しくて、セジルが生まれた時はそれはそれはすごい喜び様だったんだよ」と教えてもらった。
この木刀は、そんな父ちゃんが嬉しさのあまり俺が生まれた時に買ってくれたものだったらしい。
学校に入る時にプレゼントして、一緒に剣の稽古をしてくれるはずだったらしいけど、俺が貰ったのは父ちゃんが居なくなった後だった。


『折角剣を教えてもらえる歳になったのに、どうして父ちゃんがここに居ないんだよ!』と、ムカムカする気持ちをぶつけるように木を叩いたり、肩が痛くなるまで素振りをしていたけど、何も言わない木刀が唯一自分と父ちゃんを繋ぐ大事な形見だった。
兄ちゃんに父ちゃんを重ねているからなのか。今、兄ちゃんから渡された瞬間、もう朧気な記憶でしかないけど、元気だった頃の父ちゃんの姿が重なって見えた気がした。


「セジル!そろそろご飯にするよ!」

夕食の呼び出しがかかるまで剣の練習をしたけど、肩で息を吐く自分に対して、目の前の兄ちゃんはいつまで経っても息がまったく乱れなかった。


「まぁ、こんなもんだろ。お前は言われたことはすぐ修正出来るし、なかなか筋がいいな」

「本当?!」


褒められたことが嬉しくて兄ちゃんに思わず抱きつくと、兄ちゃんは片手で抱きしめてくれた上に、フードを外してちょっと強めにゴシゴシと頭を撫でてくれた。
まるで父ちゃんみたいな感じがして、嬉しくてしばらくずっと抱きついたままだった。



「おかえりルクト。セジル君。怪我はない?」

「ねぇよ」

剣を教えてもらうようになってから、稽古の後に兄ちゃん達と一緒に食事をするようになった。
姉ちゃんは「朝ごはんも一緒に食べようよ」と言ってくれたけど、朝は『夜の勉強』のことを思い出してしまって落ち着いて食事なんて出来ないから、夜ご飯だけしか顔を合わせられない。


「セジル君は毎日こんなに美味しいご飯を食べられて羨ましいな~」

「べ、別に普通だし…」

斜め前の席に座る姉ちゃんは、そう言ってニッコリと笑っている。
その顔がまた『夜の勉強』の時に見た色っぽい顔を思い出してしまって、直視できなくて目の前のシチューに視線を移してスプーンで一生懸命かき込んだ。



「私達は旅をしてばかりだから、こういう美味しいご飯を毎日食べられるって羨ましいな」

「やだよぉ、先生ってばそんなに褒めちゃって!私の料理なんて本当に家庭料理なんですよ!」

「そんなことないですよ!今日の兎肉の真っ白豆シチューも絶品ですよ」


自分には3人の姉ちゃんがいるけど、みんな結婚して出ていってしまったから、いつもは広いだけのこの食堂で母ちゃんと2人きりで静かに味気ないご飯を食べていた。
お客さんなんて滅多に来ないし、来たとしても一緒に食べることなんてしない。

こうして兄ちゃん達と一緒に4人で食べるようになって、自分は兄ちゃんから傭兵としての話や剣や魔法の話を聞けて楽しいし、母ちゃんも姉ちゃんと色んな話をして楽しそうに笑っている。


メニューは同じなのに味気なかったご飯がこんなに美味しくて、黙って食べていた食事の時間がワクワクした気持ちになるんだと、稽古の時だけじゃなくて普段の生活もガラリと変わってとっても嬉しかった。



剣のこと、魔法のこと、旅のこと、傭兵という仕事のこと。こうして誰かに教えてもらうのは新鮮だった。
周りの友達が父親から教えてもらうような経験談なんて、自分は友達からの又聞きばかりだったから、憧れた傭兵の兄ちゃんに教えてもらえるのは友達にも鼻が高かった。



「ねぇねぇ兄ちゃん。傭兵のランクってどうやって決まるの?」

「傭兵として登録すると、まずは最下位のランクFから始まる。ランクを上げていくには、傭兵組合に行ってそこにいる試験員と試合をやるんだ。そこで勝てばランクは上がるが、負ければランクは上がらないままだな」

「へぇ!そうなんだ。やっぱり試験員って強い?」

「ランクAくらいまでなら大したことはないが、それ以上になると試験員として登録しているそのランクの傭兵を、他国に居ようがわざわざ呼び出してくる。
試験員の傭兵はもちろん現役のSやSSだし、強さも文句はないから最初は何度か落ちる羽目になるだろうな」

「そうなんだ~!俺、傭兵になるのが楽しみ!」


ワクワクした気持ちでミントティーを飲むと、隣に座っていた母ちゃんが『はぁ~』と大きな溜息をついた。


「セジル…。アンタ本当に傭兵になるのかい?軍に入るとか宿屋を継ぐっていう選択肢もあるんだよ?」

「俺、傭兵が良い!だって軍の副官や将軍になれるくらいの強さがあっても、敢えて傭兵でいる方がかっこいいじゃん!」

「はぁ。まったく困った子だねぇ。うちの宿屋、どうなっちまうんだろうか」

「姉ちゃんの誰かが継げば良いんじゃないの?」

「あの子達ねぇ…」


頬杖をついた母ちゃんは姉ちゃん達のことを思い浮かべたのか、壁に飾られている大きな押し花が入れられた3つの額を見ていた。


結婚する時、蜜が甘いピピリアのピンク色の花で作った押し花を額に入れて、花嫁の親に贈るこの国だけの習慣がある。
姉ちゃんが家を出て行く前日、姉ちゃんからこれを受け取った母ちゃんは人目を気にせず泣きわめいていた。泣きわめいたのはその時だけだったけど、それから時間が経った後も、この押し花を見ながらボーっとしているのを見たことがあった。

その時の母ちゃんは決まって暗い顔をしているから、どんなにすぐに聞きたいことがあっても時間を置いてからじゃないと話しかけられなかった。



「女将さん、このトナカイ肉の肉団子も美味しいですね。かかっているのはトマトみたいに赤いですけど、味は真っ白豆みたいですね。どうやって作るんですか?」

母ちゃんが暗い顔をした時、母ちゃんの前に座っていた姉ちゃんが別の話を振ってくれた。姉ちゃんがこっちを向いてウインクをしてくれたから、どうやら重い空気を変えてくれたらしい。



「このソースは真っ白豆と人参をすり潰したもので、コンソメと水で長時間煮込んだものなんですよ。長時間煮込むと真っ白豆がこういうトマトみたいに赤い色になるんだけどーー」


さっきまで暗い顔だった母ちゃんが嬉しそうに料理の話を始めると、自分も兄ちゃんにまた傭兵の話を聞かせてもらった。



「セジル君、また明日ね~!」

「おやすみなさーい。兄ちゃん、待ってるね」

夕食を食べ終えると兄ちゃん達は一度部屋に帰るけど、すぐに兄ちゃんだけが食堂に戻ってきて、お茶を飲みながら今度は2人きりで色々なことを教えてもらう。
 

いつもなら『夜更かしするな』『早く寝なさい!』とか言う母ちゃんも、この兄ちゃん達は特別扱いしてくれているから、今はこうして見逃してくれている。
そんな非日常が嬉しくて、兄ちゃん達が来てからはずっとワクワクした毎日が過ごせていて、寝不足なんて気にならない。



1番の寝不足の原因は、剣の稽古と同じくらい楽しみな『夜の勉強』だ。
こういう話は友達の間でもちょっと話すけど、具体的な話とか、まさかその現場を見るなんて聞いたことが無い。
普通は父ちゃんが『男だけの内緒の話』としてちょっとずつ教えてくれるらしいけど、やっぱり自分に直接教えてくれる人はいないから、友達からの又聞きばかりで面白くなかった。



「昨日見せたのは女が上になる騎乗位だ。正常位も騎乗位も、どの体位だろうがちゃんと濡らしておかないと痛がるし、入りにくいからちゃんと前戯はやっとけ。前戯は毎日長くやってるから分かるだろ?」

「う、うん」

昨日見せてもらったのは、ベッドに横になる兄ちゃんの上に姉ちゃんが乗るやり方だった。こういうのは男が上になると思っていたから、初めて見るその格好にちょっとびっくりした。
自分が寝る時、ベッドに横になって裸の姉ちゃんが自分の上に乗って動いているのを想像してみた。
自分が姉ちゃんを見上げ、あの柔らかそうな胸を兄ちゃんがやるみたいに揉んでいるのを思い浮かべながら、腰を上下に動かしているとすごく興奮した。

兄ちゃんが来てから毎晩自分の興奮が止まらなくて、翌朝姉ちゃんを見るとどうしても顔が赤くなってしまう。
一度、姉ちゃんが『顔が赤いけど熱があるのかな?大丈夫?』と言って自分のおでこに手を当ててくれた時、柔らかい手が触れた瞬間に色んなことを思い浮かんでしまって思わず逃げ出してしまった。
その後、姉ちゃんが『急に触ってごめんね。思春期の男の子って難しいね』と言って、ちょっと距離を置かれるようになってしまった。
助かったような、ちょっともったいないような…。今でも胸がドキドキして頭の中がゴチャゴチャしたままだ。



「今夜は後ろからのを見せてやるよ」

「後ろから?」

「そう、後ろから挿れるんだよ。
傭兵だろうが軍人だろうが、名前が売れて有名になると近付いてくる女が増えるから気をつけろ。普通の女も娼館で買った女でも、その女が情報を欲しがるスパイかもしれねぇし、暗殺者だったり、暗殺者を招き入れる仲間の可能性があるから信用するな。
剣を手の届く所に置き、取り押さえられるように後ろからやれ。やり方は、まぁ見てれば分かる」

「う、うん…」

「本気になった女とだけ正常位や他の体位でやれ」

ということは、兄ちゃんにとって姉ちゃんは『本気の人』ってことなんだろう。優しそうな姉ちゃんと、かっこいい兄ちゃんの組み合わせはとっても似合ってると思う。
いつか自分も、そういう相手を守りながら一緒に色んな所に旅をしてみたいと、兄ちゃんの旅の話を聞きながら憧れた。



その晩、寒くない様にたくさんの服を着て、兄ちゃん達の部屋の窓が見えるいつもの木の下に来た。
外気に晒された顔は冷たくて痛いほどだが、これから始まる夜の勉強を考えると顔が熱くなって来た。

ベッドの側に立った兄ちゃんは服を脱いで裸になると、隣に立っている姉ちゃんの服を脱がせ始めた。姉ちゃんは恥ずかしいらしく、今日も腕で胸を隠したが、兄ちゃんはその手を掴んで自分の首の方に持って行った。

姉ちゃんのふっくらとした胸が見えると、自分の身体の奥がキュンとして一気に熱くなった。
兄ちゃんの手が柔らかそうな膨らみを鷲掴みにして、ツンと上を向いている尖端を指でつまんだら、姉ちゃんはビクリと身体が跳ねて兄ちゃんにキスをし始めた。
しばらくキスをしていた兄ちゃんがキスを止めて姉ちゃんを横抱きにすると、兄ちゃんの腹の辺りに大きなものが見えた。


ーーうわ…。やっぱり何度見ても兄ちゃんのすごい。ちっちゃい姉ちゃんの中にあんな物が本当に入っているんだろうか。

兄ちゃんの力強く反り返る存在は、自分のものと比べてもその見た目も質量も全然違う。俺もあんな風に大きくなるのかな。
兄ちゃんのものには遠く及ばないが、着込んだ服の裾を掻き分けて、ズボンの中に手を突っ込んで硬くなった自分のものを握った。



ベッドの上におろされた姉ちゃんに覆いかぶさった兄ちゃんは、姉ちゃんの胸を揉みながら首元に顔を埋め、身体を擦りつけるように動き始めた。
前戯を始めた兄ちゃんは、首元から胸、お腹に向かって時間をかけながら移動して、最後に足を開かせて足の間に顔を埋めたり、指を挿れたりする。

優しそうな姉ちゃんがそんな恥ずかしい格好をするなんて考えられないけど、姉ちゃんは顔を赤くしながら兄ちゃんの赤い頭に手を当ててグシャグシャとかき回した。


しばらくすると、姉ちゃんは兄ちゃんに背中を見せてお尻ペンペンされる時みたいな格好になって、兄ちゃんがお尻にくっつくように膝立ちになった。
大きなものを掴んだ兄ちゃんが、突き出したお尻の辺りに何度かこすりつけるように上下に動かした後、狙いを定めて腰をググッと押した。
あんなに大きくて長いものが入って行ったのに、姉ちゃんの顔が痛がるどころか嬉しそうに顰められ、口が大きく開いた。音が全く聞こえないから分からないが、何か声を出しているらしい。

でも兄ちゃんは姉ちゃんに構うそぶりもせずに、姉ちゃんの腰を掴んで身体を前後に動かしていて、兄ちゃんの大きいものの根元が見えたり見えなくなったりする。
兄ちゃんが身体を動かす動作はそのままで、右手を腰から外して姉ちゃんの胸に手を伸ばした。胸を揉まれる姉ちゃんは顔を赤くさせて、目をギュッと瞑って泣きながら何かを言っているようだ。
姉ちゃんの腰をまた両手で掴んだ兄ちゃんの動きが激しくなると、姉ちゃんはクタリと力なくベッドに倒れこんで枕に顔を押し付けた。
兄ちゃんが姉ちゃんの腰を掴んでいるから、お尻だけは高い位置にある。


「…っぁ。うっ…」

横から見ていると、姉ちゃんの腰から背中にかけて綺麗に反っているのがとても綺麗だと思ったら、しごいていた自分のものがビクリと跳ねて射精した。
肩で息をしながら視線の先の2人を見ていると、激しく動いていた兄ちゃんの動きがピタリと止まった。
自分との稽古の時は息を乱す姿を見ることはないけど、肩で息をしている今の兄ちゃんの横顔は昼間見る顔よりも野生的でカッコいい。

射精を終えたらしい兄ちゃんが姉ちゃんの背中に顔を近づけて、綺麗に反っている線を自分に確認させるように腰から首まで舌を出してなぞっていく。
身体を離した兄ちゃんが自分の方を向いてニヤリと笑うと、俺は恥ずかしくて、顔が赤いのを自覚しながら目を背けた。


その後も続く2人の秘め事には恥ずかしくて時折視線を逸らしてしまうが、窓の内側で行われている光景は自分の心と身体を激しく動揺させる。

いつか自分もこんな風に誰かとする日が来るんだろうか。


兄ちゃんは仰向けになった姉ちゃんの上に覆い被さって、キスをしながら身体をすり合わせるように動き始めた。姉ちゃんの白い手が浅黒く広い背中をさすっているのを見ると、対照的な色合いと官能的な手の動きに妙に胸がザワザワとしてきた。
昼間に見る姉ちゃんとは違って、夜の姉ちゃんはとっても色っぽい。女ってこんなに昼と夜で変わるんだと感心するくらいだ。

窓から見える姉ちゃんは兄ちゃんに揺さぶられながら何度も顔を顰めて苦しそうにしているけど、目を開けた時は兄ちゃんを優しく包むような目をしている。兄ちゃんは激しい何かを秘めた野生的な目で姉ちゃんを見て、何度もキスをしている。

2人から目が離せなくて、結局夜更けまで激しく絡み合う2人を見ていた。




翌日。
いつも通りに兄ちゃんに剣の稽古をしていると、兄ちゃんは宿の建物の物陰に足音を立てずに歩いていった。どうしたのかと兄ちゃんを見ていると、兄ちゃんは自分の顔なじみの3人を物陰から引っ張り出した。


「どうして覗いてんだ?」

「えっと…」

兄ちゃんが怖いのか、3人は言いづらそうに、助けを求めるように俺を見てきた。


「お前らセジルの友達か?」

「う、うん…」

小さな声でデルがそう答えると、兄ちゃんは俺の方に向かって3人の背中をポンと押した。


「セジル。お前に用があるみたいだぞ」

兄ちゃんに促されて立ち止まったままの3人に歩み寄ると、3人は一度俺を見たけどバツの悪そうな顔をしてまた俯いた。兄ちゃんは少し離れた所にある木にもたれて腕を組んでこっちを見ている。その格好がとっても様になってカッコイイ。


「俺に何か用?」

「いや…。その…」

「セジルがどんな稽古してもらってるのかって気になったから…」

「セジルばっかりズルいよ。俺たちも習いたいよ」

3人は兄ちゃんに聞こえないように、小さい声でそう言ってきた。


「兄ちゃんは俺のだもん!お前らには父ちゃんがいるから良いじゃん!今までお前らが父ちゃんと何かする時は、すぐバイバイしたくせに!」


今まで3人は自分の父ちゃんと出かけたり剣の稽古をつけて貰う時は、必ずバイバイと言って遠ざけられてきた。
父ちゃんがいない自分が惨めで、寂しくて。みんなが父ちゃんと一緒にいる時、自分はいつも宿の裏のこの場所で泣きながら木刀の素振りをしていた。母ちゃんに泣いているのがバレないように、汗だくになるまでずっと素振りをした。


「それは…。ごめん」

「これからはそういうことしないから、俺達も習わせてよ」

「ダメ!兄ちゃんと稽古するからバイバイ!」

今まで言いたくても言えなかった憧れのセリフを言ったのに、何だか胸はスッキリしないし、目の前の3人は怒った顔をした。


「セジルばっかりズルい!」

「ズルくない!」

3人の中で1番力が強いノーズが自分の肩を掴もうとすると、その手が肩に触れる前に兄ちゃんの手がノーズの腕を掴んでいた。


「おい。喧嘩するな。ついでだから、お前らも一緒に稽古してやるから落ち着け」

「「「えっ!いいの?!」」」

3人は一斉に「わぁぁ!」と歓声を上げて飛び跳ねて喜んでいる。



「お前は嫌か?」

「兄ちゃんが良いって言うなら……」

兄ちゃんと兄ちゃんとの稽古は自分だけの『特別』だったのに、友達と一緒だと『特別』じゃなくなってしまうじゃないか。やっと出来た『自分だけの特別な時間と存在』だったのに…。
兄ちゃんを取られたみたいで悔しくて、俯いていると兄ちゃんが俺の頭を押し付けるように強く撫でてくれた。



「友達は大事にしとけ。みんなが上手くなれば、相手になるお前も自然と上達するから一緒に稽古するのはメリットもある。ライバルは必ず必要だ」

「でも…。せっかく兄ちゃんから俺だけ特別に教えてもらってたのに…」

兄ちゃんが小さく笑うと、耳元で小さく囁いた。


「夜の稽古はお前にしか見せないからしっかり勉強しとけ。俺達が居なくなっても絶対誰にも言うなよ」

「う…うん!」


それから3日。いつもの4人で兄ちゃんの稽古を受けた。
最初は兄ちゃんを独占できないことにモヤモヤしたけど、一緒に稽古をしているとみんなと一緒に剣の打ち合いが出来ることで、また違った楽しさが加わった。


「そろそろ宿の食堂で休憩だ」

兄ちゃんと一緒に宿の食堂に戻ると、そこには母ちゃんと姉ちゃんが何かをしていた。
母ちゃんはすっかり姉ちゃんと仲良くなったらしく、俺が稽古している間はずっと裏の空き地が見える席でお喋りしたり何か作っている。

他に客もいない食堂の片隅で4人掛けのテーブルに俺たちが座って、兄ちゃんは壁にもたれかかってあのカッコいいポーズをした。
一度鏡を見ながら同じようにやってみたけど、自分じゃどうにも様にならない。やっぱり強い人じゃないとキマらないポーズなんだろう。いつかこのポーズが似合う男になりたい。


「兄ちゃん、つえ~よ~!!」

「1対4でも全然ダメだぁ~!」

「兄ちゃんって、傭兵のランク何?」

「あ!それ、俺も聞きたい!傭兵速報持ってくるよ!」

俺は別のテーブルに置かれた傭兵速報を持ってきて、みんなのいるテーブルに傭兵の名前やランクが載ったページを開いた。


「名前はルクト・ヴェルネスだ。ランク調べてみな」

兄ちゃんから教えてもらった名前をみんなでブツブツ小声で復唱しながら、ランクFの所から名前を探し始めた。


「俺、こっちから探すよ」

「じゃあ俺はこっち」

「俺はこっち!」

「んじゃ、俺はここから」

世界中で傭兵として登録している人が書かれているのだが、その名前は登録順に並んでいるから、何ページにも渡って膨大な量の名前が書いてある。そんな場所からたった1人だけを探し出すのは、なかなか手間のかかる作業だ。
ランクがSかSSになると名前の数も随分と少なくなるけど、FからAまでは小さな字でビッシリと書かれている。



「うーん、Fにはいないみたいだ」

テーブルの中央に広げた新聞に4人で身を乗り出し、名前を丁寧に指でなぞりながら確認したけど、教えてもらった兄ちゃんの名前はなかった。4人で首を回しながら次のランクEのページを捲ると、兄ちゃんがプッと短く笑った。


「上から調べろ。そっちの方が早い」

「え、上?」

兄ちゃんの言う通りに、みんながドキドキした目で1番上のランクSSからそれぞれの指で1つ1つ名前をなぞり始めた時。


「「「「え…?」」」」


「俺の名前はあったか?」


兄ちゃんの声をかかると、みんなで一斉に兄ちゃんを見た。その時の兄ちゃんは、口元を片方だけ上げて自信満々で面白そうにしていた。


「ランクSS?本当に?ってことは二つ名があるの…?」

「あるよ。『赤い悪魔』だ」

「本当?嘘じゃない?」

みんなで口々に『本当?』と言いながら兄ちゃんを見ると、兄ちゃんは旅装束の襟元を緩めてネームタグを引っ張り出した。


「本当だよ。ネームタグ見るか?」

兄ちゃんが首に下げたネームタグを俺たち4人に見せてくれたけど、そこには間違いなく『ルクト・ヴェルネス』という名前と一致する個人番号が刻まれていた。


「すごい。本当だ。俺、そんな人に剣を教わったんだ…。信じられない。俺、『赤い悪魔』に憧れてたんだ」

「セジルはいっつも傭兵ごっこの時『赤い悪魔』だもんな」

「俺みたいなのに憧れてくれたのか。ありがとな」

「じゃあさ!兄ちゃんは『青い悪魔』とか『黒い悪魔』、『白い悪魔』とか会ったことあるの?」


感動で言葉が出ない自分に変わって、ハイグが身を乗り出して兄ちゃんに質問した。


「あるよ」

「ねぇねぇ!話聞かせて~!」

「俺も聞きたい!」

その後は4人でずっと憧れの『悪魔』の話を聞かせてもらった。3人の親が夕食の時間だと呼びに来るまで話を聞かせてもらったけど、みんなが憧れる『悪魔』の兄ちゃんから聞きたい話は全然尽きなくて、みんなは親に怒られながら名残惜しそうに帰っていった。



その翌日。
みんなで稽古をしてもらって食堂に集まった時、座ったテーブルの上に傭兵速報を置いて、壁にカッコよく凭れ掛かる兄ちゃんをみんなで見上げた。


「兄ちゃん!今日は『白い悪魔』との戦いの話を聞かせて!」

「その後は、『黒い悪魔』の『黒鷹』について教えて!」

「俺!『青い悪魔』の戦い方を聞きたい!」

「兄ちゃんが戦った将軍とか副官の話も聞かせて!」

聞きたい話をみんなでリクエストすると、兄ちゃんは短く吹き出すように笑った。


「話すのは構わないが、今日だけじゃ時間足んねぇよ。もっと話を聞きたいか?」

「「「「うん!聞きたい聞きたい!」」」」


それから兄ちゃんは宿をまた延泊してくれた。
稽古終わりのいつもの食堂で、『悪魔』達の話、戦場で出会った他の傭兵の話、将軍や副官と戦った時の話、失敗した時の話。時間をいっぱい取ってくれて、色んな話を聞かせてくれた。

ずっとずっと憧れていた『赤い悪魔』が、まさか兄ちゃんだったなんて思いもしなかったけど、憧れの人が目の前にいるのがとっても嬉しくて。父ちゃんが死んでしまってから1番嬉しい時間だった。


そして兄ちゃん達が町を出る前日。みんなで決めた兄ちゃんへの最後の質問を投げかけた。

「ねぇ、兄ちゃん。兄ちゃんが1番怖いことって何?」

「怖いこと?そうだな…」


やっぱり大国の筆頭将軍だろうか。それとも、親や優しそうなあの姉ちゃんだろうか。みんなでドキドキしながら、壁にもたれて考え込んでいる兄ちゃんの返事を待った。


「特に怖いことなんてないが、敢えて言うならプライドが壊れることだな」

「プライド?例えば?」

思いもよらない返事をもらって、思わずすぐに聞き返していた。


「弱っちい奴に負けたり、一度負けた相手にもう一度負けたり、目指していた奴に歯が立たない時とか。今まで『赤い悪魔』として積み重ねてきた実績を壊すようなことだな」

「なるほど~」

「お前らも成長していけばどんどんプライドが高くなっていく。そのプライドは『それまでの自分の生き様』だから、それを傷つけられたりするのは自分を否定することになる。だからこそプライドは死守したくなる」

そう言い切った兄ちゃんはとってもカッコよかった。


ーープライドかぁ。まだ自分にはそういう『生き様』みたいなものが浮かばないけど、成人して広い世界に出たら、そういう生き様を一つ一つ築き上げながら兄ちゃんみたいにカッコいい男になりたい。

周囲の3人の顔を見てみると、みんなそう思ったのか『はぁ』と熱い溜息を尽きながら兄ちゃんを見ていた。


ーーーーーーーーー


町を出る日の朝、部屋の机でシェニカは何かを書いていた。


「なんだこれ?」

シェニカの手元を覗き込むと、緑色のベッタリしたような何かがが詰まった小瓶が数本机の上に置いてあった。


「これはアカギレに効く軟膏だよ。ルクトがあの子達の稽古をしている間に女将さんと一緒に調合してみたの。もう町の人に配ってあるのよ。よく効くって喜んでくれたからレシピを書いてるの」

「へぇ。そんなことしてたのか」

「そうだよ~。ルクトがあの子達と稽古している間、ずっと食堂の窓を見ながら女将さんやお母さん達とおしゃべりしたりしてたの。
ルクトってば、結構子供の面倒見が良いのね。剣の練習に付き合うからって、治療院が終わっても1週間も延長したからビックリしたわ。
そうそう。女将さんや他の子のお母さん達が『うちの子、何だか変わったのよ』って凄く喜んでたよ」



治療院が終わってから1週間も滞在を延長して、4人に稽古をつけてやった。
全員素直な性格だからか、言われたことは反論すること無く受け入れて改善しようとするから、最初に比べて剣の腕は見違えるほど成長したと思う。
4人の中で1番精神面での幼さがあったセジルだが、夜の手ほどきまでしてやったから色んな意味で成長したんだろう。
シェニカの顔を見ると夜の光景を思い出すのか、ずっとシェニカには恥ずかしそうにしていたのは笑えたが、親や友達に対する接し方は随分と素直になったと思う。


そして俺達が町を出る時を迎えると、女将とセジル、その友達の3人の少年やその親達、町長や顔も知らない町の連中までもが町の門まで見送りに来た。


「兄ちゃん。俺、兄ちゃんみたいになるから!」

セジルは俺をしっかりとした目で見上げて宣言した。


「それはどっちの意味で?剣の強さか?それとも夜の方か?」

俺はセジルの耳元で囁くと、すぐに耳まで真っ赤にした。こういうウブさは、シェニカとは違った可愛さがある。


「ばっ!馬っ鹿じゃねぇのっ!剣に決まってるだろ!」

「それにしちゃあ夜の方が真剣だった気がするけどな」

「ーーっ!」

「まぁ、両方頑張れ。怪我には気をつけろよ」


また顔を茹でダコのように真っ赤にしたセジルは、恥ずかしそうにコクンと頷いた。なぜか言いにくそうにモジモジしているセジルの右手を見ると、何かを握っているようだ。セジルの性格と指の隙間から見える物を想像すると、俺は自分の胸ポケットから小さな革袋を出した。


「これから先、男同士の話がしたい時も出てくるだろ。俺が出来ることはあんまりないが、相談相手になって欲しかったらフィラを飛ばしな」

革袋から自分の赤い塊を取り出して、魔力を込めればポロリと零れ落ちた小さなカケラをセジルに渡した。


「いいの…?」

「構わねえよ。お前の父ちゃんにはなれねぇけど、相談相手くらいにはなれるだろ」

「ありがとう兄ちゃん。これ、俺のカケラなんだ」


セジルが握りしめていた手を開くと、そこには白いカケラの中に青色の小さな雫型の模様があった。手を伸ばしてそのカケラを受け取ると、セジルはとても嬉しそうに笑って抱きついてきた。

ガキに抱きつかれるなんてセジル以外にやられたことなんてなかったが、こいつだったら不思議と悪い気がしない。セジルが一生懸命だからなのか、同じ年頃の時の過去の自分と重ねているからなのか、こいつならカケラを交換しても良いし、何かあったら力になってやってもいいと思えた。

シェニカの子供好きが多少なりとも影響したのだろうか。



「あ、セジル君。ルクトの字は物凄く汚くて、クセが有りすぎる字をしてるから、解読方法のメモを渡しておくね。もしそれでも読めなかったら『読めません。ちゃんと分かる字で書いて下さい』って手紙を書いてね」

シェニカはそう言って、エアロスの『世紀の発見』を書いたメモをセジルに渡していた。



「あ、そうだ。俺の名前はセジル・アールストナだからな!4年後に成人したら新聞でランク探してね!」

「ああ。楽しみにしてる」

俺達はセジル達に見送られて、スノリーの町の門をくぐってアビテードの首都に向かって旅を再開した。森の中を早足で歩いていると、隣を歩くシェニカは嬉しそうに手を繋いで俺を見上げてきた。



「ルクトが誰かと進んでカケラを交換するなんて珍しいね。しかもまだ成人前の子供に!」

「なんだか知らねぇけど、セジルなら交換しても良いと思った」

「お父さんがいないってことで、ルクトに伝わるところがあったのかもね」

「そうかもな」

セジルに剣の稽古をつけ始めてすぐ、父親に対する思慕や、母親や友人に対する葛藤、俺に対する執着は手に取るように分かった。それはシェニカの言う通り、俺も小さい頃に親がいなくなったからかもしれない。
ただ、ドルトネアの子育ての仕組みは他国とは大きく違うから、あまり『親』を意識したことはなかったのは、ある意味幸運だったのかもしれない。


俺はシェニカと繋いだ手に少しだけ力を込めて握りしめた。

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