教室の窓から

いえろ~

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第1章 春

1.始業式

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 中学3年生になった。新クラスに変わっても、元々3クラスしかなくお互いがお互いをよく知っているために早速雑談で賑わっていた。窓際の席に座っている嵯峨本樹哉さがもとみきやは頬杖をついて窓からの景色を見ていた。春らしく少し霞んだ青空の下、暖冬を経た校庭の桜はもう散り始めている。確か、去年もこんな感じだった。一昨年はどうだったかな、でもそう早く散り始めたなんてことはなかっただろう。

 ふいに扉を開ける音がして、教室の空気が全てそこから吐き出されてしまったかのように生徒達の話し声はなくなった。担任の中野なかのが来たからだ。

「去年も2組を担当していたからわかると思うが、今日からこの3年2組の担任を務める、中野大介なかのだいすけだ。1年間よろしく。早速だが、通信とその他配布物を配る。量が多いから、一番後ろの生徒は教卓の上にあるプリントを仕分けてくれ」

 中野は嵯峨本の学年をずっと持ち上げてきた。担当は数学で、比較的若い、しかも男の先生であるから、女子を中心に支持を集めている。だが、嵯峨本は彼のことを好感的に思えなかった。

「みんなのおかげで、配布物を迅速に配り終えることができました。このクラスのチームワークはとても良いですね」

 中野は爽やかな笑顔を見せて言った。こういうところが嫌いなのだ。担任が指示をしたなら、生徒はそれに従うに決まっている。それ以上でもそれ以下でもない、意志のない無機質な行動。これをチームワークと言っていいのだろうか。彼のみならず、どうやらこの学校にはこういう考え方をする教師達が多いらしい。学校の方針なのかは知らないが、もしそうであったら、こんな学校はクソ喰らえだ。しかも、クラスを褒める時だけは丁寧語を使うところも気に食わない。

「今日は始業式だったけど、来週の月曜日は入学式だ。この時、3年生は国数英のスタートテストを行う。勿論成績に加味されるから、気を抜かずに取り組むこと」

 テストという言葉を聞くなり、生徒達が思い思いにどよめいた。新学期始まって早々にテストは流石に堪えるものがある。

「えぇーじゃない。受験はすぐ目の前まで迫っているぞ。部活もあって忙しいと思うけど、1学期のうちから計画的な学習を行うこと。じゃあ、今日はこれで放課。掃除は明日から。日直、号令」

 きりーつ、ちゅうもーく、れーい。この地域ではお決まりである号令がかけられ、生徒達は散り散りになる。これから部活をする生徒、委員会の引継事務の手伝いを生徒、暇になり家に帰る生徒。しかし、嵯峨本はそのどれとも違う。教室から生徒達が消え去った後、自分の椅子に再び座り、自前の数学の問題集とルーズリーフ、1セットのシャーペンと消しゴムを鞄から取り出し、机に置く。

 いーち、そーれ、にー、そーれ――。校庭では早くも野球部がアップを始めていた。
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