異世界・野獣暴れ旅 ~スローライフに憧れて~

送り狼

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第4章 冒険者

第90話 理想のパーティー

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 そうする内に、壁に亀裂が入り、中からズルリと緑色の肉の塊が吐き出される。

 肉の塊はもぞもぞと動きながら立ち上がると、粘膜にまみれた一匹のゴブリンだと確認出来た。

 ゴブリンは僕とビアンカを見比べ、

「キシャーー!」

 デカイ口の中の乱杭歯を見せ付けながら威嚇している。

 僕がビアンカに視線を向けると、ビアンカは無言で頷いた。

 僕も無言で剣を握り、抜き打ちの浴びせ斬りでゴブリンを袈裟懸けにする。

 前屈みだった分二つにはならなかったけど、左肩から右脇を剣が抜け、緑色の液体を吐きながら、ゴブリンは地に這って絶命した。

 ビアンカの指示で手早く右耳を切り取り、証明部位を入れる革袋に放り込む。

 ダンジョンの場合、魔物は死んで一定時間が経過すれば消滅してしまう。

 証明部位は切り取れば消えるコトはないが、その理由は誰も知らないし、気にもしない。

 ゴブリンの死体は見る間に黒い靄となり、小さな魔石を残して消えて行った。

 こんな短時間で消滅するなら、群れと遭遇すれば証明部位を切り取る前に消えかねない。

 そんなコトを口にしていると、ビアンカは死なず動けない程度に倒すのがコツだと笑って言った。

 ハードル高ぇな。

「ポーターがいれば証明部位の切り取りは任せるんだけどね」

 なるほど。ポーターは荷物持ちだけじゃないのか。

 そりゃ面倒がなくて良いな。

「さ、先に進もう」

 理想的なパーティーメンバーと役割の説明をしながら、ビアンカは歩を進めた。

 安全性を求めるなら、盾役を張れる騎士、パーティーの目となる盗賊、斬り込みの剣士か戦士が前衛。遠距離攻撃の魔術師か弓術士、治療や支援の法術師が後衛。そしてポーターを含めた六、七人だが、パーティーメンバーが増えれば増えるだけ、当然実入りは減っていく。

 そうなると、パーティーは浅い階層を無視して深く潜るようになる。

 パーティーリーダーがしっかりしていれば、進退含めて多少の無理も問題無いが、欲に負けて無茶をすれば、パーティー自体の存続すら危うくなるのだ。

「ビアンカ」

 僕は咄嗟にビアンカを呼び止めた。

 僕の耳にボソリとした音が届き、後ろを振り返って確認すると、魔物の誕生とは違った様子で壁の一部が崩れていたのだ。

「-っ!?」

 ビアンカは素早く僕の前に立ち、

「ヤバいね。こんな浅い階層で新通路かい」

 こめかみに汗を伝えながら呟く。

 壁の崩れと僕に視線を走らせ、小さくため息を吐く。
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