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第20章 渦紋を描く
6.若き王の巣立ち
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今回はポルペアの筆頭将軍ジルヘイド視点のお話です。
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「シェニカ様がフェアニーブでの尋問に出席されると知らせが届きました!」
この一報が届いてからというもの、ポルペアの王宮内は一気に慌ただしくなった。
シェニカ様と確実に会える機会など滅多にないのだから、ここは誰かがフェアニーブに行き、治療のお礼を述べて祝賀の招待状を渡そうということになったのだが。自分は面識があるから行くのは決定したが、陛下も行きたいと強くおっしゃった。フェアニーブへ向かうには非友好国も通過することになるため、陛下の身に何かあっては困るから、王太子である異母兄に役目を任せるべき、と大臣たちが説得したのだが。陛下は頑として聞き入れなかった。
結局、フェアニーブで一行の安全の保障と戦争の一時禁止が決まったから、陛下も一緒に向かうことになったものの。今回の件に限らず、時折頑固さが見えるようになってきた。それでも亡き兄王に比べれば可愛いレベルだし、基本的に素直だから悩まされることは少ない。まだまだ頼りなさはあるものの、責務を全うしようと努力していることを知っているから、誰も諌めたりはしない。
ただ、異母兄が王太子を務めるのは、陛下の子が成人するまでと決まっているから、早く妃を迎えてほしいと、誰もが思っているのだが。一通り国内にいる独身令嬢に会わせたし、他国から来る縁談にも目を通しているものの、未だに婚約者すら決めようとしない。
痺れを切らした大臣が、「もしや陛下には誰か思う相手がいらっしゃるのでは? そうであるなら、皆が協力致しますよ」と、会議後の雑談の際に聞いてみたところ。
「そういう相手はいないんだけど、ジルみたいに恋愛結婚をしてみたいんだ」
と照れながら言われた時に、周囲は一斉に自分を見てきた。咎めるような視線に晒された瞬間、『陛下のためにも継続して教えてやって欲しい』と言われたから拙い自分の恋愛話をしただけ! こうなったのは、決して私だけのせいではない!と叫びそうになった。
兄王の失敗もあるから、結婚相手の選定に慎重になるのは仕方ないが、安定的な王位継承のためにも、恋愛結婚に拘らず、さっさと結婚してほしいと皆が思っているものの。陛下が囚人同様の生活を長期間に渡って送ることになったのは、前王を引き摺り下ろせなかった皆にある。今まで苦労した分、人生を共に歩む相手とは幸せであって欲しい、と皆が願っているから、しばらくの間は陛下の意思に委ねても良いのではないか、ということで決着した。
そこで積極的に舞踏会や茶会を開いたり、貴族や大商人らが集まる夜会に足を運ばせてはいるものの。女性には少々奥手らしく、気の利いた言動がなかなか取れない上に、感情が顔に出てしまう。そのため、令嬢達の方が積極的になっているのだが、今度はその空気に圧されてしまうようで、陛下を余計にしどろもどろにさせてしまい上手くいかない。こうなったら、閨の勉強ということで、取り敢えず女性経験だけでも積んでもらおうと、王太子殿下が勧めてみたのだが。
「ジルみたいに好きな人としたいから、知識だけでいいや」
と言われてしまったそうで、私は悲鳴をあげそうになった。皆の期待に応えるべく、ナディアとしか経験がないとか、初体験の話など、恥ずかしい質問にも嘘偽りなく話したというのに。身持ちが堅いのはいいことだが、なぜ私ばかりが責められる空気に晒されるのか。本当に理不尽だ。
「ジルヘイド様。身の安全はもちろんですが、外交の手助けなども頼みましたよ」
「もちろんです」
フェアニーブに向けて出発する日。馬の調子や馬車の設備を確認をしていると、心配で仕方ない宰相様に念を押された。
今回向かうのは、陛下、外交経験が一番長いユペタ大臣、護衛に自分と将軍が2人、それぞれの副官と数人の文官達となった。本当はもっと人数を揃えたいのだが、大所帯になり過ぎてしまうし、陛下が頼りないから人数を揃えたのだ、という印象を与えてしまう。吟味した人選ではあるが、外交面で何か問題が起きるのではないかと、皆が非常に心配している。
陛下本人も初めて国外へ出るということで、好奇心もあるようだが、やはり緊張しているのが見て取れる。ただ、安全を保障される機会など滅多にないから、他国の人間や文化に触れて、良い刺激をもらってくれたらいいなと思う。
旅路はトラント領を通り、ウィニストラを経由した方が早いのだが、渦中の国に足を踏み入れるのは避け、ポルペアの南にある山脈に囲まれたアルケイドを経由することにした。アルケイドはいくつもの山に囲まれた盆地部分が国土で、周囲の山脈を形成する山の1つ1つに、世界地図では省略される面倒な小国がある。
この山の小国は、元々山脈全てが1つの国だったのだが、それぞれの山にいた領主が仲違いし、一気に独立したという経緯がある。国王同士は今でも仲が悪いのだが、国民同士は元々同じ国だった影響か非常に仲が良く、国交も盛んで山脈の国同士で殺し合うことを嫌っている。そのため、山の国同士で争う時は、あらかじめ日程を設定して、綱引きや玉入れ、リレーといった安全な競技や、酒の早飲みやチェス、トランプなどの遊びの競技も行い、負けた方が街1つ分領土を失うということになっていて、山の国民達が楽しみにする一大イベントになっている。
再度1つの国になるよう誰かが主導すればいいのにと思うのだが、山の国同士で殺し合おうとすると即座に民衆の蜂起が起きるのに、統一しようとする気概のある者はどこからも出てこないらしい。
そんな山の国は、山の下にある周辺国にも頻繁に戦争を仕掛けてきたのだが、ポルペアと山の2国の国境線が交わるような場所では、時々山の国同士が同じ場所、同じタイミングで攻めてくる。正式に同盟を組んでいるわけではないらしいが、山の国同士は敵対しないため、事実上の同盟軍による戦いで面倒臭かった。
しかし最近何を考えているのか。山の各国があちこちから荒くれ者を集めては訓練を施し、国境を跨いで田畑を荒らし、行商人や旅人、国境に近い村や町を襲って金品を奪うなどの山賊行為をさせるようになった。荒くれ者はポルペアにも出ていたのだが、我が国との関所がある山の一部をアルケイドが手に入れて以降、山の国すべての敵意はアルケイドに向けられた。
そのため、アルケイドは荒くれ者の襲撃を集中的に受け、その被害規模は徐々に拡大していく一方という状況だから、当然国民の不満は募り、なんとかしてくれという声が出ている。その期待に応えるべく、アルケイドは軍を動かして討伐しているものの、やってもやっても湧いてくる。
根本的な解決には小国を全て潰すしかないと考えたアルケイドは、山の国への侵略を優先しているため、ポルペアへ侵攻する様子は見られていないが、友好関係は築かれていない。
陛下の初めての外交は、アルケイドとの挨拶を兼ねた会談になる。最初の外交が非友好国という状況は厳しいとは思うが、暗殺は行われない、移動中は襲われない、国は侵略されないと決まっているから、無事に終わるだろう。
この取り決めがなかったら、陛下を連れて長距離を移動するのは困難で、会談の場で何かが起こる可能性もある。また、自分たちが留守なのをいいことに、サザベルの暗躍を助長させたり、最近軍の動きが活発化しているギルキアが揺さぶりをかけてきたりするだろう。一瞬たりとも気の抜けない状況が続くのは、同行する者も留守を守る者も気が気でない。本当にこの決議が通って良かったと思っている国は多いだろう。
会談が行われるアルケイド王宮内の庭園には、美しいバラがたくさん花を咲かせている。設けられた席に居たのはこの国の女王と宰相で、後方に控えた2人の将軍らと共にこちらを無表情で見据えていた。場所こそ華やかではあるが、非友好的な空気に陛下が一段と緊張したのを感じた。
「はじめまして。私はジョアンナ・リーベリス=アルケイドと申します。お会いできて光栄です」
「はじめまして、エルシード・オルフェウス=ポルペアと申します。お会い出来る日を迎え、大変嬉しく思います」
定型的な挨拶を終えると、女王の勧めで椅子に座った。自分がこの女王を最後に見たのは陛下の父王がご存命の時だったが、その頃と比べて白髪が増え、動作に機敏さを感じないなど、随分年齢を感じる。まだ50歳半ばくらいだと思うが、このような変化があるということは健康に問題があるか、苦労事が多いのだろうか。
「建国と御即位、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「お顔立ちが母君に似ていらっしゃいますね」
「母の記憶や思い出がないので、そう言って頂けると嬉しいです」
緊張を隠しきれない陛下を無表情に見ていた女王だったが、急にフッと口元が緩んだ。
「その照れたお顔なんて、本当に似ていらっしゃる」
陛下が困惑すると、女王は面白いことでも思い出したのかクスクスと笑った。
「もう随分と昔になりますが、ギルキアから帰国しようとマードリア領内を移動している時、山の方から『くそくらえ~!』とか『下手で悪かったな~!』などと叫ぶ声が聞こえてきたことがあったのです。気になって調べたら、ある令嬢が妃教育のストレス発散のために、山で叫んでいることが分かったのですよ。その報告を聞いた時は、そんな破天荒な令嬢がいるのかと笑ってしまいましてね。
それから年月が経って、母君と初めてお会いした時には慎ましやかな王妃となっていらっしゃいました。2人きりになった時、私がこっそり叫んでいた話をすると、母君はすごく恥ずかしがっていらっしゃって。陛下の照れたお顔を見たら、その時の母君のお顔を思い出しました」
「そ、そんなことがあったのですか…」
陛下の母の話といえば、王妃になられた後のことしか聞いたことがなかったが、どうやら少々変わった方だったらしい。そう考えると、サジェルネ殿下の王族らしからぬ部分は、王妃様由来のところがあったのかもしれない。きっかけがなかったからか、陛下は今まで母君の話を誰にも聞くことはしなかったが、こういった形で知ることになろうとは。
王妃様が所有していた宝石やドレスといった価値の高い遺品は、サジェルネ殿下が全てネニア妃に貢いでしまった上に、それらをサザベルに送られてしまったため、陛下には母君を偲ぶ形見といえば肖像画くらいしかない。サザベルとは、国王の愛娘だったネニアを殺した影響で今後も非友好国のままだろうが、いつかサザベルの手に渡ってしまった物を取り返したい。
「昨年から気候に恵まれて小麦の収穫量も上がりまして、有り余る状況になってしまっているのです。もし良ければ取引いたしませんか?」
「どれほどの量と金額でしょうか」
アルケイドの宰相から渡された書類を見ると、通常の価格から考えても格安なもので、半年に渡って売り渡される量は、需要の大半を賄えるほどだ。
マードリアの終わりの頃には、サザベルから安く農産物を輸入していたため、国内の田畑は荒れてしまっていた。サザベルから輸入していた穀物などが、各地の備蓄倉庫などに保管されていたから、それを使うことで今はなんとかなっているものの。田畑に手を入れているが、安定的な収穫が出来るには時間がかかるため、食料問題というのは眼前の問題となっている。
サザベルとは国交断絶、周辺国のほとんどが非友好関係。ギルキアとはある程度の関係はあるが、軍の動きが活発化している上に、王宮内には一波乱起きそうな空気が流れていると聞く。隣国に輸入の話はもちかけられない状態だから、ウィニストラに取引を持ちかけるか、少し離れた友好国に輸入の話を持ちかけようと話していたところだったから、この申し出には非常に助かるところがある。
こちらの足元は見えているが、余っているからと理由をつけて取引を申し込んでくれたのは、陛下がどんな人物か見極めるつもりでいること。そして、アルケイドとしては今ポルペアと敵対したくないのだろう。提示された内容に満足したユペタ殿が頷くと、陛下は懐から取り出した紙に書き込むと女王に渡した。
「では我が国からはこちらの内容を提示させて下さい」
「半年間でこの量のコルド鉱とは素晴らしい。是非この内容で進めさせて下さいませ」
コルド鉱というのは金を掘り出す時に出てくる副産物で、溶かすには時間がかかるが衝撃に強い、という性質を持っているため、王宮や砦などの重要な建物に使用するほかに、剣や斧といった武器や馬車の金具など、多岐に渡って使われる。
金塊にできるような量が採れなくても、金を含む鉱山であれば産出できるため、それなりの国で採掘されているが、金を含まない山しかない国では輸入するしかない上に、使い勝手が良い分、すぐに消費してしまう鉱石だから、それなりに価値が高い。アルケイドでは採れない鉱石だから、女王と宰相は満足したようで頷きあった。
取引の内容から互いに友好的な関係を望んでいるのが分かり、それからは雑談を交えながら、和やかな時間が過ぎた。
「最近、我が国では温泉が湧き出ましたので、整備が終わりましたら是非お越しください」
「温泉が湧いたなんて羨ましい。息子夫婦が温泉に興味があるので伝えておきます」
「ぜひご家族でお越しください」
女王は満足そうな様子で紅茶を一口飲むと、安心したように小さく息を吐いた。
「マードリア最後の王が狂犬のような方だったので、同じ血を持つ陛下はどうかと心配しましたが。常識的な方のようで安心しました」
サジェルネ殿下が王太子だった頃、あの方は挨拶の場に出席していた初対面の王太子妃に対し、『お前のようなブサイクが未来の王妃とは。この国の行く末は知れてるな』という暴言を吐いた。すぐに先王陛下が正式な謝罪の手紙を送られたのだが、当然良好な関係など築けるわけもなく…。たとえサジェルネ殿下が存命していても、狂犬と言われても申し開き出来ない。
「ご存じのとおり、我が国は山に居座る者たちに頭を抱えていましてね。正直なところ、山を綺麗にしなければ他国への侵攻など、頭にも浮かばない状況です。ですが、その掃討には時間がかかるでしょう。貴国とは10年ほど和平を結びたいのですが、いかがでしょう」
マードリアの時代、こちらから周辺国に侵略戦を仕掛けたことはあるが、今のポルペアは鍛え直しが優先だから、他国に侵攻している余裕はない。
一方のアルケイドは、ポルペアを侵略するよりも、迷惑千万の山の小国を滅ぼすのが先。安定的な統治を行いながら、山脈の国々を支配するまでには時間がかかるから、広く国境を接することになるポルペアとは、一時的に和平を結んだ方が良いと考えたのだろう。
女王の様子から見て、そう遠くない未来にアルケイドは王太子の時代になる。10年より先をどうするかは、王太子の判断に任せたいということのようだ。
「10年の和平、お受けいたします」
「ありがとうございます。サザベルとトラントの間には、国境が曖昧な場所が複数ありました。トラントからウィニストラになっても、その問題は簡単には解決しないでしょう。大国同士が国境を接することで生まれる緊張や混乱は、時間を置かず周囲に広まります。そんな事態になれば、周辺国は戦争などしている場合ではなくなります。2つの大国の動静について、情報を共有したいと思っていますが、いかがでしょう」
「同意見です」
「では後日こちらから情報を送らせて頂きます」
サザベルとウィニストラが国境を接すれば、周辺国は理性的なウィニストラより、血の気が多い上に、あのディネードがいるサザベルの方に注意を払うことになる。彼の強力な黒魔法によって地形が変わると、川の流れまでも変わり、氾濫が起きたり、土砂崩れが起きやすくなったり、木々が燃えつくされて獣害が起きやすくなってしまったりと、間接的な被害が起こる可能性がある。
ポルペアを狙うのか、国境を接する別の国を狙うのかは分からないが、サザベルは領土と国力を増大させたウィニストラに対抗すべく、何か行動を起こす。周辺国はそんな危機感を持っているから、共に両国の動静を監視、情報を共有するのは非常に大事なことだ。大国に挟まれた国特有の悩みは他にも出てくるだろうから、アルケイドとは一定の関係が結べそうな気がする。
「宰相様に手紙を書いて参ります。この成果に皆も喜びます」
取引契約書の作成や和平協定の調印などを行って宿に戻ると、ユペタ殿は嬉しそうに自室へ入って行った。心配で仕方ない宰相様らに、陛下の初めての外交が無事成功したことを伝えたくてたまらないのだろう。人払いをして陛下の部屋にお邪魔すると、吸い込まれるようにソファに倒れ込んだ人物からため息が聞こえてきた。
「無事に終わって安心しましたね。あちらから小麦の取引と和平を申し出てくれたのは、陛下の人徳ですよ」
「空気を変えてくれたのは母様だから、私じゃなくて母様の人徳だよ。今度、母様を知る人たちに思い出話を聞きに行こうかな」
「ではこちらに呼んで差し上げて下さい。王宮内の思い出の場所を巡りながら、喜んで話して下さると思います」
アルケイドを出ると、フェアニーブへの旅路を順調に進んだ。途中、立ち寄った街で他国の一行と鉢合わせすると、すぐに会談が申し込まれた。外に出ることがなかった謎の王子が王になったこと、問題ばかり起こしていたサジェルネ殿下の弟ということで、試すような態度や無礼な言動を取られることもあったが、陛下は淡々とそつなくこなし、思いのほか順調に外交経験を積んでいった。
「これがこの街で定番の棒巻きパンか。パンを巻きつけただけのもあれば、棒に刺したウインナーにパンを巻きつけたのもあるんだね。パンをこうやって食べるのは初めてだけど、ジャムにマスタードにケチャップ、店によって違う特性ソースがあったりして面白いし、美味しいね」
「歩きながら食べられるのもいいですね」
陛下と街を見て回ったり、行商隊が開く市に足を運ぶと、ポルペアにはない工芸品、食べ物、景色など、非常に良い刺激を受けているようで、時折心からの笑顔が溢れる。成人した年齢ではあるものの、少年のような無邪気な好奇心が垣間見えると、自分たちが多感な時期を奪ってしまったと罪悪感が込み上げてくる。陛下への罪滅ぼしも含め、自分たちがしっかり支えなければと、仲間たちと確認し合った。
■■■後書き■■■
web拍手に掲載している世界地図に、新たな国名を追加しました。
※以前と同じサイズではアップロードできなかったため、全体が小さく表示されてしまいます。
※フシュカードの位置が間違っていたので修正しています。ご迷惑をおかけいたしました。m(_ _)m
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結局、フェアニーブで一行の安全の保障と戦争の一時禁止が決まったから、陛下も一緒に向かうことになったものの。今回の件に限らず、時折頑固さが見えるようになってきた。それでも亡き兄王に比べれば可愛いレベルだし、基本的に素直だから悩まされることは少ない。まだまだ頼りなさはあるものの、責務を全うしようと努力していることを知っているから、誰も諌めたりはしない。
ただ、異母兄が王太子を務めるのは、陛下の子が成人するまでと決まっているから、早く妃を迎えてほしいと、誰もが思っているのだが。一通り国内にいる独身令嬢に会わせたし、他国から来る縁談にも目を通しているものの、未だに婚約者すら決めようとしない。
痺れを切らした大臣が、「もしや陛下には誰か思う相手がいらっしゃるのでは? そうであるなら、皆が協力致しますよ」と、会議後の雑談の際に聞いてみたところ。
「そういう相手はいないんだけど、ジルみたいに恋愛結婚をしてみたいんだ」
と照れながら言われた時に、周囲は一斉に自分を見てきた。咎めるような視線に晒された瞬間、『陛下のためにも継続して教えてやって欲しい』と言われたから拙い自分の恋愛話をしただけ! こうなったのは、決して私だけのせいではない!と叫びそうになった。
兄王の失敗もあるから、結婚相手の選定に慎重になるのは仕方ないが、安定的な王位継承のためにも、恋愛結婚に拘らず、さっさと結婚してほしいと皆が思っているものの。陛下が囚人同様の生活を長期間に渡って送ることになったのは、前王を引き摺り下ろせなかった皆にある。今まで苦労した分、人生を共に歩む相手とは幸せであって欲しい、と皆が願っているから、しばらくの間は陛下の意思に委ねても良いのではないか、ということで決着した。
そこで積極的に舞踏会や茶会を開いたり、貴族や大商人らが集まる夜会に足を運ばせてはいるものの。女性には少々奥手らしく、気の利いた言動がなかなか取れない上に、感情が顔に出てしまう。そのため、令嬢達の方が積極的になっているのだが、今度はその空気に圧されてしまうようで、陛下を余計にしどろもどろにさせてしまい上手くいかない。こうなったら、閨の勉強ということで、取り敢えず女性経験だけでも積んでもらおうと、王太子殿下が勧めてみたのだが。
「ジルみたいに好きな人としたいから、知識だけでいいや」
と言われてしまったそうで、私は悲鳴をあげそうになった。皆の期待に応えるべく、ナディアとしか経験がないとか、初体験の話など、恥ずかしい質問にも嘘偽りなく話したというのに。身持ちが堅いのはいいことだが、なぜ私ばかりが責められる空気に晒されるのか。本当に理不尽だ。
「ジルヘイド様。身の安全はもちろんですが、外交の手助けなども頼みましたよ」
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フェアニーブに向けて出発する日。馬の調子や馬車の設備を確認をしていると、心配で仕方ない宰相様に念を押された。
今回向かうのは、陛下、外交経験が一番長いユペタ大臣、護衛に自分と将軍が2人、それぞれの副官と数人の文官達となった。本当はもっと人数を揃えたいのだが、大所帯になり過ぎてしまうし、陛下が頼りないから人数を揃えたのだ、という印象を与えてしまう。吟味した人選ではあるが、外交面で何か問題が起きるのではないかと、皆が非常に心配している。
陛下本人も初めて国外へ出るということで、好奇心もあるようだが、やはり緊張しているのが見て取れる。ただ、安全を保障される機会など滅多にないから、他国の人間や文化に触れて、良い刺激をもらってくれたらいいなと思う。
旅路はトラント領を通り、ウィニストラを経由した方が早いのだが、渦中の国に足を踏み入れるのは避け、ポルペアの南にある山脈に囲まれたアルケイドを経由することにした。アルケイドはいくつもの山に囲まれた盆地部分が国土で、周囲の山脈を形成する山の1つ1つに、世界地図では省略される面倒な小国がある。
この山の小国は、元々山脈全てが1つの国だったのだが、それぞれの山にいた領主が仲違いし、一気に独立したという経緯がある。国王同士は今でも仲が悪いのだが、国民同士は元々同じ国だった影響か非常に仲が良く、国交も盛んで山脈の国同士で殺し合うことを嫌っている。そのため、山の国同士で争う時は、あらかじめ日程を設定して、綱引きや玉入れ、リレーといった安全な競技や、酒の早飲みやチェス、トランプなどの遊びの競技も行い、負けた方が街1つ分領土を失うということになっていて、山の国民達が楽しみにする一大イベントになっている。
再度1つの国になるよう誰かが主導すればいいのにと思うのだが、山の国同士で殺し合おうとすると即座に民衆の蜂起が起きるのに、統一しようとする気概のある者はどこからも出てこないらしい。
そんな山の国は、山の下にある周辺国にも頻繁に戦争を仕掛けてきたのだが、ポルペアと山の2国の国境線が交わるような場所では、時々山の国同士が同じ場所、同じタイミングで攻めてくる。正式に同盟を組んでいるわけではないらしいが、山の国同士は敵対しないため、事実上の同盟軍による戦いで面倒臭かった。
しかし最近何を考えているのか。山の各国があちこちから荒くれ者を集めては訓練を施し、国境を跨いで田畑を荒らし、行商人や旅人、国境に近い村や町を襲って金品を奪うなどの山賊行為をさせるようになった。荒くれ者はポルペアにも出ていたのだが、我が国との関所がある山の一部をアルケイドが手に入れて以降、山の国すべての敵意はアルケイドに向けられた。
そのため、アルケイドは荒くれ者の襲撃を集中的に受け、その被害規模は徐々に拡大していく一方という状況だから、当然国民の不満は募り、なんとかしてくれという声が出ている。その期待に応えるべく、アルケイドは軍を動かして討伐しているものの、やってもやっても湧いてくる。
根本的な解決には小国を全て潰すしかないと考えたアルケイドは、山の国への侵略を優先しているため、ポルペアへ侵攻する様子は見られていないが、友好関係は築かれていない。
陛下の初めての外交は、アルケイドとの挨拶を兼ねた会談になる。最初の外交が非友好国という状況は厳しいとは思うが、暗殺は行われない、移動中は襲われない、国は侵略されないと決まっているから、無事に終わるだろう。
この取り決めがなかったら、陛下を連れて長距離を移動するのは困難で、会談の場で何かが起こる可能性もある。また、自分たちが留守なのをいいことに、サザベルの暗躍を助長させたり、最近軍の動きが活発化しているギルキアが揺さぶりをかけてきたりするだろう。一瞬たりとも気の抜けない状況が続くのは、同行する者も留守を守る者も気が気でない。本当にこの決議が通って良かったと思っている国は多いだろう。
会談が行われるアルケイド王宮内の庭園には、美しいバラがたくさん花を咲かせている。設けられた席に居たのはこの国の女王と宰相で、後方に控えた2人の将軍らと共にこちらを無表情で見据えていた。場所こそ華やかではあるが、非友好的な空気に陛下が一段と緊張したのを感じた。
「はじめまして。私はジョアンナ・リーベリス=アルケイドと申します。お会いできて光栄です」
「はじめまして、エルシード・オルフェウス=ポルペアと申します。お会い出来る日を迎え、大変嬉しく思います」
定型的な挨拶を終えると、女王の勧めで椅子に座った。自分がこの女王を最後に見たのは陛下の父王がご存命の時だったが、その頃と比べて白髪が増え、動作に機敏さを感じないなど、随分年齢を感じる。まだ50歳半ばくらいだと思うが、このような変化があるということは健康に問題があるか、苦労事が多いのだろうか。
「建国と御即位、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「お顔立ちが母君に似ていらっしゃいますね」
「母の記憶や思い出がないので、そう言って頂けると嬉しいです」
緊張を隠しきれない陛下を無表情に見ていた女王だったが、急にフッと口元が緩んだ。
「その照れたお顔なんて、本当に似ていらっしゃる」
陛下が困惑すると、女王は面白いことでも思い出したのかクスクスと笑った。
「もう随分と昔になりますが、ギルキアから帰国しようとマードリア領内を移動している時、山の方から『くそくらえ~!』とか『下手で悪かったな~!』などと叫ぶ声が聞こえてきたことがあったのです。気になって調べたら、ある令嬢が妃教育のストレス発散のために、山で叫んでいることが分かったのですよ。その報告を聞いた時は、そんな破天荒な令嬢がいるのかと笑ってしまいましてね。
それから年月が経って、母君と初めてお会いした時には慎ましやかな王妃となっていらっしゃいました。2人きりになった時、私がこっそり叫んでいた話をすると、母君はすごく恥ずかしがっていらっしゃって。陛下の照れたお顔を見たら、その時の母君のお顔を思い出しました」
「そ、そんなことがあったのですか…」
陛下の母の話といえば、王妃になられた後のことしか聞いたことがなかったが、どうやら少々変わった方だったらしい。そう考えると、サジェルネ殿下の王族らしからぬ部分は、王妃様由来のところがあったのかもしれない。きっかけがなかったからか、陛下は今まで母君の話を誰にも聞くことはしなかったが、こういった形で知ることになろうとは。
王妃様が所有していた宝石やドレスといった価値の高い遺品は、サジェルネ殿下が全てネニア妃に貢いでしまった上に、それらをサザベルに送られてしまったため、陛下には母君を偲ぶ形見といえば肖像画くらいしかない。サザベルとは、国王の愛娘だったネニアを殺した影響で今後も非友好国のままだろうが、いつかサザベルの手に渡ってしまった物を取り返したい。
「昨年から気候に恵まれて小麦の収穫量も上がりまして、有り余る状況になってしまっているのです。もし良ければ取引いたしませんか?」
「どれほどの量と金額でしょうか」
アルケイドの宰相から渡された書類を見ると、通常の価格から考えても格安なもので、半年に渡って売り渡される量は、需要の大半を賄えるほどだ。
マードリアの終わりの頃には、サザベルから安く農産物を輸入していたため、国内の田畑は荒れてしまっていた。サザベルから輸入していた穀物などが、各地の備蓄倉庫などに保管されていたから、それを使うことで今はなんとかなっているものの。田畑に手を入れているが、安定的な収穫が出来るには時間がかかるため、食料問題というのは眼前の問題となっている。
サザベルとは国交断絶、周辺国のほとんどが非友好関係。ギルキアとはある程度の関係はあるが、軍の動きが活発化している上に、王宮内には一波乱起きそうな空気が流れていると聞く。隣国に輸入の話はもちかけられない状態だから、ウィニストラに取引を持ちかけるか、少し離れた友好国に輸入の話を持ちかけようと話していたところだったから、この申し出には非常に助かるところがある。
こちらの足元は見えているが、余っているからと理由をつけて取引を申し込んでくれたのは、陛下がどんな人物か見極めるつもりでいること。そして、アルケイドとしては今ポルペアと敵対したくないのだろう。提示された内容に満足したユペタ殿が頷くと、陛下は懐から取り出した紙に書き込むと女王に渡した。
「では我が国からはこちらの内容を提示させて下さい」
「半年間でこの量のコルド鉱とは素晴らしい。是非この内容で進めさせて下さいませ」
コルド鉱というのは金を掘り出す時に出てくる副産物で、溶かすには時間がかかるが衝撃に強い、という性質を持っているため、王宮や砦などの重要な建物に使用するほかに、剣や斧といった武器や馬車の金具など、多岐に渡って使われる。
金塊にできるような量が採れなくても、金を含む鉱山であれば産出できるため、それなりの国で採掘されているが、金を含まない山しかない国では輸入するしかない上に、使い勝手が良い分、すぐに消費してしまう鉱石だから、それなりに価値が高い。アルケイドでは採れない鉱石だから、女王と宰相は満足したようで頷きあった。
取引の内容から互いに友好的な関係を望んでいるのが分かり、それからは雑談を交えながら、和やかな時間が過ぎた。
「最近、我が国では温泉が湧き出ましたので、整備が終わりましたら是非お越しください」
「温泉が湧いたなんて羨ましい。息子夫婦が温泉に興味があるので伝えておきます」
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女王は満足そうな様子で紅茶を一口飲むと、安心したように小さく息を吐いた。
「マードリア最後の王が狂犬のような方だったので、同じ血を持つ陛下はどうかと心配しましたが。常識的な方のようで安心しました」
サジェルネ殿下が王太子だった頃、あの方は挨拶の場に出席していた初対面の王太子妃に対し、『お前のようなブサイクが未来の王妃とは。この国の行く末は知れてるな』という暴言を吐いた。すぐに先王陛下が正式な謝罪の手紙を送られたのだが、当然良好な関係など築けるわけもなく…。たとえサジェルネ殿下が存命していても、狂犬と言われても申し開き出来ない。
「ご存じのとおり、我が国は山に居座る者たちに頭を抱えていましてね。正直なところ、山を綺麗にしなければ他国への侵攻など、頭にも浮かばない状況です。ですが、その掃討には時間がかかるでしょう。貴国とは10年ほど和平を結びたいのですが、いかがでしょう」
マードリアの時代、こちらから周辺国に侵略戦を仕掛けたことはあるが、今のポルペアは鍛え直しが優先だから、他国に侵攻している余裕はない。
一方のアルケイドは、ポルペアを侵略するよりも、迷惑千万の山の小国を滅ぼすのが先。安定的な統治を行いながら、山脈の国々を支配するまでには時間がかかるから、広く国境を接することになるポルペアとは、一時的に和平を結んだ方が良いと考えたのだろう。
女王の様子から見て、そう遠くない未来にアルケイドは王太子の時代になる。10年より先をどうするかは、王太子の判断に任せたいということのようだ。
「10年の和平、お受けいたします」
「ありがとうございます。サザベルとトラントの間には、国境が曖昧な場所が複数ありました。トラントからウィニストラになっても、その問題は簡単には解決しないでしょう。大国同士が国境を接することで生まれる緊張や混乱は、時間を置かず周囲に広まります。そんな事態になれば、周辺国は戦争などしている場合ではなくなります。2つの大国の動静について、情報を共有したいと思っていますが、いかがでしょう」
「同意見です」
「では後日こちらから情報を送らせて頂きます」
サザベルとウィニストラが国境を接すれば、周辺国は理性的なウィニストラより、血の気が多い上に、あのディネードがいるサザベルの方に注意を払うことになる。彼の強力な黒魔法によって地形が変わると、川の流れまでも変わり、氾濫が起きたり、土砂崩れが起きやすくなったり、木々が燃えつくされて獣害が起きやすくなってしまったりと、間接的な被害が起こる可能性がある。
ポルペアを狙うのか、国境を接する別の国を狙うのかは分からないが、サザベルは領土と国力を増大させたウィニストラに対抗すべく、何か行動を起こす。周辺国はそんな危機感を持っているから、共に両国の動静を監視、情報を共有するのは非常に大事なことだ。大国に挟まれた国特有の悩みは他にも出てくるだろうから、アルケイドとは一定の関係が結べそうな気がする。
「宰相様に手紙を書いて参ります。この成果に皆も喜びます」
取引契約書の作成や和平協定の調印などを行って宿に戻ると、ユペタ殿は嬉しそうに自室へ入って行った。心配で仕方ない宰相様らに、陛下の初めての外交が無事成功したことを伝えたくてたまらないのだろう。人払いをして陛下の部屋にお邪魔すると、吸い込まれるようにソファに倒れ込んだ人物からため息が聞こえてきた。
「無事に終わって安心しましたね。あちらから小麦の取引と和平を申し出てくれたのは、陛下の人徳ですよ」
「空気を変えてくれたのは母様だから、私じゃなくて母様の人徳だよ。今度、母様を知る人たちに思い出話を聞きに行こうかな」
「ではこちらに呼んで差し上げて下さい。王宮内の思い出の場所を巡りながら、喜んで話して下さると思います」
アルケイドを出ると、フェアニーブへの旅路を順調に進んだ。途中、立ち寄った街で他国の一行と鉢合わせすると、すぐに会談が申し込まれた。外に出ることがなかった謎の王子が王になったこと、問題ばかり起こしていたサジェルネ殿下の弟ということで、試すような態度や無礼な言動を取られることもあったが、陛下は淡々とそつなくこなし、思いのほか順調に外交経験を積んでいった。
「これがこの街で定番の棒巻きパンか。パンを巻きつけただけのもあれば、棒に刺したウインナーにパンを巻きつけたのもあるんだね。パンをこうやって食べるのは初めてだけど、ジャムにマスタードにケチャップ、店によって違う特性ソースがあったりして面白いし、美味しいね」
「歩きながら食べられるのもいいですね」
陛下と街を見て回ったり、行商隊が開く市に足を運ぶと、ポルペアにはない工芸品、食べ物、景色など、非常に良い刺激を受けているようで、時折心からの笑顔が溢れる。成人した年齢ではあるものの、少年のような無邪気な好奇心が垣間見えると、自分たちが多感な時期を奪ってしまったと罪悪感が込み上げてくる。陛下への罪滅ぼしも含め、自分たちがしっかり支えなければと、仲間たちと確認し合った。
■■■後書き■■■
web拍手に掲載している世界地図に、新たな国名を追加しました。
※以前と同じサイズではアップロードできなかったため、全体が小さく表示されてしまいます。
※フシュカードの位置が間違っていたので修正しています。ご迷惑をおかけいたしました。m(_ _)m
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